天童荒太のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
怪我をしたときに活躍するのは包帯です。
私も子供のころ、包帯が好きでした。痛々しい傷も真っ白な包帯で包まれると、痛みもやわらいだ気がします。
「これでもう大丈夫。」なんていう、安心感が生まれ、その落ち着いた感じが良かったのです。
この作品はその包帯が与える良い印象をもとにしていました。
傷つきやすい高校生たちが、心をズタズタにされた場所や嫌な思い出のあるところ、あるいはトラウマになったものに対して、手当をするというかたちで、包帯を巻いて、心を癒していくというストーリーです。なんだかある意味、作者の代表作『悼む人』にも似ているような感じでした。
主人公は、16歳の高校2年生、ワラ。離婚した母 -
Posted by ブクログ
「ニュースは先進国から配信されるんだよ、ママ。だから先進国の被害は、五人でも五千人でも、ぼくたちは知ることができる。同情し、怒って、報復は仕方ないと思える。でもねママ、貧しい国にはカメラはない。大きい国に都合の悪い映像もカットされる。だから、貧しい地域で殺された子どもや、誤爆で吹き飛ばされた花嫁や、飢えや疫病で死んだ家族の姿は、ニュースには流れないんだ。十万人、百万人と死んでも、ぼくらは涙は流せない。だってテレビに映らないからね。わかる、ママ?いまは、テレビに映らない死者は、はじめから生きている人としても、存在していない時代なんだ。すごいペテンだと思わない?」
全然物語の潮流のセリフなんだ