H・P・ラヴクラフトのレビュー一覧
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クトウルー神話傑作選
苦手なラグクラフトですが
これは 全15編の短編集なので
思いの外楽しめました
「アウトサイダー」 1926
廃墟となった広大な城
城の外はどこまでも続く森
空をみたい
塔を登り続ける
自分が映し出された姿に驚愕する
アウトサイダーは、誰だ
人間社会に居場所を持たぬ存在の孤独
「無名都市」1921
アラビアの砂漠の奥地
名前の無い都市
アラビア人 アルハザート 架空の人物
ネクロノミコン 架空の書物
これらの詩が引用され 全体的に悪夢的
私は一人無名都市にたどり着く
そこには朽ちた神殿
天井は低く 地下へと続く
壁画には爬虫類系の生物
人類以前の文明の歴史絵巻→狂気の山脈へと
「ヒュプリス」1923
眠りの神
若く美しい彫刻のような神
彫刻家は家に招き共に暮らす
友人は眠りを夢を恐れる
ある日 北冠座からの光に照らされて彼は彫刻となる
宇宙的恐怖 割と好き♡
「セレファイス」1922
架空都市 (夢に見た都)
夢を彷徨うクラネス
子供の頃見たセレファイスに入り込む
その都市に行く為 麻薬に溺れていく
夢の中でその地を支配して 現実では…
現実世界に膿んだ人間が夢の世界へ避難する
「アザトホート」1938
白痴の魔王 神々の始祖
2.5ページくらいのショート
わからない なんかの断片らしい
「ポラリス」1920
北極星が見える部屋に住む男
夢の都市で肉体を得る
幻想の中でイヌート族の侵攻を見る
「ウルタルの猫」1920
ウルタルには猫を捕まえて殺す老夫婦が居た
旅の少年の猫が居なくなる
少年は何か祈りを捧げると
翌日町から猫が一匹も居なくなる
その次の日 猫達は満腹で帰宅
老夫婦は骨が見つかる
動物は可愛がりましょう
「ベツの神々」1933
神々は高い山に住む
ウルタルの賢者バルサイは 神を見たい
月蝕の中 大地の神を見る
そこに別の神が現れて…
見てはいけない物を見てはいけません
「恐ろしさ老人」1921
キングスポート物語群
キングスポートに住む一人暮らしの老人
たいそう金持ちで身体が弱いと噂
三人の強盗が忍び込む
翌朝、男達は浜に捨てられていた
人を見かけで判断してはいけません
この三人の男の名前がアメリカへの移民系で
100年前の移民問題
「霧の高みの奇妙な家」1931
恐ろしい老人の続編らしい
険しい岩山の灰色の家
そこが彼の住まい
うーん?就職語が多すぎて日本語がよくわからない
そこに行った哲学者が廃人のようになって戻る?
「銀の鍵」1929
ランドルフカーターが夢で見つけた
大きな銀の鍵
それは 夢の門の鍵
毎晩 その鍵を使いあらゆる不思議な国へ
大人になって鍵を無くした
「名状しがたいもの」1925
墓場の隣の廃協会
二人の友の見たものは
あれはなんだったんだ?
