ブックライブの書店員おすすめレビュー

すべて のおすすめレビュー

  • 楽信小学校5年×組、30人の児童たち。
    教室という名の小さな社会には、友情や憧れだけでなく、嘘、嫉妬、そして無自覚な残酷さが渦巻いています。誰かは光を浴び、誰かは傷つき、誰かは声を殺して日々をやり過ごす。
    これは、子どもたちが確かに生き、悩み、残酷な選択を繰り返した記録――。
    「青春」という言葉の裏側に潜む、痛みと熱を描き出す衝撃の群像劇。

    本作の最大の特徴は、出席番号ごとに視点を切り替えていく構成にあります。
    同じ教室で起きている一つの出来事が、立場によって全く違う色を帯びていく。ある子にとっての「何気ない遊び」が、別の子にとっては「一生癒えない傷」になる。その視点の不均衡さが、読み手の心を容赦なく抉ってきます。

    描写はどこまでも淡々としていながら、剥き出しの感情が伝わってくる生々しさは圧巻です。
    「正義感」や「自己保身」といった複雑な心理が、説明過多な台詞ではなく、視線の交差や一瞬の「間」によって表現されています。読者は、彼らを安易に裁くことはできません。むしろ「あの時、自分ならどう振る舞ったか」という、かつての自分への問いを突きつけられるはずです。

    また、教師や保護者といった「大人」の描き方も非常にシビアです。
    彼らは決して全知全能の救済者ではなく、時に無力で、時に決定的な見落としをする。その「大人の不完全さ」が、物語を単なるフィクションに留めず、現実の社会と地続きのリアリティを与えています。

    決して、爽やかで心地よい成長譚ではありません。
    読み進めるには少しの覚悟が必要ですが、読後には「砂をジャリっと噛んだような」えも言えぬ感覚が残ります。
    人間ドラマの深淵をのぞきたい方、そして、かつて「教室」という名の戦場にいたすべての大人に捧げたい作品です。

    2026年04月02日
  • とある連続ドラマでの共演を機に出会った、若き俳優たち。
    美貌だけで注目される麻生涼平、実力でのし上がろうとする柘植一慧、美しすぎるがゆえに生きづらさを抱えるミコト、二世俳優として業界を冷徹に見つめる高屋敷華。
    全くタイプが異なる4人は、芸能界という残酷で華やかな場所で、「才能」という正体不明の怪物に翻弄されながら、それぞれの人生を歩み始めます。

    描くのは『大奥』『きのう何食べた?』など、数々の名作を世に送り出してきたよしながふみ先生。
    今作も先生の真骨頂というべき、派手な成功譚に終始しない、人の内面に深く潜り込む濃密な群像劇として展開されます。
    タイトルにある「Talent」は、才能や才能ある人を指す言葉ですが、本作が描くのはその輝きだけではありません。「才能」という呪縛が、人の生き方や関係性にどのような影を落とすのか。その残酷なまでの過程が、淡々と、しかし鋭く描き出されます。

    舞台設定が2000年代初頭である点にも注目です。
    SNSが普及しきる前、テレビや芸能事務所の影響力が絶対的だった時代の空気感が、物語のヒリついたリアリティを支えています。
    登場人物たちは、善悪や成功・失敗といった単純な軸では描かれません。野心的で計算高い人物もいれば、無自覚な存在感によって周囲を揺さぶってしまう人物もいます。
    誰かを断罪することなく、それぞれの「業(ごう)」を静かに見つめるよしなが先生の筆致は、あまりに冷静で、だからこそ圧倒的な読み応えがあります。

    本作は「才能の有無」に答えを出す物語ではありません。その問いを抱えたまま、人はどう歳を重ね、生きていくのか。
    次第に変化していく4人の関係性と、その果てに辿り着く景色……。
    一筋縄ではいかない、螺旋階段のような人生の妙味を、ぜひじっくりとご堪能ください。

    2026年04月02日
  • 高校生の真山と佐山は、幼いころから何をするにも一緒のニコイチ幼なじみ。
    同じクラスで、同じ帰り道。当たり前のように隣にいる関係でしたが、最近なぜか佐山が周囲からモテ始めます。その小さな変化に対し、真山の胸には正体のわからない違和感が芽生え始めて…。
    友情か、それとも。転がるように変わっていく二人の関係を、静かな日常の中で描いた等身大の青春ストーリー。

