あらすじ
全米図書賞を受賞しベストセラーとなった『JR上野駅公園口』。受賞作と同じ「山手線シリーズ」として書かれた河出文庫『まちあわせ』を新装版で刊行。居場所のない少女の魂に寄り添う傑作。
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読書欲がほぼ無くなってしまった中で手に取ったこの作品に、ぐいぐい引き込まれた。
学校での友人関係に疲れ、家庭では居場所がなく、唯一の救いは亡くなってしまった祖母との思い出。
自殺サイトを覘き、書き込みもする。
だが、彼女に悲壮感はない。圧倒的な虚無感が漂う。
駅のアナウンス、車内での他人の会話、学校での友人の会話。否応なしにランダムに耳に入ってくるそれらの言葉は、届かない。
唯一届いたのが祖母の声。
死ぬことに引き込まれていた彼女が生に留まり、生きていることを実感したラストは圧巻。
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絶句した
この小説を表す言葉を僕は多分持たない
生と死の境界はどこにあるんだろう
なぜ私は生き、そして死ぬのだろう
果たしてこの世界に生きる価値なんてあるのだろうか
苦しいだけの友人関係
家族からの疎外
追い込まれる、孤独
死ぬのは簡単だ
黄色い線を踏み越えればいい
はたまたわざわざ死ぬ価値なんてあるのだろうか
僕は百音だ
ここはいるべき場所ではないのかもしれない
それでもこの世界は生きるに値する
居場所のない全ての人へ
百音の確かな歩みがそのことを力強く教えてくれる
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柳美里『JR品川駅高輪口』河出文庫。
『JR上野駅公園口』に続く山手線シリーズの第2弾。
電車の中で飛び交う乗客たちの断片的な会話が都会の喧騒と忙しさと主人公の女子高校生の居場所を失った孤独感を表現するかのようだった。この雰囲気はと思い出してみると、大昔の真面目な頃のNHKのドラマではないか。
普通の家庭で、仕方無しに余り偏差値の高くない高校に通う高校1年生の市原百音は、誰かと一緒に死のうとネットの掲示板に自殺仲間募集の書き込みをする。
うわべだけの友達、父親の不倫と母親と弟との別居の危機、東日本大震災の原発事故による放射能汚染。生きることの無意味さばかり味わう日常と強くなるばかりの死への渇望。百音は見知らぬ自殺仲間と4人で練炭自殺を実行するが……
本体価格740円
★★★★★
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高校生の百音は形だけの家族との生活、形だけの友人関係に生きている価値を見出せなくなる。毎日の日課は自殺願望を持った人たちが集う掲示板サイトを見ることだ。
百音は心の中での話し方は淡々としており、自分の気持ちなのにどこか他人事のようだ。
生きているのに、生きている実感がないように感じる。
物語の特に冒頭部分だは、百音の耳をすり抜ける電車内のアナウンスや周囲の人たちの会話が羅列されており、百音の孤立感がさらに読者にも迫って感じられる表現となっているように思う。
百音のように自殺願望を持ったことはないが、私自身も小学生の頃クラスメイトにハブられた経験があり、生きている意味、存在価値を考える気持ちや孤独感はよくわかる。
この先も百音の苦しみは続きそうだ。
自殺を考える人は日本には多く存在する。
電車の人身事故も絶えない。
こんな思いを誰にもしてほしくないと切におもった。
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年間3万人を数える日本国内における「自殺」。本書は作家、柳美里が一人の少女を通して問いかける「生と死」の意味。圧倒的なリアリティを持つ電車のアナウンスや、車内や女子高生同士で語られる「会話」が秀逸。
本書は作家、柳美里さんが1998年以降、 自殺者連続3万人の日本社会に問う長編小説です。よく彼女はツイッター上で、電車への飛び込み自殺で、運休を見合わせる旨を示すツイートを「……」というメッセージを添えてRTしていることがあるのですが、これを読みながら3万人もの人間が「消えて」行っていることを思い出し、なんとも複雑な思いがいたしました。
物語は冒頭から「2ちゃんねる」を思わせるような掲示板に、延々と記される「自殺」「逝きたい」の文字から始まります。電車の中、携帯電話を手にその画面を見つめる少女は、本作のヒロインである市原百音・高校一年生です。