あいつは名状しがたい物
ザ解決
「家の中の絵」1921
雨宿りした古い家
古い家の中の古い調度品
恐ろしいほど生きていそうな老人
コンゴ王国記の人肉部族の絵
「忌まれた家」1928
クラフトの生育地
プロヴィデンスの古い家
ここで続く不審死主人公は泊まり込み調査
クラフト版残穢的な土地の怪異
「魔女屋敷で見た夢」
勉強しすぎの数学者
呪われた魔女の家を借りる
ほんとに魔女の家だった
しばらく、クトウルーはお腹いっぱい -
Posted by ブクログ
ラヴクラフト初体験。
クトゥルフ神話の生みの親。ホラーが苦手ではあるが、これだけ有名な作品群なのだから一度は手に取ってみないとと思い挑戦。
本作は表題作「狂気の山脈にて」と「時間からの影」という中編2篇を含む8篇から成る。
真っ先の印象としては、ラヴクラフトが創出する恐怖を恐怖として堪能するためには、かなりの想像力が必要だなということ。
卓越した想像力の結果を余すところなく文章に落とし込むので、それを再構築するのにだいぶ骨が折れる。
おそらくホラーにはホラーを読むスキーマが必要なのだろうが、怖いの嫌いな私はそんなものもなく、ただひたすら彼の記述からイメージを構築する。
ただ、私が再構築したイメージは、そんなに怖くないのだ。
恐怖の基となる、恐怖の対象となるものが霊とかゾンビとか狂った人間とかではなく、宇宙的なもの、遙か昔に宇宙からやってきたものという設定なのでそういう意味ではSFとして読むことができる。
その視点からすると、割と面白い。とりわけ、中編2篇については導入から中盤にかけてはホラーというよりもSFテイストが強く、そこまでは興味深く読める。
ただそこから恐怖の場面に転換するときに、私の想像力がおっつかなくなる。
想像がおっつかないのに、たたみ込むように、あるときは内省的に、またあるときは状況を徹底的に細かく文章にして浴びせてくるので、うわあとなる。
物語そのものの恐怖よりも、「あれ、おれバカなのかなもしかして」と思う恐怖の方が上回ってしまったかもしれない。
これはもう、仕方ない。私の能力不足である。向いてなかった。
熱狂的なファンがいるし、クトゥルフ神話はある意味盤石のジャンルとして成立しているわけなので、好きな人にとってみればこのテイストがたまらなく面白いに違いない。
それもこれも試してみないとわからないので、ホラー系が好きかもな方は一度挑戦してみて欲しい。 -
Posted by ブクログ
20世紀アメリカ。ラヴクラフトの暗黒神話。クトゥルー(邪神・発音できないのが目的なので便宜上)
神話、短編8作。
「狂気の山脈にて」
冒険ありの怪奇小説。
南極大陸の探検隊が、驚くべき発見をする。
独特な進化をした大型生物の化石群。
広大な都市跡。
人類史よりも古く、壁画に謎の文明の歴史を残す。
栄華を誇っていたその文明の崩壊は、下等生物の反乱か。
しかし、隊員隊は、未知の生物の復活により危険が迫る。
脱出できた隊員達は、この危険な場所を秘密にする。
なかなか大作で、込み入って、同じような表現がぐるぐる出てくるので、上手く説明できません、が!
2017年ドラえもん「南極カチコチ大冒険」が、オマージュっぽいという噂があるようです。
また、あの 「遊星からの物体X」は、こちらが元ネタらしいですね。
人類が現れるよりも遥か以前、宇宙から飛来して地球を支配していた存在。彼らは、地球の面舞台から姿を消したが、今も復活を伺っている。(訳者解説略) これが全編共通のテーマになっています。
「ランドルフ・カーターの陳述」
「ピックマンのモデル」
「エーリッヒ・ツアンの音楽」
「猟犬」
「ダゴン」
「祝祭」
「時間からの影」
テーマが同じで、恐ろしい経験をした人が、思い出すのも辛いけど、語らなければならないって感じでパターン化してるので、好きな方には、たまらない一冊ですね。私は、作品の区別がつかなくなってしまう。
狂気の山脈は、面白いと思います。 -
Posted by ブクログ
初心者が噂のクトゥルーを読んでみるぞ三冊目!
