小説・文芸 - 講談社作品一覧

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  • 尼首二十万石
    3.0
    柳沢家の恐るべき秘事とは? 幕府の駈込寺潰しの狙いは? 奇怪な策謀に揉まれる男と女。伏線と発想の妙が光る時代小説6編ーー尼寺の鎌倉・東慶寺御用宿につとめる和三郎は、駈込女を助けたことから、幕府の陰謀と甲府15万石の柳沢家の秘事にまきこまれる……という表題作をはじめ、織田信長の子で武田家の人質となる源三郎勝長の生涯に迫る「最後の赤備え」など、時代の渦に翻弄された者たちの数奇な運命を描く、傑作6編を収めた時代小説集。
  • 東京見聞録
    3.2
    新しい発見が、街の中に眠っている! あなたの知らない東京を探る爆笑ルポ。渋谷・新宿・池袋・銀座……清潔だけれど、猥雑な東京を愛するすべての人々に! ーー東京というのはよく分からない街である。だから、東京との正しい接し方というのは、きっと「よく分からない」状態自体を楽しむことなのである。ぼくが1年間かけて突撃し、玉砕した結果がこの本である。「そうかそうか。玉砕したか。馬鹿め。うわははは!」と笑っていただければ幸いである。(「あとがき」より)
  • 女と男
    -
    大人の「女と男」が繰り広げる24の恋愛物語ーーパーティの会場で5年前にプロポーズを受けた男と再会した女が語った真実は……、ベッドの中で浮気相手の名前をつぶやいてしまった夫に妻が示した名案は……、などなど。こんな恋人たちがいたんだと思わずうなってしまう、大人の「女と男」ならではの様々な心模様を見事に描き出した、24の傑作短編小説集。
  • 寂聴の仏教入門
    3.7
    日常の仏事から日本人の宗教観まで。心の恐れをとり除き、苦しみから救う「仏教」を、易しく、面白く語り伝える! ーー智の力ではとらえがたい「何か」が存在し、人間はそれによって生かされている。心がまき起こす不安・恐れ・怯えはいつもあるが、施無畏(せむい)の教えはそれをとり除き、苦しみから人々を救い出す。心の問題を抱える現代人に、瀬戸内寂聴と仏教研究者・久保田展弘が、対談の形でやさしく仏教を伝える、好個の入門書。
  • 死に絶えた風景 ルポルタージュ・新日鉄
    -
    北九州の製鉄の町を訪ねたルポルタ-ジュ。近代日本の100年を旧八幡製鉄の繁栄と衰退と共にした人々の歴史、製鉄労働者たちの生活、公害で汚染する洞海湾などを詳しく記録した著者初期の代表的な作品ーーかつて、明治以来の日本の経済を大きく支えてきた新日本製鉄が、鉄の町・北九州市一帯で君臨し栄えていた頃、そこに働く労働者たちは、どんな厳しい生活をしていたか。町の人たちはどう暮らしてきたか。みずから東田高炉工場で働いた著者が、その体験をもとに記録した、鉄の町・八幡と新日鉄80年の歴史の光と影。
  • 弘前大学教授夫人殺人事件
    -
    無実の罪に陥れた当局の論理とは? 冤罪事件の全貌を解明し〈つくられた犯人〉の不条理な運命の重さを問う衝撃的ルポ! ーーある日、突然、ひとりの青年が、殺人犯として逮捕された。彼がいかに彼の真実を叫び続けても、「血痕」鑑定を理由に、裁判所は極刑を宣告した。以来、真実は闇に葬られ、真犯人が名乗りでるまで、〈つくられた犯人〉の不条理な運命は、どのような軌跡を描いたのか。冤罪事件の全貌を解明する衝撃的ルポルタージュ。
  • 君もヒーローになりたくないか
    -
    トラキチ必読! タイガ-ス監督の熱血人生。長嶋茂雄と闘い、王貞治と闘った14年間の現役時代と実業界で活躍した14年間を振返り、プロとは何か、リ-ダ-はどうあるべきかなどを、イキイキと語る注目の1冊ーー長島茂雄、王貞治らとしのぎを削り、最高殊勲選手、沢村賞など数々の栄誉に輝いた11年間の選手生活と、3年間の監督兼投手の生活、退団して4年間のサラリーマン生活、そして12年間の社長業……その多彩な歩みの中で、求め続けてきたものはなにか? 強いタイガース復活にかける、阪神・村山監督の熱血人生!
  • セカンド・レイプ
    4.0
    落合恵子が放つ社会派小説の決定版。「ザ・レイプ」に続く衝撃の問題作! ーー被害が一度ではとどまらず、それを告発する過程で、社会から再びレイプ、つまり人権侵害を受けること、これが「セカンド・レイプ」。映画化もされ大きな問題提起となった『ザ・レイプ』の作者・落合恵子が、さらに一歩進んで世に問いかける名作。「セクシュアル・ハラスメント」「プレーキング・サイレンス」も収録。
  • スローセックスのすすめ
    -
    男性本位から男女対等のセックスへ! スローセックスの原点を説く、アダム流セックスの入門書。お湯のように温められ沸点を迎える幸せなエクスタシー、射精しない、イカない、もう演技しないーー正しいセックスとはなにか。受け身の大和撫子は、日本男子の誤解に満ちた男性本位の未熟なセックスを長く甘受してきました。不幸なセックスから解放され男女ともに、最高のエクスタシーを得る方法があります。セックス・セラピストの権威が「スローセックス」を優しく易しく説き明かす、アダム流セックスの入門書。 ◎性感ヴァージンから解放されよう/不感症女性の95パーセントは正常/逃げ場がない生真面目な女性たち/女性は水の性、男性は火の性/膣でイカなくっても気にしない/DNAが覚えている淫靡なカラダの動かし方/100万人が実践したアダム流セックス入門
  • アローン・アゲイン
    4.0
    「ビッグガール・ドント・クライ」大きな女の子は泣いちゃいけない……。1960年代、彼女は少女だった。70年代、彼女は若い女を生きた。そして今……。吹いていく風の中で、彼女の新しい季節がはじまる。懐かしい曲をBGМに、オムニバス形式で綴る、彼女が生きる4つの愛の物語。
  • あなたの庭では遊ばない
    3.0
    すべての母への、すべての娘への物語ーーあなたは、1枚の皿を半日洗い続ける。神経症を所有することで負い続けた、荷物の置場所を見付けたのだ。わたしは今、あなたとの距離を見定めることが出来ました。母としてでなく一人の女、友人として。母への愛と亀裂を抱えた娘が、自らの新しい地平を獲得するまでを描く、出すことのない母への手紙。自伝的傑作。
  • 「東大経済卒」の十八年
    3.0
    彼らは何を考え行動してきたか? 〈団塊の世代〉のトップランナーたちの苦闘と選択ーー〈団塊の世代〉のトップランナーたちは、どうしてきたのか。昭和45年、東大経済学部卒330余人のうち、多くは大企業や官庁で課長クラスに就き、産業構造の大転換のなか、激烈な経済戦争に立ちむかってきた。なかには有為転変し、新しい人生に踏みだした者もいた。その苦闘と選択の軌跡を克明に追う。
  • 萩の雨
    5.0
    二昔も前に愛した女と、旅先きで待ち合わせた男。だが、その彼の前に現れた「その女(ひと)」とは? 「椿のかわりに萩を抱きません?」と言い寄る、その女の真意は果たして何か……という表題作など、萩、柳川、会津、盛岡、異国・北京、能登、と6つの地を舞台に展開する愛の虚実を、詩情豊かに描く秀作短編6編。愛の真実とは?
