佐伯泰英のレビュー一覧
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文庫書下ろしという時代劇。娯楽小説だ。
新酒を西宮から江戸に運ぶ船のレースを行い、一位の船が販売特権を得るという設定である。本当にそのようなことがあったのかは調べていないが、危険を冒して商業上の権利を競うという考え方は現代に通じる。
主人公は杜氏の次男であり、将来は長男の補佐として生きる運命を持っていた。さらに内心深く想う幼馴染の少女が兄のもとに嫁ぐという事態となり、人生のあり方を考えるようになっていく。そして新酒を運ぶ船に密航する。
この主人公は身体能力が極めて高く、家族の秩序に従順であり、航海への適応力も極めて高い。この小説の魅力であり、また欠点でもあると思われるのはこの主人公の万能性である。兄に嫁ぐ幼馴染へのほのかな未練を除けば、およそ欠点がない、スーパースターのような存在だ。
一読すれば魅力的なヒーローであるが、果たしてこういう人物はいるのだろうか。ちょっと待てよと考えてしまう。このテイストはどこかで感じたと思った。韓ドラや中国ドラマにあるあれだ。そしてかつては日本でも量産されていたドラマだ。
これを設定を変えて韓国でドラマ化すれば結構面白いものになるかもしれない。しかし、日本人が演じるとなにか嘘くさくなる。そのたぐいの内容だ。
なにか少し悪く書いてしまった気がするが、この小説は爽快な気分になる点においてよい。この作家の作品をもっと読んでみたいと思っている。 -
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新・酔いどれ小藤次シリーズ最終巻、完結。
あの『御槍拝借』の事件の元となった控えの間の騒動。
森藩、藩主の城を持ちたいと言う願望は潰えルコとなく、今の今まで続いていたのだった。
藩領を海から山へと配置換えがあった当時からお留山と呼ばれ、維持管理だけが許されていた場所に、藩主廃止を積み上げ城の基盤を作っていた。
その出費を贖おうと、国家老は御法度の密輸入をしてた大な財産を作り、もはや藩の中で、どちらが藩主だかわからない横暴を重ねていた。
その改革。そして藩主を説き伏せ城を断念させる。
最後の大きなご奉公を成し遂げ、江戸に戻り新兵衛の弔いをする大円団。 -
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「空也十番勝負」の6巻は、五番勝負での中断後、3年ぶりの新作です。
薩摩示現流の武芸者酒匂太郎兵衛との勝負で、空也は瀕死の重傷を負い、意識を失ってしまいました。そんな空也の世話を懸命に続ける長崎会所の高木麻衣のもとに、高麗人の剣術家李遜督が訪ねてきます。二日間空也と二人だけにしてほしいと言われ、不安を抱きつつも受け入れた麻衣。いったい部屋で何が行われるのか。
いやはやこれは、シリーズ再開一発目にふさわしい、驚きの展開。空也のセリフを借りれば、「なんとなんと」ですよ。後半は、まるで映画を見ているようでした。いろいろと語りたい感想はあるのですが、グッとこらえて書かずにおきます。
「終章」と「あとがき」もとても良いので、星5つにしようか迷いましたが、もうちょっと先にとっておくことにします。
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「空也十番勝負」、5巻の下巻です。
引き続き、長崎で偽名にて武者修行中の空也ですが、やはり薩摩からの追手に知られたようです。どこへ行っても追ってくる酒匂一派に覚悟を決める一方で、命の恩人である渋谷重兼&眉月と再会し、和やかで幸せなひとときを過ごします。
麻衣さんと寅吉さんがいいですねぇ。麻衣さんはカッコよくて、女として憧れます。
ラストの緊張感は、久々にハンパなかった! そしてこれは、ここで〈了としたい〉なんつって中断されちゃったら、読者は「うそーーーーーん‼︎」て叫びますわ。いやぁ良かった、今回決定版ですぐ続きが読めて!
