山田蘭のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレホロヴィッツのホーソーンシリーズ5作目。
今回はホーソーンが過去に携わった、高級住宅エリアでのご近所トラブル遠因の殺人事件を小説にするホロヴィッツ。
過去の話だから、大きなトラブルに巻き込まれないんだろうなぁ、せいぜいホロヴィッツに嫌味言われて凹んだり怒ったりする程度かなぁ、と思ったら、シリーズ全体を通じて影響してきそうななんかやっかいなもん(コナンでいう黒の組織とも少し違うが)を掘りだしかけて…。
という現代パートも良いが、やはり核心はクリスティ風味がたっぷりの殺人ミステリー。トリックやフーダニットがしっかりしているだけでなく、キャラクターの立て方とミスリードの巧みさは達人を超えて神業の域。
本格ミステリー専門の古書店の話とか、人種差別や偏見の話とか、本筋にも関わってくる枝葉末節もしっかり面白くて、読み終わった後の余韻も独特で。
早くも次回作が楽しみでしかたない! -
Posted by ブクログ
ネタバレ翻訳ミステリの売れっ子、アンソニー・ホロヴィッツによる「作家アンソニー・ホロヴィッツと探偵のダニエル・ホーソーン」(ホーソーン&ホロヴィッツ)シリーズの第5弾が本作『死はすぐにそばに』だ。
ホーソーン&ホロヴィッツシリーズの大きな魅力の一つが、実際は大して推理能力もないのに自信満々なホロヴィッツが、ホーソーンのアドバイスを無視して暴走し、痛い目を見るといったところにある。実際にこれまでに彼は2度も犯人に刺されているし、警察に逮捕されて留置所にぶち込まれてしまったこともある。前回の作品でも、ホーソーンがうまく立ち回ってくれなければ、起訴されて作家人生がそのまま終わっていてもおかしくなかった。
そういったドタバタぶりを楽しむファンにとってはやや残念なのは、本作はあらすじにも書いたように、過去の事件を取り上げているということだ。常に一応は解決したことになっている事件を取り上げるということで、当然アンソニーが実際の犯人に対して推理をぶつけるということもないし、ミステリー風に関係者一同を集めてホーソーンが事件の真相を話すということも、リアルタイムでは行われない。あくまで今回のアンソニーの仕事は過去の事件に対する再構築であり、取材者というよりは評価者といった趣にある。
とは言っても、もちろんこのシリーズのことだから、単に過去の事件を回想するだけといった話にはならない。物語には大きく2つの謎がしっかりと仕掛けられている。
その1つ目の謎は、シリーズ愛読者にとってはおなじみの、ホーソーンという人間は結局何者なのか、という問いだ。シリーズの中で、元警察官であったホーソーンは、幼児ポルノ関連の犯罪を犯した人間を階段から突き落とした疑惑で刑事をやめ、その後はロンドン警察のコンサルタントとして活動してきたことが語られている。
しかし、それほど忙しいとは言えないコンサルタント業だけで生活が成り立っているのかという疑問や、過去に何度かアンソニーも訪れたことがある殺風景な家に一人で暮らしている理由は何か、といった疑問に対しては、まだ明確な答えが得られていない。本作ではアンソニーが過去の事件を調べるといった口実で、少しずつホーソーンの正体に近づいていこうとする。これまでのようなドタバタはない代わりに、静かに一歩一歩、ホーソーンの正体が明らかになっていくというのが、本作の魅力の一つだろう。
もちろんこのシリーズはまだ続くだろうので、彼の謎にまつわるすべてが公開されたわけではないが、それでも彼が現在どのようにして生計を立てているかがわかるといったことだけでも、大きな一歩だろう。
そしてもう一つの謎は、本作でアンソニーが小説の中で取り上げる事件の対象となる、5年前に発生したリヴァービュー・クロースでの殺人事件だろう。鼻持ちならない大金持ちの隣人が、何者かによって喉にクロスボウを突き立てられて殺されたというこの事件は、物語の中では警察により隣人の犯行として処理がついている。正確に言えば、その隣人には明確な証拠はなかったのだが、遺書を残して自殺をしたことで犯人という形になり、事件は幕引きを図られてしまったのだった。
5年前の事件が発生した段階では、ホーソーンと、彼のかつての助手であるジョン・ダドリーは、真犯人に近づく有力な情報を得ていたのだが、管轄する刑事が積極的に捜査を進めなかったことと、あと一歩で詰めが甘かったことにより、犯人と思われる人間を取り逃してしまう。ホーソーンにとっては思い出したくない事件の一つであり、そしてこの事件をきっかけとして、かつての助手であるダドリーとホーソーンは袂を分かつことになる。
現在の助手役であるアンソニーは、小説の中でこの事件の犯人をもう一度洗い直すという作業をするとともに、かつての助手であるダドリーがホーソーンと別れることになった理由も追いかけようとする。最終的にこの2つの謎は1つの推測へと収斂していくのだが、なにせ劇中では5年前の事件であり、また容疑者が事件の発生後半年経って転落死をしたということから、永遠に真相は分からないまま、本作は幕を閉じる。
近代的な装いをかぶっているとは言え、本質的には古典的なミステリーの王道を行くこのシリーズにあっては、この結末が曖昧なままで終了するのは、かなり異色だとは思う。とはいえミステリーにおいては、「犯人は探偵が生み出す」という言葉があるように、実際に解決したと思われる事件であっても、時には名探偵が生み出した筋道に沿って事件が再解釈されているだけという場合もあることは、過去の名作があぶり出してきた一つの真実でもある。
そういった意味においては、アガサ・クリスティを範とすると言われているこのシリーズも、伝統的なミステリーのシリーズものの一つとして、本作のような作品が必要だったのかもしれない。本作を読み終えた今この段階では、結局のところ5年前の事件が本当は何だったのか、あるいはその後の真の犯人と思われる容疑者の転落死は誰が引き起こしたのかといった事件の謎だけではなく、ホーソーンという人間は何者なのかといった謎も、ほとんど解かれることなく、一つの解釈が提示されただけに過ぎない。それでも、おそらくまだまだ続くであろうこのシリーズにおいて、本作のような、いわば幕間の物語というのは、読者にとっても筆者にとっても、必要な寄り道だったのではないかと思わずにはいられない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレイギリスの作家、言わずと知れたアンソニー・ホロヴィッツのアティカス・ピュントシリーズ第二弾。まさかの『カササギ殺人事件』の続編。
このシリーズは順番に読むことを強くお勧め。
『カササギ殺人事件』が未読なら、あらすじも読まない方が良い。それくらい何も言えない作品。
なのでまさかの続篇にも驚いたが、一度で二度美味しい前作同様の仕掛けが、どのタイミングで入ってくるか楽しみにしながら読めた。
これまで読んだホロヴィッツ作品では、驚き度やミステリとしての良さは他作品の方が上かもしれないが、総合的にはこの『ヨルガオ殺人事件』が一番。高品質という言葉がこれほどまでに合う作品はないかなぁと。三作目の『マーブル館』も好評そうなので楽しみ。