あらすじ
『悼む人』『永遠の仔』の著者が贈る、ノンストップ・クライムサスペンス。
誰もが容疑者。誰もが当事者。
性にまつわる犯罪……ジェンダー・クライムは連鎖する。
土手下に転がされていた男性の遺体。
暴行の痕が残る体には、メッセージが残されていた。
「目には目を」
なんと男の息子は、3年前に起きた集団レイプ事件の加害者だった――。
次々現れる容疑者、そして新たな殺人。
罪を償うべきは、あなたかもしれない。
天童荒太の原点回帰にして、記念碑的作品!
感情タグBEST3
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現在も未だハラスメントが問題になっていることはまだまだこれからも課題だと思います。
この度、女性総理が誕生したことで、日本は世界からどう見られるかも気になる方が多いのではないでしょうか。
私もここ数年、夫のモラハラに悩んでいる一人です。
60代半ばを過ぎましたが、「女のくせに」と度々言っています。
レイプにあった女性が、非難されるのもおかしな話です。
みんなが理解するのに時間はかかると思いますが、明るい社会になるよう個人でもできることは進んでやっていきたいですね。
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最後の最後まで読めない展開づくりはさすが!
性暴力の根底にあるミソジニー、男尊女卑。性暴力は魂の殺人であり、被害者を一生に渡って苦しめるし、その周囲をも巻き込み苦しめていくのにも関わらず、その被害の深刻さは軽視され、「そんなことで大げさな」「あなたにもすきがあったんじゃないの」「ひとりで夜道を歩くから」「なんでもっと気をつけなかったの」等などのセカンドレイプが繰り返される。「明確に拒否しなかったのは同意していたから」なんて、まじハラワタ煮えくり返り案件である。日本は本当に、ちゃんと幼少期から、正しい性教育を行うべき。あわせて人権教育も。性暴力は人権蹂躙だから。
一方で、怪我によって性行為ができなくなった志波と恋人の、性行為を前提としない恋愛関係、信頼関係が沁みる。好きな人と性行為をしたいと思うのは当然だし、支配関係のない対等な性行為は素晴らしいものだけど、それがないからといって関係性が不完全というわけではない。恋愛と性的感情は似ているけど違うことも、あわせて学びが必要かも。
Posted by ブクログ
天童荒太さんの作品を読むのは初めてということもあり、あらすじを読んでなんとなく、「女性が男性に対して復讐をしていく、暴力描写強めな犯罪小説かな?」と思っていたのですが…。
いざ読んでみたら、一冊の中で幾つものジェンダー問題が扱われている、ガッツリ社会派な警察小説でした。とても良い方向に、良い意味で、予想を裏切られました。
性犯罪を加害した者、被害に遭った者。そしてその家族たちや、そういった事件に対する世間や警察の言動など、作中の至るところがリアルであり、読んでいて自然と感情移入して苦しい気持ちになったり、怒りが湧き上がったりする部分も多くあった。作品を通して現実に存在する犯罪や問題の数々を思い出し、暗い気持ちになることもあるけれど…。でもこれから社会が良い方向へ変わっていけるように…という願いや希望も込められている作品だと、強く感じました。
社会派小説としての側面だけでなく、段々と真実に迫っていくミステリー小説や警察小説としての面白さもある。そして年の離れた男刑事二人がバディになっていくヒューマンドラマ的な楽しさもあって、個人的にとても読みやすかった。好きな作品です。
ジェンダー問題を扱う社会派小説としてはもちろん、犯罪小説や警察小説としてもオススメの一冊です。
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この本を選んだ動機を忘れてしまいましたがこれから読み始めます。
謝辞の冒頭に、できるだけ現実に即した、身体だけでなく、精神的にも人々を苦しめつづける被害を取り上げるように努めた。とあるように読み進めていてとても辛く読むのを辞めてしまおうか、とも考えました。
伊坂幸太郎さんのグラスホッパー、マリアビートル、AXと読み終わり三冊分よりさらに辛い内容だったからです。
この作品で問題提起しているように主人とか昔からの表現が呪い?的に人を縛っているところもあるのだろう。