双葉文庫版では、「空也十番勝負 青春篇」をここでいったん〈了〉とし、のちに「空也十番勝負 再起篇」を考えてもよいのでは、と「あとがき」に書かれているので、この決定版の6巻以降は実質「再起篇」だと考えて良さそうですね。
空也が江戸へ帰る日を楽しみに、これからも読み続けますぜ! ていうかその前に大変ですよこれは。まずは6巻に突入だ!
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「空也十番勝負」、5巻の上巻です。
平戸を発った空也は、大村城下を経て長崎へ。長崎会所の高木麻衣と再会し、長崎奉行松平石見守貴強と面会すると、そこで鵜飼寅吉とも再会。薩摩の酒匂一派に追われている空也が剣術修行に打ち込めるよう、長崎滞在中は、長崎奉行所の新任として大坂中也という名で過ごすことに。
空也はどこへ行ってもほっといてもらえませんなあ。でも結果的にそれが空也を助けてるんですけどね。今回は、長崎らしく海賊船退治に巻き込まれるハメになるのですが、その一方で、父磐音の意外な過去を知ることになります。長崎という土地柄もあり、戦う相手も方法もだいぶ近代的になってきて、ハラハラです。
ところで江戸では、薬丸新蔵が改名して薬丸長左衛門兼武となり、三十間堀に野太刀流の道場をオープン。そこへ道場破りが現れますが、これがなんともおもしろい展開に。武左衛門の作戦が、なかなかどうしていい感じ。やっぱり江戸はおもしろいぜ!
ただちょっと、空也の長崎旅を知った磐音と奈緒が……ううむ、私がおこんさんだったら、やだな、こんな話をする2人を見たら。
さて、空也がいろいろな人と再会できてちょっとうれしい上巻でした。さらにもう1人、あの人と再会できるかも、という楽しみを胸に抱き、下巻へとまいります。
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佐伯氏の単発読み切りの3作目。どれも一般市民の日常にプラスアルファを入れながら、最後にほのぼのとさせる読物となっている。
今回の作品は浮世小路の料理屋の美人姉妹が、火付けにあって両親が焼死するという事件を解決して行く物語。何故か再建がすぐ行われず、裏に大きな動きを感じさせる内容。これに火消しの見習いが上司の若頭から命ぜられて探索に入る。美人姉妹との恋愛話しがあったり、闇の勢力との闘いがあったり、退屈しないように色々と出てくる。犬が重要な役回りで出てくるのは、酔いどれ小籐次と展開が似ている。作者も80才となり、大技でバッタバッタというよりも市井の何気無い日常を丹念に描くようになってきたように思う。 -
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「空也十番勝負」、4巻です。
この四番勝負の巻では、19歳になった空也が、対馬、壱岐、平戸と島をめぐります。そのたびに新たな出会いと別れがあり、助けられたり戦ったり、武者修行は続いていきます。
対馬は〈朝鮮と呼ばれる高麗との交易を公儀より許された藩〉なので、話がだいぶ国際的。でも〈これまでの経験からいって、未知なる場に誘われると、なにか厄介事に巻き込まれていた〉と自覚していた空也。そうならないよう山の中に身を潜めていると、〈人気も火の気も感じさせなかった〉1人の男と出会います。そして修行の場を壱岐に移せば、男嶽神社で白衣の島人から聞いた、10年以上も前から猿岩に住んでいるという高麗人の剣術遣いとの出会いがありました。この2人がね、いいですねぇ。これ絶対再会するでしょ。楽しみですわ。