今回は「ハイファンタジー」も含む一冊で、前二巻とはまた毛色が違っている。
不気味で湿度の高い陰気な屋敷や町並みが展開する一方で、夢の中で幾度を旅するきらびやかなファンタジー世界も作者のなかに広がっている。
個人的な読書体験になるけれど、直前に『文豪怪談傑作選 妖魅は戯る』(ちくま文庫)を読んでいた。
夏目漱石の「夢十夜」に連なる「夢」をもとに描いた作品を中心に収録した一冊で、
独特な夢日記を展開する中勘助、うす暗さと怪談味を帯びる内田百けん、見た夢をその都度分析する寺田寅彦と、
「夢」の世界、「夢」への向かい方、作品の描きかたなど、それぞれの個性がかなり現れていることがわかるアンソロジーだったが、これはそのラヴクラフト版のようにも感じた。
その流れなら、近代知で閉ざされてしまった世界に今も焦がれ再訪を望み、一方で悪しき夢の世界が現実世界に侵食していく或いは隠された現実が夢に投影される、という憧憬と恐怖の相反する「夢」を描いたのがラヴクラフトか。
あのアンソロジーに無理やりねじこむなら「セレファイス」「銀の鍵」あたりかな。
家や建築が舞台装置として事細かなのは前と同じだけど、よりくわしく設定してある。ただ、なかなかイメージしづらい(建築用語の知識がないので画像検索と同時進行な)ところも多々。
「あら、あの面々がここで…?」というのもちらほらあり、そこは面白かった。
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Posted by ブクログ
クトゥルフ神話はラヴクラフトが創始者ですが、彼一人で作り上げたものではありませんでした。様々な作家がこの「遊び」に参加し、自由に創造の翼を広げてこの世界を開拓していきました。
2集はラヴクラフトやロングなど5人の作家によるリレー小説『彼方よりの挑戦』など13編を収録。以下、少々ネタバレありの各話感想。
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『納骨堂綺談』(ダーレス&スコラー/1947)
ロンズディル家の三男が、当主である次男の屋敷の中で失踪する。屋敷の地下深くには納骨堂があり、彼はそこに財宝が隠されていると思い込んで、密かにそこに向かったらしい。次男が追い、続いて長男らが向かうとそこには――。
(所謂吸血鬼ものだが神話要素は薄い。発表年は1947年だが執筆時期は1931年頃と早期。「屋敷に隠された秘密」という要素はダーレスのお気に入りになったようで、後の作品に何度も使用されている。)
『魔道士の挽歌』(C.A.スミス/1932)
邪神崇拝の科で追われる身となったエイボンは、邪神から賜ったアイテムで別世界へ逃げ出す。追う側のモルギも同じアイテムを使って彼に追いつくが、そのアイテムは移動はできるが元の場所には戻れない一方通行のものだった。行くあてもないまま歩を進めるエイボンとやむなく行動を共にすることになったモルギ。二人の道中の結末はいかに――?
(スミス流のユーモアたっぷりの一作。異郷を旅する二人と現地の知的生命体とのやり取りのすれ違いがなんともおかしい。探索者を導く先導者NPCがエイボンのようなキャラクターのTRPGシナリオも面白いかも知れない。)
『足のない男』(ワンドレイ/1932)
狩りを目的にアフリカ大陸を訪れたわたしは、そこである理由で足を失った男と出会う。彼はアフリカ大陸の地質調査のため、大陸を横断する内に現地人が恐れて近づかない土地に足を踏み入れた。そこには奇妙な木立の列と赤っぽい金属建築物があった――。
(まだ未知に満ちていたアフリカ大陸を舞台にしたSFホラー。状況から遥か古代に宇宙から飛来してきたようだが、作中では詳細は語られず。「赤い回転流の神」は後に神格としてTRPGに取り込まれるが、最新版では削られている。)
『脳を喰う怪物』(ロング/1932)
船上にいた学者のスティーヴンが海上で見つけた、複数の死体が横たわったボート。死体に遺されたメモ帳には、名状しがたい怪物の存在が。メモ帳には更に、怪物は次にスティーヴンを狙っていることも示唆されていた。はたしてその夜――。
(「奴らがパワーアップして帰ってきた! 今度の舞台は海の上!」そんな煽り文句を付けたくなるような、『怪魔の森』の「喰らうもの」が再び登場するホラー。)