言葉は選んで使わなければいけないなと思いました。
別件で夕方友人とした会話の中で謝られてしまい何で謝るの?と聞いたらだって戻るのが遅かったという意味でしょ?と言われてしまい自分の無自覚な発言に反省したました。
後半暖かな場面が多くなり安心して読み進めることができるのは良かった。
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ジェンダー・クライム、天童荒太、文藝春秋
性犯罪をテーマにした、読み応えありのサスペンス小説です。
読み終わって日が経つのに、熱がおさまらないままこの文章を書いています。
ものすごく面白かったです。
衝撃的な始まり、緊迫感のある描写、手に汗握る邂逅、そしてラストシーン……
真犯人の心の叫びに思わず涙してしまいました。
単純にサスペンスとしての完成度が高く、楽しめます。
ですが、この小説は、ただのサスペンス小説ではありません。
ものすごく考えさせられました。
性犯罪の恐ろしさ、無意識のうちにかかっていたジェンダーバイアスなどについて、今更気付かされました。
作中で、読者がハッとしてしまうような台詞を、登場人物たちが次々と放っていくため、読む前の自分とはなんだか違うような気がします。
また、主人公の鞍岡と、バディの志波のコンビが見ていてとても楽しいので、王道バディ警察小説としても読むことができます。
わたしは志波のファンになってしまいました。
シリーズ化希望です。
まとめると……「大切なことに気づかせてくれるバディもののサスペンス警察小説」。
ぜひ読んでください。
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ジェンダークライムとジェンダーバイアス。
異性の感性は、どこまでも自らの性を通して想像するしか術がない主観である。
だけど、このことは「性」に限らない。
男性か女性か、というラインが概ね人類を二つに分ける大きな属性だから、それぞれに「分かりやすいステレオタイプなイメージ」を持つ事で、認知の二択をしておく方が便利だ。男とは、腕力が強く、性的な主体性があり、序列性の競争心が高い種族だ、みたいに。
性以外には、年齢、出身、職業、趣味などで、ある程度の層別が可能。都内私大卒文系、趣味はお菓子作り。たまの休日は姪っこのお世話で最近は一緒にスパに行くのが楽しみな50歳独身です…と言われると、なんとなく自然にその人のイメージをもつ事が可能。ただし、それが「男性」だと言われるまでは。
世の中の現象や他者の言動がピタピタとこのステレオタイプなイメージにハマっている気になる事が、現代社会に蔓延る偏見そのもの。認知的不協和により、自らのバイアスに気付く。そこに着目することが、小説のギミックになり得る。
この物語に振り回されるあなたは、そんなバイアスの塊だ。ジェンダークライムというタイトルは、目の前の読者に突き付けられた糾弾だったのかも知れない。
Posted by ブクログ
育ってきた環境が違うから、自然に男女性差別は身につくのさ。警察という一般企業とは異なる環境は、きっと男女差別が令和verにアップデートは追いついていないだろう。
ベテランと若手新進気鋭のバディによって、ベテランの考えがアップデートされる。
話のモデルには、実在する歌舞伎町の女性保護団体や政権寄りジャーナリストによるレイプドラッグ事件も出てくる。
日本はいつになったら、性被害者に寄り添った法案ができるのか。
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あまりにも悲しい結末にここまで犯人が背負わなければいけなかった事を思うと
本当にやるせ無い。
自分勝手な欲望のままに犯した犯罪は
多くの人に大きな傷を残す。
今でも耐えない性犯罪、家庭内暴力
まだまだ女性は弱い立場
悲しい世界もある事…ただ悲しく思う作品
ラストの鞍岡さんと志波さんのエピソードに救われた作品だった。
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昨今、メディアで見かける性暴力の被害者側がいわれなきバッシングを受けて更なる被害を受ける、加害者家族が住居や学校を追われる様が描かれていた。
現代、ここまでネットやメディアの報道が発達するともうなすすべがなく、大半が泣き寝入りなのだろう、なんともやるせない気持ちになりました。
