山田宗樹のレビュー一覧
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⚫︎感想
これぞ、エンタメ本。読書が苦手な人もきっと楽しめる。パラレルワールドから、百年法、生存制限法が適用された近未来。見た目は日本共和国民はほぼ全員HABIという手術を受け、老化しない世界。大統領の独裁体制で生存制限法をめぐる政治家と官僚の思い…さまざまなドラマがあり、読む手が止まらなかった。後半も楽しみ。
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
不老化処置を受けた国民は処置後百年を以て死ななければならない―国力増大を目的とした「百年法」が成立した日本に、最初の百年目が訪れようとしていた。処置を施され、外見は若いままの母親は「強制の死」の前夜、最愛の息子との別れを惜しみ、官僚は葛藤を胸に責務をこ -
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佐藤邦郎と田沢比呂子の不倫関係を軸に、比呂子の夫 晋の自殺によって話が複雑に展開する物語だが、人間の精神面の不可解な現象を巧みに描いており楽しめた.精神科医の北見の医療活動が話自体を強固なものにしている筋立てが良かった.誰もが突然電車に飛び込みたくなる瞬間は経験していると思っており、一連のストーリーが実感できた.最後に出てくる給水塔がシンボル的で精神的な曖昧さを強固なものにしてくれたと感じた.
解説で伊予原新が参考文献のことに触れていたが、理系の小生としてはリストを添付するのが当たり前だと感じているし、本書で敢えて実行した著者の精密さを称賛していると思う. -
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小惑星2029JA1に振り回される人間たちの話。
社会に絶望している人達は小惑星の落下を待ち望み、生きていたい人達は当然、落下を食い止めたいと願う。
両者の決着は、念を送って小惑星を引き寄せる(もしくは遠ざける)と言ったかなり非科学的な方法で行われるようになる。(私だったらそんな運動には参加しないだろう。)最後は念合戦だからね。何だそりゃと思った。
ヘルメス(地底都市)から現れた少年を"世界の救世主"等と崇めようとする人類の姿は滑稽だが、必死に生きようとする姿は決して馬鹿にはできない。
実験的地底都市へ莫大な報酬目当てで参加する人々、心底2029JA1が怖い人など様々 -
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不老不死とそこに生きる人類をテーマにした作品。
HAVIといわれる不老不死処置を受ければ、受けた時の年齢のままの容姿で生き続けられる。
それにより世界はどうなるのか…人口が減らず新しい血の入れ替わりが起きなくなり停滞してしまう。
そこを改善するために考えられたのが「百年法」といわれる「処置後100年をもって生存権をはじめとする基本的人権は全て放棄しなければならない」とする法律。要するに100年経ったら死になさいというもの。処置を受ける受けないは本人の自由。
100年経っても生きようとする者、非処置者などが複雑に絡み合い、それからの日本をどうしていくべきなのか…壮大なスケールで描かれており、SF -
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ネタバレ〈絶望〉に〈憎悪〉と〈正義〉が加わると、絶望は人を暴力へと駆り立てる性質を持ち歯止めが効かなくなる……改めて突き付けられるとなんて厄介な、と思います。
人類滅亡系作品はこれまでにもオーシャン・クロニクルシリーズとか読んできましたがいろんなバリエーションがあるのだな。
「細菌が寄せ集まったコロニー雲というのが発生し巨大化して、酸素を喰い尽くす」ことで、今回の終末は地表の酸素濃度の減少が原因です。後に更に強毒性になるんだけれど。『ピンク・クラウド』という洋画があるけど、こちらの雲の色は真っ赤です。空はいつでも赤黒い。
自宅にいても密閉性が充分でないからと世界各地にシェルターが作られ、一部の人間はシ -
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山田宗樹『存在しない時間の中で』ハルキ文庫。
最後にタイトルの意味に納得した。
SF小説のような、哲学書のような不思議な話だった。反面、著者に巧く騙され、踊らされたような感じもした。
幼い頃、自分はどうして存在しているのだろうと頭の中に突如閃いた時のことを思い出した。その瞬間から周りの風景がそれまでと違って見えたような気がした。
天文大学内にある世界各国から研究者や大学院生が集まる天文数物研究機構では、定期的に若手研究者たちが主宰するセミナーが開催されていた。ある時、セミナーに謎の青年が現れ、ホワイトボードに23枚にも及ぶ数式を書き残して姿を消す。
その数式は、宇宙の設計図を描いた何 -
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ネタバレやはりというか、その道を選ぶしかないよな。
けれど国民投票で未来ある道を選んでくれて良かった。この百年法が続く限り、何度も何度も同じ議論を繰り返して行くのだろうな。この物語はそれにSMOCで決着をつけたけれど。
上巻の蘭子がHAVIを受けて若い見た目のまま、中身だけは歳を重ね感性は衰えて日々生きていくことだけに費やしているのがすごく身に迫ったというか。
いつか死ぬ、いつかは分からないけれど、それでも死と老いからは逃れられない。そういう限りがある生命だからこそ、生きられるのかもしれない。
もし永遠に生きられるとして、周りもそうなら人間関係を良好なまま維持していくことは相当難しいんじゃないかな。