あらすじ
一九三三年、私は「天皇」と同じ日に生まれた――東京オリンピックの前年、出稼ぎのため上野駅に降り立った男の壮絶な生涯を通じ描かれる、日本の光と闇……居場所を失くしたすべての人へ贈る物語。
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Posted by ブクログ
淡々と主人公の独白が続く、困難に満ちた生活を振り返る。
そしてある時、この人は今どこにいるんだ?って疑問が湧いてくる。
JR上野駅公園口での静かで激しいクライマックス。
何か今まで経験してなかったモノに触れてしまった気がする。
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柳美里さん、一時期ハマってたくさん読んだのですが、彼女の小説は実体験をもとに、すごく身を削って書いている印象があって、たくさん読んだらすごく苦しくなって、最近は読んでいなかった。先日「ベストエッセイ」という単行本を入手して好きな作家さんのエッセイを読んでいたらその中に柳美里さんのエッセイがあり、あ、またこの人の作品読みたいなと思ったので、本書を手に取りました。
私が好きな他のリベラルな作家さんも、弱者に寄り添う姿勢を重視していて、その中でこの作品に触れているのも出会っていたので以前から読みたいと思っていました。
本書は、上野公園でホームレスとして暮らす男性の回想、というスタイルの小説です。小説を通して、ずっと、暗いです。男性がシゲさんというインテリのホームレスからいろいろ教えてもらっている会話(会話というかシゲさんの語り)も差し挟まれてるのだが、シゲさんは死んだ(コヤで冷たくなっていた)ということが書かれているので、死んだシゲさんの幽霊と話してる?つまり主人公ももう死んでる?と思いながら読むことになるし、死んでないにしても、そもそも何か深い事情があってホームレスになったのだろうから、読む方も暗い気持ちになる。
そしてその回想は、幼い頃から貧しく、12歳からずっと出稼ぎで下のきょうだいのために働き、所帯をもってからも貧しく、出稼ぎばかりで家族と一緒に過ごしたことも、写真を撮ったこともない、という内容。長男が生まれるときには難産で大変だったけれど、産婆さんを頼むお金すらなかった。そしてその長男は若くして(21歳)急死する。やっと故郷に帰って、妻と暮らしていたら、また不幸が訪れる・・・なんて、不運な、なんて人生なんだ・・・。
主人公は平成の天皇と同じ年に生まれ、息子は皇太子(当時)と同じ日に生まれた。貧しさから抜け出せる希望もなく、出稼ぎで上野に来たときに遠くに目にした天皇陛下。感動で天皇陛下万歳と叫ぶ人々。同じ人間なのに、全く別の人生を生きる人間がいる。同じ空間にいるはずなのに、全く違う世界のように感じる。
ホームレスとして上野公園にいると、ときどき天皇陛下の行幸があり、コヤが目につかないように強制退去を言い渡される(山狩り)が行われる。その実態はほとんど世に知られることがない。ホームレスは「いない人」とされる。
ホームレスや山狩りの実態を書くことによって、決して天皇制を否定しているわけはない。ただ、こんな人生もあるということを淡々と、哀しげに書いているだけだ。しかし、天皇陛下の行幸や、オリンピックや、高速道路の開通など、華やかな表舞台の反対側には、光と影のように別の世界が存在していること、そして人々がそれを見ようとしないことに気づかされる。今年もパリ五輪で熱狂したが、そもそもスポーツを始められる環境にない人たちだって大勢いる。みんながみんな、スポーツから夢や希望をもらうことができるだろうか?