犯人の動機も悲しく苦しく、ジェンダー・クライム(性にまつわる犯罪)は連鎖していくのか…と救いのなさに落ち込んでいたところ…
ラスト、コンビを組んだ鞍岡と志波。彼らの出会いが思いもかけないころから始まっていたところが描かれ胸熱になり、こみ上げてくるものが抑えられませんでした。
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寂れた草地の中から中年男性の遺体が発見された。
頸部圧迫による窒息死。
異常なのは、裸にされた体内から見つかったメモ。
そこには「目には目を」と書かれていた。
サスペンスものは多く読んできた。
本作も真相がわかるまではゆっくり読み進めた。
随所に天童荒太さんらしいメッセージが置かれている。
ハラハラドキドキもするが
終盤まで、静かでゆっくり進むリズムは変わらなかった。
その痛みに寄り添うことはできるが
簡単に「わかった」とは言えないリアルさがある。
Posted by ブクログ
ある殺人事件からその背景にある過去の事件をも追うミステリー小説。
殺人の次に許せないのはレイプです。
ある意味、殺人以上に被害者及びその周辺が苦しむかもしれません。
ということで、背景にある過去の事件とは集団レイプです。
最後はなんとなく救われたというか微かな光みたいなものが見えたのは良かったです。
ちなみに、自分も配偶者の呼び方が気になっていて、普段は「相方」と紹介しています。
時々、芸人の方ですか?とか同性の方ですか?とか言われるので他の言い方がないか模索中です。
「パートナー」呼びはしっくりこないので既に却下しています。
Posted by ブクログ
全裸で男の遺体が発見され、犯人を捜す年齢も性格も違う2人の相棒刑事。事件には被害者の息子の過去のレイプ犯罪が関わっていた。
今も苦しんでいる被害者とその家族、反省もしていないレイプ加害者達。
そして真犯人の意外性と過去におきたことが繋がっていく流れも秀逸。
なるほどそうだったのかと気持ちが温められるラストのエピソードも良かった。
Posted by ブクログ
『歓喜の仔』『家族狩り』シリーズとは読後感がかなり違う。余根田のような悪人は「悪役」として切り捨てて読み切るのがふつうなのだろうが、天童荒太さんの見えない引力で、余根田の生育環境などに思いを馳せ、希望が見出せないものかと考えさせられた。
Posted by ブクログ
久しぶりの天童作品。転がり落ちるように犯罪が連鎖していく。テーマは重いがするすると読み進めてしまうのはさすが。重いテーマでも希望が見える読後感。
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一気読み。ジェットコースターサスペンス。
登場人物がキラキラしてて、映像化されたら映えそう、と思った。
というと軽い物語と思われそうだけど、
一人一人のずっしりとした過去と存在感が胸に迫る。
Posted by ブクログ
一つの犯罪が多くの人を傷つけ、新たな犯罪を生んでしまう。
猟奇殺人の犯人が、えぇー、あなたですか?って人でびっくり。ジェンダークライムは連鎖するって‥。過去の境遇や動機を知るとちょっと同情してしまう。
鞍岡と志波の刑事コンビのそりの合わないかけ合いが面白い。志波がコンビを望んだ理由がいい話すぎて泣けた。
Posted by ブクログ
猟奇殺人事件から始まる、クライムサスペンス。この殺人事件の捜査に捜査1課の志波警部補とバディを組むことになった八王子南署の蔵岡警部補。志波の行動、言動に息が合わない蔵岡。捜査が始まると一転、二転と捜査状況が変わり、容疑者が増えてゆく。三年前の集団レイプ事件に端を発した殺人事件、金に物を言わせ終焉をはかったもの、性被害にあった被害者と加害者の現状、昨今のSNS時代における風潮の広がりによる被害者家族、加害者家族の問題、そして新たな殺人、意外な犯人。蔵岡と志波の間にった過去の因縁。舞台の切り替わりはサスペンスドラマを見ている感、思わず一気読みでした。
Posted by ブクログ
警察ものと題名のジェンダーによる被害,差別の波紋の行き着く先の恐ろしさをミックスさせている.性犯罪の見えない闇.主人公二人の魅力,その掛け合いの会話が良かった.また,彼らの周りの人たちの特にジェンダーに関する意識の成長が嬉しかった.
