あらすじ
不倫には家庭生活を一瞬で終わらせる破壊力がある。なのになぜ人は不倫をするのか?
ひと昔前まで、結婚は家と家を結ぶ経済活動だった。だがこの数十年の間、結婚は、
個人の契約、愛を土台とする。夫婦は互いに親友でもあり恋人でもあり、すべてを
満たしあわないといけない。はたして、それは持続可能なのか。
本書は膨大な数のカップルを世界中でみてきたセラピストが、夫婦という人間関係
を真摯にみつめ、人間存在の謎と性の複雑さに切り込んでいる。
誰かを愛したすべての人へ。逸脱から、人はなにを学ぶのか。
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Posted by ブクログ
セラピストである著者が依頼者カップルによく言うという
「あなたたちの最初の結婚は終わりました。
さて、これから二度目の結婚生活をともに築きたいと思いますか?」
との言葉どおり、不倫が夫婦関係に及ぼす正負ふくめたさまざまな影響を示す内容。
夫婦(同性婚カップルも多数登場するが用語は慣用にてお許し下さい)のことだからその夫婦に任せればよいというにはあまりに当事者の苦しみは大きく、しかし原因は不倫をした当事者だけにあるのではない。
そこに善悪や責任といった安易な線引きをせず、豊富なカウンセリング経験から引き出したグローバルかつめちゃくちゃ豊富な実例から、不倫が夫婦にもたらす可能性(繰り返すが正負ふくめて)を描いている。
著者の関心はもともとセックスレスの解消にあり(有名なTED Talkもその話題)、不倫について語るときも、関係が冷ややかに死んでいる状態に比べれば、不倫はそれを揺り動かす可能性があるという観点に立っているように読める。ただし著者が言うように、
「不治の病になったことで人生がポジティブな方向へ一変するような経験をする人も多くいる。とはいえ私は癌になることを人に勧めないのと同じくらい、不倫することも勧めない」
わけだが。
かつてと異なり、現代の結婚は配偶者に「互いにとってのソウルメイトから恋人、教師、セラピストに至るすべて」になることを求めるようになった。そうできりゃいいですけど、難しいですよそれは。その難しさの発露の一つが不倫であって、不倫は現代の結婚に伴う約束というか契約に違反する行為というわけだ。
生育歴やバックグラウンドにしている文化によって、夫婦間に小手先の対処じゃどうにもならない齟齬が実は存在したことが、不倫によって明らかになる、そういう実例も出てくる。不倫は「悪しき不誠実な人間が一方的に犯す罪」とは違う何かだなという新たな認識を得た。
また、不倫が大ごとになるのは、自己の承認を配偶者にだけ求めているからだというのもなかなか耳の痛い話であった。
Posted by ブクログ
ボリューム多いが色んな事例が具体的に紹介されて面白かった。不倫したら即別れる、という考えの人に勧めたい。また他人の不倫にも簡単に判断するべきではないと考えさせられる。禁断や秘密は必ずしもマイナスではなく、人が生き生きするためのパワーともなり得る。不倫に至る背景、不倫から得ようとしたものも見るべき。
Posted by ブクログ
著者がニューヨークの心理療法師で表現がおもしろい。
「不倫」について全部書いてる感じ。
なぜ今、「不倫」は叩かれるのか?
自分はどうか?
など…
みんなさんは?
Posted by ブクログ
セラピストがこれまでのセラピー経験を基に不倫と結婚の問題について論じたエッセイ。登場するエピソードや話の展開はあまり意外なものは少ないが、経験豊富なセラピストが多角的な観点から夫婦関係(と愛人関係)を論じており読み応えがあった。
Posted by ブクログ
様々な不倫をした人達をみてきたセラピストの、一つひとつの不倫に対する見方がおもしろかった。不倫に対する時代や文化的背景という視点も織り交ぜながら、個人のトラウマや価値観といったところに焦点を当てていく。否定も肯定もせずに、不倫をした、された、愛人になった、それぞれが辿る一番良い道を探していく。多様性が尊重される中で、どうして不倫は糾弾されるのか。不倫は良いこととは言えないけれど、様々なケースをみていくと一概に悪いとも言えない。もう少しフラットに、俯瞰的に、不倫をみる。
Posted by ブクログ
冒頭の、「現代は結婚に全ての機能を詰め込み過ぎている、だからうまくいかなくなるのも当然だ」との指摘には頷けた。
昔は夫婦というのは経済的・社会的基盤としての要素が強かったが、今は恋愛的、精神的、性的な基盤でもあり、その機能を全て満たすのは難しいこともある。
中盤までは自分とはあまり関係がない事例が続いたけど、最後のセックスレスの部分は共感するところも多い。
自分の考えや価値観に思いをめぐらせながら読んだ。日本にも著者のエスター・ペレルみたいなセラピストがいれば相談に行くのになあ…。