『羅睺星魔洞』(スコラー&ダーレス/1932)
ビルマ(ミャンマー)の探検隊の一人であるわたしは、たまたま単独行動をしていたために謎の現地人の捕虜にされる。連れて行かれた先にいたのは、同じく彼らに捕らえられていたフォ=ラン博士だった。博士の言によると、彼らは地下深くに封じられている邪神に仕えている種族で、彼はその復活に協力させられているらしい。しかし博士にはこの状況を打開する秘策を持っていて――。
(初期の頃の作品だが神話における対立構図の説明や旧神による邪神の殲滅など、ダーレス流のクトゥルフ神話の要素が大きく表れている。)
『奈落より吹く風』(ダーレス/1933)
七ヶ月前に失踪した警官の遺体が発見される。その警官は一年前に、天から人が落ちてくるという不可思議な死亡事件の当事者だった――。
(イタカ物語群の一。この作品ではその名は出てこないが、その特徴と恐ろしさが十二分に描写されており、読み応えのある一篇。)
『屍衣の花嫁』(ワンドレイ/1933)
私は幼い頃よりおどろおどろしい夢に魘されてきた。だが、それに疲れ果てて死に臨もうというのではない。もっと恐ろしいことが起きたからだ。それは最愛の妻が事故で亡くなったことから始まった――。
(神話要素は薄いが、夢と現の境を曖昧にするような、E.A.ポウに準じた作風はラヴクラフトも好んで使っていた。)
『暗恨』(シーライト/1935)
亡き友人から古代の遺物を譲り受けたウェッソン。欲望の塊であるウェッソンは、遺言で禁じられている遺物の封を解いたが、その中は空だった。直後、部屋の中に何者かの気配が――。
(神話要素は薄いが、冒頭に登場する『エルトダウン・シャーズ』は後に魔導書の一つとしてクトゥルフ神話に取り込まれることになる。)
『彼方よりの挑戦』(ムーア他/1935)
カナダの森でキャンプをしていたキャンベルは、中心部に楔形の記号が掘られた円盤がある、風変わりな水晶に似た立方体を拾う。眺めている内に円盤が光を発し始め――。
(当時の人気作家5人によるリレー小説。ラヴクラフトも参加していて、いつもの遊び心で作中に神話要素を挿入したことで、結果として神話作品となった。)
『妖蛆の秘密』(ブロック/1935)
怪奇小説作家のわたしは、スランプから未知なるものを求めるようになる。そしてとある古書店である魔導書を手に入れるが、それはラテン語で記されていたために判読できず、わたしは友人に助けを求める。友人もまた稀覯書の魅力に惹かれて翻訳にのめり込み、そして記されている呪文を読み上げると――。
(ブロックが創作した魔導書『妖蛆の秘密』が初登場する作品だが、呼び出されたクリーチャーの描写も素晴らしい。登場する異星より遣わされし従者は、後にTRPGにおいて「星の吸血鬼」と名付けられる。)
『顔のない神』(ブロック/1936)
冒涜的な未知の神像が発見されたという話を聞いて、一儲けを企むシュテュガッツェは、密かに関係者を拷問して詳細を聞き出す。迷信に怯える現地人を脅して神像の発掘にこぎつけたシュテュガッツェだったが――。
(強欲者の典型的な因果応報譚だが、ナイアルラトホテップの邪神としての威光を絡めた自然の猛威にシュテュガッツェが甚振られる表現は必読。)
『嘲嗤う屍食鬼』(ブロック/1936)
精神科医のわたしの元を訪れたショパン教授。彼は自身を悩ましている奇妙な夢について、そして夢の内容がありのままの事実であることをわたしに訴える。わたしは教授の説得に応じ、彼が夢で見た場所に二人で赴くことに――。
(現実に転換された悪夢が襲ってくる恐怖。精神科医というキャラクターはクトゥルフ神話によく合う。)
『探綺書房』(ハッセ/1937)
人知を超えるような稀覯書を求めて古書店を渉猟していたわたしは、ある古書店で出会った異様な男から、あの『ネクロノミコン』をも超越する凶々しい内容という本を、半ば無理矢理に受け取らされる。疑いながらも自室でその本を開くと、書かれている字が動き出して――。
(本好き、古書好き、オカルト好きにとっては身につまされる内容。身の破滅を招くとわかっている本を読むという好奇心に抗えるかどうか。) -
Posted by ブクログ