最後は、主人公が駅のホームから身を投げたようにも、身を投げる想像をしているようにも受け取れる。そのとき、ふるさとの地に津波が押し寄せる映像が見える。また大切な人が、犠牲になるのが見える。
主人公が最後に自殺したのかどうか、読んだ人によって受け止め方が違うみたいだが、あえてそういう書き方をしているのかな。私は、あぁ、最後には死を選んだんだな、と思いながら読んだけど、最後まで読み切って、いや、やっぱり生きていくしかないんだなと思い直した。どんなに理不尽なことがあっても、愛する人をたくさん失っても、人は生きていかなければならない。悲しみをたくさん抱え込みながら。
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細切れに段落が区切られ、世界の絶望的な断絶が感じらる。
声高に悲惨を叫ぶものではない。淡々と事実を積み重ねていく。
最後の津波と列車の人身事故の象徴は、全く異なる事実に位置することを物語る。一方は避けられないもの。一方は避けられるもの。
総じて、追いやられた人の深刻な、生きる難しさがテーマだと思えた。
Posted by ブクログ
昭和の戦前期に生まれ、戦中に少年時代を過ごし、戦後を生きた人たち。激変の世の中を生き、国や政治に翻弄されてきた人びと。苦しみを耐え忍び、寡黙に生きてきた人たち。人生の充実や幸せを摑んだかと思えば見放され、不遇のまま死んでいった彼や彼女。同じテーマを扱った小説に橋本治『巡礼』(2009年)がある。
上野駅は東北から出稼ぎに上京する人たちの玄関口であった。上野恩賜公園は駅の西側に広がる。美術館や博物館、桜、西郷隆盛の銅像、不忍池などの名所が目白押しである。
そこで路上生活を営む昭和8年生まれのある男のドラマがこの小説の核となる。彼が生まれたのは東日本大震災で未曽有の被害を受けた福島県相馬郡。
物語は2011年3月11日のカタストロフを不気味に暗示させて終わる。
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重い。
日本の戦後、東京と東北地方、天皇と市井の民、高齢者と若者、震災と日常、今なお燻るそれぞれの格差を丁寧に拾い上げ、独りの人生を通じて語る。
幸せって何だっけ。
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時間が行ったり来たりする。
自分は過去に生きている、という主人公の言葉が印象的。未来の見えなさ。
フィクションにしてはバランスが悪いほど終わらない不幸の連続が、逆にリアリティを感じさせる。この不幸は本当にあるんだと、怖くなった。
Posted by ブクログ
短い小説で読みやすかった。
最後まで救われないというか、、
ここで終わるん!?!?みたいな初めての感覚だった。
情景の描き方が上手で読みやすかった。
悲しい、、とにかく、、
Posted by ブクログ
以前読んだ時は少々退屈してしまい途中でやめてしまった。今度こそと意気込んだら意気込む必要などなかったくらいに引き込まれた。
きっと心の余裕の問題だったのだろう。
感想はうまく言葉にならないことの方が多いけど、とにかく読んでよかった。
世界の見方が少し変わった気がする。
国のために生き、なにも報われず、社会に蹴り落とされて死んでいった主人公の魂。いまの日本じゃいつまで経っても上野公園から離れることができないんじゃないかな、といたたまれない気持ちになる。上野公園にふらりと舞い戻った主人公が天皇に手を振るクライマックスは、圧巻だった。
原発ができる前の浜通りの人々の暮らし、
加賀藩からの開拓のことなど
知れてよかった話がたくさんあった。
Posted by ブクログ
一人のホームレスの男の一生のお話。
始まりから不穏で心がざわざわしました。
そして、この男性目線で語られる情景や回想から徐々にわかる状況や過去。
