【感想・ネタバレ】悼む人 下のレビュー

あらすじ

善と悪、愛と憎しみ、生と死が交錯する直木賞受賞作! 著者が切望した、「いま世界に一番いて欲しい人」とは?
不慮の死を遂げた人々を“悼む”ため、全国を放浪する若者・坂築静人。静人の行動に戸惑いと疑念を覚え、その身辺を調べ始める雑誌記者・蒔野。末期がんに冒され、家族とともに最後の時間を過ごしながら、静人を案じる母・巡子。そして、自らが手にかけた夫の亡霊に取りつかれた女・奈義倖世。
静人の姿が3つの視線から描かれ、その3つのドラマが、やがて1つの大きな物語の奔流となる。「この方は生前、誰を愛し、誰に愛され、どんなことで人から感謝されてでしょう?」静人の問いかけは、彼を巡る人々の心を、少しずつ動かしていく。
家族との確執、死別の悲しみ、自らを縛りつける呪縛との対決。そして避けられぬ死の傍らで、新たな命が――。静かな感動が心に満ちる感動の巨編!

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

亡くなった人を「悼む」旅を続けている青年に関わった人達の視点の物語

以下、公式のあらすじ
--------------------
不慮の死を遂げた人々を“悼む"ため、全国を放浪する坂築静人。静人の行為に疑問を抱き、彼の身辺を調べ始める雑誌記者・蒔野。末期がんに冒された静人の母・巡子。そして、自らが手にかけた夫の亡霊に取りつかれた女・倖世。静人と彼を巡る人々が織りなす生と死、愛と僧しみ、罪と許しのドラマ。第140回直木賞受賞作。
"「この方は生前、誰を愛し、誰に愛されたでしょうか?どんなことで感謝されたことがあったでしょうか?」ーー事件や事故で命を落とした人々のためを「悼む」放浪の旅を続ける静人。 彼の問いかけはそのまわりの人々を変えていく。 家族との確執、死別の葛藤、自らを縛り付ける""亡霊""との対決、思いがけぬ愛。 そして死の枕辺で、新たな命が生まれ……。 静かな感動が心に満ちるラスト! " 映画化、舞台化された話題作。
--------------------

名前を覚えられる死と数でしか知らされない死にどんな違いがあるのか?
悲惨な事件・事故で亡くなった人、大勢が一度に大量に死ぬ他国の戦争や紛争、病気で亡くなるにしても孤独の中で亡くなる人もいれば、家族に看取られて逝く人もいる

そして、人は「あなたのことは絶対に忘れない」と言たとしても大切な人の死を忘れる
友人の死をきっかけに「悼む」ことに囚われたし静人
そして、関わりの持った人達

父母の離婚をきっかけに心がすさみ、自身も結婚したが妻子と別れ、下衆な記事を書き連ねる新聞記者の蒔野
末期の胃癌になり、死を迎えようとしている、静人の母 巡子
被虐体質でDV夫と別れ、聖人君子のような僧侶に請われて再婚したが、自殺願望を持つその夫に請われて殺してしまい、夫の亡霊が取り憑いたと思っている倖世

静人の父、静人のせいで結婚が破談になった妹、兄妹の従兄弟


「悼む」という行為の本質は何かを考えた際に、「故人を想う」かなと思った

故人が「誰を愛し、誰に愛され、どんな感謝をされたか」を記憶に留める静人の行為
でも、偽善とか、良い面しか見ていないとか、勘違いの情報だという人もいる

個人的には、それでいいのではとも想う
どれだけ親しい人でもすべては理解でいないわけだし
勘違いだろうが、悼む行為に違いはない
そもそも、悼む行為は人それぞれであって、万人に共通の想いではない

鴻上尚史の人生相談の記事で、震災で亡くなった人への黙祷の時間に席を外す同僚を批判する人に対して、その答えも似たような事を言っていた気がする

それこそ、悪いことをした人を悼んではいけない理由はない
静人は、殺人を犯した人の場合は被害者を三回悼んだら当人も悼むという基準を設けているけれども、今までその条件を満たした人がいない
殺人犯にも家族はいるし、悪人と言えど愛した人、愛してくれた人もいるかも知れないし、時には感謝された事もあるかもしれない
殺人や悪事という行為は良くないけれども、その行為がその人のすべてではないんだよな