    今作は幼なじみという近すぎる関係性が、少しずつ形を変えていく過程をとても丁寧に描いています。
    劇的な事件が起きるわけではありません。
    派手さはありませんが、だからこそ読者の心に、彼らの鼓動がダイレクトに伝わってきます。
    とにかくふたりの距離感のリアルさにとにかく注目していただきたい!
    長年一緒にいたからこそ生まれる安心感と、失ってしまうかもしれない不安が同時に描かれており、そのバランスが絶妙です。
    しかし、ふとした視線の向き、会話の「間」、何気ない一言。その一つひとつに、言葉にできない感情が宿っています。
    どちらかが一方的に情熱的になるのではなく、少しずつ気持ちが形を成す…その「途中」をしっかり見せてくれます。

    さらに、関西弁を活かした会話のテンポの良さ!
    軽快なやり取りに思わず口角が上がりますが、その明るさがあるからこそ、ふとした瞬間の沈黙や、熱を帯びた表情の変化が痛いほど鮮明に響くのです。
    笑っていたはずなのに、気づけば胸がぎゅっとなる――その落差こそが本作の醍醐味です。

    また、想いが通じ合ってハッピーエンド、で終わらせないのもポイント。
    「恋人になったあと」に押し寄せる不安や戸惑いまでを、逃げずに描ききっています。関係が変わったからこそ生まれる新しい「揺れ」を共有する二人の姿には、愛おしさで胸がいっぱいになるはずです。

    読後、二人の時間をもう少しだけ、いつまでも眺めていたくなる。
    そんな幸福感をくれる作品です。

    2026年04月02日
  • ブックライブ書店員

    超絶色男たちに甘く迫られ、気づけば逃げられない…!?
    優しくされているはずなのに、いつの間にか依存させられている……そんな"沼男"の恐ろしさとメロさを存分に味わえる一冊です!

    表紙は瑛乃先生の治安が悪めな刺青男子とちくピサラリーマンで読む前から想像力を掻き立てられますね!
    執筆陣も豪華で、ゼ之助先生、あめもり先生、sacco先生、有馬かの先生の4名が、それぞれ違ったタイプの沼男を描いています。
    獲物を優しく囲い込む男、甘えて心身を癒してくれる男、Hな願望を叶えてくれる男、ストレートな独占欲で口説いてくる男などなど…どの作品も「この男には勝てない……!」と思わされる破壊力でした。
    まさにタイトル通り、気づいたら溺れている危険なアンソロジーです!!!!

    メロい男・執着攻め・依存系BLが好きな方には特におすすめ!
    あなたもぜひ、この沼に落ちてみてください……♥

    2026年03月04日
  • ブックライブ書店員

    みなさん、生徒会ラブコメはお好きですか…?
    \\\私は大好きです!!!!///

    生徒会BL好きの同士にぜひとも読んでいただきたい!
    《セレブ先輩×貧乏後輩》の王道にして至高な学園ラブコメを見つけちゃいました♡

    セレブだらけの私立名門校に、奨学金で通う雀原。
    貧乏なことを必死に隠しながら、奨学金維持のため生徒会で奮闘する毎日。
    ところがある日、同じ生徒会に所属する苦手な先輩・鷹崎に、
    うっかり秘密がバレてしまい――
    平穏だった学園生活は、一気に波乱モード突入!?というお話です。

    そして本作、何より語りたいのが「鷹崎先輩」のメロさ!!
    お金持ちなクールイケメンで、雀原にもそっけない態度をとっていたけど、
    雀原の秘密を知ってから距離感がバグり始めるのが最高なんです。
    さりげなく距離が近くて、ほっぺをつねったり、さらっと「かわいいな」発言をしたり…
    ちょっと待って???? それ、反則では????

    いけ好かないと思っていた先輩に翻弄される雀原と、
    無自覚に(?)距離を詰めてくる鷹崎先輩。
    正反対なふたりの関係がどう変わっていくのか、目が離せません!

    庶民に興味津々なセレブ先輩×健気な貧乏後輩の生徒会ラブ。
    ぜひ一緒に、生徒会の壁になって見守りましょう♡

    2026年02月04日
  • ブックライブ書店員

    契約結婚×オメガバースBL!!!!王道はこれだからいい…!!!!!

