大沢在昌のレビュー一覧
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期限は一週間、運命を見通す少女を警護する、ボディガード・キリの闘いを描く、アクション・エンターテイメント。
600ページを超える厚さに、始めは躊躇しましたが、読み出したらページをめくる手が止まらず、一気に主人公キリの活躍に引き込まれてしまいました。
少女の特殊な能力の謎と敵の解明、その敵から守るキリの闘いが同時に進行し、ミステリーとアクションの二つの味を堪能することができました。
また、宗教団体から命を狙われるという展開は、あの事件を彷彿とさせる真実味を感じました。(ちなみに、本作品はあの事件より前に書かれています)
主人公のボディガードとしての生き方は、スマートで自分はとても無理ですが、それだけに魅力的でした。
このシリーズはまだ続いているので、今後の作品も楽しみです。 -
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ネタバレ犯罪組織「クライン」の独裁者・君国の愛人はつみの身体と、女性刑事明日香の精神を持つ「アスカ」。決死の囮を演じる彼女に対し、組織は警察内部の通報者を使い、次々と殺戮の罠を仕掛けてくる。アスカを守るのは、明日香の元恋人・仁王こと古芳ただひとり。だが、古芳ははつみの体に宿るのが明日香であることを知らない。一方、アスカは古芳が組織の内通者である疑いを捨てきれない。不協和音が生じた二人にさらなる刺客が……。
感動と興奮を呼ぶエンターテインメントの真髄。
疾走感のある物語の展開で読み抜ける楽しみがあった。アクション映画の小説版という感じだった。 -
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ネタバレ歪んだ発展を遂げた近未来の東京を舞台に、ギャングやマフィアやシンジケートの巨額のマネーロンダリングが水面下で行われる熾烈なサバイバルミステリー。アンダーグラウンド専門の探偵、ヨヨギ・ケンの、血と灰の中で育ったすれた性格、大胆な行動力と冷徹で容赦のない言動、しかし内面に持つ人情溢れるあたたかさのギャップで読者はたちまち虜になるであろう。ケンが汚い金ででっぷりと私腹を肥やした大金持ちを相手に吐く台詞は最高にシビれる。また、前作を読んだ者をこれでもかと喜ばせる登場人物、台詞や場面でいっぱい。また全ての登場人物の相関図の入り組み方、トリックにトリックが重ねられ、手がかりが現れては砕け散り、最後の最後まで目を離せない展開が繰り広げられる。削ぎ落とされた文体で裏社会の一皮も二皮もある悪人たちをかっさばいていく超高速アクションサバイバル!
個人的にその後のヨシオとケンが気になるので同じ心持ちを持った方は是非お話ししたいです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ『新宿鮫』を読んだ事がない人間でも、存分に楽しめる短編集だった。
以前、感想を書いた『小説 こちら葛飾区亀有公園前派出所』に収録されている、両津勘吉とほんの少しだけ関わり合いを持つ話や、両津勘吉に劣らぬ人気を博し、同時に、彼に負けないくらいの正義と信念、悪に対する怒りを持つイケメン・冴羽リョウ(ケモノ編に尞)と知り合いである、そんな突飛ではあるが、違和感を覚えさせない短編などに、実に心が奮えた。
刑事とは斯くあるべき、と決めつけてしまうのは実に危険だとは思うにしろ、鮫島のように、自分の命を、一線を越えた犯罪者を捕えるために懸ける、その覚悟が出来ているのなら、意外に、そういう刑事は死なないのかも知れないな、そう感じた、しみじみと。
この台詞を引用に選んだのは、『新宿鮫』と鮫島について、何も知らぬ私ですら、カッコイイ、と胸が熱くなったので。
自分が「正しい」と信じる仕事と、そのやり方を全うするって、こういう事なんでしょうね、きっと。
「私が今の場所にいて、全力で仕事をすることが、彼らへの、何よりの復讐です」(by鮫島) -
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このシリーズは、「訳アリ」な新宿署の鮫島警部が、各作中での様々な事件に向き合って奮戦するという内容だ。シリーズの各作品で各々の味わいが在る。「各々の味わい」としたが、鮫島と一部の劇中人物達が共通する「各々の雰囲気が在る」のが好いのだ。
