柳美里のレビュー一覧
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以前読んだ時は少々退屈してしまい途中でやめてしまった。今度こそと意気込んだら意気込む必要などなかったくらいに引き込まれた。
きっと心の余裕の問題だったのだろう。
感想はうまく言葉にならないことの方が多いけど、とにかく読んでよかった。
世界の見方が少し変わった気がする。
国のために生き、なにも報われず、社会に蹴り落とされて死んでいった主人公の魂。いまの日本じゃいつまで経っても上野公園から離れることができないんじゃないかな、といたたまれない気持ちになる。上野公園にふらりと舞い戻った主人公が天皇に手を振るクライマックスは、圧巻だった。
原発ができる前の浜通りの人々の暮らし、
加賀藩からの開拓の -
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一人のホームレスの男の一生のお話。
始まりから不穏で心がざわざわしました。
そして、この男性目線で語られる情景や回想から徐々にわかる状況や過去。
失われる人の描写は切なく胸が締め付けられます。
こんなにも、胸にせまる描写ができる柳美里さん、すごい…ってなります。
家族のために全てを捧げて仕事に邁進した男。
家族との時間、交友関係、趣味、色々なことを犠牲にして突き進んだ先にあるもの。
その家族を失い、目的がなくなった先にあるものは悲しみと喪失感、絶望。
男はそこから抜け出すことができず、自分を責め、生きることに罪悪感を感じる。
そして、自ら身寄りを離れホームレスになった。
生きるとはなんなのか -
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高校生の百音は形だけの家族との生活、形だけの友人関係に生きている価値を見出せなくなる。毎日の日課は自殺願望を持った人たちが集う掲示板サイトを見ることだ。
百音は心の中での話し方は淡々としており、自分の気持ちなのにどこか他人事のようだ。
生きているのに、生きている実感がないように感じる。
物語の特に冒頭部分だは、百音の耳をすり抜ける電車内のアナウンスや周囲の人たちの会話が羅列されており、百音の孤立感がさらに読者にも迫って感じられる表現となっているように思う。
百音のように自殺願望を持ったことはないが、私自身も小学生の頃クラスメイトにハブられた経験があり、生きている意味、存在価値を考える気 -
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年間3万人を数える日本国内における「自殺」。本書は作家、柳美里が一人の少女を通して問いかける「生と死」の意味。圧倒的なリアリティを持つ電車のアナウンスや、車内や女子高生同士で語られる「会話」が秀逸。
本書は作家、柳美里さんが1998年以降、 自殺者連続3万人の日本社会に問う長編小説です。よく彼女はツイッター上で、電車への飛び込み自殺で、運休を見合わせる旨を示すツイートを「……」というメッセージを添えてRTしていることがあるのですが、これを読みながら3万人もの人間が「消えて」行っていることを思い出し、なんとも複雑な思いがいたしました。
物語は冒頭から「2ちゃんねる」を思わせるような掲示 -
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評価は迷ったけど、3ではなく4にしてみた。
さみしくて切ない、不遇なねこたち&人間たちのお話。ねこも不遇だし、人間も不遇。いや、一番最初の話は寂しいとか切ないとかを超えて救いようがない悲しい話でした。
私が読んだ単行本は装丁が版画のようで、さみしくて切ないこの本の内容になんてぴったりなんだろう。。
文章の書き方も、たまにですます調になったりして、突然読み聞かせみたいな丁寧さが混ざることで、さらに不安定な感じを与えている気がする。
ただ、なんだろう不遇な話なんだけど、なんか微かに希望があるというか。なのでさみしくて切ないだけでもない本でした。 -
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ネタバレ福島生まれの男性が、家族のために出稼ぎ生活を送る間に息子を亡くし、60を過ぎて出稼ぎ生活に終止符を打って郷里に帰ってから妻を亡くし、子どもたち家族に迷惑をかけまいと東京に舞い戻ってホームレスになる。そして孫娘は震災の津波で亡くなった。
さまざまな事情を抱えているだろう、家のない人々との少ない会話。上野を行き来する家のある人々の会話。淡々とした彼の観察眼。
天皇や皇族が上野の博物館や美術館を訪れる時の「特別清掃」、山狩り。一度目の東京五輪時に出稼ぎで土木作業に従事した彼が見る、二度目の東京五輪の時代。「自分と天皇皇后両陛下を隔てるものは、一本のロープしかない。飛び出して走り寄れば、大勢の警察官た -
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女性作家が高校生向けに、自殺を総括した抗議をまとめたものです
在日2世だったためか、日本育ち生まれでありながら「日本人は」と巨大な主語で意見を述べています
わかりやすさ重視のためか、極端な事例を引用した主張が多いです
昔の遺書を引き出し、自殺とはどういうものかを学生に向けて噛み砕いて説明しています
事例も自殺した小学生、中学生の遺書を挙げており、学生にとって身近な存在を感じさせるのが上手でした
著者自身が東京生まれということもあり、育ちは貧しくとも環境自体は日本有数のため、恵まれてもいる立場からの意見と感じるものもありました
著者の中高生時代のエピソードも思い出すように語られるので、その中 -
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柳美里の山手線シリーズ、私にとっての3冊目。あとがきに、連作8作の内、唯一師匠的な内容である、とされている。それがうなづけるぐらい、主人公の心理的な流れが言葉としてしつこいほどに表現され続けている。断続的な意識と指向の連続が、主人公の絶望へと駆り立てられる様子をとてもリアルに描き出してく。
なぜか不自然に陸軍軍医学校跡と出土した人骨の身元と行方に執着する主人公。731部隊の犠牲者の遺骨ではないかとされているようで、著者のバックグラウンドもそこには想起されるが、「名もなく」犠牲の死を遂げた者たちを悼む主人公の姿は、同じく名もなく社会の流れから断ち切られ疎まれ続ける自身に対する哀れみの表象だろう -
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「山手線シリーズ」第4作
もともとは、2016年に出版された『まちあわせ』を改題したもの。その経緯については、著者による「新装版あとがき」にて説明されている。
第5作があの『JR上野駅公園口』なので、遡って、逆回りの山手線にのっているような感じです。
『JR上野駅公園口』が時間軸が長く時代背景の知識もある程度必要とされ、また観念的な記述も多く、決して読みやすくはなかったが、こちら『JR品川駅高輪口』はその点、わりと近い過去の話し、若き高校生が主人公でもあるので、すんなりと読めると思う。
家族間でも、学校内の友人関係でも、疎外感をいだき、表面上はつくろっているものの、死を、方法や手順は明確