久賀理世のレビュー一覧
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ネタバレ自らが作り出した二重身(ダブル)から始まり3話がつながっている。
優しい子供の頃の思いから始まり失くした魂との切ない邂逅にしんみりしたと思ったら、最後は貴族のダークサイドが露見しおどろおどろしい話になった。
多感な年頃の集団だし宗教の濃い施設でもあるから不思議が起こるのはわかるが、貴族の暗い部分など俗世と切り離せない世界観と純粋な少年たちの生活との対比が不安定さを醸し出している。
大きな敵になりそうな悪魔も登場した。今回の鍵となるアンソニーの境遇は過酷だったが、パトリックは大人になったら日本へ行くのだろうという、ある意味未来が予想できるからかあまり結末を心配せずに済むのが良い。
今後学園での生活やオーランドのチェロ、悪魔との対峙がどのように展開していくのか楽しみだ。 -
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小泉八雲の若き頃の話。
「あっち」「こちら」「境界」この言葉がよく出て来る。
読んでいて何故か京極堂のセリフは多々思い出してしまった。
1番に浮かび上がったのは「この世に不思議な事など何も無いのだよ、関口くん」だった。
パトリック(小泉八雲)のセリフ「人はいつだって自分の視たいようにしかみないものさ」とある様に自分の理解出来ないもの・理解しようとしないものに関して人間は「不思議」という言葉で片づけてしまう。
「怪奇」とされるエピソードもその奥。隠された事実に目を向ければ「怪奇」若しくはただ「ホラー」として片づけられないものが浮かび上がってくる。最後の話はサスペンス風なのも絡んでいて面白かった。 -
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ネタバレダラムの神学校を舞台にした、不思議な物語を詰め込んだ短編集です。
ブックカバーをつけたまま表紙もも読まずに読み始め、しばらくしてからようやく、あれ?これは小泉八雲の小説だったのでは…と思い当たり。疑問に思いながらも異国の物語を最後まで読んだのですが、疑問も何も、小泉八雲さんの本名がパトリックなのですね。てっきり日本の方だとばかり思っていました…お恥ずかしい。
ちなみにダラムも知らなかったので調べたら、まさかのハリーポッターのロケ地!うわあ、恥の上塗り。でもそんなのどうでも良くなるくらい、素敵な街並みでした。実際にダラムの写真を見てみると想像しやすくなるので、これから読まれる方は、ぜひ調べてみることをお勧めします。 -
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“懇願する瞳で、セシルはジュリアンを見つめた。
「だってジュリアンにもしものことがあったら、わたし、もう生きていけません」
「セシル……」
ジュリアンが、息を呑みこんだまま動きをとめる。
やがて根負けしたように、彼は視線をうつむけた。
「……まいったな」
夜風にさらわれる銀の前髪の奥から、やるせないような、苦笑の気配が伝わってくる。
ジュリアンは、くしゃりと髪に手をさしいれた。
「ジュリアン?」
「きみはもうすこし、出し惜しみということを覚えたほうがいいんじゃないかな」”[P.210]
6巻目、最終巻。
勢いづいて一気に読み終えてしまった。
仲違いは長かったのに誤解を解き合うのが早かったなと思いつつ、二人の仲が早々に落ち着いたのは読んでる側として嬉しかった。
ヒントから答えを導きだせないまま進んで行く事件への焦燥に駆られつつも、再び新聞社でパートナとして働く二人が見れて楽しい。
死を覚悟している犯人ってのは厄介だけど、このクリストファーはなんか憎めなくて、最期の辺りとかは涙ぐみそうになる。
セシルとジュリアンがハッピーエンドに辿り着けて良かった。最後のマザーグースの唄は、一番最初にセシルがジュリアンに教えたやつだってのがもう……。
最強カップルの話とかその後とか。文庫に載りきらなかったのが残念だけど、雑誌の中編、ちゃんと読んでおきたい。
“「ああ、そうだ!さっき、通りにマフィンの屋台がでていたんだ。おいしそうだったから、いま買ってくるよ。すぐに戻ってくるから待っていて」
「え、あ、あの」
セシルがとまどっているうちに、コートを羽織ったジュリアンの姿は、すでに扉の向こうに消えかかっていた。だが彼は、そこで唐突にセシルをふりむいた。
「ねえ、セシル。いつかふたりで新聞社を起ちあげるっていうきみの夢、きみさえよければ、現実にしてしまうのはどうかな」
そしてジュリアンは、コートの裾をひるがえした。
まるでうれしさのあまり、じっとしていることすら難しいといった様子だった。
いまはただ、未来への期待がふくらんでいるだけかもしれないけれど。それでもジュリアンが、セシルの夢をまじめに受けとめてくれていたのを知り、彼女の胸は驚きとうれしさでいっぱいになった。”[P.315] -
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“乱暴に顔の雨をぬぐうと、殴られた頬が痛んだ。
重い身体をひきずるように、下宿の階段をのぼる。すると足音で帰りを察したのか、自室の扉からレナードが出迎えた。
「ジュリアンさま」
こちらの顔を見たとたん、レナードが目をみはる。
「話なら明日にしてくれないか、レナード。今夜はもう休みたいんだ」
「いえ、そうではなく——」
なおもなにか伝えようとするレナードにはかまわず、ジュリアンは部屋をよこぎる。