    老舗呉服屋の長男・一(Ω)は倒産の危機に陥っている実家を助けるため、大和田グループの次男・智也(α)に嫁ぐことに。
    結婚の条件はふたつ、大和田家の指示に従うことと子どもが望めない場合は離婚すること。
    結納の時に初めて顔を合わせ、同棲することになるが智也は「番になるつもりはない」と終始冷たい態度…。
    そんな智也と一は本当の夫夫になれるのか…?というお話。

    そっけなく接しても一くんがポジティブに返事をして調子が狂う智也くんという構図がとても好物でした!
    でも、お互いに気を使い過ぎてすれ違っているのがとてももどかしい…!
    しかも、智也くんの兄夫夫がなんだか波乱を巻き起こしそうな予感もあり…!?
    早くくっついてくれ~~~~!!!!と願わずにはいられない可愛らしいカップルをぜひ一緒に見守ってください♡

    2025年12月03日
  • ブックライブ書店員

    事件も追う、かわいいも追う。異色の“キャラ弁刑事”物語。

    刑事として日々さまざまな事件を追う男・作田次郎。
    そんな彼には、仕事中のちょっとした楽しみがある。
    それは、自分で作った“カワイイ”キャラ弁を食べること!
    張り込み中でも、サルの捕獲作戦中でも、どんな状況でもお弁当を食べようとするその姿は、本気である。

    張り込みといえばアンパンと牛乳、取り調べといえばカツ丼……そんな“刑事の食事”のイメージに、この作品は見事に風穴を開けました。
    主人公・作田次郎は、かわいくて完成度の高い弁当を作るのが大の趣味。
    そのこだわりと技術力は、一度見たらクセになるほどの魅力です。
    さらに、弁当を食べる“シチュエーション”にまでこだわり抜く作田刑事の姿も見どころ。
    張り込み中でもどうにかキャラ弁を美味しく味わうため奮闘します。

    このマンガを読めば、あなたもきっとキャラ弁を作ってみたくなるはず。
    新感覚“キャラ弁刑事”物語、ぜひ味わってみてください!

    2025年11月17日
  • ブックライブ書店員

    「選ばれし者じゃない。それでも、王を目指す。」
    彼の物語は、ここから始まる。

    百年前、一人の王によって建国された世界初の統一国家――アストリア王国。
    この国では代々、国王を選ぶために“王試”と呼ばれる国王選抜試験が行われてきた。
    受験資格は全国民に開かれているものの、合格できるのはただ一人。王の座をめぐる過酷な争いが繰り広げられている。
    そんな王試に挑む主人公・タルトは、裕福な家に生まれ、幼いころから“王になるためのレッスン”を受けてきたエリート少年。
    しかし卒業式の日、挑まれた決闘で敗れた瞬間、彼は自分が“主人公”ではなく、物語を盛り上げるための“かませ犬”側の人間だったと気づく。

    現実に打ちのめされたタルト。しかし、彼はあきらめが悪かった。
    家を飛び出し、今度は「自分の力」で王を目指すため、新たな一歩を踏み出していくのだった。

    タルトは嫌味で、金持ちで、ちょっぴり残念な、まさに“かませ犬”らしい主人公。
    一方、彼の周囲には“THE・主人公”と呼ぶにふさわしい強者ばかりが集まってくる。
    圧倒的な才能の前でかませ犬感が浮き彫りになっていく中、それでも泥くさく足掻き続けるタルトの姿に引き込まれていきます。

    華やかな世界の片隅で、自分の居場所をつかみ取ろうともがくタルト。
    その姿はきっとあなたの心をつかむはずです。
    新時代の“かませ犬成り上がりファンタジー”、ぜひお楽しみください。

    2025年11月17日
  • ブックライブ書店員

    異世界BLマンガのアンソロジー?とてもいいですね。読ませていただきましょう!

    ページをめくると豪華執筆陣に圧倒されました!
    白八木ノコシ先生、さとみち先生、四日まぐろ先生、モニカマ先生、藤咲もえ先生の5柱の神です!
    読み進めていくと、勇者や魔術師、夜伽係などいろいろな設定に「そうきたか!」と舌を巻きました。

    あれ…XLサイズってつまり……!?
    愛もでっかく♥あそこもでっかく♥あまあまなエッチをぜひご覧ください!