シリーズ各作品は、基本的に鮫島の目線で綴られるが、事件関係者等の目線で綴られる部分が適宜入り込んで切り替わりながら展開している。何処か「クールな映像作品」にでも触れているような気分になる場合も在る。
本作の題の『炎蛹』であるが、作中に登場する(架空)の害虫の名を和訳した字を宛てている。害虫の件が鍵にはなるが、次々と起こる様々な出来事がスピーディーに、複雑に絡み合いながら進む。続きが気になって、頁を繰る手が停められなくなってしまう。
物語は、深夜の道路でハンドルを握る鮫島が或る車を密かに追っている場面から起こる。“尾行”をしながら様子を観ているのだ。
鮫島が追っているのは、大規模な窃盗と盗品売買を展開するイラン人グループであった。新宿周辺で、多くの家電製品等が密かに多数売られている様子が見受けられた。そういう様子を内偵し、やがて窃盗と故買に携わるグループ関係者と見受けられる者達を見出した。彼らを追い、盗品を保管する倉庫のような場所を割り出そうというのである。
やがて鮫島が追う車は東京都の境を越えて埼玉県内に入り込んだ。そして倉庫と見受けられる場所に到着した。鮫島は慎重に様子を伺った。
そんな頃、新宿では複数の事件が殆ど同時に発生してしまっていた。路上で外国人娼婦が刺殺され、ほぼ同時にラブホテルが火災に見舞われた。ラブホテルの火災は放火と見受けられた。
新宿の様子を知らない鮫島が倉庫を注視していれば、そこに別な一団が乱入した。イラン人グループと対立していた中国人グループと見受けられた。後者が前者を襲撃したのだ。双方に死傷者が生じる大混乱となってしまっていた。
娼婦の刺殺の件と、窃盗と故買のグループの件に彼らが絡む抗争の件、放火の件と様々な事案の狭間で鮫島は活動しようとする。
そうしていると、今度は管轄内のアパートで別な外国人娼婦が刺殺されてしまった。殺害されたのは、アパートの部屋の住人ではなく、自身のアパートに入る迄の間に身を寄せていたという女性で、玄関扉の前の通路で遺体が見付かったのだった。部屋の住人は、警察への通報をするのでもなく姿を消した。そして姿を消した女性はイラン人男性と交際していると見受けられた。
深夜の出来事であった。翌朝からの捜査に備えるという段に至り、鮫島はもう1件の娼婦刺殺や、イラン人グループの件等に想いを巡らせながら現場を見詰めていた。そうしていると、現場保存の意図で警備に立っていた署員と何者かが言い争う声がした。
深夜が寧ろ早朝になって行く時間帯に、見慣れないやや年配の男が、警備に立つ署員と押し問答し、アパートの部屋の中を見せろと強く主張していた。鮫島は押し問答に割って入り、男の話しに耳を傾けた。
男は甲屋(かぶとや)と名乗った。植物防疫所の技官であるという。アルゼンチンの研究機関に問い合わせた結果、深刻な農業被害をもたらす危惧が在ることの判明した害虫の繭が付着したモノが持ち込まれているという。その情報を得て、直ちにと現場に飛んで来たのだと甲屋は説いた。
殺害されてしまった外国人娼婦の妹が少し遅れて来日していた。コカインの所持が見付かり、拘束され、強制送還ということになっていたのだという。その外国人娼婦の妹が、植物防疫の規則で持込が厳しく禁じられている稲の藁で出来た民芸品を持っていた。それには赤く小さなモノが多数付着していた。それが未だ日本国内に入っていない種類のゾウムシの繭だった。そして甲屋は「出身地の縁起物なので、先に日本に入国した(殺害されてしまっていた)姉が同じモノを持っている筈」だと聴いたというのだ。
鮫島は甲屋の話しを聴き、一緒にアパートの部屋を調べたが、該当するモノは見当たらなかった。姿を消した住人の女性が、殺害された女性が妹と住もうと用意したアパートにでも持って行ってしまったと推測された。しかし、その場所の情報は無い。更に、その姿を消した女性は、鮫島が追うグループに関わるイラン人と行動を共にしている可能性も在る。
結局、甲屋は鮫島に同行し、捜査活動の中で問題のモノを何とか回収して、植物防疫所で処分することを目指すということにしたのだった。