事件で亡くなった人でも、静人は亡くなった状況や経緯、加害者について調べたり聞いたりしない理由
「加害者を憎むと、憎しみにとらわれて、被害者のことを忘れてしまう」という
となると、どうやって死んだか?よりも、その人がどう生きたのか?を重視した方がいいので
「誰を愛したか、誰に愛されたか、どんなことで人に感謝されていたか」を聞くようになったと

被害者の無念さを知っても、それがその人の本質ではないのだろうなぁ

視点人物の三人
母である巡子は静人を愛した人で
奈義倖世は静人が愛した人で
蒔野抗太郎は静人に感謝した人
静人が人を悼むように、静人は人から悼まれるとき、巡子は関係者として思い出されるかもしれない
でも、倖世と蒔野は他に悼む人が知り得ない人達
だけど、その悼みでもいいという事も暗に示されているような気がする


もしこんな人がいたとしたら
抗太郎が思ったように、死に際して、その死を受け入れられるようになるかもしれない
私自身が亡くなる時にもそう思えたらいいな


人は二度の死を迎えるというけれども
世の中、こんな人がいたらいいのにの本当に想う

0
2025年07月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

後半は一気読みに近かった。
序盤は静人の悼みに対して、自分の考えに合う死者の断片だけを切り取った解釈を行う事への理解が出来なかった。全ての死に同等の悼みが与えられる訳が無い。と。作中に登場する多くの人々と同じ否定的な考えを持った。が、後半は静人の人物像が深く掘り下げられ、共感とはいかなくとも理解は出来た。
巡子の死に寄り添いながら読み進めていくうちに、自身の生き方を考えるいいきっかけになった。
全てがままなら無いもの、人は不完全な生き物、そして完全に消化されずに逝く生き物、ただその先は決して暗い物ではない。そんな事を教えられた気がした。

0
2023年10月21日

Posted by ブクログ

小説の持つチカラを感じました。
生と死、人を愛すること、善悪、家族の絆、…。
ヘヴィーです。人生について考えさせられます。
ラストシーンの悲しくも美しい、生の喜びに満ちた情景に涙が止まりません。
私的、大切な本になりました。

0
2022年03月13日

Posted by ブクログ

読み終わった時、これまでにない角度から自分の存在を肯定された気がしました。
正しい解釈かは分からないけれど…

0
2021年10月31日

Posted by ブクログ

感想がまとまらずA4サイズの紙に箇条書きしてみました。2枚びっしり書いても足りないくらいで本は上下巻とも付箋だらけ笑
あまりにも考えさせられることがたくさんあるので
ストレートに刺さった言葉から。

⦿人生はしんどいなあ。
⦿人物の分析よりも、その人と会って自分が何を得たかが大切。
⦿失われてゆくものをなげくより、残されているものを慈しもう。
⦿同じ事実でも立場が違えば見えているものが違う。
⦿疑うことなんてない。誰かのために、そのひとのためになら、自分が少しくらい損をしてもいいって思えたらそれはもう愛でいい。

