柳美里のレビュー一覧

  • JR上野駅公園口

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    ネタバレ

    福島生まれの男性が、家族のために出稼ぎ生活を送る間に息子を亡くし、60を過ぎて出稼ぎ生活に終止符を打って郷里に帰ってから妻を亡くし、子どもたち家族に迷惑をかけまいと東京に舞い戻ってホームレスになる。そして孫娘は震災の津波で亡くなった。
    さまざまな事情を抱えているだろう、家のない人々との少ない会話。上野を行き来する家のある人々の会話。淡々とした彼の観察眼。
    天皇や皇族が上野の博物館や美術館を訪れる時の「特別清掃」、山狩り。一度目の東京五輪時に出稼ぎで土木作業に従事した彼が見る、二度目の東京五輪の時代。「自分と天皇皇后両陛下を隔てるものは、一本のロープしかない。飛び出して走り寄れば、大勢の警察官た

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    2024年06月17日
  • 自殺

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    女性作家が高校生向けに、自殺を総括した抗議をまとめたものです
    在日2世だったためか、日本育ち生まれでありながら「日本人は」と巨大な主語で意見を述べています
    わかりやすさ重視のためか、極端な事例を引用した主張が多いです

    昔の遺書を引き出し、自殺とはどういうものかを学生に向けて噛み砕いて説明しています
    事例も自殺した小学生、中学生の遺書を挙げており、学生にとって身近な存在を感じさせるのが上手でした

    著者自身が東京生まれということもあり、育ちは貧しくとも環境自体は日本有数のため、恵まれてもいる立場からの意見と感じるものもありました
    著者の中高生時代のエピソードも思い出すように語られるので、その中

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    2024年06月02日
  • JR上野駅公園口

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    この作品は1回だけじゃなく何度も読んで
    読み砕きたくなる内容だった。
    一読では難しさを感じる。

    ただ、ホームレスでここまで読ませる作品も初めて出会ったなと思った。

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    2024年05月22日
  • JR上野駅公園口

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    かつて、司馬遼太郎さんは柳美里さんの作品を「研ぎ澄まされた文章」と評価されていらっしゃったそうだ。
    著者の柳美里さんは2002年にこの小説を構想し始めたとのこと。2006年にホームレスの方々の間で「山狩り」と呼ばれる行幸啓直前の「特別清掃」の取材などを経て、2014年3月に出版された。
    この「研ぎ澄まされた文章」は12年も磨き続けられてきた結果なのだ。

    柳美里さんが一貫して取り組んできたテーマは「居場所のない人に寄り添う物語」だそうだ。このことも評価されたのか、2020年11月にモーガン・ジャイルズさん訳の『TOKYO UENO STATION』)が、2020年の全米図書賞(National

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    2024年03月16日
  • 人生にはやらなくていいことがある

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    同時代を生きている人は、宇宙のスケールから考えれば、みな同世代。
    という考えにひかれました。
    余生、老後なんてものはない。人生に「余り」なんてない。 「老年を 死に向かって 暗く閉ざされていく時間だとも思わない」

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    2024年02月22日
  • 人生にはやらなくていいことがある

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    どんなに嫌で恥ずかしくて不本意な過去でも、それらの出来事の堆積の上に今の自分がある。。 #柳美里 は初めてだけど壮絶過ぎる過去で、他の作品も読んでみたい。

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    2024年01月28日
  • JR上野駅公園口

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    怖い。

    私は、浅い人生を歩んでいるのかもしれない。
    まだまだ未熟者だからなのかもしれない。

    生きる、死ぬ……。
    死は、私が考えているよりもはるかに
    近くにいるのかもしれない。
    生きるのは、暮らすのは、
    同じ年に生まれ、同じ日に生まれたのにも
    かかわらず、こんなにも生き様が違う。
    人の数だけ、生き方、道はあるんだ。
    羨んだり、蔑んだり、荒んだりする必要はない。
    わかってはいるのに、優劣を感じてしまう。

    人と比べてしまう、自分の浅はかさがむかつくし、怖いと感じた。

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    2024年01月23日
  • ねこのおうち

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    うぅっ〜、正直読むのをやめてしまおうかと思うほど辛い気持ちに…
    しかし、ページをめくる手はとまらずに最後まで。
    猫も人間も生きていくことの厳しさ、報われない現実、不平等…
    解説にもあったように「自分の見たいものだけ見る」そんなご都合主義の人が世の中には沢山いる。
    自分は大丈夫だろうか、目を逸らしたくなるようなことにもしっかりと向き合っていかなくてはいけない。そんなふうに感じた。

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    2023年09月10日
  • 貧乏の神様 芥川賞作家困窮生活記

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    柳さん自身がすこし浪費癖がありさう
     山登りのはなしとかおもしろいものもそれなりにある。後半の創出版未払ひをめぐるやりとりも珍しかった。しかし金銭感覚について申し上げると、柳さんの感覚は私とはすこし離れてゐるやうだ。

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    2023年06月18日
  • JR上野駅公園口

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    感動というより寂しくて恐い話。何も悪いことはしていないけど不運な主人公のつらさや、宗教の部分をアメリカでどう訳して評価されたのか気になった。
    この作者の本は読まず嫌いでしたが、薦められて読んでよかったです。

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    2023年06月11日
  • 南相馬メドレー

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    震災後、鎌倉から南相馬に居を移し、舞台や書店開店など様々な活動を行う柳美里さん。
    たくさんの悲しみや喪失に寄り添う姿に尊敬の念を覚える。

