天童荒太のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「ニュースは先進国から配信されるんだよ、ママ。だから先進国の被害は、五人でも五千人でも、ぼくたちは知ることができる。同情し、怒って、報復は仕方ないと思える。でもねママ、貧しい国にはカメラはない。大きい国に都合の悪い映像もカットされる。だから、貧しい地域で殺された子どもや、誤爆で吹き飛ばされた花嫁や、飢えや疫病で死んだ家族の姿は、ニュースには流れないんだ。十万人、百万人と死んでも、ぼくらは涙は流せない。だってテレビに映らないからね。わかる、ママ?いまは、テレビに映らない死者は、はじめから生きている人としても、存在していない時代なんだ。すごいペテンだと思わない?」
全然物語の潮流のセリフなんだ -
Posted by ブクログ
徐々に登場人物達の心が変わってゆくのを感じる。過去と向き合うことはひどく困難なのは十分わかっている。でも向きあわなければわからないこともたくさんあり、今自分を縛っているのが何なのかということも自覚できない。天童さんの小説に出てくる人物は皆がひどく何かを背負っていると感じるが、背負っていない人などいないのかもしれない。誰の立場に立つかで視線は自然と変わり、その度に心を揺さぶられる。それでも圧倒的な苦しさの奥に、どこまでも純粋な差し伸べられる手を感じずにはいられないのはなぜだろう。誰もが幸せになるのは難しい。でも、今より未来を見られるようになることはできるのではないか、と祈りたくなった。