  • 第一生命広報部長からの手紙
    -
    仕事と趣味の日々を語り合う、出色の往復書簡集。美術館、コンサートホールをまわり、読書を楽しみ、手紙を書き続け、しかも、会社の仕事はきちんとこなす広報部長。いつもどこか旅にいる永六輔さんと交わした手紙には、豊かな男のロマンがいっぱい。ビジネスマンはかくありたい。一つの処世、一つの人生に乾杯!
  • 第一生命教育部長からの手紙
    -
    <ビジネスマンかくあるべし>という気持ちを込めて綴る、往復書簡集。仕事に呑まれず自分の人生を楽しく豊かにする知恵が、キラキラ輝いています。遊びのコツや日常身近への洞察など、心地よい刺激があなたをリフレッシュするはずです。生き方の名人とエリート部長の真情あふれる交流を汲みあげて下さい。
  • 大江戸ボランティア事情
    5.0
    お上に頼らず金かけず、幸せに生きる江戸の知恵。訴訟、教育から火消しまで、江戸庶民の創意と情を碩学二人が魅力一杯に紹介ーーお上には頼らない、「おたがいさま社会」だからこそ、江戸の生活は豊かだった。生きる喜びを最優先した住空間「長屋」の秘密とは!? 世界最高水準の寺子屋教育、誰もが無銭で楽しんだ長旅から、やくざをも役立てる社会システムまで。今こそ学びたい江戸庶民の知恵を、碩学二人が紹介する「大江戸事情」シリーズ第6弾! 江戸庶民の知恵と心意気!
  • 上海醉眼
    -
    「ワンダー・シティ上海」の魅力のすべて描く! ダンスホ-ル、ジャズバンド、サ-カス、浴場、料理屋、上海ガニ……ーー体験した記憶もない者に、ノスタルジアという世界を与える。上海は、日本人の躯の奥から、何か妖しい夢を誘い出さずにはおかない街のようだ。この街に溶け込むには、酔眼をこらし、躯のゆれに身をまかせるしか方法はない……。作家の眼と写真家の眼が絶妙に交差して織りなす、上海Shanghaiのイメージ。港町・上海に吹く妖しい風を見事に把えた傑作。
  • 狩りの時刻
    -
    悪夢か? 現実か? 「侍従」と称する中年男に、毎夜、誘(いざな)われて、平凡なOL・小金井依理子がさまよいこんだ、不可思議な性の世界……。そこで、謎の美女・徳乃本夫人に、女同志の愛を教えられた依理子は、突然姿を消してしまった夫人のあとを追って、徳乃本もと侯爵の宏大な邸に忍びこんだ。逞しい青年を愛撫する侯爵、犬を相手に孤独なセックスを楽しむ料理女、奇怪な蝋人形館に閉じこめられた少年……。悪魔の館に棲む人々を垣間みた依理子を最後に待ちうけていたものは、残酷な初夜の儀式だった……。女性の欲望を利用して巧妙に仕組まれた犯罪の罠を描く長編小説。
  • 残紅
    -
    その日まで恋はれてあるを知らざりし死のきはにのみ抱きける人……。幾たびも恋のほむらに身を焦がし、本能のままに悔いなき女の倖せを追い求めた歌人・麻緒の、哀しく、美しく、奔放な生涯。大正期の名女流歌人・原阿佐緒をモデルに、「愛の作家」が華麗な筆致でこまやかに描く、長編恋愛小説の名品。
  • 奇妙な愛の物語
    -
    唇はもっと乾いていて、その唾液は陽に暖められた枯草の香りがするにちがいない……。婚約者と唇を重ねながら、婚約者の美しい弟を獲物にしたいと願っている女子学生。しかしその満願の一夜が明けた時、少年は……。夢が壊されてゆく現実社会のそれぞれの場所で、さまざまに営まれる愛の形を感性豊かに捉えた18楽章。
  • 愛すれどひとり
    -
    みずみずしい感性が捉えた女の愛と孤独ーー亜木子の躰のなかを駈け抜けていった愛の季節は、何だったのか? なりたての夏のようにキラキラした俊輔への想いは? 結婚の形の中で佐々木に尽した喜びは? 愛をもってしても埋められない心の淋しさを胸に、私の回転扉から秋の街に独り歩き出す。いまを生きる女の愛と喪失、旅立ちをしなやかに描く長編。
  • ルポ戦後日本 50年の現場
    -
    日本の戦後史に埋もれた「挫折と抵抗」の庶民像を追う。はたして戦後日本は、幸福だったのか? 高度成長の背後で、何が起きていたのか? 沖縄・集団自決の悪夢やサハリンに棄てられた日本人、帰ってきた中国残留女性の苦闘など、表面からは窺いしれぬ、戦後50年の現場を訪ね、あらためて日本の歩みを問うルポ。
  • イヴたちへの私信
    -
    あるがままの自分に/帆を上げよう/…今が船出の時/…みずからを縛る鎖をひきちぎろう/…誰のためでもなく/自分にとって「いい女」へと/自立やキャリアを/…終生のテーマとして考えられるオンナへと/なによりも「自分を生きる」ことのできるオンナへと/情緒過多でも 理智一辺倒でもない/しなやかで 強く優しい 颯爽としたオンナへとーーステレオタイプの女よ! 男よ! さようなら! 私たちは、いまだ第二の性を生きてはいないだろうか? 女らしさの神話に与みせず、誰のためにでなく自分のために、自由に颯爽と生きよう! 自らの体験をもとに提唱する。
  • 旅の手紙<見えないものが見えてくる>
    -
    神戸や京都、北海道、萩、スイス……。旅先でひとり綴った心の手紙を投函します。受取人はあなた。ーー旅に出たい、そう思った時から旅はすでに始まっている。旅に出ると、ふだん見えないものが、見たくなかったものが、そして見ていなかった自分が、見えてくる。神戸や京都、北海道、萩、スイスなど、内外の各地に民俗と詩情を訪ねながら、さわやかな批評眼で現代をみつめ直して綴った、あなたへの、心の手紙。
  • 夢魔
    -
    新幹線の車中で、美しい和服の女が発病した。医師と名乗る黒背広の男に治療をうけた彼女は、京都で下車した。が、その瞳はどこか虚ろだ。ルポライター・渋谷は、彼女を尾行する。それは、奇怪な体験であった。京都の有名な料亭の若夫人である彼女が、娼婦のように彼に身を任せたのだ。しかも彼女は、その悦楽の情事を一切記憶していない、という。この日から渋谷の周囲に「夢魔」にあやつられた女たちが、続々と登場する。女は鍵言葉(キー・ワード)で、やすやすとその白い肉体を開き、没我の欲望に狂うのだった……。深層催眠を利用して女体を弄ぶこの「夢魔」の正体を渋谷は追う……。
  • 男体動物 若旦那に愛をこめて
    3.5
    ボケずとも、ツッコまなアカン! 無自覚&無責任の愛しき男たち43人の爆笑エピソード。アホやん……この人たち。でも、大好きやねん! ーー若旦那気質とは何か?と聞かれて、一言で答えるのなら、「一生懸命なのにどこか無責任でのんびりしている人種」と言うのが、ピッタリくるだろう。……と言い切る著者が厳選した、古今東西の若旦那たち。劇団主宰に女優、演出もこなす才女が、歌舞伎役者をはじめ、なんと競走馬!までを語りとばす、痛快エッセイ。
  • 大江戸生活体験事情
    3.8