天童さんのとてもキレイな言葉の表現に感動しました!もちろん号泣こみです(TT)
読書の秋、堪能できましたー。

0
2021年10月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

死者を悼む旅を続ける青年の物語。

ここで言う「悼む」とは、弔うことでもなく冥福を祈ることでもない。

忘れずに覚えていると言うこと。

とても単純なことのように思えるがこれがものすごく心に突き刺さった。

確かに死んだ人とは二度と会えないが、覚えてくれる人がいる限りその人の存在が消えることはない。

そこにスポットを当てた作品だと感じた。

死ぬとはなんなのか、生きるとはなんなのか、存在するとはなんなのか、その全てに一つの導きを与えてくれているような気がする。

どれが正しいなんて分からないが、主人公は全て分かっていて、母に会いに行かず、倖世に託しのではないか、誰かが覚えてくれていればその存在は消えることはないのだから。

0
2019年11月29日

Posted by ブクログ

平年より12日も早い梅雨の雨が降り濡つ中で、今日もどこかで静人は悼んでいるのか。
『なぜあんなことをしていたのでしょう…何が目的ですか…』 静人にも分からない答を蒔野や倖世が彼らなりに見い出すように、読者も自分なりに見い出すのだろう。
見い出すとすればその人なりにしか出し得ない答。他人に家の中を覗き込むような露悪な表現の中から生への静謐な感謝が湧き出てくる。
蒔野が亡き両親のことを『二人の善い面だけを考えていくと、自分の知る彼らの実像とは離れるが、二人が幼い頃にはまだ持っていたはずの〈無垢な魂〉に、ふれているような気がする』と語る時、巡子が高齢者の老人に対して『あの老人は寝ているだけの存在のようでいながら、老妻にいまも愛され、若い職員には感謝されている』と感じる時、2年前に逝った父のこと、年老いた母のことを思い起こす。
呆けた父の死に様も、看取った母の生き様も、意味あることであったことを知らされる。
父のようにはなるまいと思いながら生きてきて、しかし何だか同じように生きてきてしまったことに嘆息しながらも、この物語を読めば、この世に生かされ血の繋がりを紡いでいく一片としての自分の存在の重さを改めて知る。
そして、様々な愛や感謝が語られる時、一緒に生きる妻や子らとの暮らしの幸福に、私も感謝する。
巡子の鮮やかな彼岸への旅立ちかたに〈悼む人〉が私の中に残したものを思う。
『生きていた者が死んだとたん、数にされ、霊にされ……近しい者以外、どんな人物が生きていたかを忘れていくのに……この男は、死んだ者の生きていた時間に、新たな価値を与える。その人物が、この世に存在していたことを、ささやかに讃える』その意味を。

0
2023年03月23日

Posted by ブクログ

主人公の心の動きよりも、母親の強い気持ち、行動に共感を覚えた。
このように、ひとりの人間として、受け入れながらも、あがきながら最期が迎えられたらと思う。

0
2025年06月17日

Posted by ブクログ

死(自殺)と生き抜く力
末期の癌の母が思う息子の帰宅、娘の出産、更に編集者の出会いなど、最後の最後に意識の中で出会うことの喜びは最高の人生だったと、思いたい。「死に悼む」と「愛と生きる」が生死の人間が思う極まりではないかと感動した作品だった。

0
2023年05月14日

Posted by ブクログ

生と死、愛、感謝、さまざまなテーマがこの作品の中にはある。話の筋を追うだけでも、興味深く楽しく読めるが、静人が悼むのはなぜだろう、朔也と倖世はなぜやりとりを続けるのだろう、といちいち考えながら読むと、さらに興味深く読めた。結局、悼む人とは何か、答えは出ないが、この考えさせる時間が尊いのは間違いない。

0
2022年08月08日

Posted by ブクログ

不慮の死を遂げた方々のもとへ訪ねる静人。一見あまりに異常に見える行動も世間から非難されようと癒される人もいる。だいぶ前の作品だけれども今の時代にも通じるメッセージがある。当然、静人自身にも過去があり…。天童荒太さんは重いけどどこか救いがある。

0
2022年07月06日

Posted by ブクログ

生きる、死ぬ、愛について、たくさん考えさせられる一冊。
たくさん考える本なだけあって疲れる。
でも、たしかに読んで良かったと思えた。

0
2021年06月21日

Posted by ブクログ

ここまで死と向き合った小説に初めて出会った。
読むのも大変だけど、これを書き上げるのも本当に大変だと思う。足掛け7年もかかったそうです。
さまざまな意見があると思うけど、僕は主人公に感情移入できた。

0
2021年06月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

上巻は悼む描写が多く、なんだか読んでて暗い気持ちになったが下巻は暗いながらも光がさしてきた感じで引き込まれた。

ゆきよの肩の亡霊を通して、気持ちがよくわからなかった静人の本音も聞けてスッキリした。
「自殺をする代わりに、他人の死を悼むようになったのかもしれないなって」言葉が印象的。
生きる為にそれをするしかなかったんだと思うと気持ちはわからないが納得できた。

