白水社作品一覧

  • 白い骨片:ナチ収容所囚人の隠し撮り
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    撮影行為のアルケオロジー ナチ収容所では、囚人たち自らが秘密の写真撮影に成功していた──はたして、それらの写真はどのように見るべきか? ドキュメンタリー映像作家でもある著者は、囚人たちが命がけで隠し撮りした秘密写真を手がかりとして、それら秘密写真が撮影された現場(アウシュヴィッツ=ビルケナウ、ブーヘンヴァルト、ダッハウ、ミッテルバウ=ドーラ、ラーフェンスブリュック)に赴く。そしてマニアックなまでの正確さで場所や時刻、シャッターが切られた瞬間を探しもとめ、写真を凝視し、撮影者や被写体について掘り下げ、細部を浮かび上がらせてゆく。 本書は、カルロ・ギンズブルグのミクロストリアの手法さながらに、ホロコーストの歴史を“無修正で”物語ることにより記憶と歴史の関係を問い直す。そしてそれは同時に、スーザン・ソンタグやロラン・バルトの写真論、クロード・ランズマンやディディ=ユベールマンらによるイメージ論を更新する「撮影行為の考古学」でもある。アネット・ヴィエヴィオルカが本書序文で「鮮烈なほど革新的な書」と称える所以だ。 『夜と霧』や『ショア』の記憶を確かめるため、未公開資料も参照しつつ五つの収容所を実地調査した、戦慄の「写真論」。
  • ジャック・デリダ講義録 生死
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    生死をめぐる「差延」の論理について語る、1975~76年の高等師範学校での講義 1970年代、デリダは高等師範学校において哲学教授資格試験準備講座を担当していた。すなわち、高等学校以上の教育資格であるアグレガシオンや、中学校での教育資格である試験のテーマについて、受験希望者に対策をほどこす講座である。1976年度アグレガシオンの哲学の試験のテーマのひとつが「生と死〔la vie et la mort〕」だった。だが、デリダは生と死が対立するという伝統的な論理に疑義を呈し、生と死が不可分であること、ひいては死こそが生を可能にすると説く。そしてそのために、試験のテーマから接続詞の「と〔et〕」を削除した「生死〔la vie la mort〕」を自らの講義のテーマとした。 生と死は、はたして対立すべきものであるのか? DNA、遺伝子、細胞……生き物にプログラムされた「非音声的エクリチュール」を踏まえながら問いかけ、ジャコブ、ニーチェ、フロイトを脱構築的に読解することで、再生産や新陳代謝のメカニズムを哲学する──「生死」をともにする全14回の講義。 生命科学を探究する、差延の論理! 性的差異、自伝、二重拘束、補綴、隠喩……デリダ的な圧巻のテーマが語られてゆく驚くべき講義録。
  • ドイツ史1866-1918(上):労働世界と市民精神
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    名著の誉れ高い「新しい古典」、待望の続巻! 本書は、『ドイツ史1800―1866 市民世界と強力な国家 (上・下)』に続く、「十九世紀ドイツ史三部作」の第二巻目だ。ドイツ帝国の成立を挟んで第一次世界大戦に至るまでのドイツが、「アンビバレント」な側面と問題性を孕みながらも、「モダン」な社会と文化に向かってダイナミックな発展を遂げていく様子が、社会・経済から宗教・教育・学問・芸術まで、分野ごとに詳述される。 ハンス=ウルリヒ・ヴェーラーは本書を「極めて傑出した総合を成し遂げた」歴史書と称えている。またゲルハルト・A・リッターも、「ほとんどいかなる人にもまさって、私たちの祖父や曾祖父の世界を知り、理解することを教えてくれた」と述べている。 本書は、「生活世界の全体を包括する歴史を提供する」こと、「経済、国制、階級、階級闘争、産業化、日常生活とメンタリティ、そして大いなる文化などについての多くのそれぞれの歴史を包括する歴史」を企図して執筆された、まさに圧巻の全体史だ。「ドイツ歴史家賞」受賞の巨匠による、社会史と精神文化史。
  • ワン、ツー、スリー、フォー:ビートルズの時代
