高橋洋一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレもうすぐ誕生日が来ますがまだ60歳です、新刊をチェックしている高橋氏の本が出たので読みました。この本は単なる地政学の解説本ではなく、地政学の意識を持って巷に溢れる情報を理解しなさい、という趣旨で書かれていると思います。
米国ではトランプ政権が開始され、予想以上の大変革が起きます。この機会を活かすも殺すも、それまでの準備と、今後起きる変化に上手に対応していくことが大きな差を生むことになると思います。この本に書かれていることを参考にして、自分の生き方を考える良い機会を与えてもらったことに感謝します。
以下は気になったポイントです。
・世界で起こっている事象を深く理解するための一つの視点が「地政学」だ、世界の戦争の歴史を知ること、そして国や地域が置かれた地理的条件から物事の深層を考えるという学問である(p14)
・朝鮮戦争において、釜山から対馬、さらには九州にまで脅威が迫る中、日本が本格的な戦争に巻き込まれないようにするために防衛策として掃海艇の派遣が下されたことは十分に理解できる、日本は現実的な判断から集団的自衛権を行使し、同盟国と自国を守ったと言える(p24)
・日本は長年、ロシアを過度に敵視せず、中国だけに対抗するというスタンスだった、しかしウクライナへの侵攻を機に、仮想敵国としてロシア、中国、北朝鮮の三方面に対応せざるを得なくなった、冷戦の火種は今もなお燻り続けている(p34)
・死者の絶対数は第二次世界大戦だが、人口換算後のランキングでは、一位は、中国唐(8世紀)の安史の乱(3600万人に対して、4億2900万人)2位は、モンゴル帝国の制服、以下、中東奴隷貿易、17世紀の明朝滅亡である(p36)人類は20世紀以降、急速に平和的になったと指摘されている(p36)
・半導体製造装置メーカは世界でも限られる、ASML(オランダ)、アプライドマテリアル(米国)ラムリサーチ(米国)、東京エレクトロン、KLA(米国)の5社が8割を占めている(p43)
・国際金融のトリレンマとは、自由な資本移動、独立した金融政策、固定相場制、を同時実現できない。中国は共産主義体制なので、自由な資本移動を許していないので、自由な資本移動を制限し、固定相場制と独立した金融政策の2つを選ばざるを得ない。こうした制約があるので、中国が主導するAIIBからは低コストでの資金調達は難しい(p51)
・海中の原子力潜水艦は、空からは簡単に捉えられない、さらに長期に渡って燃料補給を必要せずに連続航行ができ、余剰電力で海水から酸素を作れるため、数ヶ月以上の潜航が可能、その意味では現時点で最強兵器とも言える(p58)
・プーチンが停戦に応じるためには、ウクライナがNATOに加盟しないことが絶対条件となる、しかしウクライナがNATOからこれだけ軍事支援を受けている状況では、事実上NATOと一体であるとプーチンには見えるだろう、これがプーチンが和平を回避して戦争の長期化を望むインセンティブとなっている(p75)
・旧ソ連諸国を中心とした陣営には、集団安全保障条約機構(CSTO)がある、現時点での加盟国は、ロシア・アルメニア・カザフスタン・キルギス・タジキスタン・ベラルーシであり、NATOに対抗する地域的な軍事同盟と位置付けられている(p88)
・経済は、アジア太平洋・欧州・北米州の3極がある、米大陸にはUSMCA(2020.7,米国、カナダ、メキシコ)の貿易協定でNAFTA に代わるものである、欧州にはEU、アジア太平洋には、RCEP(2022.1)があり、参加国は、ASEA10カ国(インドネシア、タイ、シンガポール、マレーシア、フィリピン、ベトナム、フルネイ、カンボジア、ラオス、ミャンマー)と、それらのFTA(自由貿易協定)パートナーである日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、2024年6月にはチリが正式加盟した、ロシア中心のEAEU(ユーラシア経済連合)もある(p101)
・債務返済に苦しんでいるスリランカに対して、日本、インド、先進国からなるパリクラブはスリランカの債務問題に対処している(p113)こうしたスリランカのような事例が相次いだことで、一帯一路の評判は低下の一途を辿っている(p114)G7から参加したイタリアも2023年12月に正式に離脱した(p114)
・TPPへの参加で日本は自由貿易の恩恵を受けられるようになった、自由貿易とは、可能な限り国家間で関税をかけずに輸出入を行うことを指す、自由貿易のメリットを受けるのは主に輸出業者と消費者、デメリットは、輸入業者と国内生産者である、そして自由貿易の恩恵とは、メリットがデメリットを上回ることを意味する、これは経済学の200年の歴史において最も確実な理論である(p131)
・ISD条項(国家対投資家の紛争処理条項)について、日本はこれまでに50以上の投資協定に署名しており、その中にもISD条項が含まれているが、対日訴訟は1件も起こっていない、世界では多数発生しているが、訴えられるケースの多くは国内法が不備な途上国である。ISD条項は、投資家や企業が国際投資で相手国に不平等な扱いを受けないようにするためのものであり、日本のような先進国には有利に働く(p133)
