【感想・ネタバレ】メインテーマは殺人のレビュー

あらすじ

自らの葬儀の手配をしたまさにその日、資産家の老婦人は絞殺された。彼女は自分が殺されると知っていたのか? 作家のわたし、アンソニー・ホロヴィッツは、ドラマ『インジャスティス』の脚本執筆で知りあったホーソーンという元刑事から連絡を受ける。この奇妙な事件を捜査する自分を本にしないかというのだ。かくしてわたしは、きわめて有能だが偏屈な男と行動をともにすることに……。ワトスン役は著者自身、謎解きの魅力全開の犯人当てミステリ! 7冠制覇『カササギ殺人事件』に並ぶ圧倒的な傑作登場。/解説=杉江松恋

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Posted by ブクログ

ネタバレ

『カササギ殺人事件』のアンソニー・ホロヴィッツは、ホロヴィッツ本人が出てくるシリーズもあるということで読んでみました。


資産家の老婦人ダイアナ・クーパーは葬儀社を訪ねて「わたし自身の葬儀の手配をお願いしたいの」と依頼した。葬儀社にとってこのような依頼は決して珍しくはない。契約は滞り無く行われた。だがその6時間後、ダイアナ・クーパーは殺された。
自分の葬儀手配の当日に?彼女は自分の身の上の危険を察していたのだろうか?

…という話を脚本家で作家のアンソニー・ホロヴィッツに知らせたのは、彼が担当する警察ドラマのアドバイザーのダニエル・ホーソーンだ。彼は元刑事で、なんかやらかして辞職したらしいけれども今ではロンドン警視庁の顧問として事件捜査に協力しているらしい。
そして経済的な理由でホロヴィッツに「俺の捜査に着いてきて推理小説を書いて、利益は折半にしないか」と持ちかけてきたのだ。

物語を作る作家ホロヴィッツと、現実重視のホーソーンは根本的に創作の考えが違う。ホーソーンは「被害者は何時に起きて、何番線の電車に乗って、どこに行って」を正確に書くべきだ、という。だって「朝起きた時間と、出かけた時間に乖離があったら、その間になにかがあったかも知れないじゃないか」とわかるのだから、そこに「ゆっくり朝ご飯を作って」なんて創作してはいけない。
ホロヴィッツは、事実ばかり並べても読者は興味を持たない、読者が興味を持つのは探偵がどんな人物なのか、被害者が訪れた先のノックの音がどんなふうに響いたか、などの描写も必要になる、と言う。

こんな感じで探偵小説のお約束でもある「鋭い観察眼だけど説明しない名探偵と、推理はズブの素人の記録係り」コンビができるわけですが、この本の作者自身が「自分は名探偵より賢くないワトソン役のままでいたくない!」とジタバタする様子が面白いですね。
売れっ子作家で脚本家であるホロヴィッツ自身が「本当のこと」として書いているので、彼が書いたドラマや小説の話、実在の芸能関係者も出てきます。わかりやすいのは、ある登場人物の紹介として「パイレーツ・オブ・カリビアンの最終オーディションに残ったが、その役は結局オーランド・ブルームが演じることになった」と書いているので、その登場人物の容貌とか雰囲気とかがわかりますよね。
他にも「刑事フォイル」「スピルバーグが作成した映画タンタン」「王立演劇学校(RADA)」なども出てくるので、実際に観劇したりドラマを見ていたらもっと面白いと思います。

名探偵役であるホーソーンはかなりイヤーなやつで、白人で差別思想などもあり「普通ではこんな人物を主人公にはしない」というところを敢えて突いています・笑
しかし物語の中盤で事件関係者たちのもっとイヤーーーな面が現れるので、嫌なやつだけど悪人を捕まえるホーソーンがマシに見えてきました(-_-;)

推理小説としてはホロヴィッツが「現実を書きます」と言っているんだけど、やっぱりお約束の推理小説を取り入れてエンターテイメントにしています!という遊びココロたっぷりです。
ちょっと気になったのが「現実です☆」といいつつ、一番最後の場面がドラマや映画そのものすぎちゃって(^_^;)

