押切蓮介のレビュー一覧
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巻末解説が大西祥平! のちの『涅槃姫みどろ』原作者である。厄いわね。ホラーとギャグの間の危うい(でもわりと太い)境界線上を渡る二大巨頭の夢の共演とも言えるだろう。この解説からほどなくして『みどろ』の連載が始まることにセンチメンタリズムな運命を感じずにはいられない。
さておき本編。耳雄はヒロイックなキャラクターだが(今巻登場の相原岬視点では完全にヒーローの立ち位置だ)、同時にドバカでもある。単に思いつきと勢いだけで行動している。しかもその行動力がパワフルとくる。
電話中の落書きを妖怪の仕業と思い込んだり、入れ替え婆に「お礼」をぶちかましたり、長いCMに激しく煩悶したりする。このあまりにも考え無しな行動が独特のハイテンショングルーヴを生み、まあ要するに愉快なのだ。こういうのと同居している留渦はたまったものではなかろうとも思うけど。ものわかりが良くて達観している妹でよかったね。しかもダウナー系美少女ときた。ちくしょうにくい。
そんな耳雄が理不尽なほどムズいゲームに当たり散らす「制作者にあたれ!」の回は、もう妖怪がいなくても耳雄が制作者を引きずり出してしまいかねないところだが、そんな耳雄が妖怪の行為を見て自らのおこないを改めるという構造が逆説的で愉快だった。「普通逆じゃない? なにこのマンガ……」
そしてオチがこれまた耳雄が何も学んでなくて愉快。でも誰しも怒るわあんなゲーム。 -
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ヤロウ……タブー中のタブーに触れやがった……(木原浩勝の巻末解説を読んで)。
それ言っちゃダメエエエエ! というか前巻の多田克己先生の解説まで間接的に貶めてるよいささか! 次巻の解説ががぜん楽しみになってきた。
耳雄はいわゆる不良のレッテルを貼られている。ケンカの相手を必要以上にブチのめし(中略)だが吐き気のする「悪」ではない。むしろ仲間思い、家族思い、ペット思いのたいへんいい奴である。
彼らの平和を脅かす悪霊には容赦ない一方、出会い頭の妖怪でも同情できるところがあれば優しい面も見せる。意外にちゃんとしたヒーローなのだ。
留渦のために文字通り命を賭して戦う「寿命ギャンブル」の回は、押切マンガでしか描けないような壮絶な形相がギャグ表現であるのと同時に、身命を賭けた必死の思いを表現していて、こんなマンガなのになんたることか感動的ですらある。
他にも素でいい話な「心霊スポット祭」、どこか繊細で叙情的な「夕陽ヶ丘」(これを単行本でちゃんと2色ページにした担当氏のはからいも実に粋だ)など、今回はただのホラーギャグの枠に収まらない美しさがそこかしこにあって、どうしちゃったんだろうという気にもなる。
思えばこの当時からただのギャグ作家で終わる人ではなかったのだなあ──とは『プピポー!』『ミスミソウ』を知っている今だから思う後知恵ではある。
どうしようもないメチャメチャな話なのに、どこか熱い男の友情と青春を感じさせる「枕戦争」も好き。 -
Posted by ブクログ
「俺があの世界にいればこの鉄拳でローラを救ってやれるのに!」 おお、こんなところに『月光条例』の原型が!(うがちすぎ) まあさかのぼれば『ドラえもん』の「絵本入りこみぐつ」とかいろいろあったと思いますが、全編が突飛なようでいて意外と「あるある」な導入を描いているのがこの作品だ。
かわいそうなお話をなんとかしてやりたいという気持ち、牛丼屋でガンつけあう高校生、飼い犬と会話したい願望、生徒指導の持ち物チェック、都会の迷いザル、なんとなく電車の席では端っこに座りたい感覚……。
1巻あとがき漫画で川原で遊ぶ人々を見て「彼ら一人一人に人生という物語がある/この世にはこんなに物語が存在するのだ……!!/〜/それだけあるなら物語(ネタ)が思いつかないワケがない」と感じたと語っていたは案外心からの真実なのかもしれない。
こういう些細だが確かに実感のある話から、それを妖怪のしわざに強引にからめてなんの教訓もないメチャクチャな(ほめてます)ストーリーに繋げてしまうナンセンスギャグぶりがたまらない。導入は作者にとってただのネタフリでしかないのか、それともこの導入あってのメチャクチャなのか……。
もともと妖怪とは社会に根ざしたもので、当時の理屈では説明のつかない現象や感覚に妖怪という形態を与えたものだと民俗学はいう。その意味、この物語は正しい現代の妖怪譚と言えるかもしれない。
巻末の多田克己氏の解説(誰だよ、こんなキャスティング考えたの!)の秋葉原論はいくらなんでもうがちすぎな気がするが、「何を考えてこんなバカ話(いい意味)を描けるのか」という巨大な疑問の前では、そういう計算が作者にあってもおかしくはないとも思えてしまうのだった。 -
Posted by ブクログ
「見ろォ!! 壁のチャンネルらしきボタンにキツツキが!!」「なんなんだよこの出来事は!」 本当になんだよそれ!
シュールという言葉は便利なものでこのマンガをあっさりと表現できてしまうけども、むしろデタラメと僕はよびたい。いい意味で。
ヤケクソで生み出されたような異様に身近そして適当な怪異! それらがたてつづけに主人公・耳雄をおそう! 耳雄って名前もたいがい適当だ。
怪異の入口こそホラー的な恐怖とともに描いてはいるけれど(「もしたまたま入った奇妙な映画館で……」なんて導入、実に怪奇的じゃないの)、それはどんどん適当な方向に暴走してまったく怖くなくデタラメで可笑しなギャグ表現に変貌していく。
その点、これを「ホラーギャグ」とホラーの冠をつけていいのかすら怪しく感じるくらいだけど、まあ確かに怪異譚ではあるのでホラーといえばホラーでもある。ホラーって言葉は意外と広い。
ジャンルのくくり方はともかく、ヘンテコで可笑しいのだからそれはそれでいいじゃない。そんな気の抜け方がバカバカしくも楽しい、いい一冊だ。