彼女は自分の志望した公立高校に落ち、第二志望の私立にも落ち、どうにかして入学した高校で「サゲサゲ」の入学式を向かえ、「スカイソーダーズ」という形だけの友人関係と、父親が会社の部下と不倫関係を持ち、母親はそれを知りながら弟の関西の学校受験に血道をあげる。しかし、弟自身は関西には行きたくない…。そんな家庭で暮らしております。
作品全体のほとんどは彼女の限りなく続くモノローグと、電車内の描写があるのですが、ゴシック体で記されるアナウンスや、彼女の耳にいやおうなく入っていく乗客のほとんど無意味な、人々の会話が、無機質のBGMとなって圧倒的なリアリティを持っております。
僕も品川駅はよく利用する駅のひとつなので駅の詳細や、電車の中で繰り広げられる会話は文字通り皮膚感覚で理解できるので、頭の中に映像が込みあがってくるのでした。
市原百音などの会話の場面や、「スカイソーダーズ」がハニートーストを食べながらをカラオケに興じる部分の会話もものすごいリアリティがあって、もしかすると柳美里さんは電車の中で「彼女たち」の会話に耳を傾けていたのかもしれません。しかし、そんな日常は百音のグループのリーダー的存在である「日菜子さま」が間違って彼女へ送ったメールから徐々に変わっていきます。
百音は「猶予は2日。決行日は6月19日神奈川です―」と掲示板に書き込んで、ともに死ぬという「目的」を持った人間と会うために、品川発の電車に乗って、彼らとの「約束の場所」へと向かうのだが…というところがクライマックスです。
しかし、彼女は自分の「日常」へと帰り、待ち受けていたものは「仲良しグループ」から自分が排除されたという無残なまでの事実でした。結末は彼女の将来が決して希望にあふれたものではなく、この先も苦労するんだろうなぁ、きっと。と思わせるもので、一人の少女を通して作者が問いかける「自殺」の意味を痛感させられる小説でございました。
※追記
本書はタイトルな何度か変わっており、2021年2月5日に『JR品川駅高輪口 (河出文庫)』として河出書房新社より刊行されました。
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「山手線シリーズ」第4作
もともとは、2016年に出版された『まちあわせ』を改題したもの。その経緯については、著者による「新装版あとがき」にて説明されている。
第5作があの『JR上野駅公園口』なので、遡って、逆回りの山手線にのっているような感じです。
『JR上野駅公園口』が時間軸が長く時代背景の知識もある程度必要とされ、また観念的な記述も多く、決して読みやすくはなかったが、こちら『JR品川駅高輪口』はその点、わりと近い過去の話し、若き高校生が主人公でもあるので、すんなりと読めると思う。
家族間でも、学校内の友人関係でも、疎外感をいだき、表面上はつくろっているものの、死を、方法や手順は明確にではあるけれど、感情的には漠然と希求する主人公にハラハラさせられつつ読み終えた。
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山手線三部作の中ではこれが一番救いのあるような気がしたが、主人公の女子高生がなんというかおばさんっぽくて、リアリティーがないというか…。綿密な取材の上に成り立っている上野の方が面白かったし、リアリティーは高田馬場の方がもっとあって共感できた。
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主人公が周囲の人達に向ける冷静な視線が印象的でした。
遅く帰宅した父親に対する母親の怒りの度合を、母親がドアを閉めるときの音量で測っていたり、「イツメン」からなんとなく距離を置かれていることにも気づいてしまったり、その冷静さで他者から一歩引いてしまう。
けれどその冷静さのおかげで、彼女は死なないで済んだわけで、そのことに気付いて、「あのとき死なないでよかった」と思える日がいつか彼女に訪れてくれることを願います。
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生と死の違い。がテーマかな。
情景の描写が多く他人の会話で話が小説のいたるところで出てくるけど、特別な意味を持ってるとも思えない。けど、最後に聞こえてくる音だけは防げないっていう説明があって確かにそうかも、と思った。居場所のない少女。悲しい話
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『JR品川駅高輪口』柳美里
死にたい、と思ってみてるだけ。
