ヘルマン・ヘッセのレビュー一覧
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見どころがありそうなだけに惜しい作品。1クール目だけはおもしろいアニメみたいなかんじ。もっと跳躍できそうなのに、やはりいつものヘッセである。
クヌルプの漂白の人生。彼は美青年で気ままで不思議なところがあり、かならず娘っこたちの目にとまる。彼のときおり口ずさむ詩や、生活をいとなむうえではいくらも役にたたない手先の器用さは「人々の息苦しい生活に一脈の明るさとくつろぎをもたらす。」
作者のいうことを鵜呑みにすれば、そうなのだろう。けれどもぼくにはこのクヌルプという人物が真から人を和ませることのできる人物とはとても思えない。なぜなら彼の性格はやはりヘッセ的気難しさであって、それがクヌルプの柔和な性 -
Posted by ブクログ
メルヒェン/ヘルマン・ヘッセ 読んだ。
解説にもあるとおり、母から授かった無償の愛と死生に対する考察が混じりあって、価値観の放擲がなんどとなくくり返される。憧憬と回帰に関する一貫したテーマのなかで、短編集ながら連作を思わす生活くささが妙に生々しい。
メルヘンとはなにか、読みすすめるうちに何度となくこう自問したくなる。この一冊の中に読み取るべきものは『アヤメ』のなかで、他作品とくらべてスローダウンした筆致で書かれてあるのでページを戻りながら読むとわかりやすいが、読み終わってそこに答え(救いのようなもの)をもとめるなら「ノー」と言わざるを得ない。
たち返ることが必要で純粋なものに同調し、なじむこと -
Posted by ブクログ
ワシは「詩」が苦手です。「小説」が好きで、いわんや「言葉」が好きなのに、なぜか「詩」は苦手。理由は掘り下げればいろいろ出てくるのですが、端的に言うと「受け取れている気がしない」。
詩って、俳句や短歌に次いで、極限まで言葉を削いだ状態ですから、言葉そのものに共感できないと、なかなか入り込めないんですよね。そしてワシはその辺りの感性が鈍いのでしょう、感覚的な言葉紡ぎは結構難しい。
それでも、まだこのヘッセの詩集は読めました。まぁ和訳の妙もあるのでしょうけど、まだ「分かる」という感覚で読める作が半分くらいはあった。それが多いか少ないかは分かりませんが。そんな中、特に感じ入ったことが二つ。
一つ -
Posted by ブクログ
ヘルマン・ヘッセの短編集。大人のための童話みたいな物語がたくさん収録されている。いくつか好きな作品があった。が、ヘッセの良さは短編では出きらないな、とも思った。なぜなら、ヘッセの良さというのは、人間が心の奥底で悩んでいることについて、それが自分自身にもよく言い表せないような状況において、それを見事なまでに文章化する点にある。そしてもっとすごいところは、さらに自分自身でもそこに存在していたことに気が付かなかったような細かな感情の揺れ動きまでを見事に表すことができる点にある。こんな事をするには長ーい前ふりと細やかな記述が必要なのだけれども、短編ではそこのところができなくなってしまう。なのでヘッセの
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ネタバレ久方ぶりにヘッセをば。
で読んだのだけど、読み終わった後泥のように眠った。
読む力衰えてるのかもしれない。
知と愛。
原題はNarziss und Goldmund。
修道院長になるナルチス(宗教家としてではなく、自らをあくまでも学者・思索家として定義しているのがこの人物の造形の肝ではないかと思う)、
放浪の日々を経て芸術家になるゴルトムント(ナルチスから見るゴルトムントは常に少年らしさを失わず・・・何か少年漫画の主人公みたいね。)
その二人の応酬が軸になっている。
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前5編、後ろ5編、ナルチスとゴルトムントの会話が繰り広げられる修道院の中の場面は、設定も含めてヘッセらしく理屈っぽ