    やってみました2年間、快適便利な江戸暮らし! 火打ち石から和時計、着物……。江戸時代の道具を試した面白体験報告! ーー江戸の日常は、なぜ現代人の100分の1のエネルギー消費で足りたのか。火打ち石で火をおこすコツから、旧暦で暮らすメリット、行灯(あんどん)生活の豊かさに、毛筆、着物、下駄の便利さまで……。江戸人が持っていた知恵と伝承、生活を楽しむ工夫を、碩学(せきがく)二人が、2年にわたる実体験で明かした、興味津々、侃々諤々(かんかんがくがく)の面白エッセイ。
  • 聖女
    -
    デウス天理教団の海外伝道尼僧・風間登代が、サンフランシスコS街の路上で、黒人に襲われた。登代は薄れゆく意識の中で、黒い腕にかわって白く輝く球体のようなものを認めた。〈ああ……聖なるお方が、わたしの前にあらわれている……〉登代はこの事件で妊娠してしまった。「私は大司教の御子を身籠った」と口走り、今夜も私のもとにいらっしゃると言う。登代を訪れる謎の男とは何者なのか? ……という女の業を描く表題作の他に、「黄色い吸血鬼」「蟻の声」「V定期便」「赤い的」「猫パーティ」「最後の一切れ」「蜘蛛の糸」の7編を収録。
  • 笑ってる猫
    3.5
    笑いの天才の頭の中をのぞいてみませんか? ーー自分の心の中を見られているようで、ちょっと恥ずかしい、と吐露する著者が選んだ、とっておきの本たち。この中には、マルチな才能を発揮するわかぎゑふの、発想の源泉が集約されている。ドキリとさせられる写真や、優しい気持ちになれるイラストなどを含んだ本を、軽妙に語ったエッセイ。(『太りすぎの雲』改題作品)
  • 女が別れを告げるとき
    -
    別れをめぐる女と男のナイン・ストーリーズ! 苦い別れ、洒落た別れ……。別れへと傾斜してゆく女の微妙な心の揺れを描く9つの物語ーー他の女と寝ることだけが、裏切りだと思っているの? 無神経に吐いた男の言葉に卑しさをみた瞬間(とき)、女の心に侮蔑の感情が走った瞬間(とき)、女は別れを決意した……。苦い別れ、洒落た別れ……。男たちの知らぬうちに別れへと傾斜してゆく女の微妙な心の揺れを、ロンド形式で描く、別れの「ナイン・ストーリーズ」。
  • おブスの言い訳
    3.0
    「だって忙しくて」「でもゆとりがないの」……。なに言ってるの? 言い訳の数だけブスになる! それなのに、身にも心にもダレが生まれ、見た目の個人差が激しくなるのが「おブス期」。ここが、大人の女性が迷い込む、人生の分かれ道! メディアで活躍中のファッション・エキスパートが贈る、「オバ」にならないための愛のムチ。美と幸せを呼び込む意識のツボ、教えます! あなたの未来は「姫」?「おば」?
  • 舞台
    3.8
    29歳の葉太はある目的のためにニューヨークを訪れる。初めての一人旅、初めての海外に、ガイドブックを暗記して臨んだ葉太だったが、滞在初日で盗難に遭い、無一文に。虚栄心と羞恥心に縛られた葉太は、助けを求めることすらできないまま、マンハッタンを彷徨う羽目に……。決死の街歩きを経て、葉太が目にした衝撃的な光景とは――。 太宰治『人間失格』を愛する29歳の葉太。初めての海外、ガイドブックを丸暗記してニューヨーク旅行に臨むが、初日の盗難で無一文になる。間抜けと哀れまれることに耐えられずあくまでも平然と振る舞おうとしたことで、旅は一日4ドルの極限生活に--。命がけで「自分」を獲得してゆく青年の格闘が胸を打つ傑作長編!
  • 揺れる女
    -
    深夜、私の部屋の電話が鳴った。「あたし、由香利です。死のうと思ってるの」……電話の主は、青江由香利・18歳。女流作家の私を慕ってくる、六本木のフーテンのひとりであった。その翌朝、由香利は、私の8年来の情人である国井と、心中しているのを発見された。私は愕然とした。なぜ、あのふたりが? 苦悩と懐疑が私を駆り立てた。由香利には、国井を《死》に誘うほどの魅力があったのだろうか。そして、私はついに、由香利の肉体の秘密を知った……。傷ついた心と肉体をもち、荒涼たる現代の夜をさすらう少女を描く「揺れる女」など、全7編。
  • 背徳の夏
    -
    夫を寝取られた妻の惨めさを、智子は、光子によって味わされた。その光子は、智子の親友だった。ダンスホールで知り合った住田という男と、官能をくすぐり合うゲームのような逢引きを繰返しているうちに、智子の心の中に、光子への殺意が高まっていった。その殺意は、夫への愛の証しでもあったのだが、やっかいなことに、光子を消す計画に、殺し屋の役を引き受けたのは、住田であった。……愛とセックスのメカニズムを、心理的なスリラー・ドラマのかたちで描き出し、孤独な現代人の荒涼たる心の風景をのぞきこんだ、ユニークな長篇小説である。
  • 七色の女
    -
    映画館で佳子と知り合った小原は、2度目の逢引の時、早くも彼女を籠絡することに成功した。佳子は、人妻だった。夫の須藤は、理髪店を経営しているという。ある時、彼は、須藤の店に散髪に行った。佳子から夫はこわい人だと聞かされていた彼は、須藤が自分と佳子の関係を知っているのではないか、と不安を抱いた。数日後、小原の所に、男の声で電話がかかった。その声は、小原と佳子が利用したホテル名を告げ、そこで小原に会いたいという。須藤か? 彼は怯えながらそのホテルに向かった……。という表題作、「マイガール」「ヌードモデル」「女狐」「春の夢」「疑惑の発生」など、全11篇を収録。
  • 金曜日の誘惑
    -
    ユダヤ人の老貿易商であるミスター・ウィリアムから、世にも不思議な「悪魔の印鑑」を預かった公認会計士の本田俊一郎は、この10年、妻以外の女性とは交渉を持ったことのない生真面目な男であった。しかし、女性の体に押しつけると巨大な悪魔のセックスと化す象牙製の印鑑を手にしてから、本田の夜の生活は一変した。外人相手のコール・ガールを手始めに、喪服の似合う未亡人、美貌のダンス教師、女優の卵、沖縄海洋博外国館の女、と実験を重ねていくうちに、すっかりその魔力の虜となってしまったのだ。ついには、姪の奈奈子や妻の紀美子までをも渦中に巻込んでの女遍歴の果てに……。
  • FUZZYコンピュ-タの発想
    -
    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 ファジィ〈あいまい〉という画期的な発想。人間らしいコンピュータが出現した! ーー日常生活は、「だいたい……」「多少……」と《あいまいさ=ファジィ》に満ちている。人間の頭脳は、あいまいに判断し、認識し、推論する。この人間本来の思考法をコンピュータに取り入れて、機械やシステムを制御し、より安全な飛行機や、より快適な生活をもたらそうというのが、画期的発想のファジィだ。
  • 旅人たち
