大石圭のレビュー一覧
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大石圭『破滅へと続く道 右か、左か』徳間文庫。
ふとした選択が、その後の時間を決定的に変えてしまう、というような分かれ道を題材にした連作短編集。果たして、主人公たちが選択した道は正しかったのか。
いつもより含蓄のあるまえがきとあとがき。全ての短編が、いつもと違う作風のように思った。これまでの作品に比べるとエロスが程良いスパイスとなり、明確なテーマを持った見事なドラマに仕上げている。もしかしたら、大石圭にとってもこの作品は分岐点だったのか。
第一話 春の分岐点『雪の中の仔猫』。この連作短編集の方向性を示す軽いジャブのような短編。不幸の真っ直中で見付けた小さな生き甲斐。32歳の売れない俳優の -
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ネタバレ読みやすく、また所々中絶の歴史や知識についての記載もあり、勉強になった。
主人公が殺してきた人の人選に理由はないとか、自分は仕事で人を殺してるからどうとも思わないみたいなことを言うたびになんかかわいいなと思ってしまった笑
シリアルキラーの思考はこんな感じなのかな?殺すのに理由はないと言いつつしっかり罰を与えるような殺し方をしてる点も、何だかお茶目だなと…読者としても多少スッキリするからいいよね
心根がすごく優しくて、純粋で、可哀想な目に遭う人や動物にその理由を探してて、自分勝手で、母親と別れたあの時の年齢で止まったまま大人になった人なんだと感じた。
幼少期の家庭環境(特に母親との関係)はす -
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ネタバレ実は読むの2回目。たしか高一の初めの頃読んだ。
相変わらず良かったが、昔よりも楽しく読めたな。
主人公が良い。イケメンだし。敬語で「僕」なのが崩れなくて良い。30歳という年齢も絶妙。
暮らしぶりが優雅すぎてちょっと笑っちゃうけどそこはまあフィクションということで。
そんなクラシックばっか聴いてられるかい。
主人公、やさしいと評するのは変だが、かしこい純粋な子供がバグった感じだな。
彼は無意識のうちに、堕ろされた弟や幼少期の自分に憐れみのようなものを抱いていた。
その憐れみと、母親からの愛情への切望と憎しみが複雑に絡み合い、殺人を犯すようになってしまったのかな。
けどそれらを「生まれながら -
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「たった一度だけ、60秒間、時間を止められる能力を手に入れたら、どうする?」
他愛のない想像のような出来事が本当に起こった時、人間の欲は、心理はどのように動くのか。
同一のテーマで様々な人物にスポットを当てた、連作短編集。
それまで読んできた大石さんの作品とは異なる雰囲気で、また違った大石ワールドを味わわせてくれた作品。しかしもちろん、気持ち悪い読後感(褒め言葉)と暗いあとがきは期待通り。
暗く重い気持ちで読み終えた時、「自分だったらどうするだろう…」と考えてみると、この本に毒された読者は、つい暗い想像をしてしまうかもしれない。
それも含めて、この作品の魅力であると思う。 -
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最初タイトルだけを見て、大量殺人を行いつつも表では医者として振る舞っている人の話なんだろうな、と思っていた。
これは半分正解で、半分不正解だった。
あの医者は、医療行為は、ある意味”大量殺人”であることを否定しきれない。
既に人権を得ている人の為に作られた。
そしてこの作品の描写を読んでいるうちに、手に入りにくくなっているのは仕方ないな、とも思うようになった。
他のサイコサスペンス作品を読んでいても、グロい表現はいくらでもある。
ただ、この作品は、”グロい”という言葉一つで済まされないものがあったのだ。
本作ではある意味では1人の犠牲者、とでも表現しておこうか、から始まる。
そこから数十 -
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臨床心理士月島繭子のもとには、今日もわけありの患者がやってくる。
主人公が美人なのは、お約束なので…。
でも、このコミックみたいな表紙は、かえって損している気がするのだけどね。
個々の短編は、おお、って結末で面白かった。
まぁ、こういうパターンなのね、ってなるとステレオなんだけど。
つか、ステレオなのに面白く感じさせるのが、やっぱうまい。
で、自身を語るものの不確かさは常なので…。
にしても、ちょっとベクトルが変わった気がする。
まぁ、なにがどうしてと、うまく説明できないのだけど。
また、次の作品、その次の作品、ってなってきたら、わかるのかもしれない。
楽しみ。 -
購入済み
シリーズの続編
大石圭の作品はほとんど読んでるが続編書くのはたぶん初めてじゃないかな?
『女奴隷の烙印』の続編なのでそちらを読んでないと置いてきぼりを食らうので注意…。
登場人物の焦燥感を伴う心理描写やマニラの情景の説明がとても丁寧なので、止まらなくなりあっという間に読み終わってしまうこと間違いなしです。 -
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妹を助けるため、自ら奴隷として売られたサラサ。
「女奴隷」シリーズ完結編。
売られた先は、産油国王夫人で、当然王の相手しろよ、てなる。ついでに、夫人は国王暗殺を狙っていて…。
サラサはクーデターに巻き込まれる。
っても、絶対へこたれないサラサなので、どんな逆境になってもへんに安心感がある。反対に、奴隷の身から解放され日本でサラサの帰りをまつアリアの方が心配。なんか現実味がとにかくない子なので。まぁ、だからこそ、余計にサラサの家に帰るって気持ちの強さが裏付けされるのだろうけれど。
で、やっぱりこうなりますよ。
完結編とあるので、これで終わりなんだろうけど、やっぱり最後には -
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大石圭『死体でも愛してる』角川ホラー文庫。
警視庁の敏腕刑事・長谷川英太郎の視点で、4つの異常な事件を描く連作短編集。珍しくエロさも程々で、なかなか面白い。
4つの異常な事件が被疑者たちの生の声で描かれる。事件の聴取を通じて被疑者たちの生の声を聞くうちに英太郎は次第に心に芽生えた異常な気持ちに支配され、破滅への闇へと墜ちていく。
最近、新型コロナウイルス感染で世間ではストレスが溜まっているのか、性犯罪や暴力事件などが増えているように感じる。ふとした切っ掛けで犯罪に走ってしまうのは、善と悪、正常と異常の微妙なバランスの中に生きる人間の心の脆さを表しているのだろうか……
『春の章』。日に日
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