・カントの提唱したのは、民主主義の程度・経済的依存関係の構築・国際的組織への加入、の3つで、この中で民主主義にフォーカスしたのが、民主的平和論である、民主主義国では、選挙で選ばれた政治家は、国民の視線を意識せざるを得ず、三権分立や二院制のような権力機構の抑制が存在するため、戦争という行動が選ばれにくい(p156)平和の5要件とは、1)同盟関係、2)経済的依存関係、3)国際的組織への加入、4)民主主義、5)相対的な軍事力である(p160)
・第二次世界大戦が終わった日は、日本人としては「8月15日」であるが、他国の人々は「9月2日=戦艦ミズーリ艦上での日本政府のポツダム宣言に基づく降伏文書に署名した日」である(p171)
・核シェアリングとは、NATO加盟国が抑止力を共有する仕組みで、核保有国(主に米国)が非核加盟国に核兵器使用に関する協力や訓練を行う、但し実際の核兵器の管理、運用権は核保有国にある、これにより非核国も核抑止力を使えて安全保障を強化できる。すでに、ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トルコでは実施されている(p201)
2025年1月19日読破
2025年1月23日作成 -
Posted by ブクログ
経済の理論についてざっくり知りたくて読みました。なんというか骨子は分かりやすく、信念を感じる本でしたが、極端に政府寄りの思想がちょくちょくにじみ出ていて、与党支持の自分もちょっと引きました。あまり人に勧めにくい本です。
・経済成長率が上がると失業率は下がる(オークンの法則)。経済政策によって失業者を減らし、経済成長を促す。国にできるのはここまで。賃金上昇はそのあとについてくる。なお、名目賃金の上昇と実質賃金の上昇の間には物価の上昇があるので、実質賃金は一時的に下がる。
・物価が上がれば、失業率は下がる(フィリップス曲線)。ただし失業率には下限がある(NAIRUという)。インフレ目標とは、この失業率が下限に達するときの物価上昇率(の推計値)のこと。
・実質GDPが上がると、物価が上がって失業率が下がる。このような経済成長を促す政策が打たれると、市場が即座に反応してまず株価が上がる。
・インフレとは、カネが増えて、モノの価値が上がった状態。世の中に存在する財が1つだけで、お金が1000円だけあったら、その財の価格は1000円(他に買うものがないので)。
・GDPを増やす経済政策は「金融緩和」「財政出動」がセット。財政出動は国債を発行して公共投資で仕事を作ること。国債を発行すると、資金が政府に流れ、民間に融資する資金が少なくなるため、金利は通常上がる。金利が上がると投資と輸出が減る。そこで金融緩和を行い、カネを新たに刷って増やす。
・GDP=消費+投資+政府需要+輸出ー輸入
・経済政策の評価で見るべきは「財政政策と金融政策で成長率と失業率がどうなったか」という2点だけ。
・国債は災害などの対応の負担を世代を超えて平等化するもの。ふるさと納税は地域間の富の再配分の仕組み。
・行政は国がやるべきか、地方自治体がやるべきかを考える。待機児童問題や台風対策は地方自治体が取り組むべき問題。
・政府と中央銀行の財政状況は連結させて「バランスシート(貸借対照表)」として見る。国債は負債(右側)だが、それを元手に事業を行うことに何もおかしなことはない。それ以上に資産(左側)があるので、財政は安泰といえる。
・消費税は一般財源であり、応益税である。国の課題である社会保障費の穴埋めに使うのはおかしい。目的税の性格のある社会保険料と、応能税である所得税を財源とするべき。
・国民年金は「自分が長生きしたときのための保険(月収2.5割保証)」。厚生年金は「(月収5割保証の)長生き保険」。ちゃんと計算されて運用されているから受け取れる。それより経済成長を重視するべき。 -
Posted by ブクログ
「日銀が民間金融機関から国債を買いお金を刷ることで,より多くのお金が世の中に出回ることになるのだ。」(p.36) のキモチは分かるのだけど,この金融緩和は,景気回復の十分条件ではないと思いました。アベノミクスの最初の矢が金融緩和でしたが,国民は政府のやり口から「増税が待ち受けている」ということを刷り込まれているので(要するに政府の経済政策への懐疑),お金は出回らなかった。GDPと連動していたのは,マネタリーベースではなく政府支出だった。つまり,適切な財政政策こそ景気回復の本丸だということを意味していると思われます。
この本はそのあたりは書いていないようで,国債の正体がテーマであることや,著者がリフレ派であることから,金融政策を中心とする書き方になっているのだと思います。
例えば,図3のキャプションは「日銀が国債を買うと物価が上がる」となっています。物価が上がるまでのプロセスを,本文では「風が吹けば桶屋が儲かる式の連鎖反応によって」と表しています。現実は上手く連鎖しなかったのではないでしょうか?