    -
    人生は旅、そして出逢い……。一目惚れの天才というお登紀さん、女ざかりの「人生図鑑」ーー歌うことも生きることも、人を恋うる心に始まり、人に逢えた嬉しさにつきます。一目惚れの天才という「お登紀さん」の、多彩な人々との素晴らしき出逢い……。歌手、妻、母、なにより天性のエコロジストが描く、有名無名38人の横顔。それは、したたかなヒーローたちへの「愛の讃歌」。
  • 夜のパスポート
    -
    婚約者に裏切られ、国際見本市アフリカ隊の一行に加わってモロッコにやって来た、羽仁生節子。眠れぬ夜、睡眠薬を飲んで床に着こうとしていた節子を、隊員のひとり、一の瀬が訪れた。翌朝、同じベッドに横たわる男の醜悪な体を発見して、節子は絶望する。スキャンダルは広がった。砂漠の古都・フェズで節子に求愛した若い大使館員・北沢も、噂を知ると冷たくなった。傷ついた節子の行手に待つものは……。異国の空の下、孤独な男女に忍びよる危険と誘惑、行きずりの愛、歪んだセックスを描いて、現代人の心の傷をユニークなタッチで抉る異色作。
  • 突っかけ侍(上)
    -
    肥前唐津藩の元御馬廻役・松村金太郎は、今では突っかけ草履の小粋な兄さん、人呼んで「わざくれ橋の金さん」だ。武士稼業はすっぱりやめてはいるけれど、実は、主君・小笠原長行の内命を受けて、ひそかに藩のため働いている……。ある春宵、将監橋の上、唐津藩の内紛で長行の反対派にまわり、藩侯の里方・信州松本藩と手を結んで、藩論を朝廷方に傾けようと企む奸人で、義兄の仇でもある周施方・長谷川番作をバッサリ。ーー粋でいなせな金さんが、同じ脱藩・小南敬助らと協力、小笠原長行を扶けて東奔西走の活躍。剣雲、侠気、哀恋が織りなす、子母澤寛会心の幕末傑作長編! <全3巻>
  • 人気企業50社の就職データブック
    -
    マル秘・就職情報が満載です! ーー学生に人気が集まるトップ企業50社を厳選し、就職に役立つホントの情報を公開する。表面からは窺いしれない採用の実際、勤務内容、福利厚生、社風などを撤退取材し、採用の傾向と対策をガイドする。これらの明確なデータが、あなたの人生を決める選択に、大いに活用されることを願ってやみません。
  • 深い失速
    -
    《私》は、大学病院の若い精神科医。患者の丹野明夫は、人妻殺しを《私》に告白し、フミコという名に激しい心理的な反応をみせた。が、被害者であるはずの大和田緋那子は、健在なのだ。彼女は、美貌のパイロット夫人だった……。《私》は、患者の告白の謎を追わねばならない。丹野の恩師・宮川教授を訪れると、教授はフミコの名に動揺をみせた。《何かがある?》……。一方、緋那子の夫・大和田は、失速・墜落の幻想に悩みつづけているという。冷えた夫婦の陰影が漂っていた。 やがて、丹野の水死、ジェット機の炎上と事件は続発する。《私》の前にも白い靄がかかった……。
  • 仮装行列
    -
    旧華族との交渉を懸念する父のすすめで、滝沢一郎と婚約した田所真木子。真木子の義父・憲介は、東洋美術館長で、重要文化財審議会の委員をしている。旧華族の東照寺公一は、徳之内元伯爵家の相続人・摂子とブルー・セックスに耽っているが、真木子の婚約を知ると、掌中の珠を失う思いに悩む。二人の結婚に執念を燃やすのは、元伯爵夫人・徳之内津留で、一郎の父・滝沢代議士は、大名華族の元家令である。この政略結婚のかげには、徳之内家所蔵の国宝絵巻屏風をめぐる、母娘の醜い争いが隠されていた……。真木子をめぐる、仮装行列さながらの上流社会の虚偽と性の腐爛を描いた大作。
  • 男のウンチク学
    3.0
    1~3巻660円 (税込)
    酒場の話題はこの1冊でドンピシャリ! 焼酎のお湯割りで、馬刺などを賞味しながらご一緒に楽しくいきましょう。まあ一杯! ーー食べもの飲みものについての、コダワリ雑学百科。ウドンの正しい食べ方について、コジュケイの燻製の楽しみ方について、ツグミやウサギを使ったシオカラの手軽な味わい方について、その他、ワインやバーボンのこまごました知識など、知らなくともドートイウコトモナイが、知っていれば人生が面白くなるかもしれない、たぶんヒマな君に贈る情報源!
  • 女神出奔
    -
    あまり人のいかないハイキング・コースの途中で病気になった楠田は、一軒の草深い古別荘に犬と住む由緒ありげな女に、一夜介抱された。その妖しい魅力にひかれ再び訪ねた楠田と、女は「お茶でものむように」交わる。一方、楠田の恋人・順子は、片貝助教授を知り、その家柄や名声に酔わされる。片貝を取り巻く女性は多い。彼は、財界に名の通った湯浅社長の娘・治子を選び、結婚式を挙げるが、新婚初夜を待たずに、治子は伊豆の別荘から恋人・昭夫と脱走する。そのとき、片貝がそこで幽霊のように見たのは、教え子の楠田に付添われて立つ古別荘の女であった。俗物への諷刺をこめて、愛と真実を追求する長編小説。
  • 女ひとり
    -
    夫の帰還を待ちわびながら、女代議士としてヒロポン絶滅を叫び、社会悪と闘う香川文江の姿を通し、人生の哀歓を訴える傑作。
  • 鯨のなんでも博物誌
    -
    今、ふり返ってみる日本人と鯨の文化誌。伝説、生態、捕鯨史まで、鯨、鯨、鯨づくしの、なんでも読本ーー鯨飲、鯨音、鯨尺、鯨幕、鯨波、鯨帯……。昔から、日本人の生活のそこここに顔を出し、潮を吹きあげていた鯨たち。捕鯨論議の高まる最近では、ニュースの話題となることが多い。様変わりしつつある鯨文化を振り返り、言い伝え、伝説から、捕鯨史、生態、グルメまでをまとめた、世界と日本人と鯨のなんでも読本! 日本人と鯨たちのなが~いつきあい。
  • わが家の日米文化合戦 アメリカ人妻VS.日本人亭主
    -
    アメリカ人妻と著者の日米文化摩擦の日々! 異文化に育ったアメリカ人妻との文化摩擦は、文化創造へと進化する。「内なるアメリカ」をかたくなに維持する妻に腹を立てた大学の先生は、「日本人」にこだわり徹することに決めた……。一つの屋根の下で繰り広げられる珍騒動を、ユーモラスに描きながら、文化摩擦の構造を鋭くえぐる、野心的な比較文化論。
  • ほろ酔い行進曲
    -
    引き上げが、安保が、歌や恋があった…素晴らしい放浪人生を全公開! ーー新しい何かが始まると、何かを終らせる。私はどうしても旅人のように生きてしまう……。演劇が、安保があった。歌があった。恋が、獄中結婚が、離婚の危機もあった。しかしいつも、胸焦がす遥かな「ハルビン」があった……。加藤登紀子のルーツと、素晴しき放浪人生を全公開する「MY・STORY」、聞いて下さい! ※本作は、単行本版「ほろ酔い行進曲」 <恋愛編> <結婚編><放浪編>の「ほろ酔い三部作」を大幅に編集したものです。
  • ぜったい多数
    -