さて、江戸では、いつも誰かからの文や話から、間接的に空也の修行の進捗状況を知る磐音夫妻と睦月です。おこんさんはいつも涙。どうにももどかしいですなぁ。でもこうして尚武館に知らせてくれる人たちがいるのはありがたいですね。みんな、ホントいい人たちです。
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「空也十番勝負」3巻、三番勝負です。
タイ捨流丸目道場の主丸目種三郎の書状を携え、行き先もわからぬまま八代湊を帆船肥後丸で発った空也は、福江島に到着。樊噲流桜井道場に身を寄せつつ、肥後丸の主船頭である奈良尾の治助とともに、唐人との抜け荷取引に用心棒として同行したり、空也の希望で、桜井道場の若手4人を案内方に、島でいちばん高い父ヶ岳に登ってみたりしているうち、空也をつけ狙う東郷示現流の者どもが迫っていることを知らされ、すぐに中通島へと移動。隠れ切支丹がいるというその島で、一人の女と出会います。
舞台がコロコロと変わり、そのたびに新たな人々との出会いがあるので、土地や人物を整理しながら読んでいます。そしてどこに行っても空也は山に登り稽古を続けるのですが、いろいろな事件に巻き込まれていきます。でもそれこそが人生勉強、空也の修行になるのですね。船には大砲が搭載され、出会った女性は銃を持っているという時代、剣術の修行をする空也は「剣の時代は……」などと考えてしまうことも。
江戸の尚武館でも、神保小路でも小梅村でも変化があって、時の流れを感じますね。相変わらずの武左衛門がちょっとうれしい今日この頃です。
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「空也十番勝負」2巻、〈(二番勝負、恨み残さじ)〉でございます。
薩摩での修行を終えた空也は、肥後国へ戻り、旅のはじめに縁のできた宮原村の浄心寺家を訪ね報告とお礼をし、人吉城下のタイ捨流丸目道場へ改めて挨拶に行き、正式に入門。その修行中、山修行を決意し、平家の落人伝説が残る秘境五箇荘を目指します。
空也はやっぱり磐音の子、自然と人助けしちゃう人なのですね。そして剣術が強いもんだから、いつの間にかいわれのない恨みを買ってしまっているという、巻き込まれ体質はまさに父親譲り。
でも磐音の懐の深さは、比べられない。もうはてしないんですよねぇ。空也の厳しすぎる武者修行の旅にハラハラしてるときに、たまに江戸に視点が移るとめっちゃホッとする。なじみの人たちがみんないるしね。わが家に帰ってきたかのような安心感ですよ。もー空也ったら早く江戸に帰ればいいのに。とはいえ若いからね、空也くん、九国にて絶賛成長中です。えらい!
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「居眠り磐音」シリーズは51巻で完結しましたが、その後、磐音の嫡男空也の武者修行の旅が始まりました。その旅を描いた、空也が主人公になったシリーズ、「空也十番勝負」の第1巻、の上巻でございます。
双葉文庫から5巻まで出たところで中断されていたこのシリーズ、「居眠り磐音」の決定版が文春文庫から刊行されたのを機に、やはり決定版として文春文庫から刊行され、しかも物語が再開、6巻以降が新作として順次刊行中です。2022年5月現在、7巻が発売されたばかり。磐音シリーズファンとしてはうれしい限りです。ただこれ、1巻が「一番勝負」、2巻が「二番勝負」、と帯に書いてあるので、シリーズ名を考えると10巻で完結なのかしら?