事件の方は…

※※※以下完全ネタバレしています※※※











まあ「お約束」に則っているので、犯人が葬儀屋のコーンウォリスっていうのはわかります。棺にレコーダー仕掛けられるのって彼しかいないじゃん!葬儀に出席していなかったのもわざとらしいし。コーンウォリスの家に行ったときに、作者ホロヴィッツが「彼は過去に空白期間がありますよ」って分かりやすく書いていたし、芝居に関して妙にこだわっていた。そう思えば最初の被害者が葬儀屋に行ったってことを知ってるのもコーンウォリス。
しかし動機は勘違い。てっきり「交通事故の犯人はダミアン。コーンウォールは演劇学校でダミアンを知っていたので恐喝していた。ついに断られたかなにかで殺した。だからダミアンに会いたくなくて葬儀に欠席した」かと思いました。(コーンウォリスがダンだとは分からなかった。日本人感覚だと、偽名で学校入学って概念がないからなあ)

しかし子供を跳ね飛ばして立ち去った運転手とか、事故を目撃して立ち去った謎の男があまりにも胸糞悪い。男の言い訳と悔恨を聞いたホロヴィッツは少し同情していたけれど、でも彼って「不倫がバレたこと」を後悔しているのであって「不倫したこと」と「自分の名前を呼ぶ息子を無視して逃げた」ことは後悔しないよね。この男は「自分に何ができたんだ!」っていうけれど、朦朧として自分の名前を呼ぶ幼い息子の手を握ることができたじゃない。それを「自分を目撃した息子が悪いんだ」とか、不快!不快!不快!!

私は年齢を重ねて、子供が酷い目に合うものはかなり堪えるようになっています(-_-;)

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2025年10月13日

Posted by ブクログ

外国人作家で一番読みやすかった。全く違和感のない日本語文章で、物語を120%楽しめた。
分かりやすい事件と伏線がありながら、人間関係が緻密に構成されているため、足元のヒントに気付かず最後には騙される。ミステリーの醍醐味を味わえた作品。

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2025年04月30日

Posted by ブクログ

面白いミステリー作品を読ませていただきました。作家である私と元刑事のホーソンと一緒に事件真相のためにイギリスを動き回り、少しずつ事件を紐解いていく。最後はなるほど!と思ってしまうほどスッキリさせてくれる作品でした。

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2025年04月14日

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おもしろかったです!ワトソン役(もしくは探偵役)が作者自身なのよくあるけど、リアルな作者と違う(大学生になってたりとか)ことが多いのでどこかキャラクターとして捉えて読みがちだったのが、本作はかなりリアリティーがあって良かったです。まさかのスピルバーグ登場とか。
タンタンの冒険のくだりは本当なの?とか、パイレーツ・オブ・カリビアンのオーディションとか、フィクションとリアルな感じが混在して、ミステリーではあまりないので新鮮で楽しかったです。
ホーソーンとホロビッツが終始ずっと仲悪くて地味に嫌だったんだけど、最後は可愛かった?ですね。

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2025年04月12日

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ネタバレ

久しぶりに海外作家の作品。著者については知識ゼロで、たまたま古本屋でおすすめされていたから〜という理由から買ったもの。買って良かったと思う。

作者自身をワトソンポジに置き、ホームズ役にはホーソーンという元刑事。
作者本人を登場人物にしていることから、よく見るミステリものより、ユーモアがプラスされた感じ。
わちゃわちゃ感があって個人的には好きだった。人物同士のやり取りも、やはり海外という感じのラフな場面が多かった。
何よりホーソーンという人物。気難しくてひねくれてて、あたかも1匹狼な感じを漂わせていたのに。なんだ可愛いじゃないかあなた!!と中盤で一気に印象が覆る。意外と少年チック?な人。キャラクターとしてとても好き。
聞くところによると、彼が出てくる作品は他にもあるらしく……。ぜひ読みたいと思う。

作者自身が出ているため、ミステリには付き物な「血なまぐさい危機的状況!」はないとタカをくくっていたが、まさかの終盤で作者が刺されて衝撃。
まぁ作者視点で書いているのだから、死ぬことは無いだろう……という予測もついたが。

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2025年10月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

実在の人物が主役的な話が苦手だしホーソーンのキャラも受け付けなかったので一度は投げ出したけど、再挑戦してちょっと我慢して読んでいたらめっちゃ面白かった。容疑者たちのキャラクターも良いしホーソーンについても色々気になってしまうし結局一気に読んでしまった。

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2025年10月05日

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作者自身がワトソン役。
ホームズほどぶっ飛んではない元刑事。