    暁子は、手術直後の苦痛に歪む秋山の唇に、しずかに自分の唇を重ねた。秋山の胃ガンが絶望的な状態になっていることを知った彼女は、そうすることだけが、友だちとしての祈りであり、励ましであると信じたからだ。彼女自身も、郷里の家の束縛を逃れた東京での彷徨によって、心に深い傷を負っていたのだが……。暁子の冒険にみちた経験をカメラ・アイとして青麦のように、あざやかな色とむんむんする匂いを持つ、折れやすい若者たちの愛と真実を捉えたこの作品は、人生の地層を流れる清冽なものを、多彩な手法で探った、青春文学の名篇である。
  • じーさん武勇伝
    3.4
    怒りの鉄拳が炸裂する! 拳ひとつでドデカい夢を! 勇気と希望の冒険コメディーーー「男の価値ってのはなぁ、どれだけ無茶苦茶やって生きていくかだ」……ケンカの連勝記録を今も続ける畳職人のじーさん。今度は孫の担任だった40歳下の女性と再婚、一緒に南の島で宝探しを始めた。だが海で遭難してしまい、国中を巻き込んだ大騒動に! たくましく生き抜く家族を明るく描く、最高の冒険コメディー。
  • 不貞な貞女
    -
    加奈子が地方の素封家に縁づいて、もう5年。夫・浩介は、長い病床にふせったままだ。看病に明け暮れる加奈子も、いつか貞女の幻を心にえがいていた。が、そんな妻に、夫は画廊勤めを勧める。《きみのからだの外のにおいが、僕には爽かな刺激になる……》ーー勤めに出た加奈子は、青年建築家・植木との恋におちた。女心の飢えをみたす、背徳の愛に、加奈子はおののく。が、夫はすべてを知っていたのだ。やがて、臨終の枕もとに妻をよんで、心の葛藤を告げる浩介。美貌の妻に、くらい喪の季節が訪れた……。という表題作など、全10編。
  • 忍ぶ糸
    -
    伊賀・上野は、鈴鹿山脈の麓にある城下町で、組紐の町でもある。千賀は、ここの忍町で生れた、人もうらやむ美しい娘だった。紅い椿の咲く頃、千賀は、組紐屋のしにせ「増住」に織子として雇われたが、そこで増住の一人息子・洋三を知った。これがヒロイン・千賀の愛の始まりであった。やがて、千賀と洋三は、将来をひそかに約束しあうが、家柄が違うことを理由に、洋三の父・大二郎は、下請けの「藤浪」の息子・良作との縁談をすすめた。愛する人との仲を裂かれて、千賀が良作の許に嫁いだ日、花嫁姿の彼女を見た近所の人々は、花が咲いたようだとささやき合った。千賀の悲しい一生の始まりだった。
  • 忍ぶ橋
    -
    母の残した背徳の傷痕ゆえに、愛をも捨て、憎悪と怨念の石礫を浴びて、贖罪にのみ生きねばならぬ、哀しくも美しい女のさだめ――中桐晶子は、淡路島へ向う船に、傷心をゆだねていた。若い男と蒸発し、淡路島の小料理屋で働いていたらしい母の宮子が、ゆきずりの客を情交後に腰紐で絞殺、睡眠薬自殺を遂げた。客は、奈良の一刀彫り美術商・宗方春之と判り、ゆきずりの無理心中とみられた。宗方春之の妻・志津は激怒した。詫びる晶子に、ちぎった数珠を投げつけ、母親・宮子の罪をつぐなえと叫んだ。そして、晶子は、母の贖罪のために、宗方家の長男・知之の嫁として、志津の前にさらされることになった……。女の憎悪と怨念の石礫を浴びせる志津、女の愛も捨て贖罪にのみ生きる晶子の、哀しくも美しい日々を描く。
  • 新選組始末記
    5.0
    著者長年の実地調査を基に、幕末の風雲狂乱の渦中にあって誠心一徹の生涯を貫いた男たち。近藤勇、土方歳三、沖田総司らの人間像を描破、新選組の全容を史実の壁に彫り刻んだ子母澤寛の代表作ーー幕末、江戸幕府の浪人対策の一つとして結成された浪士組は、本拠を京都・壬生に置いて、禁門警護の任につき、市中見廻りの役に当たった。勤皇か佐幕か、開国か攘夷か、国論はまっ二つに割れ、世はまさに日本国あげての動乱の時代であった。この時期、幕府への至誠一徹、暗殺剣の名をほしいままにし、尊攘志士をふるえあがらせた「新選組」の隊士たちは、その青春をいかに生き、その命と魂をいかに燃焼させたのか……。著者みずから長期にわたって新選組所縁の地を訪ね、あるいは古老の談を聴取して得た記録を基に、新選組結成から最後までの真のすがたを史実の壁に彫り刻んだ会心の力作。
  • 情報銘柄
    -
    正確な株式銘柄情報に、自分の誇りを感じている佐川にとって、最近は、憂鬱の連続であった。勤め先である<週刊東京情報>に書いている彼の推奨銘柄が、外れ続けているのだ。失意の佐川は、しかしある日、耳寄りな情報を得た。河松製作所に中共から、大量のブルドーザーの発注があったという。佐川はこの情報に、情報屋としての誇りの全てを賭けた。推奨原稿を書く一方、借金して河松を20万株買い込んだのである。……兜町に生きる男の栄光と悲哀を描く標題作のほか、苛烈なビジネス戦争の実態を生々しく描く異色企業小説3篇を収録。
  • 女優
    -
    この女! きらい! パパをいじめて、きらい……。死の床に横たわった父の身体の下に隠された、美しい女の写真は、幼ない未来子に、生まれて初めて人を憎む気持を教えた。あれから、何年の歳月が、流れたことだろうか。あの女、演劇界の女王といわれる鳳しのぶの一人娘として、映画界入りした未来子は、たちまちスターの座についたのだった……。華やかな日々、肉体を通りすぎた何人もの男たち……。いつしか母と似た道を歩むようになった未来子の心は、だが、いつもひえびえと孤独だった。硝子細工のような繊細華麗な女体に、妖しく燃える炎を秘める、ひとりの女優の愛と性を描く。
  • 砂糖菓子が壊れるとき
    -
    映画スター・千坂京子は、無名だった頃、お金のためにヌードを撮らせたことがあった。教育のない彼女は、人一倍知的なものに憧れたのに、世間はその1枚のヌード写真のために、彼女に肉体女優の烙印を押した。京子は、あるときは烙印の痛みから逃がれるために、あるときは自分が高められると信じて、つぎつぎに、男の胸の中に顔をうずめた。男たちは、それぞれに、彼女の中に光を放っている純粋さを知っていた。しかし、京子の魂は、どの男によっても、安らぐことができなかった。……幸福を空しく追い求める美貌の女の短い生涯を、乾いた叙情で歌いあげた名作!
  • 火山列島
    -
    大学の医学部教授・仁王慶一郎は、主治医として、国光家に行くことが多かった。彼は、国光夫人・安芸子の、憂いに耐えた姿に、惹かれることがあった。ある日、仁王は、その秘密に、かかわりを持つ。主治医としての立場に、とどまることができなかった彼が、その秘密の糸をたどって行くうちに、戦争の前後に起こった、幾つかの悲しいできごとが甦ってきた。しかも、それらは、彼自身の家庭とも、関係があった。八丈島、熱海、九州・飫肥という3つの火山地帯を結ぶ、愛と憎しみの歴史を描きながら、現代に失われた心の問題を、執拗にさぐった、清冽な美しいロマン!
