円城塔のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
中編程度の作品が2本の薄い本だが、読み終わるまでにかなりの時間がかかった。瀬名英明の『デカルトの密室』を思い出したが、円城の方が余計なストーリーが織り込まれていない分、密度が濃い。
人の心理や慕情や老いへの哀しみやコミュニケーションを扱った文学とは見えない。いや、コミュニケーションの理論を扱ってはいるのだが、それは工学の分野の「情報理論」の定理、法則、仮説などなどを思考実験で小説の体をとって射影したようなものだ。機械学習の分野が急激な発展を遂げている昨今では、情報空間をどのように描写するかが文学のテーマにもなりうるということを円城は示したかったのか。 -
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「Boy's Surface」
盲目の数学者レフラーの恋の物語。しかし、レフラー球なる物体によって変換が何重にも施されているため、何が本当のことなのか分からない。
「Goldberg Invariant」
数学的SFとでもいうような物々しい作品。しかし、これを恋愛小説だと理解するのは相当難しい。
「Your Heads Only」
「僕」と「彼女」が数年に一回再開する話。本文中にもある通り、「恋愛小説の書き換え」なのだろう。
「Gernsback Intersection」
最もSF色が強い作品。しかし、これは誰の恋の物語なのか分からなかった。
「What is the Na -
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表題作と「つぎの著者につづく」の2編を収録したもの。
1年に1度空から人が降ってくる町の話である「オブ・ザ・ベースボール」は円城塔としては意外にも読みやすい。
なんで人が降って来るのかとか、なんでその救助隊がバットで降ってくる人を打ち返すのかとか、それはそれとして、町のこと、人が降って来ること、主人公を含めた救助隊の活動のことなど面白く読める。
解説にもある通り円城塔入門と言える作品で、これはこれで難解だとは思うのだが、がっつり難解さを求めているならちょっと物足りなく感じるかも。
ただそれも大丈夫で、「つぎの著者につづく」が、「オブ・ザ・ベースボール」がなんだったのかと思うくらい難解な -
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ネタバレ数理恋愛小説がテーマの5編から成る短編集。
概念や理論を擬人化させ、恋愛を数理的に解釈するというイメージ。
前作はそれなりに読みやすいと思っていたが、これに手を出して改めて円城塔の難解さを目の当たりにする。
数学的構造物レフラー球を発見した数学者、レフラーとフランシーヌの恋を描いた表題作「Boy’s Surface」は前回の流れで読み進められたが、それ以降は確かに難しかった。
作品の雰囲気や流れるような文章で、面白く読めたことは確かなのだが、厳密に理解できたかと問われれば否。
が他の皆さんも語られている通り、「わからない」は文脈と作者の意図の話で、目の前に展開する異様な光景は、ただそ -
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Posted by ブクログ
ネタバレ3.5。ちゃんと読めばもっと面白いと思う。それが証拠にこの作者の他の本も読みたい。それくらいならちゃんと読めばよかったのだが、貸出期限をとうに過ぎて、途中の章を丸ごと飛ばし読み終えた。短編集ということになっているが、一連の作品として成立しているように思う。
「去年マリエンバードで」を文字で追わされているような小説。
「この文章を理解していく困難さ自体にはそれほど意味はなく一つのビジョンを見せようとする布石にすぎない」とすることにして意味を完全に理解しないまま読み進めるがそれでも辛い。出てくる単語、事物、人物に意味や付随するイメージがあり過ぎ(それこそが狙いであるのだろうが)、どうしても文章の途