クトゥルフ神話の啓蒙に努めたダーレスに才能を見出された作家の一人がラムジー・キャンベルです。ダーレスの指導により、彼は生まれ育ったイギリスに、ラヴクラフトのように架空の都市を作り上げ、そこを舞台に様々なクトゥルフ神話作品を創作しました。
4集はキャンベルのクトゥルフ神話代表作品である『妖虫』やラヴクラフトが遺した創作メモを元にダーレスが創作した『ポーの末裔』など10編を収録。
以下、ちょっとだけネタバレありの各話感想。
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『月に跳ぶ人』(ローンズ/1942)
失踪したグレイスンの遺言から、彼の手記を受け取ることになったわたし(ローンズ)。手記に書かれていたのは、月の引力に引かれて行方不明になったとしか思えない人々の存在と、その陰にある"かれら"の存在と陰謀についてだった――。
(とある失踪事件の裏に隠された、旧支配者同士の暗闘と陰謀をモキュメンタリー風に描写したメタフィクショナルな短編。結末から一方の存在については見当がつくだろうが、はたしてもう一方の正体は――。)
『深淵の王者』(トムスン/1946)
都会の激務に疲れた脳外科医のわたしは、海辺の村にある別荘を借りる。ある嵐の晩、別荘を訪れたカッサンドラの求めに応じ、わたしは彼女の父を診察するが、それをきっかけにわたしは彼女と交際し結婚する。しかし、日を追うごとに彼女に変化が生じ、わたしは不安を募らせていく――。
(文体から磯臭さとゴシックホラーの雰囲気が漂う異種交流譚。ダーレスがラヴクラフトの模倣だと抗議したとされる作品だが、どちらかと言うとラヴクラフトの創作の師であるポーやマッケン寄りの印象がある。)
『爬虫類館の相続人』(ラヴクラフト&ダーレス/1954)
古物収集家のわたしは、プロヴィデンスにある古い館を一目見て気に入り入居を決める。興味本位でかつての館の持ち主の経歴を調べると、どうやら不老長寿の研究に熱心に取り組んでいたようで――。
(プロヴィデンスを舞台にした狂科学者もの。研究の一環でクトゥルーや深きものなどの調査をしたと思われる描写はあるが、神話色は薄い。)
『開かずの部屋』(ラヴクラフト&ダーレス/1959)
祖父の遺言を果たしに、生前に祖父が住んでいた家を訪れたアブナー。そこにはかつて伯母が軟禁されていた部屋があった。祖父はなぜ自分の娘を恐れ、軟禁したのか。アブナーがその扉を開けたことで再び起き出した、祖父が恐れていた事態とは――。
(『ダニッチの怪』と『インスマスの影』をかけ合わせたような、ハイブリッドかつ神話作品としては王道のホラー。主人公がウェイトリー家の血縁者という設定にすることで、両作品の後日談的な仕上がりにもなっている。それにしても、ラヴクラフト&ダーレスものはダニッチを舞台にした作品が多い。)
『第七の呪文』(ブレナン/1963)
亡くなった叔父の遺品から魔導書を見つけたエミットは、自身の欲望を満たすために悪霊を召喚しようと画策する。首尾良く準備を整え、第七の呪文を唱えて悪霊を召喚したエミットだったが――。
(傲慢な主人公が詰めの甘さゆえに自滅する典型的因果応報譚。同名の旧支配者と外見が異なるが、一定の手続きを経て召喚するとこの姿で現れると考えてもいいだろう。)
『妖虫』(キャンベル/1964)
私は酔った勢いから、妖しい伝承が噂されるゴーツウッドの森の探索をすることになってしまう。そこで木に似た怪物に追われた私は、金属の円錐体が聳え立つ空き地に辿り着く。はたして、その円錐体から現れたのは――。
(キャンベル版『闇に囁くもの』といった趣のSFホラー。これを読むと、時々起きる正気を疑うような事件の遠因はこいつらではないか、とつい思ってしまうかもしれない。)
『異次元通信機』(キャンベル/1964)
道に迷った先で、音源が見当たらないにも関わらず、様々な音が奏でられる平原にたどり着いた大学生たち。視界の先にあった小屋を探索すると、住人のものらしき日記と大型のテレビのような機械を発見する。はたして、ここで何が行われていたのか――。
(奇妙な通信機を通して行われる、悍ましい異界との接触を描いた作品。前半に感じられる不気味ながらも幻想的な美しさが、後半の悍ましい現実をより際立たせる。)