    2025年11月05日
  • ブックライブ書店員

    「死んだら…せいせいする!」
    ずっと何かに怒っていた父が、ついに怒らなくなった。

    怒鳴る父に怯え、支配されてきたよえ子。うまくいかないのは全部、父のせい。そう思っていた。けれど、父の最期が近づく中で、よえ子の視線も、周囲の人たちの心も、少しずつ変わっていく。
    父だから見えなかったこと。父だから見ようともしなかったこと。
    父の死を前にして、よえ子は“もう一度、父を怒らせよう”と決意する。
    父と娘、そして家族の最期のファンファーレ。

    正直、よえ子の父は最悪です。怒鳴る、壁に穴をあける、物を投げるなど……。
    でもその裏には、家族に見せなかった過去と苦しみがありました。
    父の死という重いテーマを、ポップでコミカルに描きながら、心の奥に温かさが広がる作品です。

    2025年10月31日
  • 戦国の世。
    美貌と色香を武器に、数々の女を篭絡してきた「男くノ一」、篝火。
    彼に課された新たな任務は、敵国の巫女・竜胆姫を一夜で落とすこと。
    「恋を嘯き、愛を騙る」──それが篝火の流儀。

    しかし、今回ばかりは勝手が違いました。
    小さく可憐な竜胆姫に、逆に翻弄されてしまう篝火。
    恋に落とすはずが、落とされたのは自分──!?
    そんな“ホコタテ構造”から始まる、笑えて切なくて、そしてとびきり美しいラブストーリー!!

    篝火は、天下一の美貌を持つ忍。
    その顔立ちは、女だけでなく男も惚れるほど。
    任務のためなら恋も嘘も使いこなし、冷徹にターゲットを落としてきたプロフェッショナルです。
    そんな彼が、今回の任務で出会ったのが竜胆姫。
    小柄で可憐、どこか儚げな雰囲気をまとった巫女。
    「こんな子なら、すぐに落とせる」と思った篝火でしたが、彼女の天然さ、肝の据わった言動、そして時折見せる“イケメンすぎる”振る舞いに、逆にキュンとしてしまうのです。
    その姿が、かわいすぎます!!

    竜胆姫は、普段は冷めた表情で、すべてを諦めているような雰囲気を漂わせています。
    しかし、篝火と話す時だけ、ふと見せる可愛らしさがたまらない!
    そのギャップに、読者も篝火と同じように心を奪われてしまいます。

    そして何より印象的なのが、龍神の力を使った時の竜胆姫。
    その瞬間、彼女は可憐さを脱ぎ捨て、まるで武人のような男らしさを放ちます。
    その姿は、まさに“かっこいい”の一言。
    「ある意味魔性の女なのでは!?」と感じてしまうほどの魅力が、彼女にはあります。

    恋を武器にする篝火(矛)と、天然で無防備な竜胆姫(盾)。
    しかし、盾だと思っていた竜胆姫が、実は最強の矛だった──という逆転劇が、物語を面白くしています。

    今作を描くのは『月読くんの禁断お夜食』や『青春しょんぼりクラブ』のアサダニッキ先生。
    繊細な絵柄と些細な心情変化の描写が秀逸です!
    コミカルさとシリアスとのバランスが絶妙で物語にメリハリがあるところも流石…!!
    キャラクターの表情、間の取り方、セリフの余韻──すべてが丁寧に描かれていて、読者を物語の世界に引き込みます。

    この作品の最大の魅力は、なんといってもギャップです。
    色仕掛けのプロでありながら冷淡な篝火が竜胆姫に翻弄されて可愛くなる姿。
    可憐で天然な竜胆姫が、男らしくかっこいい!
    任務としての恋から、本物の恋へと変化してく様。
    とにかくギャップが満載。
    読者はそのギャップに何度も驚かされ、何度も笑い、何度もキュンとさせられます。

    恋に落ちる瞬間の“春雷”を、ぜひその目で確かめてください。

    2025年10月30日
  • 大学進学を機に上京した初帆(はつほ)。
    新生活に胸を躍らせる彼女の隣人は──なんと中学時代に気まずい別れ方をした、人生唯一の「元彼」・頼(より)くんでした!

    「――だから早まんなよ。勝手に他の奴と付き合うな」
    再会早々、頼くんの猛アタックが炸裂!
    ちょっと偉そうで、ちょっと強引。でも、かっこよくて、憎めない。
    そんな“難あり(!?)元彼”との再会から始まる、じれったくて甘酸っぱいラブコメディ♪

    この作品の最大の魅力は、なんといっても頼くんの“可愛さ”。

    見た目はイケメン、頭も良くてハイスペック。だけど、初帆の前ではちょっと不器用で、完璧でいたいがゆえに空回りする姿が、もう…かわいすぎます!
    ・初帆の前ではかっこいい自分でいたいから、完璧に振る舞おうとする。
    ・でも、好きすぎて空回りしてしまう。
    ・初帆のことをずっと好きでいてくれている一途さ。
    ・時々見せる素直な表情や、照れた顔。
    そんなギャップがたまらなく愛おしい。
    「自分のことをずっと好きでいてくれる男子って、女の子の憧れだよね…」と、思わず口にしてしまう読者も多いはず。

