大森望のレビュー一覧
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短編SFのアンソロジー。新人作家よりも癖があって尖ったのが多い。というか遊んでる。
良かったのは飛浩隆「自生の夢」くらい。あとは藤田雅矢「エンゼルフレンチ」、山本弘「七歩跳んだ男」と斉藤直子「ゴルコンダ」が普通に読めたくらいで、残りはご勝手にという感じ(ただし伊藤計劃「屍者の帝国」冒頭は除外)。
「自生の夢」は、多くの殺人を犯して収監されていた間宮潤堂と、高度情報社会に生じた事件”忌字禍”をめぐる物語。ややとっつきにくいけれど、比較的理解しやすい。拡散していく展開と、間宮と”インタビュアー”との緊迫したやり取りに気を取られている間に、ふっと足をすくわれて言語の世界へと引きこまれてしまう。想像力の向こう側にあるような、そんな作品だった。 -
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現代で過去の資料が発見・解析されていくのとともに、一八八八年ではネッドたちがどう行動すればいいのかを手探りで考えていく。本来の歴史から外れそうになり、それを修正しようとするも正しい行動の指針はほとんどない。先の読めない混迷したドタバタ物語を、こうもすらすらと読ませるとは。
プロットの妙か?
ミスターCの謎。主教の鳥株の謎。時間齟齬の謎。
もつれた糸がするするとほどけて行くように、すっきりしていく後半。
Cの謎は、伏線のセンスが素敵だったし、時間齟齬の謎は驚いたとともに納得。
下巻序盤のタイムラグにかかったヴェリティがかわいい。
あたたかな陽光をさえぎる、水面まで垂れた柳の枝の木陰。そしてボートの上で眠りこんだ彼女。ドタバタ続きのところを小休憩する、空白のようなこの情景が良かった。 -
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単行本でも読んでいたのだけれど、また読んで、やっぱりおもしろかった。90年代に書かれたものが多くて、多少なつかしい感じはするけれども。
内容は、翻訳指南書としてもうすべてが網羅されている。翻訳学校へ通ったわたしがそこで習ったことはすべて入っているし、いろんな翻訳家の人がつねづね言っていることばかり。でも、それを大森さんの軽妙な語り口で読むと本当におもしろくて、わかりやすくて、すばらしい。大森さんの文章が大好きだ! エッセイ、業界裏話としておもしろいので、翻訳やSFに興味がなくてもおもしろく読める。
それにしても、またしても深く思ったのは、SFのヒトたちってなんでこんなに楽しそうなんだろう~~ということ。いいなあ。幸せそう。SF者に生まれたかったとしみじみ思ったくらい。 -
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SFの書き下ろし短編集。
田中哲弥目当てで読んだけど、他にも面白いのがあった。
ちなみに田中哲弥は「隣人」って短編を書き下ろしてた。最高。はた迷惑な一家が隣に引っ越して来るという不条理系で、現実の認識が交錯していく筒井的な表現方法。
他では、山本弘の「七歩跳んだ男」、斉藤直子「ゴルコンダ」、飛浩隆「自生の夢」、小林泰三「忘却の侵略」が面白かった。
「七歩跳んだ男」は、月面での殺人事件を取り扱ったミステリー。トンデモ系かと思ったら、本格派SFでビックリした。ミステリーとしても良く出来てる。
「ゴルコンダ」は、妻が11人に増えるというドタバタコメディ。主人公の軽さが、軽快さを演出していて面白い。
「自生の夢」は、未来的なクラウドシステムが、自立型のウイルスに侵食される話。広がりきったヴァーチャルなデータベースは、第二の自然であるという世界観が面白かった。
「忘却の侵略」は、シュレディンガーの猫をモチーフとした、量子力学的なロジックで描かれたインベーダーもの。一見小難しそうに見えて、理解しやすいように表現されているのが好印象。
あと、編者が『文学賞メッタ斬り』の人やと、読み終わってから知った。 -
Posted by ブクログ
書き下ろしのSF短編集であり、現在日本のSFの第一線にいる方々の作品を収録。なんと言っても目玉は、故伊藤計劃さんの「屍者の帝国」の遺稿。未完ではあるが、スチームパンク風のイギリスを舞台に、ワトスンが語り手となる本作は、ホームズシリーズの読者ならにやりと来る事請け合い。
あと印象に残ったのは、悪い意味では田中啓文さんの「ガラスの地球を救え!」。良い意味では円城塔さんの「Beaver Weaver」と飛浩隆さんの「自生の夢」
ガラスの地球はとにかく汚い(ゲロ的な意味で)。あと、これでもかというほどパロディで埋め尽くされている。訴えられないかと心配になるほどに。
「Beaver Weaver」はよくわからない世界観だけれど、その裏にある理論は面白い。
「自生の夢」はGoogleとtwitterと他色んな者を混ぜ合わせたら、とんでもない怪物が生まれたとう感じ。視点移動が多用され、先が気になる。 -
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それ以前がのほほんと見える程、後半1/2が盛り上がって面白い。が、やはりそれまでが長い。
それでも上巻に比べると現代パートが短めですっきりしていて読みやすい。もっとも、現代パートはキャラでもたせてるとしか思えないが(そして、何者なんだウィリアム)。
固まった吐瀉物とかが平気で出てくるあたり、キレイなだけではない、作者の意思を感じる。
救いはコリンにある。そして、コリンのちょろまかさを表現している大森望がいい仕事をしている。
ダンワージーは確実に自分を責めすぎである。
最後、キヴリンが口数が少なく、ちょっと怖い感じで終わるが、もっとゆったり語って終わって欲しかった。最後だけいきなり早送りで見せられた気分。
キヴリンに関して言えば、世の中の不条理さを知って成長するのではなく、不条理にずっと怒っている。なのでちょっと怖い。