失われる人の描写は切なく胸が締め付けられます。
こんなにも、胸にせまる描写ができる柳美里さん、すごい…ってなります。
家族のために全てを捧げて仕事に邁進した男。
家族との時間、交友関係、趣味、色々なことを犠牲にして突き進んだ先にあるもの。
その家族を失い、目的がなくなった先にあるものは悲しみと喪失感、絶望。
男はそこから抜け出すことができず、自分を責め、生きることに罪悪感を感じる。
そして、自ら身寄りを離れホームレスになった。
生きるとはなんなのか、考えてしまう。
人には一人一人人生がある。
生きるために精一杯になって生きている人がいる。
生きる目的なんてないのかもしれない。ただ、生きる。
悲しいことの連続で重いです。
回想に胸が苦しくなります。
でも、目を背けたくなることに目を向けさせてくれる作品でした。
Posted by ブクログ
福島生まれの男性が、家族のために出稼ぎ生活を送る間に息子を亡くし、60を過ぎて出稼ぎ生活に終止符を打って郷里に帰ってから妻を亡くし、子どもたち家族に迷惑をかけまいと東京に舞い戻ってホームレスになる。そして孫娘は震災の津波で亡くなった。
さまざまな事情を抱えているだろう、家のない人々との少ない会話。上野を行き来する家のある人々の会話。淡々とした彼の観察眼。
天皇や皇族が上野の博物館や美術館を訪れる時の「特別清掃」、山狩り。一度目の東京五輪時に出稼ぎで土木作業に従事した彼が見る、二度目の東京五輪の時代。「自分と天皇皇后両陛下を隔てるものは、一本のロープしかない。飛び出して走り寄れば、大勢の警察官たちに取り押さえられるだろうが、それでもこの姿を見てもらえるし、何か言えば聞いてもらえる」という言葉に、多くのものが集約されている。
誰もが見て知るホームレスの存在は、知っているだけで無視して日々を過ごし、山狩りのように、都合の悪い時だけ目を向けてどこかに追い払う存在になっている。衣食住という現代の人間の最低限のインフラを持たずに生きる人々に、誰も目を向けていない現状が、乾いた筆致で浮かびあがる。とても身近な国内のことですらこうなのに、戦争だ難民だというより距離のある出来事にいったい何ができよう、と自戒を込めて思う。
上野のホームレスには東北出身者が多いと書かれている。地域格差、経済格差。だが、そういう社会的説明では尽くせない、小さな出来事の積み重ねが、人の人生の歩みを隔てていく様子が読み取れる。家族の死や自然災害、他者への思いやりの深さ。
誰を責めるでもなく、自分の置かれた状況をどこか冷めた目で見ているのが哀しい。流される、という言葉が浮かんだ。
Posted by ブクログ
この作品は1回だけじゃなく何度も読んで
読み砕きたくなる内容だった。
一読では難しさを感じる。
ただ、ホームレスでここまで読ませる作品も初めて出会ったなと思った。
Posted by ブクログ
かつて、司馬遼太郎さんは柳美里さんの作品を「研ぎ澄まされた文章」と評価されていらっしゃったそうだ。
著者の柳美里さんは2002年にこの小説を構想し始めたとのこと。2006年にホームレスの方々の間で「山狩り」と呼ばれる行幸啓直前の「特別清掃」の取材などを経て、2014年3月に出版された。
この「研ぎ澄まされた文章」は12年も磨き続けられてきた結果なのだ。
柳美里さんが一貫して取り組んできたテーマは「居場所のない人に寄り添う物語」だそうだ。このことも評価されたのか、2020年11月にモーガン・ジャイルズさん訳の『TOKYO UENO STATION』)が、2020年の全米図書賞(National Book Award 翻訳文学部門)を受賞。
全米図書賞は次のようなコメントを出している。
Tokyo Ueno Station is a book for our times and a look into a marginalized existence in a shiny global megapolis.
