高月園子のレビュー一覧
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セラピストである著者が依頼者カップルによく言うという
「あなたたちの最初の結婚は終わりました。
さて、これから二度目の結婚生活をともに築きたいと思いますか?」
との言葉どおり、不倫が夫婦関係に及ぼす正負ふくめたさまざまな影響を示す内容。
夫婦(同性婚カップルも多数登場するが用語は慣用にてお許し下さい)のことだからその夫婦に任せればよいというにはあまりに当事者の苦しみは大きく、しかし原因は不倫をした当事者だけにあるのではない。
そこに善悪や責任といった安易な線引きをせず、豊富なカウンセリング経験から引き出したグローバルかつめちゃくちゃ豊富な実例から、不倫が夫婦にもたらす可能性(繰り返すが正負 -
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災害時になぜかユートピア的な利他的なコミュニティがたちあがることについてのソルニットの本。
ソルニットは、社会変革のアクティヴィストだったり、フェミニズムの論者だったり、歴史社会文化に関する著作家であったり、さまざまな側面があって、それぞれに素敵な本を書いている。
そうしたソルニットの作品の一つで、以前から気にはなっていたが、なんとなく本の内容は想像できる感じがしたので、読むのを先送りにしていた。
2020年に定本という形で全訳版がでたのを発見して、遅ればせながら、読んでみた。
まずは、本が届いてその厚さに驚いた。注までいれると500ページを超える大著である。なんとなく、300ページく -
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◯他の方の感想でも書かれているが、この本を読むと日本人は災害の時に暴動を起こさないということについて、民族とは関係がないのでは、と考えさせられる。
◯もしくはそれ自体を前提とした上で、暴動等の比率の小ささを言っているのだろうか。
◯少なくとも、地獄に仏、地獄に天国とは言い得て妙で、助け合う心が人にはあるんだと思えるだけでも救われる。
◯この本のもう一つのテーマとしては、行政のスタンスであると思う。実に悩ましい。本書で取り上げられているのはアメリカの事例である。銃社会であることから、秩序が失われたと想定される際の危険性の増加具合は日本の比ではない。この場合、州兵が派遣されるのも分からないではな -
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神戸地震の時、日本人は暴動も起こさず、礼儀正しく忍耐強いと世界で報道されていた。
それは、間違ってはいない。
しかし正しくは、大抵の人間は非常事態でも暴動も起こさず、礼儀正しく忍耐強いということ。
実際に起きた少数の犯罪行為と、事実と異なる偏見やイメージにより、アメリカでの災害では黒人が略奪行為を行うと思われている。
ハリケーンカトリーナの際に、その偏見のために黒人は被災者ではなく、暴動を起こす犯罪者として扱われ、避難と救助が遅れた。また、その偏見に囚われた白人が、自衛と称して黒人を銃で殺していた。
一方、災害時には日常生活が失われて、生き延びることが人間共通の目的となる。お互いの差が消えて -
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日本で草食系男子などと言われて久しいが、実は世界的な潮流であると知って驚いた。正確に言えば、ネットインフラが充足している先進国共通の課題ということであろうか。同様に、引きこもりも日本だけの問題ではない。
原因は、テクノロジーが進化することによって、脳がテクノロジーに適応しすぎてしまい、現実とのギャップを埋めきれず、人とのコミュニケーション能力が低下していることにあるということだ。今後、人工知能がさらに我々の活動に入り込んで、日常生活が便利になっていく一方で、失われていくものもあることもあることに気づき、その対策を立てることが、テクノロジー社会を構築していく我々の責務であると言える。
「テク -
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地震、洪水、大火災、そして9.11のようなテロリズムなどの暴力に出会ったときに、市井の人々が利他的に相互を助け合いユートピアともいえるコミュニティをどのように構築するかを描いた論考。本書の意義とは、災害によって極めて民主主義的とも言えるユートピアが立ち上がる可能性があるという点から、災害のもたらす影響をポジティブに解釈しなおそうとする点にある。
もちろん、全ての災害でこのようなコミュニティが発生するわけではなく、災害の規模が圧倒的すぎれば、そのようなコミュニティが発生する余力すら失われるのが実態ではある。とはいえ、被害がそこまでではない場合には、様々な災害後の様子を丹念に辿ることで、そうした