    初帆は、頼くんの猛アタックを回避しつつも/ブロックしながらも、過去の思い出や今の距離感に揺れ動きまくり。
    「もう終わったはずの関係なのに、なんでこんなに気になるの?」
    「好きだったけど、今はどうなんだろう…?」
    そんな初帆の心の動きが丁寧に描かれていて、読者も一緒に悩み、ドキドキしながらページをめくることになります。

    頼くんは、初帆とやり直すために必死です。
    過去の失敗を悔いて、今度こそちゃんと向き合いたい。
    その姿勢が、ただのラブコメでは終わらせない深みを作品に与えています。
    「やり直す」って、簡単じゃない。
    でも、好きだからこそ、もう一度向き合いたい。
    そんな頼くんの真っ直ぐな気持ちが、読者の心にじんわりと染みていきます。

    ぜひ、あなたも頼くんの猛アタックに落ちてみてください。

    2025年10月30日
  • あの時産んでいたら…。
    産むという選択肢がない。
    結婚と出産は当たり前?
    離婚して3年の元夫と再会した弓井祐里(ゆみい ゆり)を中心に、子どもを持つ・持たない・持てないというテーマが交錯し、「母」であることと「私」であることの間で揺れる女性たちを描くオムニバス作品。

    この物語は序盤から様々な気づきを与えてくれつつ、心にそっと寄り添ってくれます。
    その中でも特に心に残ったセリフをご紹介します。

    最初に心を掴まれたのは、取引先との挨拶で偶然再会した元夫・佐藤慶介に対して、弓井が放った一言。
    「離婚した人に言う定番の挨拶ってないですよね」。
    ハッとしました。
    確かに「結婚」なら「おめでとう」と言えるけれど、「離婚」に対しては、何をどう言えばいいのか迷ってしまう。結局、「お疲れ様」か「そうなんだ」で流してしまうことが多いのではないでしょうか。

    次に印象的だったのは、大学の研究生である祐里の妹・夏里が、友人たちと結婚や就職など将来について語り合う場面。
    「子どもはいないけど主婦になるって“あり”なのか“なし”なのか?」という話に対して、友人のひとりが言った
    「私たちは何に許されたいんだろうね」
    という言葉が、胸に深く刺さりました。

    子どもを持つこと、持たないこと。結婚すること、しないこと。
    その選択は人それぞれで、どれも間違いではないはずなのに、自分の選んだ道に対して「これでよかったのか」と問い続けてしまう。そんな思いを抱えている人は、きっと少なくないでしょう。

    祐里の物語だけでなく、作品にはさまざまな立場の人々が登場します。
    ・もっと仕事がしたいのに育児に追われ仕事がままならない女性
    ・子持ち社員の仕事を肩代わりすることが多い女性
    ・ゲイであるため「結婚」という制度に縁がない男性
    ・結婚も出産もまだ想像できない20代女性
    ・子どもができず離婚し、ひとりで生きることを選んだ高齢女性
    それぞれが何を選び、何を諦め、何を抱えて生きているのか。
    読者はきっと、どこかに「自分ごと」として感じられる瞬間を見つけられるはずです。
    そしてこの作品の魅力は、感情を過剰に煽ることなく、静かに心に染み入るような“余白”があること。読んでいて、安心できるのです。

    読後には、きっと「自分はこれでいいんだ」と思えるのでは。
    タイトルの『元気でいてね』は、登場人物たちが誰かに向けてかける言葉であり、読み手にとっては誰かへの祈りであり、自分自身への優しい願いでもあるように感じます。

    人生の選択に迷いながらも、自分らしく生きようとするすべての人に、そっと寄り添ってくれる作品です。

    2025年10月30日
  • 「やっぱ普通じゃつまんねぇんだわ。」
    主人公の名前はミナミ。高校3年生。
    彼女は、ある日突然“超能力”に目覚めます。
    中学・高校でのデビューもパッとせず、味気なかった青春。
    そんな彼女の毎日は、サイキックの発動によって少しずつ色づき始めるのです。
    少しぎこちなくも周囲を巻き込み、時には能力も使いながら、やり残した青春を取り戻していく。
    これは、サイキック発動系ヒロインによる“能力無駄遣い微青春譚”!

