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幼い頃から天文学に興味をもちつづけたラヴクラフトは、広大な宇宙においては人類の存在など儚いという根本認識のもとに、死後オーガスト・ダーレスによりクトゥルー神話としてまとめられてゆく一連の小説群を執筆した。本巻には、時空を超えて存在する超知性体〈大いなる種族〉の姿を描く、まさにラヴクラフト宇宙観の総決算ともいうべき『時間からの影』をはじめ、アーカムやアブドゥル・アルハザードがはじめて言及される初期の作品から、ロバート・ブロックにささげた最後の作品まで全8編を収める。【収録作】「ダゴン」「家のなかの絵」「無名都市」「潜み棲む恐怖」「アウトサイダー」「戸口にあらわれたもの」「闇をさまようもの」「時間からの影」「資料:履歴書」「作品解題/大瀧啓裕」
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Posted by ブクログ
ラヴクラフトの代表である「クトゥルフ神話体系」が恐らく全集の3巻に集約されていると思われます。
ただ、ラヴクラフトにはパターンがあります。不気味さを出すための工夫ではあるんですが、このパターンがとてもわかりにくくしているので、要注意です。以下の3つにパターン分けします。
1.副詞の多用と唐突な自動詞。
→「名状し難い」などから始まる、修飾語やら副詞、形容詞の乱発が始まったら、固有名だけ見つけて読み飛ばしても大丈夫です。ただし、唐突に自動詞で終わったら、いったん読み返すのもありです。完了系は重要な要素である場合がほとんどです。
2.クトゥルフ神話に代表される名称は眷族が言う
→明確にアザトースだとかニャルラトホテプみたいなのを登場人物が言うことはほとんどありません。なぜなら知らないからです。そのため、鳴き声みたいな意味のない音の中に『クトゥルフ』みたいに言うだけです。ネクロノミコンなどの魔導書も読める字じゃないと登場人物が言いつつ、何かしらの眷族に感化されて突然読めるようになったりします。クトゥグアとかヨグソトースなどは雑談みたいな話から出てきます。
3.書き出しで誰目線かが決まらない
→主人公目線かと思わせといて、同人が残したメモや手記を見た人の視点だったりと、「誰のセリフ?」ってことが良くあります。なので、章ごとに読んでいかないと意味が分からなくなります。できるだけ一気読みしてください。
以上のパターンを読み取れば、ラヴクラフトは分かりにくいけどSFとしてオモロイって感覚になれるはずです。ぜひ、読んでみてください。
Posted by ブクログ
久々に読んだら、すごく時間がかかってしまった。
ラブクラフトの創作活動の各時期の
代表作を集めた作品集。
短編七作、中編1作、本人による履歴書が収録。
偶然、或いは自ら深い謎を探求して、
名状し難き者に出会ってしまい錯乱するという定型は、
初期から始まっています。
・ダゴン・・・初期の作品。
短編ながら、その原型となる特色があります。
・家のなかの絵・・・最後が尻切れトンボな感。
・無名都市・・・あの狂える詩人の名が初出。幻想的。
・潜み棲む恐怖・・・邪悪な一族は主人公と何か繋がりが
ありそうだけど、わからぬままで終わり(^^;
・アウトサイダー・・・囚われの主人公が戒めの館から出て
見たものは?描写とクライマックスが秀逸。
・戸口にあらわれたもの・・・インスマウス出身ですか~。
「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」とも類似。
・闇をさまようもの・・・ラブクラフト最後の作品。
雷鳴と停電、群衆が恐怖を掻き立てる。
・時間からの影・・・定型の、SF的&幻想的な集大成。
でも冗漫。読み進めるのが大変でした。
・履歴書・・・ラブクラフトの本質を知る一端になります。
Posted by ブクログ
先に読んだ『ラヴクラフト全集2』から,少し間が空いてしまいました。時間がかかったのは,このところ仕事が忙しくて読むヒマがなかったせいもありますが,難解な文章があって同じ場所を何度も読み返していたせいでもあります。例えば「時間からの影」最初の一文は,「ある種の印象は神話に源を発しているのだと,そうむりやり納得する以外救いようのない,悪夢と恐怖に満ちた二十二年間の歳月を思えば,わたしは,一九三五年七月十七日から十八日にかけての夜,オーストラリア西部で発見したと思うものが,事実であると断言したい気持にはなれない。」──何を言おうとしてるの?と初手から引っかかってしまいました。
文が難しくてなかなかスラスラとは読めませんでしたが,なかでも怖かったのは「潜み棲む恐怖」。雷の轟く嵐の夜に限って村々を襲う謎の化物と,丘の上に建つ不気味な館の廃墟のお話です。かつてその館に住み,村々とは交流もなく,いつの間にかどこかへ消えたマーテンス家の人々は,実は……ということが全て明らかになる結末部分で鳥肌が立ちました。
読みごたえのある分量と内容なのが「時間からの影」。この本の3分の1がこの作品で占められています。5年にわたって記憶喪失となった後もとに戻った大学教授の物語です。記憶がない5年間,奇妙に人格の変わった教授は何をしていたのか,また元々の教授の人格はどこで何をしていたのかが,徐々に明らかになっていくのですが,この感じは怪奇小説というよりSFっぽい感じがしました。結末も,これは気が狂った教授の妄想ではないということが明らかになる証拠がバーンと提示されて終わり,その時に受ける印象は,怖いというよりも面白いというか不思議というか,センス・オブ・ワンダーを感じました。その辺もSFっぽい印象です。