設定はユニーク、事件も最後まで読めず面白かったよ。

最後の彼の部屋でのやり取りはキレイに終わらせてもよかったんちゃうん?と思わないでもないけど

2025.9.22
180

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2025年09月22日

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 被害者は自分で葬式の申し込みをして段取りをしたが、その日のうちに殺害されてしまう、という場面から物語ははじまる。なぜ殺されたのかが一番のポイントになるのだろう。語り方が少し変わっていて、一人称で語られるのだがその主人公はこの本の作者自身。「かささぎ殺人事件」のような劇中劇ではないのだが、その語り口ならではの本格的な、フェアな推理小説になっている、ようだ。もう一度読み返せばそこに深く納得できるのだろうが、読み返しはしていない。「かささぎ殺人事件」ほどではないかもしれないが、でもおすすめができる推理小説。

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2025年09月21日

Posted by ブクログ

愛がある。私の率直な感想だ。
思わずノンフィクションかとググってしまったが、推理小説(探偵役がいてアシスタントがいる構成)
の世界に入りたいと望む子どものよう。
そういえば名探偵コナンの映画で『ベイカーストリートの亡霊』という作品があったなぁと。ふと、幼い頃を思い出す。

作中引用ではあるが、本書を言語化するのにぴったりな箇所があった。

『すべての断片があるべき場所に収まっていく感覚』

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2025年09月10日

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作者自身が語り手のなるシリーズ1作目。彼がワトソン役となりホーソーンという風変わりな探偵とバディを組んで事件解決に挑む。自らの葬儀の手配をした当日に殺された老婦人の謎がメインとなる。情報の出し方と見せ方が上手く、あぁあれがキーになっていたのか、と気づかされるミステリーのお手本のような作品。訳者の腕もあるだろうが非常に読みやすくグングン読める点も良い。これ実話?と思えるような舞台裏を読ませてくれるシーンもあり話題になるのがよく分かる。

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2025年08月29日

Posted by ブクログ

ついに開幕!(私の中で)
ホーソーン&ホロヴィッツシリーズ!

大人気作品なので、いつかは読みたいなと思っていました。

ザ・犯人当てミステリ。
ヒントがさりげないので違和感がなく、種明かしで、これも!?あれも!?となってしまいました。。(私だけ…?)

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2025年08月26日

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面白かった。
「絹の家」後の作品の方が、ずっといい。
作家自身がワトスンになるって、ものすごく斬新。

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2025年06月21日

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作者自身がワトソン役として事件捜査に加わる形でストーリーが進む。
著者のアティカス・ピュントシリーズと同様古典的な探偵小説。

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2025年06月08日

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自身の葬儀の手配をした老婦人がその日のうちに殺された事件から物語が始まる。作家のホロヴィッツは元刑事のホーソーンに「私が主役の実際にあった殺人事件を本にしてくれないか?」と提案される。はじめは断ろうとしたホロヴィッツだったが、とある公演で自分の作品について酷評されたことに後押しされ、その提案を承諾する。執筆のためにホーソーンの調査に同行し、事件の真相に迫っていく…というストーリー。

まずはこの本の作家ホロヴィッツが一人称視点で作品の中に存在しているのが斬新だった。実在する人物や作品も頻出してるので、本当にあった事件なのかフィクションなのか最後までわからなかった。
とにかく伏線回収が鮮やかで面白かった!ここの描写がここで活きてくるのか!とページを読み直すこともあった。最後の場面もコミカルで好き!
舞台がイギリスなのと、独特の言い回しがあるので海外の作品に慣れてない私が読むのはボリュームたっぷりでちょっと大変だったけどこれから慣れていきたい!

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2025年05月12日

Posted by ブクログ

長かったけどサクサク読めた!割と翻訳物は進まないことが多いが、この方の本は読みやすい方だと思う。

ながーいながーい文章に伏線が散りばめられてる。全て回収してくれるのが良い!
主人公2人のキャラも魅力的。

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2025年04月19日

Posted by ブクログ

作者自身が登場人物になっていて、読み始めは結構困惑した
あれこれ考え推測するが、最終地点までは淡々と推移する、最後にえげつない場面になる予感
全く読めなかった展開

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2025年04月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

作者自身を語り手として書いてて面白かった!しかも、ちゃんと自分の今までの作品とかちゃんと出しててそれも斬新だな、と。
ホーソーンのキャラもなかなか腹立つけどいい!