Posted by ブクログ
怖い。
私は、浅い人生を歩んでいるのかもしれない。
まだまだ未熟者だからなのかもしれない。
生きる、死ぬ……。
死は、私が考えているよりもはるかに
近くにいるのかもしれない。
生きるのは、暮らすのは、
同じ年に生まれ、同じ日に生まれたのにも
かかわらず、こんなにも生き様が違う。
人の数だけ、生き方、道はあるんだ。
羨んだり、蔑んだり、荒んだりする必要はない。
わかってはいるのに、優劣を感じてしまう。
人と比べてしまう、自分の浅はかさがむかつくし、怖いと感じた。
Posted by ブクログ
感動というより寂しくて恐い話。何も悪いことはしていないけど不運な主人公のつらさや、宗教の部分をアメリカでどう訳して評価されたのか気になった。
この作者の本は読まず嫌いでしたが、薦められて読んでよかったです。
Posted by ブクログ
2020年の全米図書賞翻訳部門に選ばれもした作品です。文庫本の裏表紙にある内容紹介の文章が、ほんとうに書き過ぎずちょうどよい濃度で伝えてくれているので、僕がここでわざわざ拙く紹介するのも野暮なのですが、とりあえずのところを知って頂くために簡単に書いていきます。多少のネタバレもあります。
福島県相馬郡で暮らしていた主人公が人生の最後に上野駅周辺でホームレスとなり、その生活の中で故郷や家族、そして自分の人生を振り返っていきます。平成の天皇と同じ年齢で、皇太子(今上天皇)と同じ日に生まれた息子がいて、昭和天皇の行幸の場に居合わせたことがあり、というふうに、日本という国に住む者のいっぽうの極ともういっぽうの極の対比で見せる構図でもあります。ここで気付くのは、どちらにしても人間的な油っこさが薄く感じられること。しかしながら、主人公のようなホームレスにはまったく力がなく、天皇などの皇族が上野周辺での行事に訪れるときには、一方的に「山狩り」とも呼ばれる特別清掃で一時的にダンボールやブルーシートの小屋を片付けさせられます。
まるでノンフィクションのように綴られていく小説世界でした。リアリティーの描き方が、語彙と勉強によって支えられているように読み受けました。僕だったら、たとえば札幌の街中を歩いて、そこかしこで目にする事実の由来や理由についてまったくわからないどころか気付きもせず歩き流していくところでしょうが、しかしこの小説では、その故郷の土地での仏教の宗派の歴史とそれによって出来あがった現実の空気や力関係などもそうですし、警察車両の種類やその目的など、そして上野駅周辺の映画館の種類など、生活周辺域への認識の踏み込みが言語化できるほど深いです。小説世界の組み立て、建物でいえば柱や梁などの構造部分にあたるようなところ、そこをしっかり克明に書いていくことで、現実との境界をきっちり区切ったものではなく、ある現実のひとつとして読めてしまうような作品になっているのではないでしょうか。
そうやって描き出されたものは、日本の社会全体で見ないふりをしてきたことや、無関心のなかに葬ってきたことだと思います。主人公は若い時分からよく働き長いあいだ出稼ぎにも出て仕送りをしてきました。それは家族のためでもあり、同時に高度経済成長期を支えてもいたのです。酒も飲まず遊びもしない主人公は、労働のきつさにも紙一重で負けず、真摯に生きてこの社会のインフラ面などの力になってきた。いわば数多くの功労者のひとりなのですが、老いてから、孫娘に面倒をかけるわけにはいかない、と再上京してホームレスになってしまう。
要領が悪かったとか不器用だったとか「個人のせい」で片付けられるものでもないと思うのです。社会の構造からして無数にエアーポケットがあるのだと感じました。人に頼らず自活し、他人に迷惑をかけないことを徳とする倫理観はこの国では強くて、小さなころから空気といっしょに吸い込みながら成長してしまいます。そうやって自然にこの倫理観と一体化してしまうがゆえ、ちょっとした不運や不幸で人生の大きな転換を、それもネガティブな転換を迫られてしまう。
社会へと「こういう疑問を気付いてみませんか? そして考えてみませんか」と投げかけられ問いかける作品でした。最後に、151pにある一文で締めたいと思います。
<自分は悪いことはしていない。ただの一度だって他人様に後ろ指を差されるようなことはしていない。ただ、慣れることができなかっただけだ。どんな仕事にだって慣れることはできたが、人生にだけは慣れることができなかった。>
強い風が吹いて飛ばされてしまったら、もうそのまま。そんなふうな社会環境ではよくないな、というのは、東日本大震災で甚大な被害があった人々を想ってもそうですし、今のコロナ過でもその窮状に対して無関心にさらされる人々を想ってもそうです。
いまより一歩でも「よい」と思える社会を作っていくために必要な「問い」のある、力のこもった作品でした。