最後に「履歴書」と題して,ラヴクラフトが自分の生い立ちや性質を書いた書簡が収められていますが,これが意外に面白いです。「絵が描けない」と書いているすぐそばにラヴクラフトのかなり残念な自画像が掲載されていて,小説の作風とはあまりにもイメージの違うタッチが笑いを誘います。海産物が大嫌いなのは小説を読めば何となく想像ができますが,チョコレートとアイスクリームが大好物だというのは意外でした。
ほかに,同時代のヒトラーとムッソリーニについて書いている部分と,それに関連して彼が人種と国家をどう考えていたかがわかる部分があって,興味深いです。ラヴクラフトがムッソリーニを「敬服している」と評価しているのは,恐らく彼の大好きな古代ローマの伝統をムッソリーニが復活させようとしていたことと関係があるのでしょうが,一方でヒトラーに対しては「(ムッソリーニの)きわめて劣悪なコピー」と厳しい評価。この辺,両大戦間期の人々がムッソリーニとヒトラーをどう受け止めていたのか知る上でのヒントがあります。「ヒットラーの人種的優越感に基づく政策は莫迦げたグロテスクなものです」と書く一方で,「生物学的に劣っていると考えるのは,黒人とアウストラロイドだけです」と,思いっきり差別的な人種観をさも当然のようにさらっと吐露しています。当時の知識人が人種差別ということに関してどういう考えを持っていたのか,興味をひかれる書簡でした。本題とは離れますけど。
Posted by ブクログ
①ダゴン
船乗りのわたしは運悪くドイツ軍に拿捕された後、すきを見て逃げ出す。漂流の後に小島に漂着したわたしは、丘の頂上を目指すことにしたのだが――。
●「窓に!窓に!」で有名な、クトゥルフ神話の原型とも指摘されている短編。
②家の中の絵
道中で雨宿りのために家屋に入ったわたしは、そこでテーブルに置かれた古書に目を奪われて――。
●夢幻的なホラー。そこにいたのははたして死者だったのか生者だったのか。
現場がアーカムの近くなので、食屍鬼をゲストにした物語やTRPGシナリオがありそう。
③無名都市
アラビアの砂漠で伝説の古代都市を見つけたわたし。探究心から内部に侵入したわたしが目にしたものは――。
●初めて"アブドル・アルハズラット""アブドゥル・アルハザード"の名が出た作品かな?
恐怖よりも強く感じたのは偽史的な面白さ。
④潜み棲む恐怖
とある地方で起きた大量殺人。探究心からわたしは仲間とともに元凶と噂される館に乗り込むことに――。
●厳密には神話に属さないが、展開はホラーの王道で神話っぽさも感じられる。実は何度か映像化されているのだが、設定は大きく変えられているので、知らないとラヴクラフト原作とは気づかないだろう。
⑤アウトサイダー
遥かなる年月を闇の中で過ごしてきたわたし。日の目を求めて塔を登り、念願の外へ出たのだが――。
●結末にて、哀しみの中に混じる救いの描写は、ラヴクラフトが求めたものか。
⑥戸口にあらわれたもの
わたしは確かに親友を殺した。だが彼は親友ではない。親友であって親友でないのだ。なぜなら――。
●よくある結末にせず、あえて曖昧な結末にしたのが良い。
インスマスが深きもの"だけ"の街ではないことを伺わせる点で、クトゥルフ神話の深みをより強く感じさせてくれる作品でもある。
⑦闇をさまようもの
とある男性が自室で変死体で発見される。彼が遺した日記と客観的事実を元に表された、彼の最後の数日とは――。
●ラヴクラフトの遺作。神話作品では王道の、好奇心から身を滅ぼす話。
執筆年で見ると、晩年の作品は「乗っ取られる恐怖」というテーマが続いている。
⑧時間からの影
後を継ぐであろう息子のために書かれた日記。そこに記されていたのは、謎と恐怖と深秘に満ちた体験だった――。
●前半は5年半の空白を埋める内にじわじわと表れ出る未知の記憶に対する恐怖に侵されるが、後半は恐怖というよりも、偽史的な面白さに囚われる。
なにせ精神のみとは言え、古の先住種族から人類滅亡後に登場する種族まで、古今東西の種族が一堂に会するのだから!
Posted by ブクログ
ダゴン
短い!「窓に!窓に!」の終わり方が印象的だけど、本文にダゴンの言葉が出てこないのはなんだかなあ。『インスマウスの影』のダゴン教団の聖地だったのだろうか。
家のなかの絵
これまた短い!そして起承転結でいえば、起承で終わるという中途半端さ!爺さんが食人鬼だったんでしょ。
無名都市
超古代の遺跡を探検…。何かが起きるぞ、という雰囲気を醸し出す書き方は、HPLのお家芸ですね。
潜み棲む恐怖
雷で現れる地底人、マーテンス一族。不思議なこともあるものですねえ。
アウトサイダー
時々記憶をなくしては、自分が何者なのかを問う、不死者のライフワークだろうか。
戸口にあらわれたもの
ネクロノミコン、インスマス、アーカム、ミスカトニック。ようやく、クトゥルフ神話体系らしく、おなじみの共通言語が出て来るようになってきた。。魂を入れ替える魔術の恐怖。
闇をさまようもの
トラペゾヘドロン登場!それを見ることによって、ヨグソトホースを召喚してしまった話。
時間からの影
一億年以上も前の世界の「大いなる種族」と精神を交換した話。三角錐の身体というのが、どうにも恰好悪い。主人公の感じる本当に昔に行っていたのか!という恐怖感は、理解できる。
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