わたしは、いま、生きている。
どんなに残酷でも、人生は生きるに値する。
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山手線シリーズ。今回は女子高生が主人公。女子高生あるある描写が辛辣でよい。イツメン。
ああ、「自殺」を書いた柳美里さんならではだなあ。
最後に救いがあってよかった。
やはり雑踏の描写が抜群。読みながらぼんやりと私も山手線に揺られている。すれ違う名前も知らない人々の人生を垣間見る。
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女子高生ってこんな感じだったかなー…と思い返しながら、最後まで「つまらない」といった感想です。
本がつまらないとか、内容がとかではなく、登場人物がそれぞれつまらないなと。
あと、読みにくいと感じました。感情移入がしにくいなと。
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『自殺の国』を改題して刊行された作品。
山手線シリーズ。
前作が全米図書賞受賞ということで読んでみたけれど、ちょっと難解で難しく感じられた。
今作は身近に感じられた。
自殺願望みたいなものは、私自身にもあって、別に今作みたいに掲示板とかで募集して…とかいうつもりは無いけれど、どこかぼんやりそんな気持ちがある。
“わたしは、生きたい人は普通の人で、死にたい人は普通じゃない人だと思っていたのかもしれない。でも、死にたい人と生きたい人は実は同じ人で、生を突き飛ばして死にしがみつくか、死を突き飛ばして生にしがみつくか、だとしたら、生にも死にもしがみつかないで生きていける人が、普通じゃない人なのかな?
生も死も、よくわからない。
死ぬのは最終的には死んでみなければわからないとしても、生きるのがわからないのはどうしてなんだろう”
この言葉が印象的だった。
生きていてもいなくても変わらない毎日を生きている気がして。
百音みたいな環境では無いけれど、それでも何か生きることへの絶望みたいなものから抜け出せない。
ぐるぐる回る電車の中で、そんな思いに駆られている人は一体何人いるのだろう。
その循環から抜け出すために、飛び出してしまう前に、何か、何か。
Posted by ブクログ
本書は、タイトルがコロコロ変わっているらしい。2012年に刊行されたときは『自殺の国』、2016年に文庫化されたときに『まちあわせ』と改題、そして2021年の新装版(本書)で『JR品川駅高輪口』という当初のタイトルに戻した、とのこと。
また、本作は「山手線シリーズ」の第4作なのだそう。「あとがき」に詳しく書いてあるが自分のメモのためにまとめておくと、1作目から順に
『山手線内回り』、
『JR高田馬場駅戸山口』、
『JR五反田駅東口』(『山手線内回り』所収)、
『JR品川駅高輪口』(本書)、
『JR上野駅公園口』(2020年12月に読んだ全米図書賞受賞作)、
『JR五反田駅西口』(2024年5月現在これ以下は未発売)、
『山手線外回り clockwise』、
『JR常磐線夜ノ森駅』、
の全8作だそうだ。でもご本人のXによると、これらの他に「JR原宿駅竹下口」というのもある。9作になるということか。
さて、『JR品川駅高輪口』。時は2011年6月、主人公は高1の市原百音。学校ではハブられないよう、クラス内のグループ「スカイソーダーズ」のイツメン(イツモイッショデナケレバイケナイメンバー)たちに合わせ、家に帰れば心のバラバラな家族と過ごす毎日。今は亡きおばあちゃんだけが、百音に寄り添ってくれていた。
そんな百音は、自殺志願者が集まるネット掲示板を見ている。ただ見ているだけなのか、それとも書き込みをしているのか、もし書き込んでいるならどれが百音の書き込みなのか、などは途中まで明らかにされない。
百音が見ているもの、聞いている(もしくは聞こえてくる)音声、心の中で思っていること、誰かと交わしている会話などがそのまま文字に起こされているので、臨場感たっぷり。本作ほどではないが『JR上野駅公園口』でも同様の表現が見られたので、このシリーズには共通の書き方なのだろう。
クラス内グループのメンバーとの付き合いの描写がリアルで、自分の学生時代を思い出してどんより重い気分になってしまった。私も友人関係がうまく築けない方だったから、百音の気持ちが痛いほどよくわかってつらかった。
〈生も死も、よくわからない。
死ぬのは最終的には死んでみなければわからないとしても、生きるのがわからないのはどうしてなんだろう?