生と死、愛は何かとか一生のテーマで難しいけど、考えさせられる物語で一読の価値あり。
いつかはみんなも自分も死ぬわけだし。
最後の巡子が見たシーンの描写は美しく、死ぬ時に見えるのがそういう光景なら死も悪くないと思う。

0
2021年05月09日

Posted by ブクログ

上巻は、私にはなんだか重くて暗くて…下巻はみんなそれぞれに重いものを背負ってることには変わらないのだけれど、希望を見出せる感じで楽しくよめた。

とうとう最後まで静人という人がよく分からなかった。重松清さんの書評に、そういう読者もいるでしょう。とあったので私だけではなかったかな?と少し安心した。

0
2021年01月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

巡子と美汐が一緒にお風呂に入る場面で涙が出てきた。
生まれ来る命と消え行く命。正反対なのに命という同じもの。何て言ったらよいか...とても綺麗な場面だと思った。

静人が倖世と...っていうのは予想してたけどなんかしっくりこなくて戸惑ったけど、全体としては好き。
先へ先へと読んでしまったので、今度はゆっくり静人の歩みのように踏みしめながら読みたい。

0
2020年04月03日

Posted by ブクログ

死と生と愛。
「悼む人」静人と関わった3人の登場人物がどのように変わっていくのか。
死と向き合うことで生をつかむ。
それには愛ご必要なのだ。

0
2020年02月23日

Posted by ブクログ

「悼む人〈下〉」
上巻読んだらマスト。


上巻は、静人は何故悼むのかに焦点が当たっていた。蒔野はエグノらしく下世話な下心で静人と母巡子に近づく。奈儀は夫を殺した罪から愛を信用できない。死者が愛されていたことを悼む静人を理解できない。


下巻は、静人の行動が二人に影響を与えていく過程が描かれる。エグノこと蒔野は静人の様な視点の記事を書いてしまう。拒否反応を示しながらも死者に対する考え方が、死者の愛し、愛され、に寄せられていく。その記事を旧友から褒められてしまい、悪くない気持ちになる。


夫殺しの奈儀は、死して尚現世に残る夫と共に、静人の旅に同伴する。彼女と同じような違和感を持ちながら静人に接する人々を見て、それに対応する静人を見て、静人が悼む理由を俄然知りたくなる。そして、彼が夫と対話することになる。まさかの能力解放だ。


二人は何かを静人から教えてもらう訳でもなく(教えて貰いたい等も思っていない)、静人も自分の行動を上手く言語化することもない。側から見れば、宗教くさく見えるのは当然だ。世界には沢山の無慈悲な死を迎える人々がいる。その現実があるのに虚しくならないか?貴方の行動には意味が無いのではないか?と批判や疑問をぶつけられさえするが、静人としては、確固たる信念でそんな世界を変えようとしてる訳ではなく、自分がただそうしたいからしているだけ。この考え方にしっくりこない二人が、ゆっくり確実に変わっていくのは、一つのポイントである。


しかし、一番の読みどころは、静人の母である巡子のストーリーだ。母からしても静人の悼む旅の理由は分からない。末期ガンになりながらも、母として静人に帰ってきてほしいと思いながら、彼の旅を尊重する。娘はシングルマザーの決意を固め、夫も自分と共にしようとする。そんな中、悔いなく最後を迎えようと努めるのだが、最初から最後まで感情移入無しでは読めない。


母から静人への信頼のような愛を想うと、彼女のような純粋な思いから、静人は悼しんでいるのだろうと思った。

0
2019年09月07日

Posted by ブクログ

一度目挫折してからの再読は一気読み。
とても綺麗な文章で胸に響く。
たくさん涙を流したことで心が綺麗になったような気がした。

命には限りがあり、生まれれば死ぬのが人生。
ただ、人の記憶から忘れられることが本当の死だと言う。
人は忘れる生き物である故に悼みは尊い。

死ぬ為に生きるだなんて矛盾だらけで皮肉のようで、どのように生きたか、生きるか、死生観は究極の教養とはよく言ったものだ。

歳をとることに抗いたくなるけれど、歳をとって解ることが増えてくる。感じられるようになってくる。
精一杯生きよう。

0
2018年11月11日

Posted by ブクログ

生前誰を愛し誰に愛されどんな事で感謝されたのか。出産を控えた静人の妹と巡子や自殺幇助を強要された倖世の生の美しさ。静かな筆致はきれいな空気や水みたいに自然で密に、でも重くない重量感で流れ込んで来る。凝縮されているのにくたびれない。全うされた人生がキラキラと眩しく死がきっかけなのに確かな希望を感じた。

