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善と悪、愛と憎しみ、生と死が交錯する直木賞受賞作! 著者が切望した、「いま世界に一番いて欲しい人」とは?
不慮の死を遂げた人々を“悼む”ため、全国を放浪する若者・坂築静人。静人の行動に戸惑いと疑念を覚え、その身辺を調べ始める雑誌記者・蒔野。末期がんに冒され、家族とともに最後の時間を過ごしながら、静人を案じる母・巡子。そして、自らが手にかけた夫の亡霊に取りつかれた女・奈義倖世。
静人の姿が3つの視線から描かれ、その3つのドラマが、やがて1つの大きな物語の奔流となる。「この方は生前、誰を愛し、誰に愛され、どんなことで人から感謝されてでしょう?」静人の問いかけは、彼を巡る人々の心を、少しずつ動かしていく。
家族との確執、死別の悲しみ、自らを縛りつける呪縛との対決。そして避けられぬ死の傍らで、新たな命が――。静かな感動が心に満ちる感動の巨編!
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Posted by ブクログ
【短評】
第140回直木賞に選出された『永遠の仔』と並ぶ天童荒太の代表作。
坂築静人(さかつきしずと)は不慮の死を遂げた人々の足跡を辿り、"悼む"ために日本全国を放浪している。これは、時に称賛され、時に嫌悪されながら、いつしか「悼む人」と呼ばれた彼に纏わる三人の人間の物語である。
「エグノ」と渾名される辣腕で知られた週刊誌記者・蒔野抗太郎(まきのこうたろう)。
末期がんにその身を侵されながら、息子・静人の帰りを待つ母・坂築巡子(さかつきじゅんこ)。
殺した夫の霊とともに各地を彷徨うなか、静人と邂逅を果たす奈儀倖世(なぎゆきよ)。
複雑な背景を抱えた人間が「悼む人」を思い遣るその心情にスポットを当てることで、読者自身が「悼む人」を見詰めることになる構成が上手い。老練の技である。
三つの章それぞれに違った趣があり、どの章も惹き込まれるものがあったが、なかでも坂築巡子の描き方はレベルが違った。どうすればそんな描写を思いつくんだ、と歯噛みするほどに圧巻な情景が散りばめられており、しばし呆然とすることが何回かあった。
特に「介護者」のラストシークエンスである雲の描き方は、凡百が到底到達し得ないレベルにあったように思う。その後の(一見、意味の通らない)台詞もまた何とも言えない力があった。あの辺りの文章だけで私は五点を進呈したい。ぜひ読んで確かめて欲しい。
【気に入った点】
●「死」の描き方。坂築巡子の章における死を受け入れた人間の思考に対する解像度の高さに舌を巻いた。「情景」という簡素な言葉では足りない程の、彼女が目にした美しいとしか言い得ない景色の数々が今でも頭の中にリフレインしている。特に「いよいよ」というところからは見事の一言。誰も経験したことのない「死にゆくもの」の一人称としてこれほどの者を私は読んだことがない。また、「悼む人」の意味のようなものに決着を付ける構成上の巧さもまた評価したい。
●霊の描き方が絶妙。超常とも本音の発露とも取れる絶妙なポジション。霊との対話を通じて一個の人間としての坂築静人が立体感を持っていく様も素晴らしかった。
●蒔野が「悼む人」に惹かれていく過程も悪くなかった。仕事柄、社会を冷笑するような立ち位置に居る彼は、ある種読者の代弁者なのだろう。
【気になった点】
●本編においては特に無い。素晴らしかった。
●評価上全く影響を及ぼしていないことを前置きした上で、帯が良くない。「世界にいま一番いて欲しい人」などというキャッチコピーを考えた誰かは、本作の妙味を理解していないように思う。「悼む人」フォロワーを増やしてもどうしようもないと思うのだ。また、引用部分もそこじゃない感がかなり強い。
『昭和探偵物語』で天童荒太を理解した気になっていたことを恥じたい。(いや、あれはあれでかなり面白いのだが)唸る程に綺麗な文に触れたのは久しぶりだ。こういう打ちのめされる類の読書も実に良い。『永遠の仔』にも近々挑戦してみたいと思う。
Posted by ブクログ
直木賞作品。
どうやってこのストーリーを締めるんだろってずっと思ってたけど、文句なしの素晴らしすぎるラストでした。