  • 河内山宗俊
    -
    練塀小路の河内山宗俊、天下の直参、お数寄屋勤めのお坊主である。ばくちは打つ、ゆすりはする、悪い野郎の肩は持つ、病気と届けて城へも登らず、肝っ玉の太さは天下一品。11代将軍・家斉の治世、賄賂が物言い、奸臣のさばる腐った巷で、悪には悪を、弱い者には情けをと、直参の威光を利用して、胸がすくようなやりたい放題。子母沢寛の名調子が心地よい、痛快時代小説。
  • キャンパス110番
    -
    芳土女子大学の学生である佐藤ノミエの綽名は、キャンパス110番という。キャンパスは、校庭の意味。事ある所には、彼女がいつもパトロール・カーのように現れて、あざやかに事件を解決していくからだ。粋で、おしゃれで、冒険好き、行きずりの男の子とのキッスなんかへいちゃらで、適当に正義派で人情家で、気はやさしくて合気道の達人というノミエが、東北出の重タンクを思わせる松子と組んで、手当たり次第に演じるボーイ・ハントのアバンチュール、笑いと涙のタッグ・マッチとは……。青春の息吹にむせる、生きのいい現代娘のスカっと胸のすくような無責任行状記。
  • 損料屋見鬼控え 1
    3.7
    文政元年(1818年)、損料屋(江戸時代のレンタルショップ)巴屋の惣領息子・又十郎は17歳になってからも親から丁稚扱いをされていた。損料屋といえばいちばんの得意先は長屋。長屋から長屋への引っ越しなどではわざわざ家財道具は購入せずレンタルで済ますことが、上方ほどではないにせよ江戸でもそれなりにあった。最初の事件は巴屋の店の入っている長屋だった。大家にヘンな物音がする部屋があるので見てほしいと頼まれてついていくと、部屋の隅に見事な幽霊の姿。もともと霊感らしきものが強いとは自覚していたが、あまりに鮮明なそのお姿に又十郎は腰を抜かしてしまう。これが「事故物件」のなせる業なのか!
  • 夜獣
    -
    ふと魅かれた女のせいで殺人事件に巻き込まれたゴルフ練習場の食堂のボーイ、彼を容疑者として追う警察、新聞記者が、それぞれ事件を追う! 天下の名宝である30カラットのダイヤを巡る連続殺人と、深まる謎。本格ミステリー。
  • 魔婦の足跡
    -
    贋札造り、偽装化石師、偽真珠造りという3人の前に、突然姿を現し、そして消える可愛い魔婦。秘密の島に逃れる3人に、死の影が迫る! ゴジラ原作者による傑作サスペンス。
  • 毒薬と宰相
    -
    青年宰相の名で知られ、戦後、謎の自殺を遂げ悲劇の主人公となった、ある公爵の死因の秘密を描く、ミステリー・タッチの表題作など、全9編の傑作短編集。
  • 中年女
    -
    小ぎれいで素人くさく、何となく御しやすい感じを男に与えるトキは、39歳の未亡人である。村の男たちは、トキの女を意識して蝟集する。彼女の噂は消えることがないが、噂の実体を掴んだものはいない。村人は、未亡人という名に拘束を与えることに、満足があるようだった。しかし、トキは、女であることを十二分に生かして生き泳いでゆく。愛欲のむなしい絆を描いた、巨匠の珠玉長編小説。
  • 染められた感情
    -
    熱海の温泉旅館に勤める聖子を自活させようとする勝又の愛と、勝又にすがる聖子の愛。相克を繰り返す愛、巨匠円熟の筆。傑作恋愛小説。
  • 樹影
    -
    布施学園理事長の布施英之は、布施家へ養子に入る前、実家の女中・雪子に子供を生ませる。英男である。英男は、別府の愛育園で育つ。20年目に再会した時、雪子と英男は浦和にいたが、雪子が前夫と関係を続けているのを知り、英男は家出して別府に戻る。折も折、英之の妻はガンで死亡。反対派の策謀により学園を追われた英之は、布施家を去る決意をして、英男を別府に訪ねる……。豪壮な邸宅に住む裕福な人々も、逆境に耐えていきる貧しい人々も、みな三尺の影をひきずって生きている。その孤独な影を、哀調豊かに描いた話題の長編小説。
  • 情熱の市
    -
    清純で穢れを知らぬ娘・マリ子は、母の友人の一人息子で、現在は家を飛び出して麻薬密売業者の手先になっている青年・多賀一郎に会って、深い愛着を覚え、彼に自首をすすめて、更生の道へ導こうとするが、ふとした行き違いから、麻薬をもっていたマリ子だけが疑われて、留置されてしまい、一郎は逆に、密売業者の手で大阪へつれさられる。警察を出たマリ子は、家に戻らず、ストリッパーになってまで一郎を救おうとするが、麻薬業者たちの泥沼は、いよいよ深く一郎を引きこんでいく....…。清純な愛で愛する男を救わんとする乙女を襲う、激しい運命の起伏を描く、炎のロマン。
  • 女拓物語
    -
    堂堀不動産の独身社長・堂堀進六は、男盛りの36歳。生まれは群馬県の貧農の六男坊だが、中学卒後、すぐ上京。兜町の証券会社の小僧をふりだしに、たちまち株で2億円のボロ儲けをして独立した。金には強いが滅法女にヨワイ進六は、自ら「風俗研究科」と称して、女の拓本蒐集を男子一生の悲願とする。東名高速をぶっとばす車の中でのホステスとのカーセックス、全共斗女子大生との同志的「結合」、さては、ガラスの床に座って用をたす女を見上げる猟奇的女研究など……。一盗二卑に徹することを色道修行の信条として、進六は今日も変った女めざして夜の街に出陣する……。
  • 朱乙家の人々
    -
    夫の面前で何人もの男を転々とする妻、それでも平然と微笑する夫、そんな異常な環境の中で幸福をつかむ妹……。異色の愛欲文学。
  • 黒の魅惑
    -
    裕福な家庭の子女が多く通う、一貫校の名門大学の中にあって、田辺信男は、大学から入った上京組だった。大原陽子は、学内でも有名な才色兼備の人だが、彼女が付き合い始めた有坂淳は、どこか陰のあるプレーボーイでよくない噂がある。ある日、陽子の落としたイアリングを信男が拾ったところから、3人の愛が絡みはじめる……。日本が高度成長期に入る時代の、ハイソサエティーな学生生活を活写した傑作。
  • 午後の微笑
    -
    神保羊子は、雑誌の編集の仕事をしている。取材で知り合った作曲家・郷雪生の、芸術家ぶらないナイーヴであたたかな人柄に魅かれ、病気で寝込んだ郷を放っておけずに、徹夜で看病する。その夜以来、郷の胸のなかにも、羊子の姿が強く灼きついて、お互いに愛しあうようになる。そして、結婚の約束をしたふたりの前に、郷が貧乏な留学生であった昔の恋人の密石麗華が、今は実業家の国分夫人となって出現する……。虚偽を許さない若い娘の心に写った「傷ついた世代」の苦悩を通じて、つねに裏切り合いながら救いを求めている、人間の魂の深部とさまざまな愛の想いを、鮮やかに、綿密画のように描きあげた長編小説。
  • 侠骨一代
    -
    関東大震災の翌々年に入隊した、飛田二等兵。2日目にはもう、二年兵たちを相手に大立ち回りをやらかした。除隊後は、宿無しとなったところから這い上がり、あらくれ者を束ね、労働者として教育し、やがて、国家事業を請け負うようになる。昭和のフィクサーで、任侠映画「唐獅子牡丹」シリーズのモデルとなった人物、飛田勝造(東山)の波乱万丈の半生を描く! 高倉健主演の同題映画の原作小説。
  • 乾いた湖
    -
    大学生の卓也は左翼運動崩れ、女子大生を相手に怪しげな闇斡旋をしている。一方、財閥の御曹司・道彦は、怠惰な生活を送っている。汚職の責任を取らされる自殺した父を持つ葉子は、世の中を見返すために、女優として成功するも、道彦が運転する自動車で事故死してしまう……。卓也が相手をする女たち、ゲイ・バーのジャニー、クラブのマダム・文枝など、多彩な人物が登場する、長篇風俗小説。
  • 海の蝶
    -
    柿本精器の社長夫人・羊子は生来、その美貌に加え、奔放な性格の女性だった。結婚前からすでに男関係があり、結婚後もやまなかった。夫の礼介はこれを知ると激怒し、以来、妻に復讐するかのように隠れて放蕩する。そして、10余年が過ぎた。だが、羊子の乱行はやまなかった。息子の章は、自然にうとんじられた。章にとって心の結びつきは、家庭教師である22歳の青年だけになる。青年と秘かに愛し合っていた女中の喜久乃が、主人の欲望によって犯され、動顛し泣き喚く姿を、少年の章は不安そうに眺めていた……。愛欲の中に潜む人間の業を捉えた、力作長編。
  • 炎の氷河
    -
    高校の仲良し3人の女性がたどる、それぞれの波乱の人生と恋と、そして株をめぐる復讐の物語。なにか重苦しい情念に突き動かされる!
