天童荒太のレビュー一覧
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ネタバレ最後の最後まで読めない展開づくりはさすが!
性暴力の根底にあるミソジニー、男尊女卑。性暴力は魂の殺人であり、被害者を一生に渡って苦しめるし、その周囲をも巻き込み苦しめていくのにも関わらず、その被害の深刻さは軽視され、「そんなことで大げさな」「あなたにもすきがあったんじゃないの」「ひとりで夜道を歩くから」「なんでもっと気をつけなかったの」等などのセカンドレイプが繰り返される。「明確に拒否しなかったのは同意していたから」なんて、まじハラワタ煮えくり返り案件である。日本は本当に、ちゃんと幼少期から、正しい性教育を行うべき。あわせて人権教育も。性暴力は人権蹂躙だから。
一方で、怪我によって性行為ができ -
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戦いの無くならないこの現実の中で、どう生きますか、どう行動しますか?
本書を読み終わって、まずはそう問われたように思います。
舞台は幕末・1862年の伊予松山藩。
主人公はヒスイ。お遍路宿「さぎのや」で、救吉と姉弟のように育てられた。2人とも戦を嫌い、人の命を守ろうとする。
冒頭、ヒスイが山中で坂本龍馬を助ける場面から物語が始まります。龍馬だけでなく、その後、新選組の沖田総司や近藤勇、土方歳三と出逢い、高杉晋作、桂小五郎とも出逢っていく。都合良すぎる設定かもしれませんが、それらを超えて、十分楽しめ、考えさせられる物語。
「異国の鬼畜らが、この国を領土にしようと攻めてきたら、貴様はどう -
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亡くなった人を「悼む」旅を続けている青年に関わった人達の視点の物語
以下、公式のあらすじ
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不慮の死を遂げた人々を“悼む"ため、全国を放浪する坂築静人。静人の行為に疑問を抱き、彼の身辺を調べ始める雑誌記者・蒔野。末期がんに冒された静人の母・巡子。そして、自らが手にかけた夫の亡霊に取りつかれた女・倖世。静人と彼を巡る人々が織りなす生と死、愛と僧しみ、罪と許しのドラマ。第140回直木賞受賞作。
"「この方は生前、誰を愛し、誰に愛されたでしょうか?どんなことで感謝されたことがあったでしょうか?」ーー事件や事故で命を落とした人々のためを「悼 -
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天童荒太さんの作品を読むのは初めてということもあり、あらすじを読んでなんとなく、「女性が男性に対して復讐をしていく、暴力描写強めな犯罪小説かな?」と思っていたのですが…。
いざ読んでみたら、一冊の中で幾つものジェンダー問題が扱われている、ガッツリ社会派な警察小説でした。とても良い方向に、良い意味で、予想を裏切られました。
性犯罪を加害した者、被害に遭った者。そしてその家族たちや、そういった事件に対する世間や警察の言動など、作中の至るところがリアルであり、読んでいて自然と感情移入して苦しい気持ちになったり、怒りが湧き上がったりする部分も多くあった。作品を通して現実に存在する犯罪や問題の数々を思い -
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ネタバレこの本を選んだ動機を忘れてしまいましたがこれから読み始めます。
謝辞の冒頭に、できるだけ現実に即した、身体だけでなく、精神的にも人々を苦しめつづける被害を取り上げるように努めた。とあるように読み進めていてとても辛く読むのを辞めてしまおうか、とも考えました。
伊坂幸太郎さんのグラスホッパー、マリアビートル、AXと読み終わり三冊分よりさらに辛い内容だったからです。
この作品で問題提起しているように主人とか昔からの表現が呪い?的に人を縛っているところもあるのだろう。
言葉は選んで使わなければいけないなと思いました。
別件で夕方友人とした会話の中で謝られてしまい何で謝るの?と聞いたらだって戻る -
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ネタバレ後半は一気読みに近かった。
序盤は静人の悼みに対して、自分の考えに合う死者の断片だけを切り取った解釈を行う事への理解が出来なかった。全ての死に同等の悼みが与えられる訳が無い。と。作中に登場する多くの人々と同じ否定的な考えを持った。が、後半は静人の人物像が深く掘り下げられ、共感とはいかなくとも理解は出来た。
巡子の死に寄り添いながら読み進めていくうちに、自身の生き方を考えるいいきっかけになった。
全てがままなら無いもの、人は不完全な生き物、そして完全に消化されずに逝く生き物、ただその先は決して暗い物ではない。そんな事を教えられた気がした。
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Posted by ブクログ
ネタバレ続編。
何者にもなりたくないという思いが由来の方言会話がなくなり(それだけ大人になったということかな)キャラも掴めて、どこか客観的位置にいるギモ視点のおかげで前作よりだいぶ読みやすくなってたと思う。
「あとがき」にもあるように、前作で「報告書」という形で語られていた彼ら・彼女らの未来を現在進行形で描きつつ、それに至る過程を前作直後から過去の出来事として描いている。
「障害」や「差別」、「紛争」、大小関係ない様々な問題に抱いた感情真っ直ぐに自分たちの出来ることをする、やりたいからやる彼女たちの目覚ましい活動、経歴を読んでいると、自分の人生に満足してないからか「自分は何もしてないな」なんて卑 -
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「この世界には、たくさんのつらいことがある。悲しみがあふれている。その一つ一つに手当てをすることは誰にもできない。だからといって、何をしたってむだ、なんて言いたくはない。」
前作からかなりスケールが大きなり、世界を舞台にした物語になっていたけど、「包帯クラブ」が伝えたい根っこの部分はずっと変わらない。
コロナ禍で余裕がなくなり、つい自分のことばかりになってしまっている僕らに、誰かのためにほんの少しでも、自分にできることをしようと思わせてくれる。
誰かに寄り添う人がいる。優しさを与える人がいる。
それは小説の中だけのフィクションではなく、自分が一歩踏み出してみるだけで、誰かに何かを与えることだ