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第二次大戦後数年を経たヴェネツィア。アメリカ陸軍大佐キャントウェルは、貴族の娘レナータと刹那の逢瀬を重ねる。彼の心の傷を癒すため戦争の真実を明かしてくれとせがむ恋人に、重い口を開いて語ったのは、凄惨な戦いの全貌と自らの判断ミスで多くの部下を殺してしまった悔恨の情だった……。年の離れた愛しい人、戦争の不条理、迫りくる終焉の時。著者自身を投影して描く愛と死の物語。
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Posted by ブクログ
ヘミングウェイが戦争で訪れた北イタリアの地への愛情が垣間見れる。虚しいと分かっていながら、架空の騎士団ごっこをしたり、猟をしたり、レナータとの恋に浸ったり…老いと病気に悪態をつくのはそうした虚しさや淋しさを隠すためであり、本人もそれに気づいている。
新潮の帯には「幻の長編」と書かれているがなんのことはない。出版当時、残念ながら好評を得られなかった作品で、このタイミングまで邦訳がなされていなかっただけである。 第二次大戦直後の敗戦国イタリア(ヴェネチア)を舞台に、戦勝国側でありながらもヴェネチアをこよなく愛する50すぎのアメリカ陸軍大佐キャントウ...続きを読むェルと、彼の地の若く美しい伯爵令嬢レナータの恋物語を軸にして、大佐の戦争の傷跡ひいてはこの戦争の悲惨さそのものを語ろうとする。 大佐は心臓を患っており先がもう長くない中、ヴェネチアを訪れる。レナータも大佐の状態を承知しており、今回の逢瀬が最後になるという暗黙の了解のもとで愛を確かめ合う二人。 彼を忘れたくないがため、彼の印象を強く残すために戦時中の話をせがむレナータ。一方自身の部隊をほぼ壊滅に追いやってしまった辛い体験を含むその話を拒む大佐。 結局レナータの強い願いに応える形で、少しずつ戦争での自身の傷跡について語りだす。 人生の大半を兵士として過ごした大佐は、同様に複数回の戦争に参加した筆者ヘミングウェイの姿が色濃く投影されている。 大佐の語る戦争そしてすべてを軍人としての目でみる世界は、あたかも筆者自身が自身の悲惨な体験を整理しているようにも思え、とても重い。 腰を据えて考えたくなる。 考えたくなるのだが、この物語、とにかく合間合間にレナータとの甘いやり取りが差し挟まれる。 お、いよいよ語るか大佐、というタイミングでレナータが「ねえ、愛してるって言って」と流れを寸断する。 え、語ってって言ったの君では・・・・と思いつつ、しばし二人の睦言を眺める。 この愛のパートも切ないっちゃ切ないんだけど、どうにもリズムが悪く、結局どちらにもいまいち入り込めない。 先程も述べた通り、大佐にはヘミングウェイが強く投影されているのと同時に、実はレナータには彼が当時熱烈に恋をしていたうらわかき乙女の姿が投影されている。 そして物語全体に、ヘミングウェイの、あの子とこうだったらいいな、がそこはなとなくというか非常に明確に投影されている。 これが冒頭に書いた出版当時好評を得られなかった大きな理由の一つである。 そういう事情をなにも知らなくても、いい話なのになんとなくテンポ悪いなと感じるし、事情を知っていると、うわ、と若干引く。 さすがヘミングウェイだし、構成も見事なんだ。特に冒頭とラストの接続とか、この戦争がいかに辛いものか、心を強く揺さぶるんだ。 ただでさえ美しい街ヴェネチアの描写も本当に見事なんだ。 そして知らない人はいない「老人と海」はこの小説のすぐ後に書かれているんだよね。そう考えると、この小説があの名作へのステップアップに必要だったというてんで非常に重要な作品であるとも感じる。 まあほら、ヘミングウェイだし、読んで損はないよ。うん。 でもなー。うん。でもなー。
風景描写が細かくて、まるで自分もヴェネツィアにいふかのようだった。 登場人物がやや多く、メインはあんまりいないけどちょい役が多いので名前を覚えるのが大変だった。内容的には好きでした。
ヘミングウェイは軍人と老人と死と女性がテーマである。米軍の退役軍人である主人公が、フランス戦線で負傷し、ベニスで愛人の若い女性と短い時間を過ごして、心臓発作で死んでいくという話である。
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