  • 悪の公式
    -
    赤石定造は、香港で人を買った。定価1円。彼はその男に500ポンドの保険をかけ、阿片を吸わせ女を抱かせることによって彼の精力を涸らし、1週間めに殺すことに成功した。保険金で定造は教会を建て、カトリック信者を装いながら、教会を阿片と売春の巣窟に作りあげた。こうして手始めの「銭」を掴んだ定造は、貿易商社を設立して帰朝し、KK赤石を造りあげ、悪の公式、つまり殺人・脱税・不正輸出などなどによって、あくなき「銭」への欲望を果していく。しかし「悪の公式」は、やはり万能の公式ではない……。「銭」を得るために手段を選ばぬ資本主義の公式を鋭くあばく、長編悪漢小説。
  • 愛と悲しみの時
    -
    期待とおそれに充ちた新婚の宿で、千江子は夫の庄一郎から、彼が戦傷のため男性の機能を喪失していることを打ちあけられた。しかし千江子は、肉体の結びつきよりも精神の交流にこそ真の愛があると信じ、結婚生活をつづけることを誓う。だが、庄一郎の肉体の欠陥は、精神の歪みをも招いていて、夫のいわれのない嫉妬に彼女は苦しめられる。そして、みたされない不自然な夫婦生活の渇きから、千江子は、彼女に言い寄る夫の下僚のプレイボーイ・石川に次第にひかれてゆく……。結婚生活における肉体の占める意味を抉り、奔放な現代愛欲図を描いた長編小説。
  • ファッション・モデル
    -
    戦後10年、夏のモードに選ばれ、ドレスに身をまとい、ステージを歩く美女たち……。新時代の職業=ファッション・モデルを中心に、現代社会風俗を著者独特の犀利な筆で描いた興味深い力作。
  • 薔薇はよみがえる
    5.0
    孤独なオフィス・ガールの懐に、ふと飛び込んできた1通の手紙が巻き起こす、若い男女の運命を描く。藤澤氏特有の青春文学。
  • 妖蝶記
    -
    はるかゴビ砂漠の発掘現場から、ひとりの男が古生物学者・曾根の館を訪れた。男はいわくありげに巨大で薄汚れた1匹の瀕死の蝶を差し出すが、曾根はすぐに打ち捨ててしまう。しかし蝶は、館の温室に隠れ棲み、やがて美しい少女に姿を変えて、曾根の前に姿を現した。化身の妖しい魅力の虜となった曾根だが、少女の目的はただ一つだった……。映画「ゴジラ」の原作者として知られる小説家が、異形と異能のものたちの蠱惑的な姿を流麗な筆致で描く、4編の幻想譚集。
  • 密航
    -
    川口と有賀は、予科練上りの米軍通訳という経歴も同じだったし、年齢・性格も似かよっていた。粗暴な米軍人に対する共通した反感が惹き起したある事件を契機に芽生えた友情は、お互いの体内に欝積していく若さと可能性の残滓を確認しあうことで、さらに強固なものとなっていった。二人の若者にとって、未知の可能性はアメリカにしかないもののようであった。綿密な計画がたてられ豪華船に忍び込んだ二人は、満月のハワイ沖で、デッキから相次いで海中に身を躍らせた……。既成社会のモラルの中で、なお若者のエネルギーの純粋性を主張する、著者の野心作5篇を収録。
  • 瓢庵先生捕物帖
    -
    町医者を営む瓢庵先生が大活躍! 人情あり、喧嘩あり、殺しありの時代小説。横溝正史が生んだ人形佐七も登場し、本格探偵小説としての読み応えも充分!