「お金を借りやすくする」までの話は真実だと思いますが,その後民間が本当にどんどん融資を受けるかという実態があまり伴わず,伴ったとしても倒産が多かったわけで,金融政策は十分条件でないことが伺われます。
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経済成長があれば,要求官庁は経済成長に見合う経費増も要求する。経済成長は財務省のおかげではないので,「税収」増の分だけ予算増となっても,要求官庁は財務省に恩を感じない。
ところが,「増税」であれば,その増加分は財務省のおかげとなって,財務省はその分の予算配分をするとき,各省庁に恩をきせられるのだ。(p.84)
比較的手を出しやすい国債は「撒き餌」のようなものであり,最終的にはより自分たち[銀行や証券会社]の儲けの大きい金融商品を買わせたいのである。(p.88) -
Posted by ブクログ
国債とは何かという基本の説明から始まり、「国債が増えると国民の負担になる」「日本は財政破綻が近い」などの誤った認識を正そうとする本。政府と日本銀行の統合バランスシートで考えれば現在の国債に問題はないことや、財務省は天下り先を確保するために増税派として財政問題があるかのように振る舞っている、ということを主張している。「日本銀行は金融機関から買い取った国債の利子収入を、国庫納付金として政府に納める」という事実はこの本を通じて初めて知ったので、よい勉強になった。
国債の仕組みについて学びたい人には持って来いだが、「負債」「償還」「利回り」などの用語が頻出するため、説明がついているとはいえ、金融について一度学んだ人でないと少し読みにくいかもしれない。 -
Posted by ブクログ
統合政府で考えれば、日本の財政は健全と主張する高橋先生。それは、日銀が買い取った国債を「銀行券」で金融機関に支払っているという前提だから。しかし、これは実際とは異なる。実際には、日銀は買い取った国債代金を、銀行券(紙幣)ではなく、金融機関の日銀当座預金口座に支払っている。紙幣に金利はつかないが、日銀当座預金には、金利がつく。
公定歩合なき現在において、日銀は日銀当座預金の金利で政策金利をコントロールしている。高橋先生は、インフレ目標に到達するまで金融緩和してもよいと言う。しかし、インフレ目標ほぼ達成の2023年においても、緩和をやめられない。その理由は、日銀当座預金の金利を上げたら、その金利分だけ日銀の負債が増えていくからだ。
そこについては、本書は言及していない。
だからと言って、本書が読む価値がないかというと、そうでもない。リフレ派は、MMT派とは別物で、そこに数理的根拠がなく、MMT派がリフレ派にすり寄ってくる現状を迷惑そうに解説しているのは、面白い。 -
Posted by ブクログ
この低金利時代には、銀行の定期預金なんかに預けるくらいなら銀行で個人向け国債の口座を作って国債を買う方がよっぽど良いということが分かる一冊でした。日本国債が暴落するようなときはその前に銀行自体が破綻しているのだから。
日本国債という「借金」が実際のところどのように売られたり買われているのか。金融の世界でどのように使われているのか。と言うことが本書では分かりやすく説明されている。個人で考えれば月収では買えないマイホームを買うための住宅ローンのようなものと思えば良いかもしれない。信用があってローンを組めるうちは問題ないし、マイホームという資産があるのだから投資のための借金である、と言うこと。
日本政府の場合はの資産と「子会社」の日銀まで含めて連結で考えれば国債の赤字分は相殺されて問題ないとのこと。「国債は返さなくても良いのだ」などと言うことないけれども、償還期限が来ても借り換えられる内は返さなくても良いのだなどとも説明されます。要は、現状では日本はまだまだ信頼されていて国債の買い手がいるので、まだまだ国債を発行しても大丈夫だし、財務省に洗脳されて増税して経済を落ち込ませる必要は無いという主張です。教育、子育てへは未来への投資なので、必要なお金は国債発行で賄うべきかもしれない。でも無限に国債発行額を増やしていけばどこかで日本の信用が破綻するはずだから、そのことについても何らかの説明が欲しいところだが、その辺の話は全くなかった。