山田蘭のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
命取りのエピソード
ホーソーンシリーズ最新作。
読み終えた感想だが、久しぶりに面白いフーダニットだったなぁと余韻に耽る。
シリーズ最初の作品である「メインテーマは殺人」が映画化される事になり、ホロヴィッツとホーソーンが現地でも携わる訳だが、そんな中、ホロヴィッツ役の俳優デイビッドがナイフで殺害されてしまい、撮影は頓挫する。ホロヴィッツとホーソーンは事件を調査するが、途中ホーソーンの過去に関わる重要な要素が顔を出し、二人はかつてホーソーンが関わったフォス屋敷を訪れる。
正直、全く違った角度からのアプローチに思え、読んでいる最中に戸惑いもあったが、過去にフォス屋敷で起こった悲しい事件とその結末が後々素晴らしいスパイスだと思える様になる。
ホロヴィッツの優柔不断さが冒頭から最大に発揮されており(笑)また彼の妻は頭を抱えるのだろう。今回は一番最初に発表された「メインテーマは殺人」が作中で映画化されるという今までにも増して現実とリンクするメタ的な要素が組み込まれる。
登場人物は全て曲者であり、ホーソーンが霞む程だ(笑)冒頭の限りでは今作は警察にも恵まれており、無用な心配事やトラブルは起きないかと思いきや、やはりホーソーンホロヴィッツシリーズだけあって様々な問題が起こる。そして今回もホロヴィッツは暴走し、結局はホーソーンの掌の上というお約束もついてくる。
ホーソーンの過去に向かう旅路については話の流れの上で少し唐突さを感じるぶぶもある。何故、ホーソーンを演じた俳優が殺害されたのか、彼は性格柄、様々な人達に恨みを買っている訳だが、どうしてこの殺人の解決に過去の話がやってくるのか、ご都合主義的な見え方がしてしまう。大きくは二部構成と言って良いだろうが、途中、少し物語の方向性がわからなくなったと思ったのだが、結末によって見事にイメージがかわる。
久しぶりに丁寧な伏線をはり、どんでん返しが起こるミステリーを読んだ。クリスティの「鏡は横にひび割れて」が頭に浮かんだのは、大枠のプロットが似ている様に感じたからだろうか。
ホロヴィッツは作中の映画上で描かれる程、ホーソーンを憎んではいないし、むしろ信頼、尊敬していると豪語しているが、中々、今までのシリーズ作中から読み取れないなぁと思う(笑)。反対にホーソーンは実はホロヴィッツに心を許している部分が感じられる。
-
Posted by ブクログ
ネタバレアンソニー・ホロヴィッツの著書『メインテーマは殺人』が映画化されることになった。だがその撮影の最中、ホーソーン役の俳優デイヴィッドが殺害される。当然、探偵ホーソーンと〈わたし〉ことアンソニーが捜査に乗り出すことに。デイヴィッドは監督や脚本家、俳優仲間との間で数々の因縁があったため、捜査は難航する。そんな中でアンソニーはあることに気がつく。それは、犯人はデイヴィッドではなくホーソーンを殺すつもりだったのではないかというものだ。
ホーソーンには一つ、心当たりのある過去の事件があった。その事件でホーソーンが犯人と名指ししたハリー・モーガンなる人物が、実は無実であった可能性があったのだ。ハリーの妻デボラは夫の無実を今でも信じており、あからさまにホーソーンを憎んでいた。だが結局ホーソーンの推理は間違っておらず、ハリーは娘の犯行の罪を自らかぶっただけだったということがわかる。そのため、妻のデボラもデイヴィッド殺害の容疑者からは外れたように思えた。
しかしホーソーンは、デボラが犯人であることを告げる。デボラはホーソーンと間違えてデイヴィッドを殺したのではなく、デイヴィッド本人とわかったうえで殺したのだった。環境活動家を謳っていたデイヴィッドは以前、高速道路を封鎖してのデモ活動を行っていた。その渋滞のせいでデボラと娘はハリーの刑務所に面会に行くことができず、刑務所暮らしで病んでいたハリーは翌日自殺してしまったのだ。しかもその後デボラは、デイヴィッドがデボラの店でステーキを食べているところを目撃する。環境活動家でありヴィーガンであると公言していたのは、単なるポーズだったのだ。そのことにより、デボラはデイヴィッドへの殺意をますます強くし、殺害に至ったのだった。
このシリーズの魅力は掴みどころのない探偵ホーソーンと、それに振り回される〈わたし〉とのかけ合い。関係者一人一人を当たっていく王道かつクラシカルなスタイルの中で、ホーソーンの知られざる過去にも迫っていく。被害者がホーソーンを演じていた俳優ということで、容疑者の幅が被害者本人だけでなくホーソーンの周囲にまで広がる点が面白い。ホーソーンを恨んでいた人物にスポットが当たることでホーソーンの過去に自然と話がスライドしていくため、シリーズものとしての深みがより一層際立っている。 -