  • 地球喪失
    -
    生物化学研究所の若き学究・宮原は、街の暗がりで焦っていた。手に持つスーツケースには、たとえようもない邪悪なものの幼生が収まっていたから。追っ手をかわし、早くこれを処分しなければ、人類に明日という日はなくなる。しかし、それはあまりに巨大な力へのはかない抵抗にすぎなかった……。映画「ゴジラ」の原案を担い、怪獣という存在を生み落とした怪奇小説家が、遊星から来た圧倒的な恐怖にあらがう人々を、ミステリータッチで描き出す。
  • 太陽がみつめる
    4.0
    運は気まぐれなものである。8回表、中屋投手の乱れから、海城高校の1点のリードが危うくなったとき、早崎監督の頭に閃いたのは、度胸のいい刀根英一郎一塁手をリリーフに使うことだった。作戦は当たった。以来、刀根は大型の速球投手として腕をあげ、別所投手の再来とまで注目されるようになった。尊敬するプロの尾上捕手とも口をきく機会をえたが、これは高校野球にあるまじき卑劣な陥穽からだった。プロのスカウトが美辞をつらねて寄ってくる。巧妙なスカウト、刀根家の困惑……。英一郎の心の窓は、いつか同級生の清子に開かれていた……。文壇随一の野球通たる著者の力作。
  • 泉はかれず
    5.0
    一代で堀江酒造株式会社を築き、大阪の財界でも女傑でとおっている堀江ギンは、孫娘の晴子に早くも結婚の相手をみつけるのに、夢中だった。当の晴子は、まだ学生だから、将来の夢と考えている。しかし、堀江家は、代々、女が家を継いで発展してきたから、晴子にもいい養子を、というギンの持論で、ともかく、晴子は見合いをした。相手は、汽船会社の重役のぼんぼん。奇妙なことに、その青年よりも、ちょっと変わっていて口の悪い脇村のほうが、晴子には好ましく印象づけられた。そして、だましうちの見合いよりも、晴子に瓜二つの美しい弓子の登場が、彼女の心を強くゆさぶった……。
  • 女人の館
    -
    禁男の館に集った世代の違う女性たちが、封建社会に抗して奔放に生き、様々の人生劇を展開する、現代恋愛白書。読売新聞に連載され、三國連太郎・北原三枝で映画化もされた傑作長編。
  • 禁猟区(上)
    -
    情痴と愛欲の渦の中に、絢爛と咲き誇るあだ花にも似た女性の姿を、心憎いばかりに描破した、巨匠快心の力作長編――美貌で男を狂わせる女・虹子は一代で成り上がった醜い顔形の実業家・百武達郎の世話になりながら、菓子会社の宣伝マン・薬王寺温と交際、温の二度目の妻を追い出して,憧れの結婚にまで持ち込み、子まで成すが、まったく妻としてのことができず、薬王寺家では浮いた存在になる。浮き上がった虹子は、旧知の小村雪が経営する銀座の「クラブ雪」で働き出し……。普通の価値観で生きることができない魔性の女と、その周辺で悪戦苦闘する男たちを描く。<上下巻>
  • 還らぬ海
    -
    下田・葉山間のヨットレースで3隻のヨットが遭難し、一瞬のうちに、津田は弟と古い友人の秋吉を失った。彼は、1年前、秋吉の妻・昌子と背徳の関係にあった。複雑な感情を胸に秘めて遺体を捜索する津田と昌子……。そして、一周忌を過ぎた大潮の夜、海で死んだ人々の姿が現われるという白浜の漁村の伝説をたよりに、秋吉の母親と津田と昌子は邂逅する。しかし、微妙な愛憎の襞も、喪われたものを悼む感傷も、灰色の海は呑みこんでいく。――男性的叙情の世界を描いて他に比類ない、石原文学の傑作「還らぬ海」のほかに、「貧しい海」「獅子の倒れた夜」「白い小さな焔」「灰波」を収録。
  • 海の地図
    -
    晶子は、啓介と、若く物憂い逸楽の夏を、海浜で過していた。ある夕方、残照の中を、喪の半旗を掲げたヨットが、入江に入った。渚へおりた晶子は、初老の船長・外村に出会い、なぜか全身に戦慄を感じた。やがて晶子は、父と外村が、今は亡き母をそれぞれ愛し、叔母もまた外村を愛していた、という隠された過去を知る。ある日、ヨットで沖へ出た啓介と晶子は、突然の嵐で遭難し、偶然、外村のヨットに救われる。外村は、かつて愛した女の遺児との邂逅に運命の手を感じ、晶子もますます、外村に魅かれていった。二人はかたく唇を交すのだが・・・・・・。長編ロマン小説。
  • 黄金の椅子
    4.0
    百万の富を持つ孤独な老実業家をめぐる3人の妖精たち。則子、笛子、花枝のいずれに、黄金の椅子は待っているのか? 流行大衆作家の傑作長編。
  • 汚れた夜
    -
    雨の井ノ頭公園の池に車が落ち、その中で女が死んでいた。残された男もののライターから、婚約者の秋月という男が浮かびあがったが、彼にはアリバイがあった。罠のにおいがした。そのにおいを頼りに、ひとりの刑事が動き始めた。すると、秋月のシロを証明した女が殺され、つづいてその女の部屋で、もうひとり中年の男の屍体が発見された。行方をくらました秋月は、いったい被害者なのか、加害者なのか? ……手さぐりで事件の核心に迫ろうとする刑事の行動の軌跡によって、戦争の傷痕と政治の腐臭とを、生き生きと描き出した、本格的な社会推理小説である。
  • 雲の白い日に
    -
    静岡・清水港が見える斜面に腰を下ろし景色を眺めている、3人の女子高生。といっても卒業式は昨日終わっていて、一人はお見合い結婚が決まっていた……。彼女たちの恋愛と成長を描いた表題作と、「永遠の横顔」を収録。
  • やどかりの詩
    -
    人工授精に使用する精子を提供するアルバイトをする神立晋の精子で、性交なしに妊娠する、看護師のレン。自分の産んだ子が神立晋の子と分かった、名門家庭の妻・三鈴。そして、レンを愛するようになる晋の友人で路上でヤドカリを売る佐治、三鈴の夫・加瀬、医師・四宮……。彼ら彼女らが織りなす愛憎のドラマと、それを横目で見ている小説家・信夫倫太郎は……。力作感あふれる長篇小説。
  • おゝい、雲!
    -
    健哉、三和子、十郎の3人の大きな子供たちを抱えてやもめ暮しの西條健吾は、秀れた才能を持つ建築家だが、純粋さの故に世に容れられない。子供たちは、ふとしたことから三島家の美しい2姉妹と知り合い、姉妹の母で未亡人の建築雑誌社社長・房子と父親との恋愛を嗅ぎつける。しかし、房子に横恋慕する評論家・江見は、スポーツランド設計に情熱を燃やす健吾を卑劣に中傷する……。それに対して、両家の子供たちは、その友人たちと協力して陰謀に立ち向い、親たちの婚約を実現させようと活躍する……。恋と夢にあふれたエネルギッシュな若者と理解ある親たちとの、明るいパンチのきいた長篇。
  • 流旅の花
    -
    片山津から京へ出て、バー「きぬがさ」に勤める和江に、じわじわと押し寄せる黒い影……。由緒ある禅寺・燈全寺の老師・碩堂、老師の妾でバーのマダム・歌子、謎の男・竹橋勝弘、彼を追う刑事たち……。疑うことを知らぬ和江の眼にも、次々と腑に落ちない出来事が見えてくる。そして突然、仏像偽造事件や贈賄事件が明るみに出され、雲水の承学に捧げた和江の純愛も、2人の支えとなるはずの天徳院の千手観音像も、虚しいものになってしまう。古都の裏側に繰り展げられる色と欲の澱んだ関係、その渦中に翻弄されながらも強く生きようとする女を、スリラー風に描き上げた力作長篇。
  • 目白三平の秘密
    -
    サラリーマン生活20数年、国鉄本社の厚生局に勤務する一級課員三十六号俸の目白三平。その日常のおかしみと淡い悲哀、ときとして起こる突拍子もない出来事を描く人気シリーズの7作目。妻に買い物を言いつかった洋装店で目撃した中年男の苦境に同情したために、目白三平は都内を走り回る羽目になるが……という表題作はじめ、11編を収録。
  • 目白三平の四季
    -
    昭和30年頃の国鉄に勤めている目白三平は、シマリ家でやり繰り上手の奥さんと素直な2人の男の子と暮らしている。当時の安月給でつつましくも明るく暮らすサラリーマンの生活が、ユーモラスなタッチで描かれている。
  • 命の森
    -
    東都学園大学部Jクラスに新入学した若者たちは、夢と希望にあふれていた。保守党政治家を父とする空手の名人・勝見明、元華族の娘で皇太子妃候補と騒がれたこともある美貌の冴子、日本復帰を叫ぶ沖繩青年・当麻、社長と呼ばれる謎の男・加納、なぜか彼の姿に脅える葉子、ラグビー部の乱暴者・片桐一派……。だが、明るく甘美であるはずの青年たちの、前途は困難である。当麻と冴子は許されぬ恋に苦しみ、勝見と葉子の燃えるような愛も、葉子の暗い秘密のゆえに、苛酷な運命の波に翻弄されていく……。短く華麗に花火のごとく生きて燃え尽きる若い命を、アクションドラマ・タッチで描いた青春長篇。

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