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    ピーター・バラカン氏推薦! 異色のビートルズ伝 時系列を大胆に再構成し、多種多様なエピソードをモザイク状に配置しながら、4人の生きた時代、ビートルズと関わった人々の人生を万華鏡のように映し出す。英国の著名なジャーナリスト、諷刺作家による悲喜こもごものポートレート。 長短さまざまな150章から成る本書は、数あるビートルズの伝記、関係者の回想録、インタビュー、日記、ファンレター、同時代の報道など膨大な資料から目ぼしい記述や発言を選りすぐり、著者自身のルポや思い出、噂話、架空の話も交えて、独自の視点で編まれたもの。第一章は伝説的なマネージャー、ブライアン・エプスタインが初めてビートルズの演奏を聴きに行く運命的なシーンで幕を開け、続く章からはエピソード同士がゆるやかに連なり、ときに思わぬ展開を見せ、読者を驚かせる。 著者一流の諷刺とユーモアを散りばめ、ビートルズの人と音楽、同時代への影響を多種多様な人々の声に語らせ、浮き彫りにする。「ビートルズがあまりに明るく輝いたため、誰でもその光線に当たった者は、それがたとえほんの一瞬だったとしても、ビートルズ神話の一部になる」(本書より)。2020年度ベイリー・ギフォード賞受賞作。
  • シャルル・ドゴール伝(下)
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    「20世紀最後の巨人」の脱神話化を試みる決定版 世界を牽引した指導者、「最後の偉大なフランス人」シャルル・ドゴール。彼は巧みな戦略家であり、ひとつの政策に固執する反面、融通無碍な政治家でもあった。派手さを嫌う性格でありながら、ショーマンシップも発揮した。悲観と楽観のあいだを揺れ動き、自信を喪失したかと思うと、自己をフランスと一体化させ、君主であるかのように振る舞った。人びとの心にほとんど宗教的な崇敬の念を吹きこんだ。国民の統一を希求したが、その手法や政策はフランス社会に分断と対立を生み、ドゴールが憎悪の対象ともなった。 従来のドゴール伝が礼賛か批判かに偏りがちだったのに対して、本書は時代ごとの世界情勢や政治的状況、経済的環境のなかにドゴールを位置づけ、著作、書翰、発言、さまざまな同時代人の証言、新公開されたフランス国立文書館収蔵のドゴール文書など膨大な資料を駆使して、その全体像を中立かつ客観的な視点から記述する。さらに本書の大きな魅力は、資料の綿密な分析に基づいて、「人間ドゴール」の複雑な性格を浮びあがらせている点にある。英国の世界的権威による、ドゴールを主役にした「20世紀フランス史」。
  • シャルル・ドゴール伝(上)
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    「20世紀最後の巨人」の脱神話化を試みる決定版 世界を牽引した指導者、「最後の偉大なフランス人」シャルル・ドゴール。彼は巧みな戦略家であり、ひとつの政策に固執する反面、融通無碍な政治家でもあった。派手さを嫌う性格でありながら、ショーマンシップも発揮した。悲観と楽観のあいだを揺れ動き、自信を喪失したかと思うと、自己をフランスと一体化させ、君主であるかのように振る舞った。人びとの心にほとんど宗教的な崇敬の念を吹きこんだ。国民の統一を希求したが、その手法や政策はフランス社会に分断と対立を生み、ドゴールが憎悪の対象ともなった。 従来のドゴール伝が礼賛か批判かに偏りがちだったのに対して、本書は時代ごとの世界情勢や政治的状況、経済的環境のなかにドゴールを位置づけ、著作、書翰、発言、さまざまな同時代人の証言、新公開されたフランス国立文書館収蔵のドゴール文書など膨大な資料を駆使して、その全体像を中立かつ客観的な視点から記述する。さらに本書の大きな魅力は、資料の綿密な分析に基づいて、「人間ドゴール」の複雑な性格を浮びあがらせている点にある。英国の世界的権威による、ドゴールを主役にした「20世紀フランス史」。
  • ラヴェンナ:ヨーロッパを生んだ帝都の歴史
    5.0
    「ヨーロッパの祖母」となった都市の盛衰 ローマ帝国の中心がコンスタンティノープルに移った4世紀末、西方に新しい都が台頭する。イタリアの都市ラヴェンナにおいて、アリウス派のゴート人とカトリックのローマ人は競って、比類なき建造物とモザイクを次々と創りだした。以来300年にわたりこの町は、学者・法律家・職人・宗教人を魅了し、まぎれもない文化的・政治的首都となる。この特筆すべき歴史をみごとに蘇らせて、本書はイスラーム台頭以前の地中海世界の東西の歴史を書き変え、ビザンツ帝国の影響下にラヴェンナが、中世キリスト教世界の発展にとっていかに決定的な役割を果たしたのかを明らかにする。 全37章の多くは、皇后ガッラ・プラキディアやゴート王テオドリックら支配者から、古代ギリシアの医学をイタリアに蘇らせた医師の業績まで人物に注目しつつ、多様な民族・政治宗教勢力のるつぼであったこの都市がヨーロッパの基礎を形づくっていくさまを追う。そして、都市史をより広い視野から地中海の歴史のなかに位置づける。 美しい図版と最新の考古学の知見によって、ヨーロッパと西方の文化へのラヴェンナの深い影響について、大胆かつ新鮮な解釈を提供する1冊。

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