さて、16歳の空也は、〈薩摩藩の御家流儀東郷示現流〉を学ぶために、薩摩へ入ろうとしております。しかし薩摩は〈特異なる国〉で、他国からの侵入を拒んでおり、国境付近で外城衆徒(とじょうしゅうと)なる集団が暗躍、入国しようとする者がいれば厳しく排除します。空也の武者修行の旅は、この外城衆徒との闘いから始まります。
ところで、わたくしずっと主人公の名を普通に書いておりますが、実は本書では、終始〈若者〉となっており、一切名前が出てきません。彼のことを知るすべての人たち、磐音とおこん夫婦ですら、彼の名を一度たりとも口にしません。それは、彼自身が薩摩入りに際し〈己の名も出自もすべてを捨て〉、〈口を利かぬ「行」を己に課した〉からだと思われます。
主人公の名前が出てこず、主人公がしゃべらないというのは、読んでいてなんだかボーッとしてくるというか、どうも物語の輪郭がぼやけるような感じがしますね。これ、〈薩摩藩島津家領内での修行を終えるまで続く〉とあるから、きっとまだまだ続くんだろうなぁ。肥後や日向で出会った人たちから〈名無しどん〉て呼ばれてるのは、ちとかわゆいですけどね。
旅先での新たな出会いもたくさんあるし、関前藩にいる馴染みの人たちも、それから江戸にいるいつもの面々も出てくるから、もちろんうれしいんだけど、このラストはやっぱり泣けちゃうなぁ。最近とくに武左衛門に弱いんですよねぇ。小田平助の優しさにもかなり弱いけど。
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「居眠り磐音」51巻、ついに最終巻です。
前巻から2年後、寛政7年(1795)、空也16歳、睦月は13歳に。病臥中の父坂崎正睦を見舞うため、磐音は家族とともに豊後関前藩の新しい帆船豊後丸に同乗し、関前に到着。家族の菩提寺参りや友の墓参りを済ませ、またもや藩内に巣くった〈腹黒い鼠〉どもを一掃するために奔走する磐音です。
はぁ…………終わってしまった。いやぁ、なんか、もう、うーん、まぁ、関前藩と空也の将来が楽しみではありますが、私の中では悲しみ度が上回ってしまっていて、最後はもうちょっとみんなの軽妙な会話で笑いたかったなぁ、笑顔でさわやかに終わってほしかったなぁという思いを強くしています。なので、最終巻だけど、星は4つにさせていただきましょうかな。
この「居眠り磐音」シリーズ、読めば読むほど深く、本当に人生勉強になりました。いろいろな立場の人がいて、それぞれにいろいろな考え、価値観があり、それを受け入れ合いながら、みんなで前に進んでいく。出会えてよかった、読んでよかった、すばらしい作品です。
ラスト、『空也十番勝負』への誘いがハンパないっすね。この後の空也がかなーり気になります。ちょっと他の本でひと呼吸おこうかと思っていましたが、このモヤッとした寂しさも払拭したいし、すぐ空也シリーズに行っちゃおうかな。
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「居眠り磐音」、45巻です。
大きな出来事のひとつは、「尚武館改築祝い 大名諸家対抗戦」に向けて稽古中、一人の老武芸者が尚武館を訪れたこと。「肱砕き新三」と呼ばれる、〈天徳寺門前の直心影流長沼道場の異才だった剣術家河股新三郎〉という者で、磐音との真剣勝負を願いますが、どうやら病持ちのようで……。
もうひとつは、筑前博多の豪商箱崎屋の末娘お杏さんが江戸に到着、辰平と再会できたこと。小梅村で開かれた宴会が、まぁ豪華で和やかで、良いですねぇめでたいねぇ。私も参加したかった。
そしてもひとつおまけに気がかりなのが、佐野善左衛門政言。なーんか動きがあやしいのう。
本巻では、武士の気構えというか、覚悟みたいなものをひしひしと感じました。武家の、嫡男とは違う、次男、三男の生き方とその悲哀も。
とは言っても、尚武館の門弟たちは、みんな明るく稽古しております。みんなでわちゃわちゃしてるのがホントに楽しそうでかわゆい。利次郎と辰平の二人はすっかり頼もしくなって、巣立ちの日が近いのかなぁと感じさせてうれしいような寂しいような。
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ネタバレ 購入済み
ああ、終わってしまった….….
周五郎は去ったが、佳乃は、照降町で、これからも生きていく。二人の行く道は、これからも、交わることは、無いのだろうか?
周五郎の兄の死、藩主に望まれての藩内の大掃除、何やらバタバタと、慌ただしくて、少し説明不足の感が有って、残念。