天童荒太のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
幕末に活躍した偉人たちが、それぞれどの藩でどんな事情や理想を掲げて動いていたのか、ヒスイと救吉の旅を通じて学ぶことができる。戦わない、殺さない、の理想を実現するには、何をすればいいのか、どう動けばもっともお互いの被害を最小限にできるのか、どの時代でも追求していくべき永遠の課題だと思う。
お題はいいのだと思うが、話のテンポがどうも自分の性に合わず、すっきりしないことが多かった。この会話はいつまで続くのか、この場面をここまで長く語る必要があるのか。この本、同じ場面でも単に改行ではなく一行空けて話が続くことが多く、「あれ、中途半端に終わって別の話に行くの?」と思ったら「あ、続くのか」ということが続き、もういい頃合いと思ったら「あれ、まだ続くの?」ということが、何度もあった。あくまで私の感想だったが、どうもこの書き方に慣れないため、すっきり読めなかった。 -
Posted by ブクログ
第6回日本推理サスペンス大賞受賞。
7回で終了したらしいですが。
そして、カバーの写真は先日亡くなった彫刻家の船越桂さんの作品です。これが、この小説ととてもマッチしています。
確かにサスペンス。
事件は二つ。コンビニ強盗事件と一人暮らしの女性を狙った連続猟奇殺人事件。
中学時代に親友を見殺しにしてしまったと思い続ける女性刑事。
コンビニでアルバイトをしながら音楽を続ける孤独の歌声を持つ青年。
病んだ母親の束縛の下、家族という形態に執着するサイコパス会社員。
喧騒な都会の中の寂然な孤独。
孤独を望む中で、出会って別れるまでの刹那に繋がりを感じる女性刑事と青年。
偽りの家族の中で孤独であり続けるサイコパス。
初期の作品なのか、面白く読んでみたけど とりとめがない感じもするかな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ職場の先輩と恋愛の話をしていたとき「私さ、自分よりレベルが下の相手じゃないと、自分らしく振る舞えないんだよね」と言う上から目線な発言に失笑したのだが、これは恋愛におけるあるあるなのかもしれない。
レベルが高い素敵な相手には”好かれたい・嫌われたくない”という気持ちから、相手に気に入られようとするあまり、自分らしく振る舞えない。
でも、レベルが低いどーでもいい人にはどう思われたって構わないから、自由奔放に自分らしく振る舞えるの。
って意味ですよね。
「ペインレス」では、”自分よりレベルが下の相手じゃないと、自分らしく振る舞えない”なんて上から目線を遥かに凌駕するサイコパス女性が、思うがままに周囲を翻弄していく。
この女性がなぜ自由奔放に振る舞えるかといえば、生まれつき心に痛みを感じないから。
愛、嫉妬、執着、罪悪感、といった私たちが縛られている痛みを伴う感情を感じないから、誰に対しても優位に立てるのである。
この小説のテーマは”人間は痛みに支配されている”ゆえに、痛みを感じることがない人間は優位に立つことができる、そして痛みから生まれる無駄な争いを必要とない人類のニュータイプなのよ。というものだ。
心に痛みを感じないサイコパスな女性が思うがままに周囲を翻弄していく姿は爽快ではあるけれども、この筋書きは容姿が魅力的でなければ成り立たないと思うのだ。(小説内でもエキゾチックな美女として描かれている)
”人間は美に支配されている”
ルッキズムが叫ばれている昨今、美の基準は人それぞれだけども、美しいものに惹かれる本能を越えられる人はいるのだろうか。
美しいものを目の前にして、理性的に意識することができるだろうか。 -
Posted by ブクログ
悼む人と呼ばれるようになった青年の、死者への悼みの旅は、共感する部分もありました。
今、高村光太郎の「智恵子抄」を少しずつ読んでいるのだけれど、誰に愛され、誰を愛し、誰に感謝されたかを、記憶に残すということを悼むとするならば、高村の詩や裸像は、妻を愛した記憶の蓄積で、悼むそのものと思う。
“悼む人”は、彼に関わった記者の男性に変化をもたらせていく。彼の書く記事は、事件の当事者達の生い立ちや心情に寄り添うようになるが、オヤジ狩りにあって失明する。それでも、信奉していく。彼の旅を追い続けた女性は、過去の結婚と夫殺害の愛の矛盾に折り合いをつけて、悼む人と何故か結ばれる。そして、悼みの旅の邪魔になるから別れる。母親は娘の出産を待って亡くなり、息子の悼む人に会えない。登場人物達との関係性がうまく収まらず。本人さえも、この自分の行為の意味をつかめて無いのかなあ。
それぞれ、死を迎えてしまった人の周囲の人が、祈り、弔い、そして悼み、記憶に残して欲しいということでしょうか。 -
Posted by ブクログ
天童荒太の作品を読むのは初めて。まとめのような書き方をしている感じで、あまり好きでは無い。
また、悼む人という人物像を思い至って、その上生々しく創り上げたのは素晴らしいが、深い河をどうしても連想させてしまう。
良い点としては、静人が本当に家に帰ったどうかを不明にしたままということ。帰らせたのは神聖を失うが、明確に帰らせなかったのは指向性が強すぎる。
にしても、奈儀はともかく、蒔野の改変は急激すぎで説得力ない。二人とも悼む人になること自体も指向性が強いが。
個人的には、悼む人が存在したらすごく嬉しいことだか、それが伝染していくのはあまり好まないと思う。 -
Posted by ブクログ
感想を書きこもうとして気づきました。続編だったんだ。
確かに主人公達がいきなりニックネームで動き出すし、どことなくバックグラウンドの説明も不足してた。そもそも本を手に取ったとき「妙に新しいな~」と思ったのです(第1作は2006年、この続編は2022/3出版)。
もっとも軽い違和感を感じたレベルで、この本だけで問題なく読める完結した話です。とは言え、前作を読むともう少し理解が深まるのかもしれません。
天童さんのテーマは「人に寄り添う」ことだと私は勝手に思っていますが、この本もそれを存分に描いた善意の本です。
人の事を思う、差別を無くす、「私はここにいる」と立ち上がる。最初から最後まで、善意を分厚く塗りたくって行く。善い話なのです。
でも、美味しいケーキのクリームも、余りに同じ味が続くと最後に胸につかえるように、善意が鼻についてきます。ちょっとやり過ぎかな。 -
Posted by ブクログ
本巻が完結編。全体で約1700ページほどあったが、それほど長さは感じない。家庭崩壊と再生への道のりという重たいテーマで書かれていたが、小刻みに登場人物の視点が切り替わるのでマンネリとせず読みやすく、読み始めるとあっという間という印象。
人が生きていれば考え方も様々に異なるために齟齬が生まれるし、虚無感に苛まれることもある。思い通りにいかないこともあるし、誰も私を認めてくれないと思うことだってある。自分が認められうる場所を探すというのは承認欲求なのかなと思う。他者を認めることは下手をすると自分を否定することにも繋がってしまうため難しい部分はあるが、それでもそうした心掛けは必要なのかなと感じる。