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まず読みやすい、ぱらぱら〜っと読める。
浩一が死ぬとこ、節子が死ぬとこ、家を出て初めて野宿するシーンはなんか衝撃的。
最後の飛び降り自殺?のシーンはより衝撃的。もうこうするしかないとか、逃げとかそういう理由じゃないってところもがびーんって感じ。
日本はオリンピックとか関西万博とかいろいろやっててキラキラしててすごいけど、その裏の日本のゲトーを少し覗いた気がする。
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救われない絶望。つくづく運がない人生だなぁという祖母の言葉をなぞるような人生が辛い。主人公のことを知ってくれる人が少しでもいたらいいのに。孫のところにいてもよかったんだよ。
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時代背景と主人公の感情描写が繊細で
リアルな生き様がドキュメンタリーのようにも見えました。
感想を書けるほど内容は理解できませんでしたが、きっと理解が深まるほど日本で生きることと死ぬことについて考えさせられるのだろうと思いました。
Posted by ブクログ
光と影。光り輝くほど、影も濃くなる。
世の中の影を描いた小説。
久しぶりに柳美里さんの本を読んで、あぁ、柳美里さんワールドだ、と思った。
読後感があまり良くないけれど、世の中の課題提起されたように感じる。
東京の発展に寄与した多くの無名の人々の人生に思いを馳せた。
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難しかった… 語り手のおじさんが最後ホームから飛び込んでしまったのか。飛び込んでしまった後、魂となって自分の生きていた道筋を辿っているのか。私には理解しにくかったのですが、とても良い本だということだけはわかりました。
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不思議な感覚に陥る物語。
上野駅前の公園に住むホームレスを通して生と死の狭間を描いているように思う。
生きているとはどういうことなのか、死とは何なのか、ある意味辛抱強く読むことが必要な本だと思う。
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上野公園のホームレスの男の生活を描いた作品。
作者は上野公園での取材をもとに描いている為、限りなくノンフィクションに近いフィクションである。ホームレスって、なんで仕事からしないの?仕事しようと思えばできるんじゃないの?正直この本を読む前はそう思っていた。そのような考えが一気に覆った。
この作品を通して「山狩り」という言葉を初めて知った。「山狩り」とは、天皇や皇族が訪れる際に特別清掃、いわばホームレスの排除をすることである。
たしかに以前と比べると上野公園で最近ホームレスを見かけない。園内では大道芸や楽器を演奏するアーティストの活動が盛んになったり、外国人観光客がより一層賑わいを見せている。
「この単調な風景のどこかに、痛みが在る」
「この、似たような時間の中に、痛む瞬間が在る」
今、上野公園から姿を消したホームレスたちはどのように生活しているのだろうか。
Posted by ブクログ
以下の文章を見たときに、まさに自分のことだ、と思った(他にも共感者多いだろうけど)
「慣れることができなかっただけだ。どんな仕事にだってなれることができたが、人生にだけは慣れることができなかった。人生の苦しみにも、悲しみにも・・・喜びにも・・・」
Posted by ブクログ
上野駅で暮らす一人のホームレス男性の人生。
上野駅で感じる光と影の対比がとてもよく描かれていて、心が苦しくなりました。
生き方、物事の捉え方、感じ方、受け止め方、対処の仕方。
人それぞれが、受け止めてひとつひとつ選択していって、人生の道をゴールに向かって進んでいっていることを感じさせる小説でした。
Posted by ブクログ
難しい本でした。
そして苦しくなるような本でした。
作品を通して、人間とは何か、社会とは何かを深く考えざるを得ない状況に追い込まれました。
「生きる」ことを深く考える機会を与えてもらえました。
Posted by ブクログ
上野公園のホームレスの人生を描いた小説。
取材をされたというだけあり、リアルに感じる場面も多かったが、なかなか話の波に乗るのが個人的に難しかった。皇室との比較ながら、不幸な人生を送った男の話は重くて、でも一歩踏み外せば誰にでも待ち受けそうな話だった。フクシマの原発の話がどう絡んでくるのか、と思っていたが、最後は意外と静かな幕閉じだった。自分の親も東北出身なので、妙な親近感も湧いたが、人生に絶望しホームレスを選んだ主人公には、別の道もあったのではと、思わざるを得ない。