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マイアミに暮らす美貌のカリ・モーラは25歳。故国のコロンビアでの凄惨な過去を背負い、移民として働きながら、獣医になることを夢見ている。彼女は麻薬王の邸宅管理のバイトがきっかけで、屋敷に隠された金塊を狙う犯罪集団の作戦に巻き込まれ、彼らと対立する臓器密売商の猟奇殺人者シュナイダーの妄執の的にもなってしまい――。極彩色の恐怖と波乱の展開に震える傑作サイコ・スリラー。
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Posted by ブクログ
マイアミの豪邸に住む美女カリ・モーラはコロンビアの反政府ゲリラ組織に所属した壮絶な過去を持つ。その豪邸の地下に眠る巨大な金塊を巡って、猟奇的な嗜好を持つハンス・ペーター・シュナイダーらに狙われて、恐ろしい展開に巻き込まれていく。読みやすいようで読みづらく、内容が入ってくるようで置いていかれる、訳書な...続きを読むらではの難しさも感じるものの、マイアミという世界の雄大さやダイナミズムを、アクションサスペンスのタッチで浮き上がらせている作品。
ハンニバル・シリーズを完結させてから13年も鳴りを潜めていたトマス・ハリスが帰ってきた。それもレクター博士シリーズのようなサイコ・サスペンスではなく、初期の『ブラック・サンデー』のような国際テロ小説でもなく。作者が現在生活し、その地に魅力を感じてやまないマイアミを舞台として、犯罪者たちの激闘をブラ...続きを読むックでアップテンポな筆致で描きつつ、ひとりのニューヒロインを際立たせたエンターテインメント小説という形で。 本書は、『スカーフェイス』でお馴染みの、実在のコロンビア麻薬カルテル王パブロ・エスコバルがマイアミに実際に遺したとされる豪邸が軸となる。現在では何代目かの持ち主によって取り壊されてしまったらしいが、小説の世界では、その地下にあるばかでかい金庫には金塊の山が眠り、これをめぐって犯罪者どもの強奪戦が展開される。 その一方の悪辣な側の先頭に立つのが臓器売買を生業とするサイコパスのドイツ人で、その買い手を含め、あまりの異常さに吐き気を催したくなるほどでありながらどこかブラックなユーモアで包んでさらっと描いているところに作者の変化が見られる。重厚なゴシック・サイコ・ミステリーではなく、あくまでアクションを主体とした争奪戦というゲームの盤上にいるかのように。 訳者はまるでエルモア・レナードのよう、と書いている。まさに多くの悪党どもがしのぎを削り合い、化かしい合うアクションと殺戮で重ねてゆくハイテンポな展開と、からりと明るい陽光と海辺という舞台など、かつての暗いハンニバル・シリーズとは対極を成すかのようである。 ヒロインのカリの出自を描くシーンで、中南米からメキシコを経由してアメリカに密入国する手段としての<野獣>と呼ばれる鉄道のことが描かれている。機を同じくして翻訳されたばかりのドン・ウィンズロウ『ザ・ボーダー』でニコという少年が辿る南米からアメリカへの脱出方法として実は印象深い<野獣>。鉄道の屋根に飛び乗って移動するこの危険極まりない方法は、銃撃や転落などが頻発し、成功率が低く、鉄路近辺には子どもたちの手足が散らばっている、などと本書でも描写されている。 ウィンズロウの描いた過酷なメキシコの麻薬戦争を尻目に、本作では、ヒロインであるカリ・モーラは<野獣>ではなく、運よく空路にてマイアミへの移住を果たしている。トランプ政権下で移民として生きる苦境と、それに抗う主人公の生活については作中でしっかり語られる。彼女が手をかける野鳥たちの環境保護活動もプロットの最重要武器として含めつつ、トマス・ハリスがマイアミに生活しながら実際に感じているであろうリアルを、作品というフィクションの海に、錨のように降ろしているのではなかろうか。 何はともあれエンターテインメトとして巻置く能わずの面白さである。何も考えずひたすらマイアミの太陽と青い海に身を委ねてみては如何。少々チリが効き過ぎのきらいはあるが、カリという25歳女性の魅力は日々の読者の内外のジレンマを、きっと、すきっと、払拭してくれるはず。
