柳美里のレビュー一覧
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ネタバレ昭和の戦前期に生まれ、戦中に少年時代を過ごし、戦後を生きた人たち。激変の世の中を生き、国や政治に翻弄されてきた人びと。苦しみを耐え忍び、寡黙に生きてきた人たち。人生の充実や幸せを摑んだかと思えば見放され、不遇のまま死んでいった彼や彼女。同じテーマを扱った小説に橋本治『巡礼』(2009年)がある。
上野駅は東北から出稼ぎに上京する人たちの玄関口であった。上野恩賜公園は駅の西側に広がる。美術館や博物館、桜、西郷隆盛の銅像、不忍池などの名所が目白押しである。
そこで路上生活を営む昭和8年生まれのある男のドラマがこの小説の核となる。彼が生まれたのは東日本大震災で未曽有の被害を受けた福島県相馬郡。
物語は2011年3月11日のカタストロフを不気味に暗示させて終わる。 -
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以前読んだ時は少々退屈してしまい途中でやめてしまった。今度こそと意気込んだら意気込む必要などなかったくらいに引き込まれた。
きっと心の余裕の問題だったのだろう。
感想はうまく言葉にならないことの方が多いけど、とにかく読んでよかった。
世界の見方が少し変わった気がする。
国のために生き、なにも報われず、社会に蹴り落とされて死んでいった主人公の魂。いまの日本じゃいつまで経っても上野公園から離れることができないんじゃないかな、といたたまれない気持ちになる。上野公園にふらりと舞い戻った主人公が天皇に手を振るクライマックスは、圧巻だった。
原発ができる前の浜通りの人々の暮らし、
加賀藩からの開拓のことなど
知れてよかった話がたくさんあった。 -
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高校生の百音は形だけの家族との生活、形だけの友人関係に生きている価値を見出せなくなる。毎日の日課は自殺願望を持った人たちが集う掲示板サイトを見ることだ。
百音は心の中での話し方は淡々としており、自分の気持ちなのにどこか他人事のようだ。
生きているのに、生きている実感がないように感じる。
物語の特に冒頭部分だは、百音の耳をすり抜ける電車内のアナウンスや周囲の人たちの会話が羅列されており、百音の孤立感がさらに読者にも迫って感じられる表現となっているように思う。
百音のように自殺願望を持ったことはないが、私自身も小学生の頃クラスメイトにハブられた経験があり、生きている意味、存在価値を考える気持ちや孤独感はよくわかる。
この先も百音の苦しみは続きそうだ。
自殺を考える人は日本には多く存在する。
電車の人身事故も絶えない。
こんな思いを誰にもしてほしくないと切におもった。
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年間3万人を数える日本国内における「自殺」。本書は作家、柳美里が一人の少女を通して問いかける「生と死」の意味。圧倒的なリアリティを持つ電車のアナウンスや、車内や女子高生同士で語られる「会話」が秀逸。
本書は作家、柳美里さんが1998年以降、 自殺者連続3万人の日本社会に問う長編小説です。よく彼女はツイッター上で、電車への飛び込み自殺で、運休を見合わせる旨を示すツイートを「……」というメッセージを添えてRTしていることがあるのですが、これを読みながら3万人もの人間が「消えて」行っていることを思い出し、なんとも複雑な思いがいたしました。
物語は冒頭から「2ちゃんねる」を思わせるような掲示板に、延々と記される「自殺」「逝きたい」の文字から始まります。電車の中、携帯電話を手にその画面を見つめる少女は、本作のヒロインである市原百音・高校一年生です。
彼女は自分の志望した公立高校に落ち、第二志望の私立にも落ち、どうにかして入学した高校で「サゲサゲ」の入学式を向かえ、「スカイソーダーズ」という形だけの友人関係と、父親が会社の部下と不倫関係を持ち、母親はそれを知りながら弟の関西の学校受験に血道をあげる。しかし、弟自身は関西には行きたくない…。そんな家庭で暮らしております。
作品全体のほとんどは彼女の限りなく続くモノローグと、電車内の描写があるのですが、ゴシック体で記されるアナウンスや、彼女の耳にいやおうなく入っていく乗客のほとんど無意味な、人々の会話が、無機質のBGMとなって圧倒的なリアリティを持っております。
