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29歳の葉太はある目的のためにニューヨークを訪れる。初めての一人旅、初めての海外に、ガイドブックを暗記して臨んだ葉太だったが、滞在初日で盗難に遭い、無一文に。虚栄心と羞恥心に縛られた葉太は、助けを求めることすらできないまま、マンハッタンを彷徨う羽目に……。決死の街歩きを経て、葉太が目にした衝撃的な光景とは――。
太宰治『人間失格』を愛する29歳の葉太。初めての海外、ガイドブックを丸暗記してニューヨーク旅行に臨むが、初日の盗難で無一文になる。間抜けと哀れまれることに耐えられずあくまでも平然と振る舞おうとしたことで、旅は一日4ドルの極限生活に--。命がけで「自分」を獲得してゆく青年の格闘が胸を打つ傑作長編!
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Posted by ブクログ
妙に刺さって一気読みしてしまった。
読み始めて共感性羞恥の一種なのか、ヴーーーと唸り声をあげそうになった。若い頃ならそのまま本を閉じていたかもしれない…
でも歳をとると言うのは悪いことではないようで、自分は今はもうその痛さの先に居て昔より格段に生きやすくなったな、なんて素直に喜びながら読んだりしていたのだけど。
半分過ぎたあたりから少し様変わりしてきて真顔になっちゃったよね…
自分らしく生きるって結局なんなんだろ。
理想を演じていれば真実になると信じて知らない間にガチガチに固めちゃってた鎧を少しずつ脱いでいくのは途方もなくて勇気のいる作業だけど、柔らかい部分を剥き出しのままでいられるような素直さに憧れているのなら、少しずつ痛みに顔をしかめながらも剥がしていくしかない。
歳をとると麻痺して痛みに気づきにくくなることだし、甘いだけの世界では生きられないことが嫌でもわかってくる。自分を覆う膜の形が、硬くなくても自分を守れるんだと思えるようになる。
自分のまだ知らない広い世界のどこかに、無防備な箇所に触れられても痛みを感じないくらい自分に優しい世界があるんだって信じて剥がしてみてもいいんじゃない?と思った。
自分の生きている世界は舞台なんかじゃなくて、自分はただの誰にも見られていない物語の主人公なんだと思えたなら、その後の人生は最高な気がする。
心は体のおもちゃ。
その意味を吟味して噛み締めながら、ニーチェを少し齧ったりなんかしてまた少し体と心が歳を重ねたらもう一度読みたいと思う。
Posted by ブクログ
虚栄心と自意識にがんじがらめになった主人公、読んだ途端に、わ、私だーーーーーーーー!と思った。
あまりにも自分の思考と主人公の考えが似ていて、するすると文章が入ってきた。(もちろん私の思考は小説のように鮮明では無い。)
誰からどう見られているか、を常に気にして取り繕って演じて、苦しいけどそういう生き方しか知らなかった、無理していると思われる方が嫌だった。
誰も見ていなくても常に余裕のある自分でいたかった。
私は上京してから自意識過剰な部分が減ったと思う。
だからこんなにも共感出来るはずの主人公を俯瞰して見てしまう自分にすごい寂しさを覚えた。
彼の考え方や感じ方、全くおなじものを私も確かに持っていた。
巻末特別対談に「都会に出ると人目を気にしてしまう」的な話があったが個人的な体感は逆で、都会の方が人目を気にせずにいられる。
都会の人間ぶる気は毛頭ないけど、まばたき一瞬で目の前の景色が変わる都会と常に変動し続ける私の精神性はぴったり嵌っていて、もしもの話だけど、私が道の真ん中で大声で叫ぼうが眠ろうが無関心であり続けるだろう街の冷たさに安心感を覚える。
誰も私のことなんて見ちゃいない、そう割り切っていられるのは私のことを見てくれる場所、私の話を聞いてくれる人、が存在してくれているお陰で都会の本当の意味での孤独を知らない私はやっぱり葉太の気持ちを今はもう(まだ)分からない。
未だに初対面の人と話すときに自分を偽って大きく見せてしまうし、そういうときに亡霊こそ見えないけど、もう1人の自分がこちらを見つめながら「嘘つけ」って言ってきているような気がする、相手に自分の浅さ狡さが見抜かれている気がする。
物語後半部のいっそあちら側に行ってしまいたいという衝動にかられる主人公の姿に胸を打たれた。
自分の中の平均の物差しを捨てて人目を気にせず生きたいという欲望。
演じるということは他者への思いやりという文に救われた。
これからも生きる限り演じ続けていく。
自意識過剰な自分に疲れて全てを脱ぎたくなったとき、また読み返したい。
ニューヨーク行ってみたいなあ。
Posted by ブクログ
人からどう見られるかを気にしすぎてしまう、自意識過剰な葉太の話。
こういう場面ではどう振る舞うのが正解なの?って自意識にがんじがらめになって、苦しんでもがいてる葉太に感情移入しまくって辛かった〜〜。葉太の気持ちが分かるって言ったらびっくりされるかもしれないけど、でも共感してしまったなあ。
ただ街を歩くとかコンビニで買い物をするとか、そんななんてことのない日常生活でも人からどう見られてるかを常に意識してしまって息苦しい日があるし、自意識が邪魔をして本当に自分がしたいことは何なんだろう?って分からなくなる日もある。
でも、それでもいいんだよってこの本が教えてくれたような気がして救われた。誰かの期待に応えたり、社会に何となく蔓延ってるこうあるべきみたいなルールの中で、結局はみんなこの社会っていう舞台で演じながら生きている。それは悪いことじゃない。
葉太、幸せになってほしいな。私も頭ごちゃごちゃになって暗い感情にのみ込まれそうになる時もあるけどそれでも強く生きていこうって思った。
Posted by ブクログ
自意識過剰な青年のニューヨーク旅物語
冒頭、アメリカンブレックファストをお店で食べながらの愚痴で始まる
主人公の葉太は、旅先で浮かれること、はしゃぐことを恥だと思っている
現地人のように馴染み、帰国したらカッコいいエピソードとして他人にひけらかしたい欲求を持っている
そんな象徴として、セントラルパークの芝生で寝ころびながら、大好きな作家の新刊を読むことを目的としていた
しかし、いざ実行してみると、泥棒に貴重品が入っているバッグを盗まれてしまう
葉太は他人の目が気になるため、助けを求める事も、取り乱すこともできない
手元にあるお金は12ドル
キャリーケースの鍵もバッグの中に入っっていたため、必要なものも取り出せない
旅行の初日に盗難に遭ったというのも恥ずかしいと思い、日本領事館に行くのも4日目にしようと決意する始末
果たして葉太はどのようにニューヨークで過ごしたのか?