いまだって生きているし、死ぬまでは生きているのにーー。〉
百音の居場所がたとえ今そこにはなくても、亡きおばあちゃんのことを思うとき、ひとすじの希望が見える。
Posted by ブクログ
自分が生きる世界が全てで、そこから抜け出すことは決してできず、その世界で認められなかったら全て終わり。
この感覚は苦しいくらいわかる。わたしも病気になり、何度も死にたいと思い、死に近づこうとした。今も終わった世界の延長線を生きている感覚。それでも、こんな自分でも他人や自分に対してどこかでわずかな期待を抱き、そしてそれが叶うことはないと感じてはしんどくなり、それでもとまた少し前を向き、でもやはり結局は死という形で全ては失われる、とまた無力感に襲われる。
主人公は最後にクラスメイトの優しさにほんのわずかな生きる価値を見出した。
それでも人生はその一つの経験だけで乗り越えていけるほど甘いものではないだろう。幾度となく、死と向き合い、その都度、ほんのわずかな微かな喜びや価値にすがりつきしがみついて耐えていくものなんだろうなと思う。
自分は情けないほど弱い人間で、いつか耐え切れなくなるかもしれない恐怖に怯えて生きている。支えてくれる家族、自分の敬愛するアーティストが奏でる音楽、物語、絵画、好きな風景など、いろんなところにわずかでもしがみつける場所、引っかかりがある場所を作っておき、口を開けている大きな落とし穴に落ちないようにしておくことは大事だと思う。自分一人の心など、簡単にくずれ落ちてしまうものだとわかっているので。
Posted by ブクログ
「もしかしたら、自分が死への背中を押した人がいるかも」
16歳が背負うには重いよね。
たぶん、恋をしても結婚しても、子を成しても付いてくるよ。
どうか。いま「死にたい」と思っている若い子がこれを読んで、少しでも死へのリアルを想像できますように。そして、願わくば若い子の自死が減りますように…。
Posted by ブクログ
なんだろ、普通。。。
達者な書き手ではあるけれど、10代のリアルの再現度はでは当然最果タヒとか桐島部活やめるってよの人には敵わない。
息を吐かせない読ませ力はあるけれど、読み終わってそんなに多くのものが残らない。
度々語り手=視点が微妙に変化したり聴覚情報が炸裂するけど、そういった語りの変化が物語に作用したり深みを与えているわけでもない。
原発事故の話も、関西脱出的な話としか絡まないし。もうちょっとオシャレにできたんじゃないだろうか。
不倫も受験も集団自殺もわりと手垢のついたネタだよね。
ハブられと声をかけてくれるクラスメイトのくだりは嫌いじゃなかった。逆にいうと残るのってそれくらい。。。
Posted by ブクログ
擬音の中の文章以外は概ね読みやすい。特に中盤〜終盤。あの文章は読まなくても差し支えないということ?現代文的に言えば読み飛ばし。
死にたいと言葉にしつつ行動との乖離が激しい主人公に苛々する。
死に向かって生きるっていうけど現実問題そんなこと言ってたらキリないよね。
女子ならわかるよね、って気味悪い雰囲気が節々に散りばめられている。やけにリアルでそこは好き。
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家庭でも学校でも浮いた存在で
誰も自分を必要としていないと感じ
自殺サイトに書き込みをする日々。
それでも大事にしてくれたおばあちゃんを思い出し
なんとか生に繋ぎ止められている。
若い頃の苦しみが伝わってくる。
