柳美里のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
自らの在日2世として生きた個人史をつづったエッセイ集。世界へと結びついてはいないが、『8月の果て』のプレリュードといっていいだろう。見開き外祖父「梁任得」を中心とした家系図も出ている。「私はなぜこんな早すぎる自伝めいたエッセイを書いたのだろう。過去を埋葬したいという動機はたしかにある。私が書いた戯曲の主題は<家族>であり、その後書きはじめた小説もやはり<家族>の物語からのがれることができなかった。p.268」「今年のはじめに、15歳のとき自殺を試みた逗子の海岸に行った。p.268」『8月の果て』のモデルとなった15歳で海に飛び込み自殺するナミコの年齢と同じ年齢である。
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Posted by ブクログ
この人が描く家族の話にあったかい光景がひとつもないのは、間違いなく彼女のバックグラウンドの影響なのだろうけど、でも、これはこれで物凄く真実だと思う。“家族”と聞いてイメージする、あったかい食卓に笑い声、みたいなステレオタイプな想像って、あくまでも美しい理想でしかない。いや、そうじゃないな。それもまたある意味では物凄く真実なんだけどな。どっちが正しいとか、ないんだろうな。どっちも正しいんだろうな。そして、ここに出てくる登場人物は、どの人もみんな凄い孤独。友達がいても、家族がいても、誰かと一緒でも凄い孤独。これもまた真実。誰かと寄り添って生きていく事は心強くて頼もしいけど、きっと永遠に誰かに寄り添