0
2018年10月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

坂築静人
悼む人。三十二歳。無職。元医療機器メーカーの営業職。退職し、死を悼む旅に出る。新聞、ラジオや雑誌から、事故や事件の情報を得て、人が死んだ場所を訪ね歩き犠牲者を悼む。

蒔野抗太郎
北海道の新聞記者を始まりに、都内の夕刊紙、スポーツ新聞と渡り歩き、七年前からいまの週刊誌に契約制の特派記者として籍を置いている。残忍な殺人や男女の愛憎がらみの事件を得意とするから、エログロの蒔野、「エグノ」と呼ばれている。四年前に浮気がばれて離婚し、息子とは一度も会ってない。北海道で発見された白骨遺体の事件をきっかけに静人と知り合う。

成岡
蒔野が所属する出版社にこの春入社した新人。

海老原
蒔野の班デスク。六歳年上。

蒔野の父
悪性リンパ腫で入院中。余命僅か。声を失っている。

北海道警察本部の警部補
二十年前に失踪した女子銀行員の白骨死体が出たと蒔野に連絡をする。

坂築巡子
静人の母。五十八歳。末期癌患者。病院を出て在宅ホスピスケアを選んだ。兄の継郎は十六歳のときに病死。

坂築美汐
静人の五つ年下の妹。二十七歳。都内の旅行代理店勤務。一人暮らししていたが、母の在宅ケアに合わせ実家に戻る。高久保英剛の子を妊娠。

坂築鷹彦
巡子の六歳年上の夫。

浦川はるみ
訪問看護師。

福埜怜司
静人の従弟。鷹彦の妹みのりの息子。美汐と同じ年。都内の通信事業会社に就職し、インターネットでの様々な情報を管理運営している。

高久保英剛
怜司の大学時代の友人で、都内の銀行に勤めている。美汐の元交際相手。

奈儀倖世
最初の結婚相手から暴力を受け、家庭内暴力の被害者を支える寺にかくまってもらう。その寺の長男の甲水朔也の尽力で離婚することができた。その後、求婚を受けて再婚しで一年後に彼を殺した。事件現場で悼む行為をしていた静人と出会い、行動を共にする。

甲水朔也
奈儀倖世の夫。寺の長男。東大出身。幼い頃に実母が死に、義母が産んだ腹違いの弟がいる。寺の敷地に家庭内暴力の被害者女性のシェルターや高齢者施設などを設立。仏様の生まれ変わりと慕われる。

