【感想・ネタバレ】悼む人 下のレビュー

あらすじ

善と悪、愛と憎しみ、生と死が交錯する直木賞受賞作! 著者が切望した、「いま世界に一番いて欲しい人」とは?
不慮の死を遂げた人々を“悼む”ため、全国を放浪する若者・坂築静人。静人の行動に戸惑いと疑念を覚え、その身辺を調べ始める雑誌記者・蒔野。末期がんに冒され、家族とともに最後の時間を過ごしながら、静人を案じる母・巡子。そして、自らが手にかけた夫の亡霊に取りつかれた女・奈義倖世。
静人の姿が3つの視線から描かれ、その3つのドラマが、やがて1つの大きな物語の奔流となる。「この方は生前、誰を愛し、誰に愛され、どんなことで人から感謝されてでしょう?」静人の問いかけは、彼を巡る人々の心を、少しずつ動かしていく。
家族との確執、死別の悲しみ、自らを縛りつける呪縛との対決。そして避けられぬ死の傍らで、新たな命が――。静かな感動が心に満ちる感動の巨編!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

後半は一気読みに近かった。
序盤は静人の悼みに対して、自分の考えに合う死者の断片だけを切り取った解釈を行う事への理解が出来なかった。全ての死に同等の悼みが与えられる訳が無い。と。作中に登場する多くの人々と同じ否定的な考えを持った。が、後半は静人の人物像が深く掘り下げられ、共感とはいかなくとも理解は出来た。
巡子の死に寄り添いながら読み進めていくうちに、自身の生き方を考えるいいきっかけになった。
全てがままなら無いもの、人は不完全な生き物、そして完全に消化されずに逝く生き物、ただその先は決して暗い物ではない。そんな事を教えられた気がした。

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2023年10月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

死者を悼む旅を続ける青年の物語。

ここで言う「悼む」とは、弔うことでもなく冥福を祈ることでもない。

忘れずに覚えていると言うこと。

とても単純なことのように思えるがこれがものすごく心に突き刺さった。

確かに死んだ人とは二度と会えないが、覚えてくれる人がいる限りその人の存在が消えることはない。

そこにスポットを当てた作品だと感じた。

死ぬとはなんなのか、生きるとはなんなのか、存在するとはなんなのか、その全てに一つの導きを与えてくれているような気がする。

どれが正しいなんて分からないが、主人公は全て分かっていて、母に会いに行かず、倖世に託しのではないか、誰かが覚えてくれていればその存在は消えることはないのだから。

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2019年11月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

上巻は悼む描写が多く、なんだか読んでて暗い気持ちになったが下巻は暗いながらも光がさしてきた感じで引き込まれた。

ゆきよの肩の亡霊を通して、気持ちがよくわからなかった静人の本音も聞けてスッキリした。
「自殺をする代わりに、他人の死を悼むようになったのかもしれないなって」言葉が印象的。
生きる為にそれをするしかなかったんだと思うと気持ちはわからないが納得できた。

生と死、愛は何かとか一生のテーマで難しいけど、考えさせられる物語で一読の価値あり。
いつかはみんなも自分も死ぬわけだし。
最後の巡子が見たシーンの描写は美しく、死ぬ時に見えるのがそういう光景なら死も悪くないと思う。

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2021年05月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

巡子と美汐が一緒にお風呂に入る場面で涙が出てきた。
生まれ来る命と消え行く命。正反対なのに命という同じもの。何て言ったらよいか...とても綺麗な場面だと思った。

静人が倖世と...っていうのは予想してたけどなんかしっくりこなくて戸惑ったけど、全体としては好き。
先へ先へと読んでしまったので、今度はゆっくり静人の歩みのように踏みしめながら読みたい。

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2020年04月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

坂築静人
悼む人。三十二歳。無職。元医療機器メーカーの営業職。退職し、死を悼む旅に出る。新聞、ラジオや雑誌から、事故や事件の情報を得て、人が死んだ場所を訪ね歩き犠牲者を悼む。

蒔野抗太郎
北海道の新聞記者を始まりに、都内の夕刊紙、スポーツ新聞と渡り歩き、七年前からいまの週刊誌に契約制の特派記者として籍を置いている。残忍な殺人や男女の愛憎がらみの事件を得意とするから、エログロの蒔野、「エグノ」と呼ばれている。四年前に浮気がばれて離婚し、息子とは一度も会ってない。北海道で発見された白骨遺体の事件をきっかけに静人と知り合う。

成岡
蒔野が所属する出版社にこの春入社した新人。

海老原
蒔野の班デスク。六歳年上。

蒔野の父
悪性リンパ腫で入院中。余命僅か。声を失っている。

北海道警察本部の警部補
二十年前に失踪した女子銀行員の白骨死体が出たと蒔野に連絡をする。

坂築巡子
静人の母。五十八歳。末期癌患者。病院を出て在宅ホスピスケアを選んだ。兄の継郎は十六歳のときに病死。

坂築美汐
静人の五つ年下の妹。二十七歳。都内の旅行代理店勤務。一人暮らししていたが、母の在宅ケアに合わせ実家に戻る。高久保英剛の子を妊娠。

坂築鷹彦
巡子の六歳年上の夫。

浦川はるみ
訪問看護師。

福埜怜司
静人の従弟。鷹彦の妹みのりの息子。美汐と同じ年。都内の通信事業会社に就職し、インターネットでの様々な情報を管理運営している。

高久保英剛
怜司の大学時代の友人で、都内の銀行に勤めている。美汐の元交際相手。

奈儀倖世
最初の結婚相手から暴力を受け、家庭内暴力の被害者を支える寺にかくまってもらう。その寺の長男の甲水朔也の尽力で離婚することができた。その後、求婚を受けて再婚しで一年後に彼を殺した。事件現場で悼む行為をしていた静人と出会い、行動を共にする。

甲水朔也
奈儀倖世の夫。寺の長男。東大出身。幼い頃に実母が死に、義母が産んだ腹違いの弟がいる。寺の敷地に家庭内暴力の被害者女性のシェルターや高齢者施設などを設立。仏様の生まれ変わりと慕われる。

野平清実
出版社編集部の社員。蒔野の後輩。新人記者。入社二年目。

矢須亮士
蒔野と北海道の新聞社に同期入社の元同僚。

尾国理々子
蒔野の父の愛人。元銀座のバーのホステス。

高久保英剛の兄
県会議員の叔父の秘書。

埼玉県警捜査一係の強行犯係長

山隅泰介
巡子の主治医。

姜久美子
助産師。

福埜みのり
巡子の大学時代の親友。鷹彦の妹。怜司の母。家業の運送会社を切り盛りしている。

比田雅恵
女性医師。

栄哉師
菩提寺の住職。

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2025年10月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

薪野に感情移入してたので、最後の登場シーンはただただ辛かった。
巡子のラストシーンは文を読むと頭の中に光を浴びた美しい映像が写し出され、息を飲んだ。
ちょっと欠けた部分を持ちながらも、優しい心を持った坂築家に癒されました。

天童さんの繊細で優しい心がそのまま書き出されたこの本は、繊細が故の描写に時々心をナイフで抉られてしまうけども、愛や死について深く考えさせられる良作でした。

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2020年07月09日

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