Posted by ブクログ
2016年09月12日
すごく面白かったと同時に、すごく恐ろしい物語だった。
天童荒太さんの小説を読むのは初めてだけど、映像化されているものはいくつか観ていて、そのほとんどすべてに共通しているのが“人の生い立ちとその後のこと”だと思うのだけど、人の暗い生い立ちが凶悪な犯罪につながることもあるという物語の中の出来事は、現実...続きを読むでもけっこう見かける事実だと感じた。だからとても恐ろしかった。
物語の大筋は、ひとり暮らしの女性たちが次々誘拐され悲惨な末路を迎えている連続殺人事件と、同じ管轄内で度々発生しているコンビニ強盗事件。
コンビニ強盗を担当する女性刑事の風希、音楽をやりながらコンビニでアルバイトをしている潤平、コンビニ強盗事件の際たまたま居合わせた謎の男タカシが主要人物で、その3人の視点が順繰りに物語を綴っていく。
人が痛めつけられるシーンはとても凄惨で、血の臭いさえ漂ってきそう。そういえば他の作品が映像化されたときもけっこう凄かったな…と思い出した。
普通ならば想像もつかないけれど、酷いやり方で人を痛めつけ殺しても何とも思わない人間が確かにこの世の中にはいるのだと思う。けして物語上のお話ではないということ。
凶悪犯罪が起こるとテレビでは度々“犯人の心の闇”にスポットを当てるし、実際生い立ちが人格形成に影響することもあるのだろうけど、すべてをそのせいにするのは違和感があるし、いくら心に闇があるからと言って他人を傷つけていいわけではない。
この小説は主要人物がみんな何かしらの心の闇を抱えているからこそ、そうであってもまともに育った者とそうでない者の対比がはっきり見えたように思う。
終盤は本当にドキドキハラハラしながら一気に読んだ。軸は重いけれど、ミステリ的な読み物としてすごく面白かった。