あらすじ
ゲーム中毒、引きこもり、ニート……いまや記録的な数の男たちが、社会からはじかれている。学業では女子に敵わず、女性との付き合いや性関係でしくじり、正規の職に就くことができない。世界的な不況や、社会構造の変化、そしてネットの普及が、彼らをより窮地に追い込み、ゲームやネットポルノの中に縛り付けている。 本書は、行動心理学、社会学、生理学の成果などを駆使しながら、今、若者たち、特に男性にどんな変化が起きているのかを検証。さらその原因が解明していく。社会の変化によって、「男らしさ」や「男の役割」も変更を迫られている。 先進国共通の男子の問題に、解決策はあるのか?
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Posted by ブクログ
日本で草食系男子などと言われて久しいが、実は世界的な潮流であると知って驚いた。正確に言えば、ネットインフラが充足している先進国共通の課題ということであろうか。同様に、引きこもりも日本だけの問題ではない。
原因は、テクノロジーが進化することによって、脳がテクノロジーに適応しすぎてしまい、現実とのギャップを埋めきれず、人とのコミュニケーション能力が低下していることにあるということだ。今後、人工知能がさらに我々の活動に入り込んで、日常生活が便利になっていく一方で、失われていくものもあることもあることに気づき、その対策を立てることが、テクノロジー社会を構築していく我々の責務であると言える。
「テクノロジーの魔法と興奮依存症」の章には、以下の記述がある。
”多くの情報が即座に注意を向けさせようとする資格的刺激の強い環境にのめりこんでいる時には、その認知的負荷が私たちのワーキングメモリには大きすぎて、すべてが長期記憶には移行しなくなる。また、認知的負荷が大きくなると注意力は散漫になり、頭は適切なデータとそうでないデータを選り分けるのが困難になる。”
つまり、刺激が強いパソコン画面にばかり向き合っていると、脊髄反射的に反応をしてしまい、深く考え判断しなくなってしまうということだ。この一例として、オンラインポルノの弊害を本書では指摘している。
オンライポルノを提供する側は、より多くの収入を得るために、どんどん過激な内容になっていく。若くしてオンラインポルノに触れると非現実な過激表現を現実と混同してしまうことになる。実際には巧妙に編集されているにもかかわらず、AV男優の身体的特徴と信じられない持続力を見て、若者は自信を喪失しセックスに踏み出せなくなるらしい。さらには、AV女優が演じる女性像と現実の女性との区別がつかなくなり、女性の方が男性よりもセックスが好きであると勘違いし、そしてAVの中でのプレイを当然のことの様に要求する様になる。女性を人間としてではなく、モノとして見てしまい、生身の女性との良好な関係を築くことができなくなる。
本書で最も印象的だったのが、現在のデジタルワールドとマズローの「欲求五段階説」を対比して論じているところだ。五段階の内ボトムに位置する”生理的欲求”と”安全欲求”は、現代でも物理的な現実の世界で満たされなくてはならない。しかし、その上に位置する”社会的欲求”、”尊厳欲求”、”自己実現欲求”については、デジタルワールドでは、段階を踏むことなく満たすことが可能であるかもしれないと説いている。
しかも、デジタルワールドでは、結果に対するリクスを追うことなく、それらの欲求が満たされる場合があるため、現実世界との折り合いの付け方を間違える可能性がある。実際に、オンラインゲーマーがデジタルワールドと現実世界との区別がつかなくなり犯罪への発展した例は枚挙に遑がない。
では、どうすべきか。これについては終章で提言にとどめているが、一言で言ってしまえば、小さなことからコツコツと行い、コミュニケーションを大切にしていくに尽きると提案している。しかし、今はそのコミュニケーションがLINEなどのSNSが主となってしまい、課題解決の困難さのスパイラルに容易に陥ってしまう。
本書はキャッチーな題名で面白いことに着目させてくれたので、どうあるべきかの提案も引き続き上梓されることを期待したい。
Posted by ブクログ
ここ数十年で身の回りで見られる、無気力で絶望感に満ち、短期的快楽だけを追い求める男性について、改めて今の社会が作っている厳しい現状を直視することができた。インターネットという急激な変化をもたらすテクノロジーは間違いなく、伝統的な社会に歪みをもたらしている。世界はある意味豊かになりすぎたのかもしれないが、今向かっている方向は、本当に私たちが望んでいる方向性なのか、力をつけた女性たちや、自分達を弱くする魅力的なものに溢れた今の環境を、もう一度見つめ直し、男女がそれぞれ輝ける社会を作るための議論を止めてはいけないと感じた。
Posted by ブクログ
根本な原因を突き止めていて、これからの男子の社会の現状が伝わってきた。
性的な言葉はタブー視されているように感じるような中でどう捉え、どう学んでいくか、日本は性教育が世界的に見ておくれているように感じる。そのため性教育を推し進めて行かないと若者の中絶や人生設計に関わってくるなと思った。
Posted by ブクログ
ゲーム、メディア、AV etc..
21世紀の男子らを誘惑してきているのはリアルではなくデジタルにある。本物の女性よりも画面越しの女性に欲情し、彼女らとコミュニケーションをとるあまり(ほぼ一方的だが)、現実での女性との距離のつくり方がうまくいかない。そんな男子が日本だけでなくアメリカ、中国、そして他の世界で起きていることだというのだ。この状態が今後も続いてしまえば、世界から子供の数は間違いなく減り、これまでのクラーク・ゲーブルや加山雄三、三船敏郎などの男らしい男は世界から消えてしまうだろう。
Posted by ブクログ
これからの数十年、ますます男女の断絶が起こり得るような気がした。
そんな殺伐とした社会環境において男性がどのように立ち振る舞い、どのような信念の元に女性と関わり合えば良いのか、共に歩むめば良いのかの形が薄っすらと感じ取れた。
それと日本においての未婚率の上昇は育児支援の不足や男性の経済力低下などの目に見える外面的な要素だけでなく、異性に対する内面的(心理的)な要素も大きく影響を与えていて、それは僕が以前から感じてたことでした。
つまり、経済や政府の支援だけでは肝心な部分が覆い隠され男女の真の共栄は訪れない気がします、、っが!
俺に限ってはできるはず
Posted by ブクログ
2015年版『男性権力の神話』、フェミ批判。いくつか提言もあり。弱者男性みたいなのに興味ある人と、男子がわからんフェミニストは読むがよかろう。目新しい論点はたいしてないように思うけど、数字その他のデータは価値がある。
Posted by ブクログ
タイトルどおり、男子が劣化しているという趣旨の本。
女性の社会進出とデジタル社会の進歩が男子から男らしさを取り上げたという内容。
デジタル世界では、リアルと異なりイージーに様々なものを獲得できる。そのため男子はバーチャルにハマりやすい。
バーチャル世界での王様は、リアルワールドでは冴えない男子だ。だからますますデジタルにのめり込む、ということらしい。
全体としては、Twitterでよく目にする言論だ。この本がネタ元なのかもしれない。