    避難所でおにぎりを1日3000個握って手が真っ赤になる、寒い東北でも1週間後の支援物資のおにぎりは腐っていた、車の中での避難生活…

    より現実感を持って震災が迫ってきて苦しくなる場面もあった。知ることには責任が伴うといあ言葉も重い。

    心に残った言葉
    その人が大切ならば、その人を失った悲しみもまた大切なのです

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    2023年05月09日
  • 8月の果て(上)(新潮文庫)

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    詳しくは後半にまとめて
    朝鮮半島の風俗と豊かさ、そしてその封建的な家族制度の弊害がよくわかる描写の多くに、戦前の日本のあまりに貧弱な同化政策の浅薄さが浮き彫りになるな、と。

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    2022年11月11日
  • JR高田馬場駅戸山口

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    柳美里の山手線シリーズ、私にとっての3冊目。あとがきに、連作8作の内、唯一師匠的な内容である、とされている。それがうなづけるぐらい、主人公の心理的な流れが言葉としてしつこいほどに表現され続けている。断続的な意識と指向の連続が、主人公の絶望へと駆り立てられる様子をとてもリアルに描き出してく。

    なぜか不自然に陸軍軍医学校跡と出土した人骨の身元と行方に執着する主人公。731部隊の犠牲者の遺骨ではないかとされているようで、著者のバックグラウンドもそこには想起されるが、「名もなく」犠牲の死を遂げた者たちを悼む主人公の姿は、同じく名もなく社会の流れから断ち切られ疎まれ続ける自身に対する哀れみの表象だろう

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    2022年02月08日
  • JR品川駅高輪口

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    「山手線シリーズ」第4作

    もともとは、2016年に出版された『まちあわせ』を改題したもの。その経緯については、著者による「新装版あとがき」にて説明されている。
    第5作があの『JR上野駅公園口』なので、遡って、逆回りの山手線にのっているような感じです。

    『JR上野駅公園口』が時間軸が長く時代背景の知識もある程度必要とされ、また観念的な記述も多く、決して読みやすくはなかったが、こちら『JR品川駅高輪口』はその点、わりと近い過去の話し、若き高校生が主人公でもあるので、すんなりと読めると思う。

    家族間でも、学校内の友人関係でも、疎外感をいだき、表面上はつくろっているものの、死を、方法や手順は明確

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    2021年10月17日
  • JR品川駅高輪口

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    山手線三部作の中ではこれが一番救いのあるような気がしたが、主人公の女子高生がなんというかおばさんっぽくて、リアリティーがないというか…。綿密な取材の上に成り立っている上野の方が面白かったし、リアリティーは高田馬場の方がもっとあって共感できた。

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    2021年08月25日
  • JR上野駅公園口

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    ネタバレ

    2020年の全米図書賞翻訳部門に選ばれもした作品です。文庫本の裏表紙にある内容紹介の文章が、ほんとうに書き過ぎずちょうどよい濃度で伝えてくれているので、僕がここでわざわざ拙く紹介するのも野暮なのですが、とりあえずのところを知って頂くために簡単に書いていきます。多少のネタバレもあります。

    福島県相馬郡で暮らしていた主人公が人生の最後に上野駅周辺でホームレスとなり、その生活の中で故郷や家族、そして自分の人生を振り返っていきます。平成の天皇と同じ年齢で、皇太子(今上天皇)と同じ日に生まれた息子がいて、昭和天皇の行幸の場に居合わせたことがあり、というふうに、日本という国に住む者のいっぽうの極ともうい

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    2025年07月27日
  • 自殺

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    生きることを考えたいなら、死ぬことを考えてみようと思い読んだ。
    わたしは自殺をしたいと思ったことはないが、死にたいと思ったことは何度もある。
    死について考えたとき、消沈していくのではなく、むしろエネルギーが上がっていくのは、生きたいからだろう。
    タイトルにヒヤッとなるが、冷たくなく、むしろ温かい本だった。

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    2021年06月21日
  • ねこのおうち

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    戦争の話でも読んだような、胸の苦しくなる、でもいつまでも心に残るだろうなというお話でした。

    野良猫として生き抜いていくことの過酷さを包み隠さず書いています。野良猫って、元々は人間に捨てられた猫かもしれなくて、、安易にペットを飼ってはいけないこと、命の尊さ、もういろいろ、、頭をぐるぐると巡りました。

    でも、物語の中には救われた命もあって、私の心も救われました。読んでよかったです。

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    2021年06月19日
  • ねこのおうち

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    公園に捨てられた生まれたばかりの子ねこは優しいおばあさんに拾われニーコと名付けられ幸せに暮らしていましたが、おばあさんが認知症になって家からいなくなりまた公園の野良ねこになってしまいます。そしてニーコは6匹の子ねこを公園で産みます。その子ねこたちを拾って育てることになった人達をめぐる物語。ねこを家族に迎えることで心の中にも、人と人の繋がりにも変化が訪れていきます。
    人の都合で捨てられた小さな命が、かけがえのない人と人の絆を紡いでいく様が心に染みます。どうか世の中の猫たちが幸せでありますように。猫を取り巻く人達が幸せでありますように。そんな祈りにも近い思いが胸にふつふつと湧いてきました。

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    2021年06月17日
  • JR品川駅高輪口

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    ネタバレ

    主人公が周囲の人達に向ける冷静な視線が印象的でした。
    遅く帰宅した父親に対する母親の怒りの度合を、母親がドアを閉めるときの音量で測っていたり、「イツメン」からなんとなく距離を置かれていることにも気づいてしまったり、その冷静さで他者から一歩引いてしまう。
    けれどその冷静さのおかげで、彼女は死なないで済んだわけで、そのことに気付いて、「あのとき死なないでよかった」と思える日がいつか彼女に訪れてくれることを願います。

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    2021年05月07日