トマスハリスの最新作。ハンニバルから離れた新たなヒロインの登場。相変わらずの猟奇性は持続しているがヒロインの爽快感が特徴か。この先も続きそうな作品。
20200113 トマスハリスの新作。怪物と美女の対立構成はあるがどちらも現代風でテンポが早く、登場人物の名前と関係をメモしながら読まないとついていけなかった。そういう意味で本書は映画的なのだろう。読み終わりまで時間がかかったが読む時間の問題で結局は一気読みした快感が残る。
積読で何となく手に取っていなかったけど、読み出したらサクッと一気。すぐに読めば良かった。グロテスクなんだけど、気を許せるところもあり。軽くなった。
あのトマス・ハリスの「ヒロイン対サイコパスキラー」ものと期待して読むと肩透かしを食うかも。むしろ現代の冒険小説ものとして読むべき感じ。では、一連のレクターシリーズの続編のような期待値を差し引いても、サスペンスとしては中盤までの展開はいささか冗長に思う。一番の魅力はマイアミの港町の情緒感で、そのどこか...続きを読むゆったりした雰囲気の中に突発的に起きる殺伐とした現場のリアリティや、移民などの社会背景に詳しくない私は、そのへんにピンと来ていないのかも知れない。
トマス・ハリスなので、もっとノワールなものを期待して読んだが…意外とスッキリした読後感。 「羊たちの沈黙」で代表されるレクター博士ものとは一線を画した作品だった。 カリ・モーラをヒロインとした連作ものにするのだろうか? 作者には、もっと黒々とした重い作品を期待したいのだが
ハンニバル・レクター博士を世に送り出した著者の新作を書店で見つけた時は、小躍りした。映画化もされた『羊たちの沈黙』でも女性が主人公だった。本作も女性が主人公であり、徐々に彼女の過去が語られつつ物語も進んでいく。本作品もいずれ映画化されるのではと、期待している。 犯罪者がうごめくアメリカを舞台にした、...続きを読む容赦ない奴らの宝探しゲームに巻き込まれたヒロイン。最後のページまでハラハラ・ドキドキが止まらないスリラー小説。
サイコスリラーというより、結構 ”活劇” だね。主人公カリがなかなか魅力的。この人の描く女性は、クラリスといいカリといい、クレバーでヤル女でカッコいい。悪者たちがちょっと物足りなかったかな。
トマス・ハリス『カリ・モーラ』新潮文庫。 まさかトマス・ハリスの新作が再び読めるとは思わなかった。『ハンニバル・ライジング』以来、13年ぶりの作品。タイトルの『カリ・モーラ』は主人公のマイアミで麻薬王の邸宅管理を行う25歳の美貌の女性の名前である。カリ・モーラが管理を任された邸宅に隠された金塊が眠...続きを読むる金庫を狙う変態的な臓器密売人のシュナイダーら犯罪集団が暗躍し、主人公のカリ・モーラも犯罪の渦中に巻き込まれるという一種のノワール小説。 カリ・モーラの過去については本作の読みどころの一つなので、触れないようにしたい。カリ・モーラの活躍はまるで『羊たちの沈黙』のクラリス・スターリングのようで、変態シュナイダーはバッファロー・ビルといったところであろう。 これまでトマス・ハリスが上梓した作品は『ブラックサンデー』と『レッド・ドラゴン』に始まるレクター博士4部作のみで、いずれも陰鬱な雰囲気の作品なのだが、本作はエキセントリックで、どこかポップな感じのする不思議な作品だった。ローレンス・サンダースの『汝殺すなかれ』にも似ている。超寡作のトマス・ハリスだけに期待は大きかったのだが……少し物足りなさを感じる。 本体価格890円 ★★★★
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