こうして鮫島と甲屋という、異色な臨時コンビが登場した。2件の殺人、放火の件、窃盗と故買の件、外国人グループが抗争状態のようになっている件、加えて害虫の件と、様々な出来事が錯綜しながら展開する。明らかになるような、同時に謎が深まるようなという展開である。
異色な臨時コンビは、日頃の活動分野も違い、経歴も年代も各々に異なる訳だが、共に「護るべきモノを護るために力を尽くす」という生き方を択んでいるような一面が在る。そういう共通項の故に、互いに気持ちを開いて、難しい事件の中で力を合わせる様子が凄く面白い。また本作は、御馴染の桃井課長や鑑識係の藪の他、消防庁の吾妻、機動捜査隊の野本というような人達、加えて鮫島の交際相手の晶(しょう)という面々に甲屋が絡んで、被疑者が何者が推論を重ねるような場面も在って、それも凄く愉しい。
大都市では、同じ日の殆ど同じ時間帯に、一つの警察署の管轄区域で複数の事件が起ってしまう場合も在るであろう。そういう状態で展開するスピーディーで重厚な本作はかなり面白い。 -
Posted by ブクログ
気に入ったシリーズの各作品をランダムに愉しんでいる。これも凄く愉しかった。
「訳アリ」な鮫島警部が奔走し、事件の解決を目指すという<新宿鮫>シリーズである。近年の作品を読んでいないと手を着け始め、随分以前に読んでいた可能性も在る作品に辿り着いたが、一度読んでいたかもしれないにしても、記憶が曖昧になっているので、新たに出会うのと同様に愉しく読んだ。映像ソフトが少し入手し悪くなっているように見受けられるが、本作を原案とするテレビドラマが在ったことも憶えている。
<新宿鮫>シリーズは、主人公の鮫島の目線で綴られる部分と、作中の事件関係者等の目線で綴られる部分とが適宜交わりながら進むのが通例である。現在時点では「比較的初期の…」と呼び得る本作も、そういう方式が採られている。本作は、鮫島、交際しているロックバンドのボーカルの晶、地方の街にある彼女の嘗てのバンド仲間、バンド仲間の在る街で大変な影響力を有する地方財閥関係者と、「様々な人達の各々の物語」が作中の事件を交差点にして交じり合いながら展開する感である。
物語の冒頭は新宿の街中からである。
鮫島は不審な少年グループを見張っている。少年グループ側も周辺を警戒している様子が見受けられ、鮫島も慎重に様子を伺っている。違法薬物と見受けられるモノの密売をしたという様子が見受けられ、鮫島は彼らを捕えようと駆け寄る。格闘も交えて、鮫島は負傷もしたが、グループの1人を取り押さえる。逮捕した少年が所持していたモノの中から、錠剤が出て来た。10代の若者等の間で流行りつつある代物で「アイスキャンディー」という通称だった。この錠剤は、微量の覚醒剤成分を含む危険なモノであった。
鮫島はこの「アイスキャンディー」の事案に取組んでいたのだ。逮捕した少年が通称「アイスキャンディー」を売り捌くようなことをしていたことから、入手先を聴取し、その入手先の人物を監視し、何とか流通ルートを暴き出そうとしていたのだ。
鮫島は、少年が自白した、少年に通称「アイスキャンディー」を売ったという人物を監視し始めるが、麻薬取締官に出くわす。麻薬取締官達も、この「アイスキャンディー」の事案に取組んでいた。異なる捜査機関の思惑がぶつかり合うこととなって行く。
他方、或る地方から出て来た偽名を名乗っている男が在って、新宿を本拠地とする暴力団の幹部とやり取りをしている。密かに「アイスキャンディー」を流通させようとしているのだ。そして、当初は安価で流通量を増やそうとしていたものの流通量を絞り込み、値上げを図るような思惑と、随意に必要量を得て利益を増やす思惑とがぶつかり合って行くこととなる。そしてこの偽名を名乗っている男の複雑な背景が在る。
そして晶は、大きくヒットしているのでもないバンドのデビューアルバムのプロモーションも兼ねて地方公演に出るのだが、その途次に単独で或る街を訪ね、嘗てのバンド仲間と再会し、嘗ての仲間が携わるライブハウスを訪ねようとしていた。が、各々の道で各々が活動していることを言祝ぐような、古い仲間の愉しい再会で終始し悪くなるような予兆が立ち込めようとしていた。
こういうようなことから展開する物語は、「続き」が気になって、頁を繰る手が停められなくなってしまう。終盤側では凄惨な闘いというような場面、複雑な想いが交錯する場面が相次ぎながら、鮫島は奮戦し続け、事件は収束する。