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2025年03月31日

Posted by ブクログ

面白かった!
辻褄合わせが見事で、モヤモヤが残らないのが良い。
ホーソンの気難しい人間性の描写も分かりやすくて良かった。(脳内でホーソーンの顔はゴッホが浮かんでた)

シリーズ2作目も読んでみたい。

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2025年02月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 ある老婦人が、自分の葬儀の手配をした日に殺害される。自分の葬儀の手配をした日に、たまたま殺害されるなんて偶然があり得るのか。この老婦人の死の真相は何か。この謎に、元刑事で、警察の相談役という立場の「名探偵」ダニエル・ホーソーンが挑む。著者のアンソニー・ホロヴィッツは、イギリスを代表する作家で、テレビ番組の脚本も手掛けている彼が、ホーソーンのワトソン役という形でこの殺人事件に関わる。「メインテーマは殺人」の特徴は、ユーモアとフェアプレイ精神、そしてメタ的な手法の3点だろう。犯人の意外性もあるのだが、ミステリを読み慣れていると想定内に感じる程度。とはいえ、非常に丁寧に描かれた作品であり、この丁寧なところが、世間での高い評判につながっているのだと思う。
 探偵役のダニエル・ホーソーンの立ち位置はリアリティに欠ける。そもそも、自分の葬儀の手配をした老婦人が殺害されたことで、警察が「自分の葬儀の予約をした日に、たまたま強盗に殺害されるなんて偶然が起こり得るはずがない。」と考えるかどうかが疑問。こんな経緯で警察が、顧問役であるというホーソーンに捜査の協力依頼をするなんてことはあり得ない。しかも、顧問役として捜査に関わる探偵が、捜査を小説家と一緒に行って、捜査の様子を本にしようとするなんて、完全にフィクション、作り物の世界の話である。日本で出版しても、「リアリティがない。」として、本格ミステリ好きくらいしか評価しない、マニア向けの本になりそう。それが、イギリスを代表する作家が書き、翻訳されて日本で出版されるとは。本格ミステリ好きのマニアの一人としては、イギリスでもこんな作り物めいた本格ミステリが出版されているだけで、嬉しくなってしまう。
 被害者の老婦人、ダイアナ・クーパーの殺害が、ゆきずりの強盗による殺人ではないと思わせる要因がいくつかある。そのうちの1つはダイアナが殺害される前に息子であるダミアン・クーパーに送った「損傷の子に会った。怖い。」というメッセージ。もう1つが約10年前にダイアナが起こした交通事故の存在である。
 ダイアナが殺害される事件の捜査、関係者への尋問に加え、ダイアナが起こした約10年前の交通事故の関係者への尋問が描かれる。捜査が進められる中で、ダイアナが何者かに脅迫されていたという事実が分かる。さらに、ダイアナが大事にしていた猫がいなくなっていること、ダイアナの息子であるダミアンは有名な俳優でハリウッドに住んでいるという事実等が分かる。
 ダイアナの葬式は、ダイアナが予約していたとおりの段取りで行われる。その葬儀の最中、ダイアナが約10年前に起こした交通事故の被害者である少年が好きだった音楽が、婦人の棺の中から流れ出るというトラブルが生じる。この騒ぎで婦人の息子であるダミアン・クーパーが怒り、葬儀を抜け出し、そしてその日に何者かに殺害される。
 約10年前にダイアナが起こした交通事故が、ダイアナ殺害の動機であれば、なぜダミアンまで殺害されるのか。事故のときに車を運転していたのは、ダイアナではなく、ダミアンだったのではないか、というダミーの推理も披露される。約10年前のダイアナが起こした交通事故では、車に轢かれた被害者の子どもはアイスクリーム屋に向かっていた。しかし、そのアイスクリーム屋は、実際には休みだった。それなのに、なぜ少年はアイスクリーム屋に向かって飛び出したのか。事故には、謎の目撃者がいたが、いったいどこに消えてしまったのか。これらの伏線が回収され、被害者の少年の父と乳母の不倫の事実が明らかになる。そして、少年の父が「自分の子どもが死んだことについて、ダイアナを殺したいほど恨んでいないのではない」ことが分かる。これにより約10年前の交通事故の復讐のために、少年の父がダイアナを殺害したのではないかという推理が、ミスディレクションだったことが分かる。
