あらすじ
全米図書賞を受賞しベストセラーとなった『JR上野駅公園口』。受賞作と同じ「山手線シリーズ」として書かれた河出文庫『まちあわせ』を新装版で刊行。居場所のない少女の魂に寄り添う傑作。
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Posted by ブクログ
読書欲がほぼ無くなってしまった中で手に取ったこの作品に、ぐいぐい引き込まれた。
学校での友人関係に疲れ、家庭では居場所がなく、唯一の救いは亡くなってしまった祖母との思い出。
自殺サイトを覘き、書き込みもする。
だが、彼女に悲壮感はない。圧倒的な虚無感が漂う。
駅のアナウンス、車内での他人の会話、学校での友人の会話。否応なしにランダムに耳に入ってくるそれらの言葉は、届かない。
唯一届いたのが祖母の声。
死ぬことに引き込まれていた彼女が生に留まり、生きていることを実感したラストは圧巻。
Posted by ブクログ
主人公が周囲の人達に向ける冷静な視線が印象的でした。
遅く帰宅した父親に対する母親の怒りの度合を、母親がドアを閉めるときの音量で測っていたり、「イツメン」からなんとなく距離を置かれていることにも気づいてしまったり、その冷静さで他者から一歩引いてしまう。
けれどその冷静さのおかげで、彼女は死なないで済んだわけで、そのことに気付いて、「あのとき死なないでよかった」と思える日がいつか彼女に訪れてくれることを願います。