天童荒太のレビュー一覧
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感想を書きこもうとして気づきました。続編だったんだ。
確かに主人公達がいきなりニックネームで動き出すし、どことなくバックグラウンドの説明も不足してた。そもそも本を手に取ったとき「妙に新しいな~」と思ったのです(第1作は2006年、この続編は2022/3出版)。
もっとも軽い違和感を感じたレベルで、この本だけで問題なく読める完結した話です。とは言え、前作を読むともう少し理解が深まるのかもしれません。
天童さんのテーマは「人に寄り添う」ことだと私は勝手に思っていますが、この本もそれを存分に描いた善意の本です。
人の事を思う、差別を無くす、「私はここにいる」と立ち上がる。最初から最後まで、善意を分 -
Posted by ブクログ
本巻が完結編。全体で約1700ページほどあったが、それほど長さは感じない。家庭崩壊と再生への道のりという重たいテーマで書かれていたが、小刻みに登場人物の視点が切り替わるのでマンネリとせず読みやすく、読み始めるとあっという間という印象。
人が生きていれば考え方も様々に異なるために齟齬が生まれるし、虚無感に苛まれることもある。思い通りにいかないこともあるし、誰も私を認めてくれないと思うことだってある。自分が認められうる場所を探すというのは承認欲求なのかなと思う。他者を認めることは下手をすると自分を否定することにも繋がってしまうため難しい部分はあるが、それでもそうした心掛けは必要なのかなと感じる -
Posted by ブクログ
このような作品を読んでいると、人間の心の危うさ、脆さを実感してしまう。多分、どの人も皆生きづらいのだと思う。確かに現代日本は紛争もなく、平和と言えば平和なのかもしれない。しかし、それは人々の鬱屈した気持ち(言いたいことを言えない、誰もわかってくれないなど)の上に成り立っているものであって、かなりの危うさを秘めている。それが少し噴出したものがSNSでの誹謗中傷などなのかもしれない。
誰かが誰かを傷つけ、その傷つけられた人がまた他の誰かを傷つけ、それが永遠と繰り返されているように感じてならない。我々の心は一体何を求め、どこに向かっているのかと、ふと思う。 -
Posted by ブクログ
1996年第9回山本周五郎賞を受賞した「家族狩り」をベースに、新たに書き下ろした全5部の巨編小説。
ジャンルとしてはミステリーということになるのだろうが、本書ではその部分はほんの触りでしかない。どちらかというと、些細なことが引き金となり様々な形で崩壊していく家族、そこに位置する人間模様が中心に描かれている。
恋人はいるが家族を作ることに強い抵抗を感じている高校教師の巣藤、家庭が崩壊した過去を持つ刑事の馬見原、児童虐待に携わる児童相談センターの氷崎、主にこの3人の視点から物語が語られ、ある事件を契機に3人の運命が交錯したところで本書は終わる。
この後の展開がどうなるのか、気になるところで -
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震災から4年。立ち入り制限がある地域の海に潜り、遺品を持ち帰ることを被災者の会から依頼されている主人公。
月夜に潜り、そこに住んでいた人たちの生々しい記録が海底に沈殿しているのを見るたびに処理しきれないものを発散したい欲望にかられる。
何故自分はこんなことを引き受けたのか、犠牲になった人もいるのに自分はこんなに幸せで良いのか。
葛藤をしながらも真摯に災害に向き合う。
この作家の特徴だと勝手に思っている、重くて静かな感じ。だが、今回気づいたが、心を描いている分量よりも情景を描写しているほうが多いのではないか?情景描写に心を反映させている面もあるかもしれないが、多少読み飛ばしても差し支えない感じ -
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孤独は好き。むしろ、孤独でないと居心地が悪いこともあった。
でも、このことをいうのは勇気がいったものだった。
ほんとうに孤独じゃないから孤独が好きだなんていえるのよ。
誰にも認識されなかったらどうなるの、寂しいんじゃない。
たった一人で宇宙に浮いている。
だあれも知らないのよ。
関係なく世界は続いていってしまう。
『ひとりなのは、よいことだったから。ただ、自分だけひとりぼっちというのは、ときに胸苦しく感じることがあるから、世界のどこかにいる、ほかのひとりたちを感じたくて』
「孤独の歌声」のストーリーはちょっと怖い。けして荒唐無稽ではない。起こりそうな起こって欲しくない事件の中で3人の -
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ネタバレ
遺された者の想いを描いた作品。この震災では多くの人が亡くなったが、その遺族は亡くなった人の数倍おり、死者に対する想いも遺族の数だけある。その想いは遺品に現れるが、それを海から取ってくる者にも当然現れる。
実際にこういうことをやってる人はいそうな気がする…月が明るい日の深夜に一回浜通りの海に行ってみたくなった。
地名は全く出てこないが、実際に被災した街が舞台になっていることがはっきりと分かる。舟作が潜っている海は福島第一原発近辺ということは明らか。私の被災地訪問の記憶からの推測だが、文平が住んでいるのは浪江や富岡で有志の会の会合が行われるホテルはいわきと思われる。そして化石掘りの話から舟作 -
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静人という青年がただひたすら亡くなった人を悼み旅をする。静人に出会い戸惑いと疑問を感じながらもいつしか惹かれていく週刊誌記者と夫を殺した女性、静人の母親の視点を通して物語が進む。
見ず知らずの亡くなった場所へ行き、周辺でその人のことを聞いてただ悼む。それにどんな意味があるのか、何の為にそんなことをするのか周りから批判や疑問を投げかけられる。私も同様に思ったし、読んだ後もその疑問を拭えない。
当たり前だが、死の描写が多くニュースを見ているようで気分が重くなった。
ただ静人以外登場人物が魅力的なのでサクサク入り込んで読めた。主人公にもかかわらず静人だけどんな人間かよくわからない。
わざとそう描 -
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心に傷を負った少年少女が、仲間とともに傷つけられた場所に包帯を巻くことで、傷を癒す「包帯クラブ」の物語です。
主人公で、ワラというあだ名の高校生・笑美子が、病院でディノと名乗る少年に出会うところから物語がはじまります。病院の屋上のベンチに包帯を巻いて、「これでええ、血が止まった」というディノのことばによって、ワラはとつぜん風景が変わったように感じます。
ワラは親友のタンシオこと丹沢志緒美や、彼女の知り合いのギノこと柳元紳一らと「包帯クラブ」をつくり、ディノと名乗った少年・井出野辰耶や、進路の違いが原因で仲たがいしてしまった中学時代の親友のリスキとテンポに、「包帯クラブ」の輪を広げていこうと