 ダイアナ殺害の真の動機。それは息子のダミアンに関わるものだった。そもそも、この2つの殺人事件における真の狙いはダミアンだった。真犯人は、有名人になってしまったダミアンを殺害するために、ダミアンを母親であるダイアナの葬儀に出席させるために、ダイアナを殺害したのだ。真犯人はダイアナが訪れた葬儀屋の経営者であるロバート・コーンウォリス。コーンウォリスは、かつて、ダン・ロバーツという名前で、ダミアンと同じ王国演劇学校(RADA)という役者の学校に通う学生だった。コーンウォリスはダミアンとダミアンの恋人の罠により、役者になることができず、葬儀屋にならざるを得なかったと考え、ダミアンを恨んでいた。ダイアナが、自分の葬儀をするためにコーンウォリスの葬儀屋に訪れたのは偶然。ダイアナは自分が脅迫されており、愛猫であるディブス氏が、偶然にも脅迫状が届いてからいなくなってしまい、殺害されたと勘違いしたことから自殺しようとして自分の葬儀の手配をした。そのために偶然にコーンウォリスの葬儀屋に入ってしまった。これが、連続殺人事件のきっかけになってしまったのだ。
 この本がフェアプレイ精神に溢れる作品であることは、例えばホーソーンの「ダイアナ・クーパーはどんな心境で、葬儀屋に向かったと思うか?そして葬儀屋に着いたとき、まず目に飛び込んできたのは何だった?」という文章でも分かる。ダイアナは、そして、葬儀屋でダイアナの目に飛び込んできたのはハムレットの一節。コーンウォリスが俳優を目指していたこと、ダミアンを殺害する動機があるということを暗に示す一文。ホーソーンのセリフとして、あからさまに伏線をピックアップして見せている。真犯人はコーンウォリスだが、最後のミスディレクションとしてダミアンの妻の父であるマーティンが出てくる。ダミアンが妻であるグレースを妊娠させたことを理由としてダミアンを殺害した。少なくともホロヴィッツはそう考えている。とはいえ、ワトソン役というのは推理を間違えるもの。読者としてはマーティンが犯人とは思えず、そうすると犯人になりえる人がいない。コーンウォリスが犯人と分かってもそれほど驚けない原因はここにある。
 「メインテーマは殺人」は、杉江松恋の解説もなかなか面白い。解説の中に、この物語の土台には3つのトリックが置かれている。Aは視点の切り替えとでもいうべきもの、Bは古典的な手法の再利用、Cは知っている限りでは前例がなく新しいが、同工異曲のものはいくつか挙げることができるとある。これについて少し考えてみる。
 視点の切り替えとでも言うべきものとは、犯人の狙いがダイアナではなくダミアンで、ダイアナはダミアンを殺害するために殺されていたというメインとなる殺人を読者に誤信させるというトリックだろう。約10年前の交通事故そのものをミスディレクションにして、ダイアナ殺害が犯人の狙いであると読者に誤信させる。なぜ、ダミアンも殺害されたのかという謎を提供している。
 古典的な手法の再利用とは、ダン・ロバーツとロバート・コーンウォリスの1人2役だろう。ダン・ロバーツにはダミアン殺害の動機はあるが、ロバート・コーンウォリスは、たまたまダイアナが訪れた葬儀屋の主人。ダイアナ殺害の動機もダミアン殺害の動機もないように思われる。しかし、ダン・ロバーツ=ロバート・コーンウォリスなら、動機あるし、殺害機会もある。このイコールを巧みに隠しているというトリック。叙述トリックでもあるのだが、一人称で書いているホロヴィッツも騙されているので、作中人物から作中人物へのトリックとの取れる。
 知っている限りでは前例がなく新しいが、同工異曲のものはいくつか挙げることができるトリックとは、スペル自動修正機能を使ったトリックだろう。「レアティーズの子に会った、怖い」というメールを送るはずが、スペル自動修正機能により「損傷(レアスレーテッド)の子に会った、怖い」と変換されてしまう。これにより、約10年前の交通事故とのつながりが疑われることになる。これはちょっとしたトリックではあるが、日本語に翻訳されてしまうと魅力は半減というところか。「ああ、そういうことなんだ。原文で読んでいたら感心したんだろうなぁ」と思う程度。
 さて、作品全体のトータルの評価だが、丁寧に作られたよくできた作品ではあるが、突き抜けた魅力はない。65点というところだろうか。