    「何者かに成りたい」──
    人生で一度でも、そう思ったことはありませんか?
    この問いに、真正面から向き合う少女がいます。
    それが今作の主人公ミナミ。

    ミナミは、一見どこにでもいるような女子高生。
    ワクワクして挑んだ中学・高校でのデビューもパッとせず、人見知り故に新しい友達もできず静かに過ごす日々。
    でも、心の奥ではずっと思っていたのです。
    「普通じゃつまんねぇんだわ」
    「何者かになりたい」
    「特別になりたい」
    まさに10代の衝動!!
    そんな彼女が、ある日突然サイキック能力を発動させます。
    それはまるで、現実逃避の延長線上にある“進化”のようなもの。
    ミナミはそれを「逃げ」ではなく「可能性」として受け止めるのです。

    ミナミの現実逃避能力の高さは、教師や大人からすれば「現実を見ろ」と言いたくなるような危うさを孕んでいます。
    しかし、周囲を見て空気を読み、「いい子」であろうとしてきた同級生たちからすれば、そんな穢れなき思想でいられるミナミのピュアさは、むしろ羨ましく映るのではないでしょうか。
    彼女は、社会の枠組みにまだ完全には染まっていない。
    だからこそ、夢を語れる。
    だからこそ、無茶ができる。
    そして、だからこそ、読者の心をくすぐるのです。

    物語の中で、ミナミは漠然と「NYに行ってみたい」と語ります。
    このセリフは、彼女の“何者かになりたい”という願望の象徴でもあります。
    「NYに行きたいか」と言えば、思い出すのは『アメリカ横断ウルトラクイズ』。
    当時、高校生は出場不可だったこの番組。
    そう考えると、現役高校生であるミナミがNYに行きたいと言うことは、叶わない夢を語っているのでは?と勘ぐってしまいます。

    そんな彼女は超能力を手に入れ、進化系高校生となります。
    でも、ミナミ自身は何も変わっていない。
    立場や環境が変化しても、自分の本質は変わらない。
    それは、ある種の強さを必要とする生き方です。
    「特別な能力があるからといって、特別な人間になれるわけじゃない」
    この作品は、そんな逆説を描いているのではないでしょうか。

    物語の中盤、ミナミの衝撃の過去が明かされます。
    彼女は小学生の頃、一時行方不明になり、戻ってきた時にはすべての記憶を失っていたのです。
    過去がないからこそ、未来に夢を見る。
    記憶がないからこそ、今を全力で生きる。
    ミナミの行動には、そんな切実さが込められているのです。

    今作はやり残した青春を取り戻す物語です。
    それは、過去の自分との対話であり、未来の自分への挑戦でもあります。
    「特別でありたい」と願っても残念ながら平凡で、超能力があっても状況は変わらず…。そんな現実にぶつかりながら少しずつ前に進む。
    そんなミナミの姿はどこか気恥ずかしくて、でもエモい。
    そんな感情が、ページをめくるたびに胸に広がっていきます。

    ミナミを取り巻くキャラクターたちも魅力的です。
    彼女の突飛な行動に振り回されながらも、どこかで応援してしまう仲間たち。
    彼らとの掛け合いはテンポが良く、笑いと切なさが絶妙に混ざり合っています。

    この作品は、ただのSFでも、ただの青春マンガでもありません。
    それは、“自分らしく生きる”ことの尊さを描いた、微青春譚なのです。
    今後の展開に期待しかありません!!

    2025年10月30日
  • バレーボールマンガには名作が多く存在します。
    それぞれが競技の魅力と共に、青春、葛藤、成長を描いてきました。
    そんな中登場した今作『ディグイット』は、
    「才能がすべてなのか?」「努力は天才に勝てるのか?」
    この永遠の問いに、真正面から挑む物語です。

    主人公・獅子谷岳(ししや がく)の父・慧(けい)はバレーボール元日本代表のエース。
    そんな父は「生まれ持った才能こそ至高」と信じる男で、息子にもその道を歩ませようとします。
    しかし彼が「本物の天才」と認めたのは、ガクではなく、彼の中学時代のチームメイト・ノボル。
    慧はノボルに惚れ込み、「彼を日本一の選手にする」と宣言し、彼の進学先である穂高学園高校の外部コーチに就任します。

    父から期待のハシゴを外され自身の才能を否定されたガク。
    彼は絶大な存在である父と決別し、自身を活かせる可能性のあるリベロの道を選んだのでした。

    父親が圧倒的であればあるほど、子供にとってその存在は重圧であり、呪いになります。
    しかもその父が自分ではなく他人に才能を見出したら──。
    その子供は、解放を喜ぶのでしょうか?それとも対抗心を抱くのか?はたまた絶望するのか…!?
    ガクの本当の思いはどれだったのでしょうか…。
    この設定だけで、すでに物語はアツい!!