シリーズの各作品、何れも甲乙点け難いのだが、本作は秀逸だ。 -
Posted by ブクログ
読み始めると停められなくなるモノが在るシリーズだと思う。新宿署に在る、少し「訳アリ」で、街のワルにはその姓にも引っ掛けて“新宿鮫”と綽名される鮫島警部が奮戦するというシリーズである。物語の大半は鮫島の目線で綴られるが、適宜作中の事件関係者等の目線に切り替わる箇所も交じる。二転三転しながら、鮫島が出逢った、関わった事案の顛末がテンポ好く描かれる。そういう雰囲気は本作でも健在だ。
好評を博しているシリーズが続く中、シリーズの過去作品の「続き」的な要素を巧く織り込むということも出来ると思う。“新宿鮫”のシリーズは、そういうことを巧くやっているシリーズだと思う。と言って、過去作を余り知らなくても、作中人物達が想い起す過去、来し方として内容が巧く処理されているので、過去作の事柄が初めて作品に触れる読者にとっての“敷居”には決してなっていない。その辺が、このシリーズが長く続いている一因であるようにも思う。
本作の物語冒頭の方は、鮫島が過去の事件で逮捕していて、少し長く服役し、出所して街に戻っているという人物と偶々出くわすというような辺りから起こっている。暴力団構成員の真壁という男は、中国人グループとの抗争で関係者を殺傷しており、自身でも重傷を負いながら新宿署に出頭し、鮫島に逮捕されたという経過が在った人物である。
真壁のその後も気になる鮫島ではあったが、捜査に勤しんでいる事案が在った。車輛の窃盗である。管轄内で高級車の盗難という届け出が相次いでいるのだが、通過車両のナンバー等の情報が記録される“Nシステム”に、盗難の旨が届け出られた車輛の情報も入らない。幹線道路等に設置された“Nシステム”の場所を避け、比較的近い場所に設けた場所に入って、車輛のナンバープレートを換えてしまう、場合によって色を塗り替えてしまうようなことをして、何処かの場所に移動して集積した上で、恐らく国外に盗んだ車輛を送り出してしまっているのだと鮫島は推測していた。更に、推測したようなことが行われるとすれば、様々な役割分担が生じると見受けられることから、大掛かりなグループが犯行に携わっていると鮫島は想いを巡らせた。
やがて鮫島は、推測した条件で犯行グループが使えそうなガレージや修理工場のような場所を、管轄内の目星をつけた辺りを丹念に動き回って調べていた。そういう中、西新宿の駐車場で管理人をしている大江という老人と知り合う。大江が居る駐車場の傍には数十年前に建てられたと見受けられる、空家である期間が相当に長いと見受けられる家屋が在る。その家屋の脇に、少し新しい大きなガレージが建っている。何やら不思議な様子だ。
こうして鮫島が事件の謎に挑む中、犯行に携わる者達と真壁の因縁という話しが在り、更に新宿の街の過去、遠い過去の出来事等が交錯しながら物語は展開する。また真壁と相思相愛のホステスが、偶々出くわして少し親しく語らう客の男というのも興味深い。
本作は1999年に新聞連載で初登場し、2000年に単行本化、その後文庫化されている。考えてみると20年以上も経つ。が、全然「古さ」を感じない。変貌を遂げ続ける巨大な街で、ブレずに活動を続けようとしている主人公が、最新の事件と遠い過去の事件が交差する地点に入り込み、そこでの様々な事柄の顛末という様子になっている物語だ。かなり面白い! -
Posted by ブクログ
「酷く目立つ分厚い文庫本…」に変に惹かれて紐解いた『暗躍領域』の前に出ている<新宿鮫>シリーズの作品が本作だ。『暗躍領域』の中で、鮫島刑事が「少し前の出来事を想い起して…」という風に触れられる出来事が、“進行形”で起こっているのが本作の物語である。
何やら、発表された順番を度外視して、シリーズ作品をランダムに読み漁るような体裁になってしまっている。が、頭の中で、何年か前のこと、数日前のこと、当日のことと時間軸が乱れ飛びながら色々と思い出すというように、記憶している事柄の時間軸が何時も整っているのでもない面は在ると思う。それ故に、シリーズ作品をランダムに読み漁るような体裁も悪くないと思う。他作家による別シリーズだが、そういうことは過去にも色々とやって来た経過が在る…