中学生の頃に太宰治の小説『人間失格』に感銘を受けたという葉太
(多分、西加奈子のによる命名も葉蔵に由来するのだろうなぁ)
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小説を読み始めたのは、中学に入ってからだ。父の書斎で見つけた、太宰治の「人間失格」を読んで、衝撃を受けた。幼い虚栄心や、強い羞恥心や、切実な卑怯、自分が知っていること、体験していることの全てが書かれていた。
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昔の人はその時期に太宰にかぶれるのを、今で言う厨二病のように扱っていたけれども
現代でもそんな子はいそう
「恥の多い生涯を送って来ました」かどうかはわからないが、お葬式でわざとらしく泣く姿を父に看破されたのがそれだったのだろう
「人間失格」だと「わざわざ」というセリフと同義
「小説家」を演じていた父への反発
それでいて、そんな父が意外にも遺した「地球の歩き方」を熟読して一言一句まで覚えているという状況
それにしても、冷笑系主人公という点では「サラバ!」と共通点があるように思う
場面や相手によって、自分を演じるという感覚はわかる
まぁ、「わかる」とか言うのも痛いやつというのも巻末の対談でいるわけだけれどもね
葉太に共感する部分がある私は、やはり男なのだろうな
なんだこいつとか、ばかだなー、とか思うけど
根本の「恥」という認識はある
旅先でも慣れた人のように振る舞いたいという言動
禅や茶道では、初めての事でも慣れた事のように、慣れた事を始めての事のように行うという考えがあるけれども
もしかして、葉太のこの考えって実は深いものかもしれない
まぁ、実際は本人はそんな事まで考えているわけではなく、実に浅はかなものだろうけどね
総じて、葉太の行動指針がわからないでもないけど
自分とは違うなぁと思った
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生きているだけで恥ずかしい――。自意識過剰な青年の、馬鹿馬鹿しくも切ない魂のドラマ!29歳の葉太は初めての海外一人旅でニューヨークを訪れる。恥ずかしい観光客と思われないよう、ガイドブックを暗記して臨んだ葉太だったが、滞在初日で盗難に遭い、無一文に。虚栄心と羞恥心に縛られて助けを求めることすらできないまま、一人マンハッタンを彷徨う羽目に……。決死の街歩きを経て、葉太が目にした衝撃的な光景とは――?
「生きているだけで恥ずかしい――。」自意識過剰な青年の、馬鹿馬鹿しくも切ない魂のドラマ!
29歳の葉太はある目的のためにニューヨークを訪れる。初めての一人旅、初めての海外に、ガイドブックを暗記して臨んだ葉太だったが、滞在初日で盗難に遭い、無一文になってしまう。虚栄心と羞恥心に縛られた葉太は、助けを求めることすらできないまま、マンハッタンを彷徨う羽目に……。決死の街歩きを経て、葉太が目にした衝撃的な光景とは――?
思い切り笑い、最後にはきっと泣いてしまう。圧倒的な面白さで読ませる、西加奈子の新境地長編小説!
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Posted by ブクログ
舞台
著:西 加奈子
初めての海外に選んだのは、亡くなった職業作家の父の思いがこびりついているNY。主人公である29歳の葉太は忌み嫌う亡き父との何かを探し、惹かれるようにその地へ降り立った。
初日からトラブルに巻き込まれる葉太。それどころではないトラブルに巻き込まれ、窮地に追い込まれる中でこそ辿りつける心境もある。葉太の運命やいかに・・・。
太宰治氏の「人間失格」が大好きな著者。物心ついて頃から作家の父親の影響から自宅にある書籍と共に育っている。いさかいのあった父との関係性と自身の存在の葛藤の中で、日本ではなく、父の何かがあるNYで自分探しを行うことになる。
人間のだらしない分やかっこ悪い部分が著者の独特の視点から没入しながら触れることが出来る。葉太のかっこ悪さはどこかで観たかっこ悪さではなく、自分のかっこ悪さを映しだしていることに気づくのは私以外にも多いはず。
心を描くだけではなく、NYの良さも悪さも空気感が感じられる描写はさすが。
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