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2025年06月10日

Posted by ブクログ

おもしろかった!
けど、事件と関係ない話が多くてそこに興味が持てず、読み飛ばしてしまった点も踏まえて⭐️3かな

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2025年11月09日

Posted by ブクログ

ミステリーを読んだ!、というのが率直な感想。
自分で推理をしたい人にはおすすめ。
シェイクスピアなど古典の知識があればより楽しめると思う。

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2025年10月15日

Posted by ブクログ

カササギ殺人事件がピンとこなかったので、この作者の本は手に取らずにいたのですが、職場の先輩にホーソーンシリーズを勧められて読んでみました。

結果、読んでよかったです。

ミステリー読むとき、個人的に気にしていることが2つあります。

1つは、人物描写です。私の中では、それができる最高の作家はアガサ・クリスティです。
アガサ・クリスティほどではないけれど、この物語はそれなりにちゃんとしていたと思います。

もう1つは、読者に推理させてくれる余地があるかどうかです。
これは完璧でした。

ロンドンの地名やイギリスの古典作品に詳しければ、もっと楽しめるのかなと思いました。

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2025年10月06日

Posted by ブクログ

ずっと積んであった本。ようやく読めた。
個人的にはカササギ殺人事件をはじめとした、アティカス・ピュントシリーズの方が好みかなあ。
でもこれから盛り上がってくるかもしれないので2作目も読んでみる。

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2025年09月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

予備知識を入れずに読んだら、有名な映画監督や俳優さんが実名でざかざか出てきてびっくり。
今やコンプライアンス的に言っちゃだめなこと言う探偵が、絶妙に感じ悪い。
(謎の提示や展開が面白いので、読むのがいやになるほど不快ではない。今時こんなん書いて大丈夫なの?とは思う)
訪問するおうちのインテリア描写がこれでもかと出てくる。おうちに住んでいる人の現状が反映されているんですね。
そこに手がかりが隠されてるんだろうなーと思ったけど、気づけなかった~
最後の方は、結末が知りたくて一気に読んだ。
ミステリとしては面白くて展開にも納得。
価値観が合わない昔の本を読むようなキツさがあるかなあ。

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2025年08月10日

Posted by ブクログ

作品や人物が現実とクロスオーバーするので
ちょっと面食らってしまう部分もあるけれど
そんなことはまあ、どうでもよろしい。

なにひとつ相容れない所から始まったのに
文句垂れながらバディとして関係が形成されていく
ホーソーンとアンソニーの二人がとても良い。

今後の作品も楽しみに読みます。

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2025年06月24日

Posted by ブクログ

自らの葬儀の手配をした資産家の女性が、その当日絞殺された。彼女がかつて起こした交通事故が関係していると思われたが…
そういう事かとしてやられました、最初から真相が示唆されているのはさすがの構成。

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2025年06月12日

Posted by ブクログ

初めての海外ミステリー。日本語が読みにくく感じたが、だんだん慣れてきたので読むスピードも途中から上がってきた。それでも拾いきれなかった内容などもあり、スカッとという感じにはなれなかった。ホーソーンが気になる。

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2025年03月14日

Posted by ブクログ

"カササギ殺人事件"よりまわりくどい言い回しが多くて少し読みづらいなと思い、何とか最後まで読みきったというところ。
最後はホーソーンの人間味が見えてきたので、次作を期待して読みたい。
ミステリーとしては面白かったけど、少し物足りなさを感じた。

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2025年02月08日

Posted by ブクログ

「カササギ殺人事件」「ヨルガオ殺人事件」と読んできたアンソニー•ホロヴィッツの別シリーズ。事件をとくのは元刑事のダニエル•ホーソーン。ホーソーンから、事件に同行して自分を主人公とした小説を書かないかと言われたホロヴィッツは、優秀だが偏屈なホーソーンと二人三脚で事件を追ううちに、少しずつ事件そのものに巻き込まれていく…。

著者自身がワトソン役になり、ホームズ役と行動を共にした"語り手"になる…というパターンの作品は久しぶりに読んだ気がします。謎解きの過程は破綻がなく、ピタリとはまる展開は見事です。
ただ、やはり、原語(英語)でないと説明できない部分がある。推理ものはそのあたりで好き嫌い分かれるところ、どうしてもありますね。

ホーソーン&ホロヴィッツは続くので、読んでみたいと思います。

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2025年01月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

いつか読むのを楽しみにしてた作品をやっと。

一番楽しみなオチ(犯人のくだり)が個人的にあんまりやった。
面白くなかったわけではないけど
楽しみにしてただけちょっとがっかり。

シリーズは読み進めたいと思う。

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2025年01月28日

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