高見浩のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
既に知れ渡っているレクター博士の脱出劇の模様、バッファロウ・ビルのラストに至るまで、一旦流れ始めたら息もつかせぬ展開。細部の描写は偏執的だが、その分一つ一つ調べながら読んでいくと情景が浮き上がってくるようだった。クラリスとミスター・ガムの応酬、蛾の出現で張り詰めるその場の緊張感、手紙によって多少窺い知れる博士の感情、仕事ぶりや時折挿入されるベッラとの関係から見えるクロフォードの人間性、情感たっぷりにほんの1ページ程で綴られるエピローグ。個人的にチルトンはとてもいい味を出している。どこの職場にもいて、そして一番平均的な人間心理を投影しているキャラクターだと思う。
読み終えて、映画も確かめたくなっ -
Posted by ブクログ
ここ数年でいちばん怖かった本。
まず冒頭の超絶大物2人による推薦コメントで、すでに不穏な予感がした。おそるおそる本編を読み始めると、意外に文体や描写がよく内容に引き込まれる…………と思ったとたん、早くも第1の犠牲者! 彼がエボラウイルスによって、肉体や精神がどのように変容していくかが、まるで著者が罹患してことがあるかのように、精緻に描写されていく。ひたすら、こわい。32ページ目の飛行機内での肉体崩壊で怖さがピークに達し、いったん読むのを諦める。一時は、このまま古本屋に売ろうかとも考えたが、さすがにそれは情けない。丸一日間をおき、なんとか気合いを入れて、あとは勢いで読み切った。32ページ目よりこ -
Posted by ブクログ
ネタバレ無料で公開されてたのを読んだら、先が気になっちゃって…買ってしまいました。。
前半に紹介される、エボラとマールブルグの犠牲になった数名の記録、ちょうど無料で公開されてた部分がものすごいインパクト。
シチューとかマカロニとかプリンとか、ちょくちょく食べ物に例えられてるのはきついものがあったが…w
日常生活も織り交ぜて描いてあるので感情移入しがち、小説を読んでいるみたい。読んでるこっちは彼が今まさに周囲にウィルスを撒き散らしていることを知っているわけで…
感染した体内で起こっていること。専門的な話を小説にした…というよりも、映画を見てるみたいだったな。
ウィルスが細胞の中に入り、中で極限まで増 -
Posted by ブクログ
捕食者だ。
生き物が病気になり、それを治癒させるのは薬や外科的手術ではない。
病気を治すのは元々ヒトに備わっている様々な免疫系ないしは生の本能、すなわち自己治癒力であって、医療者はそれを促進させる存在に過ぎない。
医療者が自己の万能感や無力感に飲み込まれないために、そして実際、疾病の治療機序はこの自己治癒力に拠るところが大きい。
しかし、このエボラウィルス(フィロウィルスというべきだろうか)はヒトの免疫系を瞬く間に喰い尽くし、「崩壊」させ、さらに感染を拡げるために大量出血という手段で「爆発」させる。
気付かないうちに、或いはほんの少しの油断という間隙を突いて、襲いかかってくる。
そ -
Posted by ブクログ
映画、原作、どっちも好きかもしれない。
レクター博士の心を満たせる人は、クラリスだけなのね。
知識、教養全てのレベルが高くて、素晴らしすぎた。
これでレクターの殺人(食人)が治まっているいるのなら、ハッピーエンドなのかもしれないけど、クラリスは最初は薬で操られていたわけで、本人の意思でレクターを選んだのではないから、そこが少しもやもやするけれど、クラリスが目覚めるのでは、と時々確認しているあたり、目覚めてもおかしくないのかもしれない。
レクターはどうせ死ぬならクラリスに殺されてもいいと思っている気もするし、目覚めてほしくないとも思っているのでしょう。
どっちにしろ、博士との日々は優雅で贅 -
Posted by ブクログ
「まるでハンニバル・レクターだな」
と、他の警察モノでセリフに出てくるくらい有名な本
被害者の皮を剥ぐ「バッファロウ・ビル」と呼ばれる連続殺人鬼を追うクラリスと、豊富な知識と洞察で捜査を手助けする。"人喰い"ハンニバル・レクター博士、2人の駆け引きによって捜査が進んでいく。
この本が売れた後「サイコキラーブーム」みたいなのが起きたらしい。当時のことはよくわからないけど、よく読むサスペンスモノの中にもサイコパスが出てくることも多く、それらの
「元祖」のような感覚で読み始めてみる。
…何というか、音楽で言うと(現代のサイコスリラー)「ゴリゴリのEDM」を聴いたあとすぐに
-
Posted by ブクログ
ハンニバル・シリーズを完結させてから13年も鳴りを潜めていたトマス・ハリスが帰ってきた。それもレクター博士シリーズのようなサイコ・サスペンスではなく、初期の『ブラック・サンデー』のような国際テロ小説でもなく。作者が現在生活し、その地に魅力を感じてやまないマイアミを舞台として、犯罪者たちの激闘をブラックでアップテンポな筆致で描きつつ、ひとりのニューヒロインを際立たせたエンターテインメント小説という形で。
本書は、『スカーフェイス』でお馴染みの、実在のコロンビア麻薬カルテル王パブロ・エスコバルがマイアミに実際に遺したとされる豪邸が軸となる。現在では何代目かの持ち主によって取り壊されてしまった -
Posted by ブクログ
ネタバレ<上下巻を通してのレビュー>
「羊たちの沈黙」で、すっかりレクター博士が大好きになってしまったのですよ。
あの知性と冷静さの虜になったといっても過言ではありません。
ハンニバル・レクター博士の「記憶の宮殿」へようこそ……
と同時に、クラリスに重くのしかかった策謀の渦の中へようこそ。
レクター博士へ復讐を誓う資産家が念入りな計画を立て、そこにどんどん、国家の機密を扱う人物たちがいとも簡単に買収されてゆき、一見、その計画は成功しそうに思える。
彼らの誤算は、レクター博士とクラリスを甘く見過ぎていたということに他ならない。
賛否両論はあるが、あのエンディングがすべてを物語っているのではないだ -
Posted by ブクログ
「もし幸運にも、若者の頃、パリで暮らす事ができたなら、その後の人生をどこですごそうと、パリはついてくる。パリは移動祝祭日だからだ」
という冒頭のエピグラフで有名なヘミングウェイの遺作。以前から気になる本であったのだが、品切れ状態となっていた。新訳で、文庫で出たので早速、読んでみる。
20年代のパリという伝説的な都市と伝説的な芸術家たち。そして、貧しくも、芸術を志す青年と新婚の夫婦の美しい愛。カフェ、レストラン、リゾートなどなどの風俗の記述。様々な芸術家達の姿の辛口の描写。
もう、絵に描いたような「修業時代の芸術家の貧しいけど、幸せな日々」の話である。そして、その美しい日々は、作家と