Posted by ブクログ
今年もこの季節がやってきた。
アンソニー・ホロヴィッツの新刊が出る季節。
去年はカササギシリーズの最新作であるマーブル館殺人事件だったので、
ホーソーン&ホロヴィッツのシリーズで言うと2年ぶりの登場。
映画版『メインテーマは殺人』の撮影現場で、
ホーソーンを演じていた俳優デイヴィット・ケインが殺された。
この刺殺事件には、関係者のそれぞれに何かしらの動機があるらしい。
だが、犯人が間違いを犯したということはないだろうか。
すなわち、犯人が狙っていたのは実は本物のホーソーンだったということは。
シリーズ最新刊はこれまでとは違うアプローチと構成だった。
前作『死はすぐそばに』では、
ホーソーンの過去の事件についての回顧録みたいな内容で
こちらも今までとは違ったアプローチの作品だったのだが、
今作はどちらかというとカササギシリーズの様な、
一冊で二度美味しい方式に近い、そんな構成だった。
前作が回顧録形式でホーソーンとホロヴィッツのバディ感を
あまり堪能できなかったので、今作は久々に二人と会えたという感覚。
映画業界の裏舞台など、とても細かく的確に描写されていた。
ただ、映画版『メインテーマは殺人』は
イギリス映画で低予算の部類として撮影現場が描かれていたが、
日本にしたら大作映画の予算だ。それが何とも物悲しく虚しくなってしまう。
犯人候補となる映画関係者はどいつもこいつも怪しすぎるし、
嘘はつくし、動機も腐るほどある。だから逆に絞り込めない。
だが、思わぬ方向から実はホーソーンを狙っていた?という疑惑が浮かぶ。
物語の三分の二辺りから急にぶっ込まれ始めるホーソーンの過去。
いきなりの展開に戸惑いを隠せないのだが、
それもキチンと最後は収集し、片付ける。
この辺のミステリー手腕は流石と唸ってしまった。
これほどの手腕を持ちながら、
作中ではとことんピエロな役割を演じるホロヴィッツがまたニクい。
まぁ今作も毎度のことながら、読者の自分もそう。
ホロヴィッツばりの頓珍漢な推理で読み進めてしまったのは言うまでもない。
だからこそ、答え合わせで驚けるし楽しめる作品なんだなと再認識。 -
Posted by ブクログ
ネタバレホロヴィッツのもう一つのシリーズ「カササギシリーズ」の3作目、入れ子構造を堪能する本シリーズ、せやけど入れ子にする作品ピュントシリーズの作者は死んだし、出版社は焼け落ちたし、続編てどうするんやろ?
って思ったら、別の作家と別の出版社でピュントを引き継ぐことになるという設定で復活、まぁそういう世界は現実にあるし(ホロヴィッツもクリスティや007など各種シリーズを書き継いでいる作家)、作品内の前作からの経過年数を考えると強引ではないわな。
詠ませ処は今まで以上に、作中作の展開と主人公がリアルに生きている世界の展開がシンクロしているところ。そのシンクロもあえてそうなっている状況をきっちり設定できているのでこれまた無理やりではない、強引に見える部分すら「これも必然の設定」と思わされてくる(実際に設定に無駄はない)。
ホロヴィッツ作品なんで滅多なことはないという安心感はあるが、その上を行く展開はさすがの一言。
1人だけ「あぁ、こいつが絶対怪しいな」ってヤツがいるんだけど、こいつのせいや…ってこと自体も全体の謎から目を背けさせるトラップになっていて、油断ならない。
下巻になってからの展開の凄まじい勢いと、伏線回収が見事。シリーズとしての捨て作みたいなものはないんだろうか?
ラスト2行の自虐感、押すなよ押すなよ展開で次回作に期待したい。 -
Posted by ブクログ
カササギシリーズの第三弾。感想は上下巻合わせてのものです。
変わらずの作中作とリンクする感じでの事件。とてもおもしろかったです。なんというか、この手のシリーズものって前がどんな話だったんだっけ?ってなることがよくあるんですが、これまでのネタバレ込みでの話になってるのでいろいろと理解しやすいし、前作前々作を下敷きにしている分その後の話に深みがある。変にネタバレに配慮したせいで登場人物の行動がいまいち説明がつきづらかったりとかありますからね。あああの時のあれが今作のこのキャラクターの動機になってるんだ、とか。
しかしこの作者の特徴なのかもしれないけど、語り手がひどい目にあいすぎるよな。なんかもうみんなに嫌われてて誰しも敵対している感じ。主人公である私立探偵は孤独でありひどい目に遭わないといけないというセオリーをどこかで聞いたことありますが、そういうことなんでしょうか?主人公を嫌ってない人物は裏では嫌っていて実は黒幕、みたいなメタ的な推理すらできてしまうのではとも思ってしまう。あるいは次回作で敵対する、とか。