僕も品川駅はよく利用する駅のひとつなので駅の詳細や、電車の中で繰り広げられる会話は文字通り皮膚感覚で理解できるので、頭の中に映像が込みあがってくるのでした。
市原百音などの会話の場面や、「スカイソーダーズ」がハニートーストを食べながらをカラオケに興じる部分の会話もものすごいリアリティがあって、もしかすると柳美里さんは電車の中で「彼女たち」の会話に耳を傾けていたのかもしれません。しかし、そんな日常は百音のグループのリーダー的存在である「日菜子さま」が間違って彼女へ送ったメールから徐々に変わっていきます。
百音は「猶予は2日。決行日は6月19日神奈川です―」と掲示板に書き込んで、ともに死ぬという「目的」を持った人間と会うために、品川発の電車に乗って、彼らとの「約束の場所」へと向かうのだが…というところがクライマックスです。
しかし、彼女は自分の「日常」へと帰り、待ち受けていたものは「仲良しグループ」から自分が排除されたという無残なまでの事実でした。結末は彼女の将来が決して希望にあふれたものではなく、この先も苦労するんだろうなぁ、きっと。と思わせるもので、一人の少女を通して作者が問いかける「自殺」の意味を痛感させられる小説でございました。
※追記
本書はタイトルな何度か変わっており、2021年2月5日に『JR品川駅高輪口 (河出文庫)』として河出書房新社より刊行されました。 -
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評価は迷ったけど、3ではなく4にしてみた。
さみしくて切ない、不遇なねこたち&人間たちのお話。ねこも不遇だし、人間も不遇。いや、一番最初の話は寂しいとか切ないとかを超えて救いようがない悲しい話でした。
私が読んだ単行本は装丁が版画のようで、さみしくて切ないこの本の内容になんてぴったりなんだろう。。
文章の書き方も、たまにですます調になったりして、突然読み聞かせみたいな丁寧さが混ざることで、さらに不安定な感じを与えている気がする。
ただ、なんだろう不遇な話なんだけど、なんか微かに希望があるというか。なのでさみしくて切ないだけでもない本でした。 -
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女性作家が高校生向けに、自殺を総括した抗議をまとめたものです
在日2世だったためか、日本育ち生まれでありながら「日本人は」と巨大な主語で意見を述べています
わかりやすさ重視のためか、極端な事例を引用した主張が多いです
昔の遺書を引き出し、自殺とはどういうものかを学生に向けて噛み砕いて説明しています
事例も自殺した小学生、中学生の遺書を挙げており、学生にとって身近な存在を感じさせるのが上手でした
著者自身が東京生まれということもあり、育ちは貧しくとも環境自体は日本有数のため、恵まれてもいる立場からの意見と感じるものもありました
著者の中高生時代のエピソードも思い出すように語られるので、その中でもインパクトがあるものが並びます
自殺未遂者の立場で、意見を述べていました
自殺マニュアルが売れた年に、対に挙げていたのが野菜スープのレシピ本らしいです
若者と年寄で読者が別れているらしく、生命力の違いがあると述べていました
全体的に、彼女にとって自殺とは、信仰的なものなのかなと思いました -
Posted by ブクログ
柳美里の山手線シリーズ、私にとっての3冊目。あとがきに、連作8作の内、唯一師匠的な内容である、とされている。それがうなづけるぐらい、主人公の心理的な流れが言葉としてしつこいほどに表現され続けている。断続的な意識と指向の連続が、主人公の絶望へと駆り立てられる様子をとてもリアルに描き出してく。
なぜか不自然に陸軍軍医学校跡と出土した人骨の身元と行方に執着する主人公。731部隊の犠牲者の遺骨ではないかとされているようで、著者のバックグラウンドもそこには想起されるが、「名もなく」犠牲の死を遂げた者たちを悼む主人公の姿は、同じく名もなく社会の流れから断ち切られ疎まれ続ける自身に対する哀れみの表象だろうか。
「上野駅公園口」、「品川駅高輪口」と呼んできたが、この「高田馬場駅戸山口」が最も心に迫るものがあった。生きるということを大変重たく考えさせられた一冊だった。