    ガクは、父と同じアタッカーの道を捨て、リベロという守備専門のポジションを選びます。
    リベロは、どうやっても自分で点を取ることはできない。
    スパイクもブロックもできない。
    しかしチームの守りを支える“盾”として、試合の流れを左右する存在です。
    この選択には父への反抗心もあったでしょう。ただの反抗心だけではただの小さな存在で終わってしまいますが、そこで収まらないのが、ガクの凄いところ。
    誰かに才能を見出されるのではなく、自分で自身の才能を掘り出し、磨いたガク。
    その姿は、天才よりもよっぽど凄いのではないでしょうか。

    高校でガクが出会うのが、アウトサイドヒッター・百田葵(ももた あおい)。
    練習を通じてお互いにその実力を認め、やがて信頼を寄せるようになります。
    リベロにはどうしてもアタッカーの存在が必要。
    点を取ることができないからこそ、攻撃の要と連携することでチームに貢献できる。
    アタッカーであることを辞めたガクが、アタッカーである百田と手を組む──。
    この展開が、読者の心を大きく揺さぶります。
    「絶対的なリベロ」と「最強のヒッター」が組んだらどうなるのか。
    そこに生まれる絆と今後の関係性に、注目せずにはいられません。

    ガクは進学した静岡 羽海野高校バレー部で個性豊かな仲間たちと出会います。
    彼らとの関係がリベロとしての技術だけでなく、人間としての成長に繋がっていき、物語はより深みを増していくのです。

    「才能がないからこそ、可能性を伸ばす」
    「目立たないからこそ、支える力がある」
    そんなメッセージが、読者の心に深く刻まれます。
    さらに、
    「目立つ道を選ぶのではなく、自分に合った道を選ぶ勇気があるか?」
    「才能がないと感じたとき、諦めるのではなく、別の可能性を探す覚悟があるか?」
    この問いは、年代問わず深く刺さるはずです。

    バレーボールという競技を舞台に、父と息子、天才と凡才、攻撃と守備──あらゆる対立構造を巧みに織り込みながら、読者の心を激しく揺さぶる、今、最も熱いスポーツマンガと言えるでしょう。

    2025年10月30日
  • 海辺の町で祖父・勝臣(かつおみ)と共に銭湯「柿の湯」を営む高校生・柿内遼馬(かきうち りょうま)は、静かで穏やかな日々を過ごしていました。
    ある日、銭湯に少年・柴崎玲臣(しばさき れお)が遼馬の父に会いたいと訪ねてきます。玲臣は、蒸発した母から聞いた話を頼りに、父と思われる人物を探してこの町にやってきたのです。
    しかし二人の父はすでに亡くなっており、玲臣は迷惑をかけまいとその場を後にします。そんな彼の姿に心を動かされた遼馬は放っておくことができず、共に暮らすことに。
    銭湯を舞台に正反対な兄弟が繰り広げられる青春群像劇!

    物語の中心となる銭湯は、古き良き時代の面影を残し、地域の人々に愛され続けている場所。湯気の立ちのぼる空間には、窓から見える海の景色と、どこか懐かしく温かな空気が流れており、なんだかほっとできます。

    遼馬も玲臣、クラスメイトも、それぞれに複雑な家庭の事情を抱えながらも腐ることなく、まっすぐに生きようとする姿が印象的です。彼らは未成熟ながらも現実に向き合い、少しずつ自分の居場所を見つけていきます。その姿に心がじんわり温かくなるのです。

    そして、遼馬の祖父・勝臣の存在がまた素晴らしい。
    彼は、厳しさと優しさを併せ持ち、言葉少なくとも深い愛情で孫たちを見守る理想的な大人として描かれています。こんなふうに年を重ねたい、と思わせてくれるような、静かで力強い魅力があります。

    今作は「家族」がテーマになっておりますが、「血縁」よりも「関係性」に重きを置いており、玲臣が本当に遼馬の父の子なのかは、物語の核心ではありません。重要なのは、彼らがどう向き合い、どう受け入れ合うかという部分で、「家族とは何か」という問いに対して、作品は「選び取るもの」としての家族像を表現しているのではないでしょうか。

    またセリフのひとつひとつが自然で、コマ割りのテンポも絶妙。特に、遼馬と玲臣が銭湯の掃除をするシーンは、言葉がなくとも胸に迫るものがあり、二人の関係の変化を静かに、しかし確かに感じさせてくれます。

    人と人との関係性が心地よく、押しつけがましさのない距離感が、読者に安心感を与えてくれる。静かながらも力強い、心に残る物語をご堪能ください。

    2025年10月30日
  • ブックライブ書店員

    人外・異種族BL好きさん、集まれ〜!!

