萩尾望都のレビュー一覧
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ネタバレ神様みたいな本だった。
なにかを愛することってどうしても自己愛の裏返しになってしまうけど、トーマの愛は違う。
冒頭の彼の遺書が、本編を読む前と後とでこんなにも意味合いが変わってくるとは思わなかった。
「彼はぼくを死んでも忘れない」ということ、「彼の目の上にぼくがずっと生きている」ということ、そのおかげでユーリはこれからどれだけ心安らかに生きていけるか、トーマは全部分かったうえで彼に翼を捧げたんだ。
代わりのいない人間なんていないってずっと思ってた。
確かに「物質」的にいえば人間の代わりなんていくらでもいるかもしれない。私と似た顔、似た声、きっといくらでもいる。
唯一代わりのきかないものは「思い」なんだ。
オスカーにしか、エーリクにしか、ユーリにしか、そしてトーマにしか抱けない思いの形があって、その思いが人に向うことで、その人でしか満たされない「思い」がまた生まれていく。そうやって人はゆっくりと自分が存在する意味をみつけていくんじゃないかと思う。
真実の愛なんて存在しないってここ最近ずっと思ってたけど、すくなくともここには、この本の中だけにはあった。
現実にもあってくれ〜 -
Posted by ブクログ
ネタバレ以前読んだのは同じ小学館文庫だが旧版(カバーイラストが萩尾望都ではない)で、収録作品も異なる。
今回初読だったのは、「もうひとつの恋」と「セーラ・ヒルの聖夜」。
どういう経緯で前回の文庫化の際に未収録だったかは知らねども、今回躍り出た2作によって、一冊の本として豊かになった。
まずは「もうひとつの恋」、本書で唯一コメディ。
大いに息抜きできる。その上ただの箸休めではなく、「双子」の系列で意義深い。
そして「セーラ・ヒルの聖夜」。
冒頭の表題作と呼応するように、またも「双子」テーマ。
しかも家族を前面に押し出してきて。
一冊の中で何度も「双子」と「家族」が手を変え品を変え現れる。
これが作者にとって切実でなくて何と言うのか、というところまで考え抜かれたセレクト。
この文庫本自体が美しい。
■11月のギムナジウム 45p
既読。
■秋の旅 24p
既読。
■塔のある家 31p
既読。
■もうひとつの恋 40p
初読。
■かわいそうなママ 31p
既読。
■白き森白き少年の笛 32p
既読。
■セーラ・ヒルの聖夜 80p
初読。
◇エッセイ―一九七〇年代の東京パラダイス:羽仁未央(エッセイスト) -
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三浦しをんさんの「乙女なげやり」から、よしながふみさんの「愛すべき娘たち」を知り、
その繋がりで萩尾望都さんを知り、本作品を読むに至っている。
萩尾望都さんは手塚治虫さんの影響を強く受けていて、漫画の雰囲気(根底にある思想とか)も似ていると感じる。
この本は、2022年に再編集されて出版された [完全版] であり綺麗な状態で読むことができる。
しかもA5判のサイズなので文字も大きく見やすい。
[完全版]とした意味は最終ページに記載があった。
「百億の昼と千億の夜」とは、どういう意味なのだろうと思いながら読み始めた。
読み終えた時に、きっと意味が分かる…。
プラトンが1日で消滅してしまったアトランティスの謎を探る旅から物語が始まる。
少女の姿をした阿修羅王が戦っている敵の名は "シ" … それは生命が必ず出会う運命の存在。
ある星雲の千億の恒星…全て消滅
百億の星雲…全て死滅
終末に向かう宇宙
エネルギーの完全な平衡状態 = 完全な熱的死。
その後にはどんな変化も起こらない。
どんな生命も生きられない。
なにゆえに宇宙があり、生命があるのか。
「火の鳥」と「ブッダ」を合わせたような壮大な物語だった。
仏教の持つ宇宙観を描いた物語で、その思想は難解だ。
これを少年チャンピオンで全21回に渡り連載したという事実が凄い(子供たち、たぶん読めていないと思う)。
少女フレンドには馴染まない作品だし、大人のマンガにはあまりSFがないとも言ってるので、相応しい雑誌がなかったのだろう。
人間社会を風刺する発言も出てくる。
「繰り返される戦争 絶えざる経済危機 ――人間は高度な文明を持ち得ても 何一つ解決できなかった」
「進化 発展が人間に何を与えたか」 「破壊につけこまれただけではないか」
漫画だけでなく、本作品に関するエッセイ(光瀬龍さん3本、萩尾望都さん2本)や、萩尾望都さんのSFに対する想いなども書かれていて充実した本に仕上がっている。
影響を受けたSF作品や、自作のSFに対する裏話を知ることができて、また読みたい本が増えました。