娘たちがこんな思いをしていませんように。
Posted by ブクログ
柳美里の山手線シリーズの4作目?かな。僕にとっては『上野駅公園口』の次。16歳、女子高生の主人公が友人関係や家族の関係に疲れと失望を覚え、自死にいたろうとする話。物語の9割は主人公のモノローグで、情報のモザイクのような山手線内の情景を意識の流れと共に追う。ゆっくりと自死に向かおうとするのだが、決して重苦しくない。かなり客観的で明るい口調のモノローグとして、しかし確実に人生に失望し、それほど確信がない中でゆっくりと自死に向かっていこうとする。
このシリーズでは唯一はっきりと救いのある結末を迎えるそうだ。自死という生々しさは、実存を嫌な意味で浮き彫りにさせる。社会にとって、世界にとっての正しさとは何なのか。最近はすごく考えてしまう。
Posted by ブクログ
外見は明るく流行に敏感な一般的は女子高生。だが、実際は、自分には居場所がないと感じている。
駅のアナウンスや周囲のざわめきが描写に盛り込まれていた。そのことから、少女の世界が現実世界から隔離されていることが読み取れた。
思春期だったあの頃にタイムスリップしたかのような一冊だった。
Posted by ブクログ
生きるって何だろうな、死ぬって何だろうな。
そんなことを思った時の車内や学校の会話の嗚呼煩わしさよ。
最後にユミリさんの作家としてのテーマがあとがきに凝縮されていたのでここに。
「小説家の仕事は、日々刻々とあらゆる出来事が生じ、目や耳に留める間もなく消えていくこの世界から、一人の人物を浮き立たせ、その存在を明るみに出すことである。」
Posted by ブクログ
生きるって何でしょうね
仲間外れの学校、父親の不倫、母親は弟の受験でべったり
じゃぁ私は?
波長合わせに苦労していたクラスメイトから仲間外れ・・・学校がつまらない
両親の愛情ってなんでしょう、、私ここにいる意味あるのかしら?
自殺掲示板で知り合った4人と山奥で集団自殺!
するはずだった・・が!私だけ逃げた そう私だけ
そしていつものようにつまらない日常へ
一緒に自殺しようとした3人は今頃どうしているのか?
遺体で発見されたのか?生き延びたのか?
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知らなかったのだが、『JR上野駅公園口』は、山手線の駅を巡るシリーズの実は第5作目であり、過去に4作品のシリーズ作品があるという。本書は2012年に出版された第4作にあたる作品であり、当初は『自殺の国』と題されていたものを、今回の文庫化に際して改題したものとなる。
筋書きは当初のタイトル通り、家族や学校での行き場を無くして亡き祖母との思い出だけが唯一自分を慰めてくれる少女が、ネット掲示板で出会った自殺志願者たちと自殺を計画する・・・という筋書きである。その出発点となるのが、品川駅である。品川駅は環状線の1駅でありながら、東海道に抜けていくターミナル駅であり、そこが本書での重要な舞台背景となる。
さて、肝心の小説の完成度は・・・と言うと、これはよくある自殺小説、という印象を拭いきれず、特段の強い印象には残らなかったのが正直なところではある。そういう点で、やはり著者の作品との相性は、あまり良くないのだということを再確認させられた。
Posted by ブクログ
危うい心の動きが電車のアナウンス、乗客の会話をバックに表れている。車窓の風景や匂いさえ感じてしまうから、余計に百音の幾層にも膨らんで萎れた気持ちが切ない。