『暗黒星の陥穽』(キャンベル/1964)
オカルティストのテイラーは不老不死を求めて資料を漁り、とある異星にある金属が必要なことと、その異星に行く扉が近くにあることを知る。はたして、その扉をくぐった先にあったのは――。
(傲慢な若者が目的のために異星まで冒険をするSFホラー。傲慢さ故にわざわざ深淵まで赴き、わざわざ深淵を覗くまでの過程はいっそ清々しいまである。)
『ポーの末裔』(ラヴクラフト&ダーレス/1966)
川のほとりにある廃屋が不審火によって消失する。当事者を主張する若者が警察に送った手記に書かれた、事件の顛末とは――。
(フィニイの『盗まれた街』を彷彿とさせるSFホラー。真相が明らかにならないまま結末を迎える展開は、神話らしさを狙ってのものかもしれない。異星人の造形が某種族との類似を伺わせるが、同じ作者の『異次元の影』を読めば得心するはずだ。)
『魔界へのかけ橋』(ラヴクラフト&ダーレス/1967)
二十年前に失踪した大叔父の家に移り住むことになったわたし。地元の雑貨店でその旨と自身が大叔父の身内であることを店主に伝えると、彼はあからさまに嫌悪感を示す。家の掃除と整理の最中に謎の地下空間を発見したことを契機に、大叔父の失踪の謎を探り始めたわたしは、川の側に石造りの橋の残骸を発見する。その橋桁の一本には奇妙な五芒星形の印が刻み込まれていて――。
(ダニッチを舞台にした妖術師もの。『ダニッチの怪』との繋がりを感じさせる内容だが、神話色は薄い。) -
Posted by ブクログ
ク・リトル・リトル神話――クトゥルフ神話とも呼ばれるそれは、アメリカの作家であるハワード・フィリップス・ラヴクラフトが創始し、フランク・ベルナップ・ロングやクラーク・アシュトン・スミスらが広げ、オーガスト・ダーレスらが体系化した、架空の神話体系です。最初は作家同士で架空の神々や地名や書物等といった固有情報や世界観を創作し、共有し、貸し借りする遊びでした。それに読者も気づいたことで追従者が続出し、それに伴って神話体系も拡大・拡散していきました。
本シリーズは創始者であるラヴクラフトを始め、1989年までに発表されたクトゥルフ神話をモチーフとした作品を掲載したアンソロジー集です。1982年に刊行された旧シリーズから小説作品のみを抽出して再編されました。ゆえに「新編」なのです。
彼らが楽しみつつ広げていったこの異界へと続く扉、それでは開けてみましょう――。
今巻は、かの有名な「無名都市」を舞台にしたラヴクラフトの作品を含む6編を収録。
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『廃都』(ラヴクラフト/1921)
アラビアの砂漠で伝説の古代都市を見つけたわたし。探究心から内部に侵入したわたしが目にしたものは――。
(初めてアブドル・アルハズラットの名が出た作品。恐怖よりも強く感じたのは偽史的な面白さ。)
『妖魔の爪』(グリーン&ラヴクラフト/1922)
小型漁船が海上で一匹の怪生物を仕留めた。船長はこれを見世物にした商売を思いつき、船そのものを博覧会場にする。目論見通りにこれは盛況を博したが、ある日、死体は船ごと消えてしまう。そして、本当の恐怖はその後に起きた――。
(海から来る恐怖を描写した作品。海が与えるものであり奪うものであることのモチーフか。後にラヴクラフトの妻になるソニア・グリーンの作品。だが、その後にラヴクラフトによる添削がされているため、実質二人の共作と言ってもいいだろう。)
『怪魔の森』(ロング/1928)
友人で作家のハワードとわたしが宇宙的恐怖についての談義に花を咲かせていると、恐怖に苛まれた感を見せる隣人がやってくる。触手のようなものに襲われたと言って彼が髪を払いあげると、その側頭部には小さな丸い穴が――。
(ラヴクラフト以外の手による初のクトゥルフ神話小説という記念碑的作品。所々にキリスト教的価値観を感じさせる描写はあるが、全体的にはラヴクラフトが提唱したコズミック・ホラーの表現に満ちており、良作に仕上がっている。)
『俘囚の塚』(ビショップ&ラヴクラフト/1929)