野平清実
出版社編集部の社員。蒔野の後輩。新人記者。入社二年目。

矢須亮士
蒔野と北海道の新聞社に同期入社の元同僚。

尾国理々子
蒔野の父の愛人。元銀座のバーのホステス。

高久保英剛の兄
県会議員の叔父の秘書。

埼玉県警捜査一係の強行犯係長

山隅泰介
巡子の主治医。

姜久美子
助産師。

福埜みのり
巡子の大学時代の親友。鷹彦の妹。怜司の母。家業の運送会社を切り盛りしている。

比田雅恵
女性医師。

栄哉師
菩提寺の住職。

0
2025年10月02日

Posted by ブクログ

天童さんの著書を初めて読みました。
興味惹かれる題材と丁寧な文章で大変読みやすかったです。物語の最後が想像していたものと違い、あれって感じです。

0
2023年03月28日

Posted by ブクログ

悼む人と呼ばれるようになった青年の、死者への悼みの旅は、共感する部分もありました。
今、高村光太郎の「智恵子抄」を少しずつ読んでいるのだけれど、誰に愛され、誰を愛し、誰に感謝されたかを、記憶に残すということを悼むとするならば、高村の詩や裸像は、妻を愛した記憶の蓄積で、悼むそのものと思う。
“悼む人”は、彼に関わった記者の男性に変化をもたらせていく。彼の書く記事は、事件の当事者達の生い立ちや心情に寄り添うようになるが、オヤジ狩りにあって失明する。それでも、信奉していく。彼の旅を追い続けた女性は、過去の結婚と夫殺害の愛の矛盾に折り合いをつけて、悼む人と何故か結ばれる。そして、悼みの旅の邪魔になるから別れる。母親は娘の出産を待って亡くなり、息子の悼む人に会えない。登場人物達との関係性がうまく収まらず。本人さえも、この自分の行為の意味をつかめて無いのかなあ。
それぞれ、死を迎えてしまった人の周囲の人が、祈り、弔い、そして悼み、記憶に残して欲しいということでしょうか。

0
2023年03月26日

Posted by ブクログ

静人の悼む行為に何等かの意味をもたせようとすることが間違いなのかもしれない。
誰しも独りぼっちではない、例え本人が知る由がなくとも、誰かが気にかけて居る事を知っておくべきだろう。

0
2022年12月25日

Posted by ブクログ

天童荒太の作品を読むのは初めて。まとめのような書き方をしている感じで、あまり好きでは無い。
また、悼む人という人物像を思い至って、その上生々しく創り上げたのは素晴らしいが、深い河をどうしても連想させてしまう。
良い点としては、静人が本当に家に帰ったどうかを不明にしたままということ。帰らせたのは神聖を失うが、明確に帰らせなかったのは指向性が強すぎる。
にしても、奈儀はともかく、蒔野の改変は急激すぎで説得力ない。二人とも悼む人になること自体も指向性が強いが。
個人的には、悼む人が存在したらすごく嬉しいことだか、それが伝染していくのはあまり好まないと思う。

0
2022年12月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

薪野に感情移入してたので、最後の登場シーンはただただ辛かった。
巡子のラストシーンは文を読むと頭の中に光を浴びた美しい映像が写し出され、息を飲んだ。
ちょっと欠けた部分を持ちながらも、優しい心を持った坂築家に癒されました。

天童さんの繊細で優しい心がそのまま書き出されたこの本は、繊細が故の描写に時々心をナイフで抉られてしまうけども、愛や死について深く考えさせられる良作でした。

0
2020年07月09日

Posted by ブクログ

10年前に一度読み、その時は読み進めることが苦しく、とても時間がかかったと記憶しています。
改めて読んでみると、やはり苦しい。
後半は涙が止まらなく辛い。
苦しいのは、普段近くにある誰かの「死」の存在に向き合ったことがないから。
「死」をテーマに物語が進む一方で、生きることについて考えさせられる作品でした。

0
2020年06月17日

Posted by ブクログ

いつどこでどんな状況で死を迎えるのだろうか。
死んだあとには悲しんでくれる人が近くにいてくれるのだろうか。
どれだけの準備をして死を迎えることができるのだろうか。
『悼む人』の存在は、人々のそんな死への漠然とした恐怖を和らげてくれるのかもしれない。
どんな人の死も、その人が確かに存在し、愛し愛されていたことを平等に悼む。
テーマの重さになかなか頁が進まないことも多かったけど、悼む人には誰もがなれるのではないかとも思う。

0
2019年07月29日

Posted by ブクログ

読後、今まで生きてきた中で看取ってきた方、故人を思い浮かべる。自身もギャンブル狂いだが金に困った人に金を貸してた人、親が自宅で溺死した後もその家で暮らしつづけながら悩みを打ち明ける人に真摯に相談に乗りながらも冗談を交え勇気づけていた人...。「忘れる」ことは、人を二度、この世から抹殺するのだ。
7年もかけて紡いだ著者の、協力者の想いに感謝。ただ、静人と倖世の後半の件だけには目を背けた自分がいた。

0
2019年06月28日

Posted by ブクログ

【フレーズメモ帳】
「疑うことなんてないのよ。そんな必要はないの。誰かのためにね、その人のためになら、自分が少しくらい損してもいいって思えたら、それはもう、愛でいいのよ。」

0
2025年01月24日

シリーズ作品レビュー

「小説」ランキング