    人間の国の王族・アルカドが政略結婚した相手は、なんと魔人の国の宰相・デネブ!?
    その威圧感ある容姿から人間には恐れられていたデネブだが、実は彼、見た目に反してとっても紳士。
    しかもアルカドはそんなデネブの見た目がかなりタイプで…!?

    見た目とのギャップが最高な魔人×実は積極的な人間王子の、ほのぼのイチャラブ政略結婚ストーリー!

    「ちょっと絵柄で迷ってる…」というあなた、ぜひページをめくってみてください!
    本作、見た目からは想像できないほど、2人は甘くてラブラブ。
    異種族ならではのエッチなシーンも最高で、読めばきっとはまってしまうはず。

    デネブに一途なアルカドの可愛さと、そんな彼を優しく見守るデネブの眼差しが本当に尊い…。
    胸キュンと癒しを同時に味わえる、幸せいっぱいの一冊です!

    2025年10月27日
  • ブックライブ書店員

    人魚と人間の王子、そして悪魔。
    3人の想いと策略が交錯する——まったく新しいトライアングル・ラブ!

    人魚の王子・メロルは、誰もを魅了する美しい歌声の持ち主。
    彼の親友は、海の仲間から“悪魔”と恐れられる魔法使いのメンダコ・クラート。
    ある日、嵐で遭難した船から落下した人間の王子・ウィルを助けたメロルは、彼に一目惚れし、初めての恋に心を奪われていく。
    そんなメロルの変化を見つめるクラートの胸には、暗く、重たい独占欲が芽生えはじめて——。

    こんなBLは読んだことがない…!
    壮大なスケールのファンタジーで、まず目を奪われるのは圧倒的に美しい作画。
    けれど物語は切なく、登場人物すべてに感情移入してしまうほどドラマティック。
    とくにクラートが“親友”としてメロルを想う気持ちと、誰にも渡したくないという独占欲との間で揺れる姿は胸が締めつけられます。

    誰もが幸せになってほしいと願わずにはいられない、痛くて尊い三角関係。
    今後の展開が待ちきれない一作です!
    新しい世界観のBLを探している方に、ぜひおすすめします。

    2025年10月27日
  • ブックライブ書店員

    拗らせBLが好きな人に、絶対刺さる一作!

    主人公の林は社会人でゲイ。
    「誰でもいいから男とセックスがしてみたい」——そんな誰にも言えない願望を抱えている。

    ある日、林は隣に住む大学生・吉鷹の朗らかな性格と鍛え上げられた身体に惹かれ、抑えきれない思いから、彼をおかずに一人でしてしまう。
    しかし翌日、罪悪感に飲まれた林は酔った勢いで吉鷹の部屋を訪ねてしまう。
    ……その日から、吉鷹の“触れ方”がどこかいやらしくなって——!?

    大学生×社会人の焦れキュン関係って、どうしてこんなに尊いの!?
    人当たりがよく面倒見のいい社会人受け・林と、スペック高めのイケメン大学生攻め・吉鷹。
    一見恋愛慣れしていそうなのに、実はどちらも初心で不器用。
    素直になれないふたりの想いが交錯して、読んでいるこっちがヤキモキしてしまう…!

    「早くその激重執着を見せて!」と叫びたくなるほどの、両片想い拗らせBL。
    そんな切なくも甘い物語が好きな方は、ぜひ一読を!

    2025年10月27日
  • ブックライブ書店員

    地味&真面目な受け×俺様アイドルな攻めが好きな人、大集合~~~~!!

    主人公の木下は地味で目立たないアナウンサー。
    “最推し”のアイドル榛名とお仕事で絡むことになって、そこから理性も心もどんどん崩れてくのがもう最高にしんどい!!(褒めてる)

    榛名の独占欲や嫉妬の描き方が絶妙で、「あ~~この人ほんまに受けのこと大事なのね」って伝わってくる…。

    エロシーンもタイトルに偽りなし!!思いが通じ合った後のえっちは読んでて胸がギュッとなります。

    「推し×ファン」っていう夢みたいな設定の裏に、ちゃんとリアルな葛藤とか切なさも詰まってて、読後感がただのエロに終わらないのがすごい。
    控えめに言って、“沼”確定の1冊です!

    2025年10月27日