Posted by ブクログ
天童さんの作品と重いテーマで身構えた分、最初の鞍岡刑事達のやりとりがあまりにも軽すぎって、ちょっとこれまでと違うなあと思った。
しかしながら、性被害者とその家族の様子はズシーンと伝わってきて、ここは流石だった。
テーマは性被害、DV、幼児虐待と様々な問題提起をさせられた内容だったが個人的には少し詰め込みすぎと感じた。
日本はジェンダーに関してはまだまだ遅れており、被害者に対する扱い方も含め、とても素晴らしいテーマだっただけにもっと深掘りして書いて欲しかった。
Posted by ブクログ
内容を全く知らずタイトルだけを見て
想像した内容と読んでみて感じた内容が
私には違っていた
しかし事件内容は決して許される
ことではない
真実を追う刑事たちの執念を私も肩に力を入れながら読んだ
鞍岡&志波コンビが良かった
Posted by ブクログ
こういう刑事物のコンビは、これがお決まりなのはなんでかしら?
見たことあるようなタイプのコンビ組み合わせ、
まぁいいけどね、えへへ。
内容は重くて酷くて、
でも時間的に急いで読まなきゃいけなくて、深く読み込めず。でもそれで良かったのかも。
ちゃんと真剣に読んでたら、苦しくて嫌になってたかも。
性被害って、被害者なのに自分が悪いかもって思ってしまうのが辛すぎます
今は性別関係なしに色々怖いことあり過ぎて、気をつけるにこしたことないですね。
「主人」の言い方気をつけようって、思いました笑
Posted by ブクログ
目には目を と書いた本人の意図が少し感じられた時に性の虐待を受けた人のダメージが、見えた気がした。
恐ろしい、特に子供や若い人が性を搾取される事件を目にすることがあるが、その子供たちの将来を全く考えてない、自分の欲だけで突っ走る人間がいることが本当に許せない。集団性加害などもってのほか。捕まえてもう出てこないで欲しいとさえ思う。
被害を受けた方の家族はどうしたら心が晴れるのか。
被害者やその家族にもっと寄り添うこと、加害者にはもっと厳罰な罰を与えて欲しい、同じことを加害者に味わって欲しいとさえ思う。
Posted by ブクログ
この著者がジェンダー問題に深い関心があることが謝辞でよく伝わった。犯人が佐東の母だとは予想外だった。レイプする人間の屑のクソ4人の胸くその悪さに腹が立った。刑事部長も謎の絡み方だったし、元警官も必要だったか?という感じで無理やり話を広げた感じがしてちょっと残念だった。
Posted by ブクログ
今マスコミでは、中居正広氏の女性トラブルが大きな話題となってる。状況は全くわからないけれど、女性が尊重されない、同等にみられないという点では、根が一緒なのかなと思う。
本筋の事件以外にも、この本の中には、さまざまなバイアスが表現されてる。日常会話の中に潜むジェンダー平等からは遠い表現、ご主人、奥様、などなど。典型的なおじさん気質の主人公鞍岡警部補が、相棒の志波警部補に指摘されたり、事件の背景を理解するうちに、変わっていくのが嬉しい救いだ。
性被害が被害者の人生そのものをぶち壊し、その家族も周囲にも立ち直れない傷を残す。二次被害を恐れて、事件化されないことも多い。芸能界然り、沖縄然り、、、この課題をエンターテイメント小説のテーマに据えた作者に心からの敬意を表したい。
Posted by ブクログ
犯人読めなかったなー。
最後の最後で、まさきとしかさんの三ツ矢シリーズ風の真実の露呈があってジーンとした。
痴漢や不同意わいせつなどの性犯罪の不起訴率、起訴になっても軽い量刑、どうにかして欲しい。
Posted by ブクログ
あまり新鮮味がなく感じた。刑事ドラマをみているような、サラッと推理ものの印象。筋にながれる配偶者を主人とよぶか夫と呼ぶかといったことは、これまでも考え自分にとってはごく当たり前になっているからかもしれない。
途中でてくるガールズシェルターを運営する女性の運営方法がおもしろかった。カジュアルな雰囲気でラテアートなどの温かい飲み物と食事を用意し、キャンピングカーでゆっくり話を聞く。繁華街でふらっと寄れる場所で、嫌だったらすぐ街に戻れる距離感。