オクラホマにあるインディアン由来とされる墳丘は、幽霊の目撃談や探索者の失踪や発狂、異常死など、怪奇譚に事欠かない。それゆえに好奇心から墳丘を訪れた新たな探索者――私は、墳丘の土中から奇妙な金属筒を発掘する。中に入っていたのは、十五世紀に同じように墳丘を訪れたスペイン人による、墳丘の内部に広がる異世界と、そこでの生活を綴った自伝だった――。
(地下世界に棲んでいたのは、来る者拒まずだが去ること許さず、文化的ながらも保守的で、超能力で霊体化したり死体を操ったりすることができるヤベー種族だったという、設定が盛り沢山なダーク・ファンタジー。ゴーストやゾンビといった、TRPGでもステータスがあるクリーチャーの設定にも使えそうで、シナリオ創作者の人にもおすすめしたい。)
『電気処刑器』(カストロ&ラヴクラフト/1929)
社長の命令で不本意ながらも人探しにメキシコに行く羽目になったわたし。しかも道中の電車内で一緒になった男に、自作の器械の実験体として殺されそうになり、製作の経緯を訊いたり書類の作成を勧めたりして、なんとかこの危機から脱しようとするのだが――。
(原作者であるカストロからの依頼によりラヴクラフトが改作(脚色などして新しい作品にすること)した作品。殺されまいと時間稼ぎに必死になるわたしと男との攻防がメインだが、頭の中で絵にするとなんだかコントっぽくなった。)
『夜歩く石像』(ロング/1951)
中央アジアからマンハッタン美術館に運ばれてきた象頭神の石像。送ってきた担当者は経緯を報告した直後に変死し、翌日には警備員のおぞましい変死体が発見される。学芸員のアルジャナンはオカルティストのロジャーに助けを求めるが、今度は石像が美術館から消え、マンハッタンで被害者が続出する。はたして、アルジャナンとロジャーは凶行を止められるのか――。
(マンハッタンを舞台に吸血生物が暴れまわり、架空の科学兵器が登場する展開が90分くらいのB級映画っぽい。ホラーと言うよりSFだが、パルプ・フィクションとしては王道なのだろう。) -
Posted by ブクログ
ネタバレクトゥルー神話は作家が創造した架空の神話ということを初めて知ったので相当驚いた。それだけ広くさまざまな創作の元になっている存在。
SFホラーといった内容だった。
この中では表題作が1番読みやすかった。旅行で訪れた先で恐ろしい体験をして逃走劇が繰り広げられるシーンも良かったが、更に自分との血の繋がりに話が発展していくのが良かった。伏線の回収もあり、面白く読んだ。
「あの深きものらの棲処で奇蹟と栄光に囲まれ、とこしえに暮らすであろう」こんなラスト想像していなかった。あれほど忌み嫌った存在そのものになることをもう受け入れていてゾクゾクする。 -
Posted by ブクログ
この巻にはクトゥルー神話の「体系」が形成される以前の、萌芽のような作品が集められるということらしい。
相変わらず会話文がほとんど無い上に地の文も妙に読みづらいラヴクラフトの書法だが、印象的な作品が2つはあった。
「死体蘇生者ハーバート・ウエスト」(1922)は、確かに以前スカパーで見た映画の原作だ。何という映画だったかは忘れた。ホラー小説として優れたストーリーではあるが、雑誌連載であったためか、後続の章でまえの章の内容がくどく反復される箇所が沢山あって少々呆れてしまった。これが無ければ傑出した短編と思う。
「ダニッチの怪」(1929)は新潮文庫版の「新訳」アンソロジーにも収められており、記憶によく残っている印象の濃い優れたホラー。
本書を通して例の架空の本、アブドゥル・アルハザード著『ネクロノミコン』が何度も言及される。ラヴクラフトはよほどこれが気に入っていたらしい。このような複数作品を渡り歩く要素は体系というより執着的なライトモティーフのように思える。手塚治虫のマンガで同一の人物(ヒゲオヤジ、ロック等)がたびたび起用される俳優であるかのように、異なる作品で再登場してくるシステムにも似ている。
そのように反復された執着が積もりに積もって、ラヴクラフトは晩年に至ってクトゥルー神話と呼ばれる「体系」に近いようなものを記述するのだが、私はその「体系」の内容には興味は無いものの、強迫的に反復されるイメージへの固執が循環し続ける、心的システムのありようには惹き付けられるものがある。