Posted by ブクログ
2023年03月08日
イギリスの作家「アンソニー・ホロヴィッツ」の長篇ミステリ作品『カササギ殺人事件(原題:Magpie Murders)』を読みました。
久しぶりに海外のミステリ作品を読みたくなったんですよね… 海外のミステリは今年2月に読んだ「ジョン・ハート」の『キングの死』以来ですね。
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【本屋大賞翻訳小説部門第1位獲得! ついに5冠達成! !ミステリを愛するすべての人々に捧げる驚異の傑作】
2019年本屋大賞翻訳部門第1位
『このミステリーがすごい! 2019年版』第1位
『週刊文春ミステリーベスト10 2018』第1位
『ミステリが読みたい! 2019年版』第1位
『2019本格ミステリ・ベスト10』第1位
◎朝日新聞書評欄「売れてる本」に掲載されました (2019年1月12日付、評者「杉江松恋」氏)
〈上〉
ミステリ界のトップランナーが贈る、すべてのミステリファンへの最高のプレゼント!
1955年7月、パイ屋敷の家政婦の葬儀がしめやかにおこなわれた。
鍵のかかった屋敷の階段の下で倒れていた彼女は、掃除機のコードに足を引っかけたのか、あるいは……。
その死は小さな村の人々へ徐々に波紋を広げていく。
消えた毒薬、謎の訪問者、そして第二の死。
病を抱えた名探偵「アティカス・ピュント」の推理は――。
現代ミステリのトップ・ランナーによる、巨匠「アガサ・クリスティ」への愛に満ちた完璧なるオマージュ作品!
〈下〉
名探偵「アティカス・ピュント」シリーズ最新刊『カササギ殺人事件』の原稿を読み進めた編集者のわたしは激怒する。
こんなに腹立たしいことってある?
著者は何を考えているの?
著者に連絡がとれずに憤りを募らせるわたしを待っていたのは、予想だにしない事態だった――。
クラシカルな犯人当てミステリと英国の出版業界ミステリが交錯し、とてつもない仕掛けが炸裂する!
夢中になって読むこと間違いなし、これぞミステリの面白さの原点!
解説=「川出正樹」
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2019年本屋大賞翻訳部門第1位となった作品です… ミステリの女王「アガサ・クリスティ」への愛に満ちた作品、、、
そして、ミステリ作品の中にミステリ作品が包含されるという入れ子式ミステリとなっており、二度おいしい作品でしたね… 面白かったー
1955年7月、サマセット州のサクスビー・オン・エイヴォンという村にあるパイ屋敷と呼ばれる准男爵「サー・マグナス・パイ」の邸宅で長年、家政婦として働いてきた「メアリ・エリザベス・ブラキストン」が亡くなった… 彼女は、主が旅行で留守の間にに、石張りの階段の下で首の骨を折って死んでいた、、、
館の出入り口は全て施錠されており、階段の手すりに掃除機がぶら下がっていたことから、警察は掃除機のコードに足を取られて落下した不幸な事故による死と判断するが、村では、不仲だった息子「ロバート」が殺したのではないかという噂が広がる。
「ロバート」の婚約者で診療所に勤務する「ジョージー(ジョイ)・サンダーリング」は、名探偵として名高い「アティカス・ピュント」の下を訪れて、無責任な噂を打ち消すために村に来てほしいと依頼するが、「ピュント」から自分にできることは何もないと言われてしまう、、、
実は、「ピュント」は、その日の午前中に不治の病で余命2、3カ月と診断されたため、新たな依頼は受けられなかったのだ… ところが、家政婦の死から、ほんの2週間も経たないうちに、今度は、その雇い主の裕福な地主「サー・マグナス・パイ」が夜遅く、玄関ホールに飾られていた中世の鎧の剣で首を刎ねられるという、何とも惨たらしい方法で殺害される。
この殺害事件を知った「ピュント」は、当初は依頼を断ったものの、「ジョイ」の話に引っかかるものを感じて、助手兼秘書の「ジェイムズ・フレイザー」が駆る車に乗って現地に向かう… 家政婦の死、その後のパイ屋敷への空き巣、地主の惨殺、、、
いつでも、どこでも他人の秘密を嗅ぎ回る「ブラキストン夫人」の死は、本当に不幸な事故だったのだろうか…
「このサクスビー・オン・エイヴォンという村には、わたしを不安にさせる何かがある。
人間の邪悪さの本質について、わたしは以前きみ(「フレイザー」)に話したことがあったね。
誰も目にとめない、気づくこともない、ほんの小さな嘘やごまかしが積もり積もったあげく、やがては火事であがる煙のように、人を包みこんで息の根を止めてしまうのだ」
と語る「ピュント」は、避けようのない死と対峙しつつ、小さな村の裏面に隠されてきた人間の邪悪さの本質を剔出すべく、推理を巡らしていく。
もつれあう容疑者、さまざまな動機、そして関連があるのかどうかわからないふたつの死… そして、前半の最後に至って、「フレイザー」から、
「誰が犯人なのか、あなたにはもうわかっているんでしょうね」
と問われ、「ピュント」は、
「わたしにはすべてわかっている、「ジェイムズ」。