だが寝室の扉に手をかけようとしたところで、足はとまった。
無言のまま、じっと扉の向こうを見つめる。
ジュリアンは目を閉ざした。ひとつ、深く息を吸いこんでから、寝室に足を踏みいれる。
ゆれるランプの灯りのなか、本棚に向かいあっていた人影が、こちらをふりむいた。
労働者ふうの、くたびれた身なりをしているが、見まちがえるはずもない。
均整のとれた長身。光を透かす銀の髪。青みのほとんどない灰の瞳。
その怜悧な表情は、三年の時を経て、精悍さを増しているだろうか。
そしてジュリアンは微笑を浮かべた。
「おかえりなさい、兄上」”[P.60]
5巻目。
曰く、怒濤の言い訳篇。
物理的にも精神的にもジュリアンふるぼっこ。
四人兄弟で演奏してるシーンが楽しくて好き。
再びガブリエルが出てきたのは嬉しかった。
読んでいて言い得ない難しさが気の短い従者の行動で落ち着く。レナードのこの行動が好き。
そこからのセシルの気持ちの変動と、驚きの終わり方に続きが気になる。
“「ごめんなさい、ジュリアン」
ごめんなさい。ごめんなさい。
伝えたいことはたくさんあるのに、もう時間がない。
「——二」
あなたに出会えてよかった。あなたを好きになれてよかった。
だからわたしを忘れないで。でもどうか苦しまないで。
あなたには、誰よりも幸せになって欲しいから。
「——一」
耳許で、金属音が鳴る。
その刹那、セシルは手首をかえし、銃口を自分の胸に押しつけた。
こうすれば、セシルの身体を貫いた銃丸は、クリストファーまで届く。あとは、ジュリアンがなんとかしてくれる。
たちまち目をみはるジュリアンの顔を、セシルは瞳に焼きつける。
「——セシル、やめろ!」”[P.313] -
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“「きみたちふたりのつきあいが、もともとどんなふうに始まったにしろ、いまのきみはあの子に対して真剣なようにわたしには思えるよ。だからこそきみは、慎重になっているんじゃないのかい?」
ジュリアンは無言で視線を伏せた。幾度かためらってから、告白する。
「本当に大切なことは、いつまでも伝えられないんです」
わずかに目許をゆがめ、つぶやく。
「簡単に口にしては、言葉が汚れてしまう気がして」
「それはまた、新聞社で働いている人間の台詞とは思えないね」
レスターが呆れたように笑う。
ジュリアンは肩をすくめてみせる。
「ですね」
「このままでは、仕事にさしつかえそうだ」
「仕事なら、大いにさしつかえていますよ」
そして目を閉ざし、ため息のようにささやいた。
「近ごろのぼくは、とりつくろうだけで精一杯なんですから」”[P.132]
4巻目。
副題で指している人物を捉え違えていた。
最後にがつんときて次が楽しみ。
“「聞いたか?セシルはきみをこんなに信頼している。さぞ満足だろうな」
「ダニエル、セシルのまえだ」
低く、ジュリアンが指摘する。その冷静さが、ダニエルの感情をふりきらせたようだった。
ジュリアンを見すえるダニエルのまなざしが、にわかに鋭さを増す。
「それをきみが気にするというのか?結婚など最初からする気もないのに、散々この子の心をもてあそんだきみが?」
「ダニエル!」
叱責するように、ジュリアンが叫んだ。そして頭をうつむけ、乱れかかった髪に乱暴に手をさしいれると、懇願するようにささやいた。
「やめてくれ、頼むから」
そんなふたりの様子を、セシルは呆然と見つめていた。ただただ悪い予感のようなものが全身に広がり、その場に立っているのがやっとだった。
「……結婚ってなに?」
セシルがつぶやくと、ふたりが弾かれたように顔を上げた。
「……もてあそぶってなに?意味が、わからないの。なんの話なのか、ちゃんと説明してくれないと、わけがわからない」”[P.221] -
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“そしてこんどは、ダニエルの隣でヴィクトリアン・サンドウィッチをぱくつくジェフリーに声をかけた。
「そのケーキ、気に入っていただけたかしら?女王陛下がお若いころに考案なさったレシピそのままに作らせるのが、王室の伝統になっているのよ」
「ええ、たいへんけっこうな味だと思います。スポンジの焼き具合もなかなか。ですが——」
ですが?
セシルとダニエルは、不吉な予感をおぼえてジェフリーをふりかえる。
「ぼくとしては、いささかジャムの量がものたりませんね。こんなにうすーく塗りつけただけでは、いかにもけちくさい!これでは英国王室が年間予算に困窮していると誤解されても、文句は言えませんね」
「け、け、け——」
けちくさい、という不敬なひとことを口にできないまま、ダニエルが怪鳥のような声を洩らしている。
セシルはあわててジェフリーの腕をつついた。
「ジェフリー兄さま、口を閉じて!」 ”[P.106]
3巻目。
この兄弟が楽し過ぎて。ジェフリー好きー最後の言葉がすごい不意打ちに格好良過ぎた。
セシルの悩みもぐるぐる回る。
眼帯の青年……次が気になる気になる。
“「やっぱりだましたんじゃないですか!」
「かまわないさ」
そしてジュリアンは、ひらりと鞍にまたがった。
「ぼくはきみの望みを叶えるためなら、なんだってできるんだ」
「え?」
ひと呼吸おいて、セシルは愕然と目をみはった。
「わ、わたしの責任にするつもりなんですか?そんなの卑怯——」
「セシル」
ジュリアンがセシルの抗議をさえぎる。そして馬上から、すいと手をさしのべた。
「乗るの、乗らないの?」”[P.259]