<新宿鮫>シリーズは「訳アリ」な新宿署の鮫島刑事が活躍する。キャリアとして警察官になった鮫島だが、色々な経緯で警部の階級に留め置かれたままで、新宿署の現場に在るという人物で、部内的には「近付かない方が…」という扱いで敬遠されているので、刑事の定石を外れて単独で活動する場合が多い。逮捕することを「噛む」と隠語で表現する場合が在り、その「噛む」ことに関して遠慮が無く、執念深く被疑者を追うことから、姓に引っ掛けて<新宿鮫>と綽名される鮫島刑事である。こういう彼だが、理解者で協力も支援も惜しまない上司の桃井課長、「アイツは銃のオタク」と言っている好き仲間の鑑識係の藪という警察部内の数少ない人達、そして交際を続けているロックバンドのボーカリストである晶(しょう)という、近しく大切な人達も在る。そういう中、鮫島刑事はシリーズ各作品で様々な事案に臨んで行くことになる。敵役ということになる犯罪事件関係者等に関しても、シリーズの複数作品に跨って登場している例が存外に在るかもしれない。
<新宿鮫>シリーズは、本稿を綴っている2023年5月時点で12作の長篇が発表されている。それらの中の11冊が文庫本化されている。既読の『暗躍領域』は11番目で、本作『絆回廊』が10番目ということになる。
シリーズ各作品に共通すると思うが、大半の部分で、視点人物は鮫島刑事である他方、適宜他の人物が視点人物に切り替わる部分も在る。<新宿鮫>シリーズの作品を原案にした映像作品(映画やテレビドラマ)も在るのだが、本作を読んでいても、何となく「映像作品に触れるような感覚」も在る。テンポが好く、映像作品のように巧みに素早く場面が切り替わるような感じがした。こういう感じも好きだが、本作もそこは変わらない。
何か前置きめいた話題が長くなってしまった…
冒頭部に、20年を超えるような長期間に亘って不在をしていた人物が戻って来るということに関する、或る人物の独白のような短い節が在る。本作の鍵になる人物達のことが示唆されている。
そういう辺りから鮫島刑事の新宿での日々というような展開に入って行く。違法薬物の密売を、長い間に亘って巧みに続けている、他方で証拠が無いので逮捕に至らないという、顔馴染の「街の売人」に出くわして言葉を交わした鮫島刑事は、「ネタが在る」と言う男の話しに耳を傾けた。
男は、出くわした男に拳銃を売ってくれというような話しをされて当惑したのだという。出くわしたのは少し目立つ程度に大柄な男で、やや年配と見受けられた。その大男は、拳銃を入手して恨みが在る警官を撃つというように息巻いたという。その時の話しの中で、一昔も前に解散した暴力団の組の名を口にしていたことから、「長い間、刑務所に在って、出所して日が浅い?」と推定されるということになった。
警官を撃ち殺すと息巻き、拳銃の入手を図ろうとしていて、本気であるように見える者が在るというのも物騒な話しである。鮫島刑事は男と話し合い、情報を集めながら警戒するということにしたのだった。
他方、鮫島刑事の個人的な事柄でも動きが生じた。交際を続けている晶がリーダー格であるバンドのメンバーがその交際相手の事案を契機に薬物事案で逮捕され、晶自身を含むメンバーが捜査対象になってしまった。晶は悩んで鮫島刑事に相談する。
問題の「警官を撃ち殺すと息巻き、拳銃の入手を図ろうとしている」という“大男”の影を追う中、鮫島刑事は“大男”が口にしたという、一昔も前に解散した暴力団の組に関係が在った者等を探るのだが、何やら死人が発生する事件が相次ぐ。そして正体が判り悪い、犯罪や暴力を厭わない集団の影に行き当たる。
“大男”の正体、犯罪や暴力を厭わない集団の実体と、鮫島刑事は桃井課長のバックアップを受けながら奔走して探り出す。その事案の行方、そして晶の問題の行方と、最終盤まで目が離せない。
長くシリーズを読み継いで来たファンが衝撃を受けるような結末かもしれない。他方、いきなり本作に触れたにしても、ハミダシ者な主人公にとっての、年長の好き仲間であると同時に上司の桃井との共闘振りは熱く、意外に過ぎる組合せである互いの立場を超えて、人対人として絆を保ち続けた晶との情愛の行方も心揺さぶられる。
シリーズ各作品を愉しんだ後に愉しむべき作品かもしれないが、最初からこの作品でも酷く熱い…御薦め!!