わたしがすべきなのは、それぞれの事実を結びつけることだけだったのだが、いまや、すべてがはっきりとした」
と答え、さらに、
「あの男は、わたしが知りたかったことをすべて教えてくれたよ。
あの男こそは、この事件のきっかけを作った人物なのだからね」
「自分の妻を殺したのだ」
――上巻は、ここ… まさに、これから謎解きを味わえるというシーンで終わるんですよねぇ。
いよいよ謎が解けるに違いないと、本作品の後半部分(下巻)に取りかかると、下巻冒頭に語り手である「スーザン・ライランド」の、
「こんなに腹立たしいことってある?」
という書き出しに、唖然とすることに… 語り手の「スーザン・ライランド」は『カササギ殺人事件』の作者「アラン・コンウェイ」の編集担当者で、「スーザン」が怒っているのは『カササギ殺人事件』のプリントアウトした原稿を読んできて(上巻を読み終えて)、ミステリにとって必要不可欠な結末部分が欠けていることに気づき、慌てているのである。
いかに人気作家のシリーズ第9作といっても、結末なしの推理小説を出版するわけにはいかないからだ… 上司の出版社CEO(最高経営責任者)の「チャールズ・クローヴァー」に結末部分について尋ねても分からないと言われるし、あちこち探しても見つからない。
そこで、「スーザン」は必死になって結末部分の原稿探しに奔走することになる… そんな中、「アラン・コンウェイ」が、いつも朝食と昼食を取る塔の屋上の円形テラスから墜落死しているのが発見されたという報告がもたらされる、、、
その直後、重病で余命僅かという宣告を医師から受けたとの、「チャールズ」宛ての「アラン」の遺書が届く… 「アラン」の遺書に違和感を覚えた「スーザン」は、「アラン」の死の真相を探ろうと、探偵まがいの行動に出る。
同時に「アラン」の結末部分の原稿探しも続けねばならない… 調査を進めるにつれて、『カササギ殺人事件』の内容と、「アラン」自身を巡る状況の共通点が明らかになっていく、、、
前半で読んだ「アラン・コンウェイ」作のミステリ作品『カササギ殺人事件』の結末が宙に浮いた状態で、後半は『カササギ殺人事件』欠落原稿探し、『カササギ殺人事件』の中の犯人捜し、『カササギ殺人事件』の作者の死の真相探しを行うという展開… しかも、入れ子構造となった、大きな箱と中の小さな箱の中身の間に密接な関係性があり、複雑に呼応し合うように仕組まれていて、二つの事件を一緒に解決する醍醐味が感じられる作品でしたね。
精巧に組み立てられた入れ子構造、大きな箱と中の小さな箱の中身の不思議な関係性、『カササギ殺人事件』の結末部分の行方、『カササギ殺人事件』の犯人、『カササギ殺人事件』の作者の死の真相… いずれも意外な結末が用意されていたし、「アガサ・クリスティ」のオマージュ作品としても愉しめたし、ホントに面白かったです。
以下、主な登場人物です。
「スーザン・ライランド」
《クローヴァーリーフ・ブックス》文芸部門の編集者
「チャールズ・クローヴァー」
《クローヴァーリーフ・ブックス》の最高経営責任者(CEO)
「ジェマイマ・ハンフリーズ」
チャールズの秘書
「アラン・コンウェイ」
作家
「メリッサ・コンウェイ」
アランの元妻
「フレデリック・コンウェイ」
アランの息子
「クレア・ジェンキンズ」
アランの姉
「ジェイムズ・テイラー」
アランの恋人
「アンドレアス・パタキス」
スーザンの恋人
「ケイティ」
スーザンの妹
「マーク・レドモンド」
映像関係のプロデューサー
「ジョン・ホワイト」
ヘッジ・ファンド・マネージャー
「トム・ロブスン」
牧師
「ドナルド・リー」
ウェイター
「リチャード・ロック」
警視
「サジッド・カーン」
弁護士
《名探偵アティカス・ピュントシリーズ カササギ殺人事件 登場人物》
「アティカス・ピュント」
名探偵
「ジェイムズ・フレイザー」
アティカスの助手兼個人秘書
「サー・マグナス・パイ」
准男爵
「レディ・フランシス・パイ」
マグナスの妻
「フレデリック(フレディ)・パイ」
マグナスとフランシスの息子
「クラリッサ・パイ」
マグナスの双子の妹
「メアリ・エリザベス・ブラキストン」
パイ屋敷の家政婦
「マシュー・ブラキストン」
メアリのかつての夫
「ロバート(ロブ)・ブラキストン」
メアリの長男。自動車修理工場勤務
「トム・ブラキストン」
メアリの次男。故人
「ネヴィル・ジェイ・ブレント」
パイ屋敷の庭園管理人
「ロビン・オズボーン」
牧師
「ヘンリエッタ(ヘン)・オズボーン」
ロビンの妻
「エミリア・レッドウィング」
医師
「アーサー・レッドウィング」
エミリアの夫。画家
「エドガー・レナード」
エミリアの父
「ジョージー(ジョイ)・サンダーリング」
ロバートの婚約者。エミリアの診療所に勤務
「ジェフ・ウィーヴァー」
墓堀
「ダイアナ・ウィーヴァー」
ジェフの息子。アダムの妻
「ジョニー・ホワイトヘッド」
骨董屋
「ジェマ・ホワイトヘッド」
ジョニーの妻
「ジャック・ダートフォード」
フランシスの愛人
「レイモンド・チャブ」
バース警察刑事課の警部補