静人が主人公のようで、静人目線は一度もない。取り囲む3名は誰も主人公じゃなく、彼らの目から見た静人を描くことで主人公を表現してる。
キリストやブッダのことを語る人々の声によって彼らが形づくられていったのと同じように。
それもまた圧巻。
蒔野のストーリーは、泣きそうになった。
父親との関係。生きたまま焼かれた女性のこと。
静人に対する蒔野の心境が変わっていく理由の描き方が素晴らしい。複数の出来事が重なってじわじわ、が見事。
倖世も見事にまとまった。
でも少し物足りない気がしてたら、エピローグにやられた。こんなん泣くだろ。
ただのありきたりな泣かせじゃないところがまた良い。
Posted by ブクログ
亡くなった人を「悼む」旅を続けている青年に関わった人達の視点の物語
以下、公式のあらすじ
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不慮の死を遂げた人々を“悼む"ため、全国を放浪する坂築静人。静人の行為に疑問を抱き、彼の身辺を調べ始める雑誌記者・蒔野。末期がんに冒された静人の母・巡子。そして、自らが手にかけた夫の亡霊に取りつかれた女・倖世。静人と彼を巡る人々が織りなす生と死、愛と僧しみ、罪と許しのドラマ。第140回直木賞受賞作。
"「この方は生前、誰を愛し、誰に愛されたでしょうか?どんなことで感謝されたことがあったでしょうか?」ーー事件や事故で命を落とした人々のためを「悼む」放浪の旅を続ける静人。 彼の問いかけはそのまわりの人々を変えていく。 家族との確執、死別の葛藤、自らを縛り付ける""亡霊""との対決、思いがけぬ愛。 そして死の枕辺で、新たな命が生まれ……。 静かな感動が心に満ちるラスト! " 映画化、舞台化された話題作。
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名前を覚えられる死と数でしか知らされない死にどんな違いがあるのか?
悲惨な事件・事故で亡くなった人、大勢が一度に大量に死ぬ他国の戦争や紛争、病気で亡くなるにしても孤独の中で亡くなる人もいれば、家族に看取られて逝く人もいる
そして、人は「あなたのことは絶対に忘れない」と言たとしても大切な人の死を忘れる
友人の死をきっかけに「悼む」ことに囚われたし静人
そして、関わりの持った人達
父母の離婚をきっかけに心がすさみ、自身も結婚したが妻子と別れ、下衆な記事を書き連ねる新聞記者の蒔野
末期の胃癌になり、死を迎えようとしている、静人の母 巡子
被虐体質でDV夫と別れ、聖人君子のような僧侶に請われて再婚したが、自殺願望を持つその夫に請われて殺してしまい、夫の亡霊が取り憑いたと思っている倖世
静人の父、静人のせいで結婚が破談になった妹、兄妹の従兄弟
「悼む」という行為の本質は何かを考えた際に、「故人を想う」かなと思った
故人が「誰を愛し、誰に愛され、どんな感謝をされたか」を記憶に留める静人の行為
でも、偽善とか、良い面しか見ていないとか、勘違いの情報だという人もいる
個人的には、それでいいのではとも想う
どれだけ親しい人でもすべては理解でいないわけだし
勘違いだろうが、悼む行為に違いはない
そもそも、悼む行為は人それぞれであって、万人に共通の想いではない
鴻上尚史の人生相談の記事で、震災で亡くなった人への黙祷の時間に席を外す同僚を批判する人に対して、その答えも似たような事を言っていた気がする
それこそ、悪いことをした人を悼んではいけない理由はない
静人は、殺人を犯した人の場合は被害者を三回悼んだら当人も悼むという基準を設けているけれども、今までその条件を満たした人がいない
殺人犯にも家族はいるし、悪人と言えど愛した人、愛してくれた人もいるかも知れないし、時には感謝された事もあるかもしれない
殺人や悪事という行為は良くないけれども、その行為がその人のすべてではないんだよな
事件で亡くなった人でも、静人は亡くなった状況や経緯、加害者について調べたり聞いたりしない理由
「加害者を憎むと、憎しみにとらわれて、被害者のことを忘れてしまう」という
となると、どうやって死んだか?よりも、その人がどう生きたのか?を重視した方がいいので
「誰を愛したか、誰に愛されたか、どんなことで人に感謝されていたか」を聞くようになったと
被害者の無念さを知っても、それがその人の本質ではないのだろうなぁ
視点人物の三人
母である巡子は静人を愛した人で
奈義倖世は静人が愛した人で
蒔野抗太郎は静人に感謝した人
静人が人を悼むように、静人は人から悼まれるとき、巡子は関係者として思い出されるかもしれない
でも、倖世と蒔野は他に悼む人が知り得ない人達
だけど、その悼みでもいいという事も暗に示されているような気がする
もしこんな人がいたとしたら
抗太郎が思ったように、死に際して、その死を受け入れられるようになるかもしれない
私自身が亡くなる時にもそう思えたらいいな
人は二度の死を迎えるというけれども
世の中、こんな人がいたらいいのにの本当に想う
Posted by ブクログ
感想がまとまらずA4サイズの紙に箇条書きしてみました。2枚びっしり書いても足りないくらいで本は上下巻とも付箋だらけ笑
あまりにも考えさせられることがたくさんあるので
ストレートに刺さった言葉から。
⦿人生はしんどいなあ。
⦿人物の分析よりも、その人と会って自分が何を得たかが大切。
⦿失われてゆくものをなげくより、残されているものを慈しもう。
⦿同じ事実でも立場が違えば見えているものが違う。
⦿疑うことなんてない。誰かのために、そのひとのためになら、自分が少しくらい損をしてもいいって思えたらそれはもう愛でいい。
天童さんのとてもキレイな言葉の表現に感動しました!もちろん号泣こみです(TT)
読書の秋、堪能できましたー。
Posted by ブクログ
平年より12日も早い梅雨の雨が降り濡つ中で、今日もどこかで静人は悼んでいるのか。
『なぜあんなことをしていたのでしょう…何が目的ですか…』 静人にも分からない答を蒔野や倖世が彼らなりに見い出すように、読者も自分なりに見い出すのだろう。
見い出すとすればその人なりにしか出し得ない答。他人に家の中を覗き込むような露悪な表現の中から生への静謐な感謝が湧き出てくる。
蒔野が亡き両親のことを『二人の善い面だけを考えていくと、自分の知る彼らの実像とは離れるが、二人が幼い頃にはまだ持っていたはずの〈無垢な魂〉に、ふれているような気がする』と語る時、巡子が高齢者の老人に対して『あの老人は寝ているだけの存在のようでいながら、老妻にいまも愛され、若い職員には感謝されている』と感じる時、2年前に逝った父のこと、年老いた母のことを思い起こす。
呆けた父の死に様も、看取った母の生き様も、意味あることであったことを知らされる。
父のようにはなるまいと思いながら生きてきて、しかし何だか同じように生きてきてしまったことに嘆息しながらも、この物語を読めば、この世に生かされ血の繋がりを紡いでいく一片としての自分の存在の重さを改めて知る。
そして、様々な愛や感謝が語られる時、一緒に生きる妻や子らとの暮らしの幸福に、私も感謝する。
巡子の鮮やかな彼岸への旅立ちかたに〈悼む人〉が私の中に残したものを思う。
『生きていた者が死んだとたん、数にされ、霊にされ……近しい者以外、どんな人物が生きていたかを忘れていくのに……この男は、死んだ者の生きていた時間に、新たな価値を与える。その人物が、この世に存在していたことを、ささやかに讃える』その意味を。
Posted by ブクログ
死者の出た事件現場を訪れては、その死を悼む青年 坂築静人は「悼む人」という異名で呼ばれるようになる。
人の不幸や死を、色と欲で塗り込めたエゲツない風俗記事にしている雑誌記者 蒔野、末期癌で余命宣告を受けた静人の母 巡子、理想の伴侶と信じた夫から自殺幇助を強要されて夫殺しをしてしまった女 倖世、三様の視点から痛む人を描いていく構成になっている。
読み終わっても静人の行為の真意は漠然としていて理解が難しい。しかし、悼む行為を理解することが本作品の真意ではない気がする。
どのように生きるのか、どのように死ぬのか、どのように人と関わるのか、といった死生観を考えさせられる作品だった。
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