山田宗樹のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ永遠の命という題材を社会制度として考えるSFとして面白かった。特に、百年法が制定されるまでの政治的なやり取りと、老化人間と不老人間の時間感覚の違いが印象に残った。物語の開始時点を百年法制定前にしたことで、制度が成立する過程そのものを描いているのもよかった。
上巻は群像劇的な構成で、視点が切り替わるたびに物語へのモチベーションがリセットされる感じで途中から読むペースが落ちた。下巻は物語の方向性が明確になり、先が気になって一気に読み終えた。
終盤はクーデター失敗後から少し駆け足で、ご都合主義的に感じる部分もあった。また、人間の描き方はややロマンチックで、掘り下げが甘い印象もある。
「永遠に生きられるならどう生きるのか」という思考実験としては面白いが、自分自身の生き方を深く考えさせられるほどではなかった。全体としては、哲学的な作品というより、壮大な設定を使ったエンターテインメントSFという印象。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ人間が不老不死になったパラレル世界を群像劇で描いた作品。一体どんな世の中になるのだろうと読者にも思考実験を促してくるようで実際にあれこれ考えてしまう。特にタイトルの「百年法」は飽和する人口と停滞を解消する手段として掲げられるが、「HAVIという不老処置を受けて百年経ったら強制安楽死」という内容は一般的には人権侵害という感覚しかない。けれども深刻な社会問題に必要な処置だと改革を訴える登場人物達の熱心さを見ていると、私達の世界とは前提が違うのだし、そうなのかと説得させられてしまう上、否決した時には一緒に嘆息してしまう。けれども実際に期日を迎え、死を受け入れた人や拒否者にクローズされると今度はやっぱり人権について考えてしまう。全体的に非常にうまい構成になっていた。メタ的な視点でもどのように物語、掲げられた問題を畳むのだろう、この人類はどこに向かうのだろうと思っていたので、良い着地になっていたと思う。不老不死のカラクリが巧妙だった。またアレルギーのように嫌われそうな独裁の扱いについてもうまい具合に描かれていたなと感じた。
個人的には不老不死の世界は生き過ぎた個人主義になっていてダメだなと思った。国とは集団の集まりで構成員の帰属意識、そして国という仕組みを維持しようという意思が必要になる。この国という集団を分解していくと都道府県とか市区町村とか最終的には家族まで小さくなるが、この世界では家族という枠組みは崩壊してしまっている。大切な人、家族、とりわけ子供の為に良い未来を作りたいと考える人は多いと思うし、社会作りにはそうした考えが少なからず基盤になっていると考えているが、この物語の社会では家族の柵が失われた結果、原動力や頑張る理由、社会を維持する為の意味が揺らいでしまっている。安全安心な社会は自分が生きている間には必要だろうが、個人主義な世界観では死んでしまった先はどうでも良いと考える人も多いだろう。そうすると百年法って毒にしかならないような気もするが、有限であるリソースの事を考えると本当に扱いが難しい。ひとつ驚いたのはこの世界では安楽死が認められていなかったことだ。真っ先に議論されそうなのに。でもこれを認めると作中の停滞社会では不利な若年層の死亡率が上がるのだろうか…
不老不死社会は色々と思考実験の甲斐がある。難しい問題も多そうだ。面白い機会を得たと思えたし、シミュレートの結果としてひとつの世界の歴史を垣間見れて満足している。 -
Posted by ブクログ
ネタバレじわじわと終末に向けて崩壊していく日本共和国
バッドエンドしか思い浮かばないような流れからクーデター勃発、そしてその後の展開が激動
「大統領令0条発動」って気になったけど暫く何も起きないなあと思っていたら、最後にやってくれましたセンチュリオン!
クーデター阻止で大団円かと思っていたら全HAVI(不老不死)人間のSMOC(多発性がん、死亡確定)発症確定ってなんて皮肉な。。
死のない世界の”生”とは?そもそも生きるとは?自由に生きることと次世代への責務のどちらが大切なのか等々、色々と考えさせられることの多い骨太のSFエンターテイメントでした -
Posted by ブクログ
ネタバレ人体から意識だけを”代体”に移すことのできる世界
肉体の死が”人としての死”であれば意識の死は”消滅”でしかないのか、
別の肉体に移された意識が宿った人間は一体誰なのか、
全ての感覚が”代体”で認識できるようになったとき”意識の入れ物”でしかなくなった不完全で不便な肉体にはどんな意味が残るのか、
そもそも意識が本体であるならば人工的に意識を生み出すことができれば肉体は不要になるのか、
意識だけの世界はどのようなものなのか、etc...興味深いテーマの多い作品でした
結局すでに同じような新しい世界を切り開いていた先人がいたということなのかな -
Posted by ブクログ
まだまだ面白い本てあるんだ。
この本の続きは、今私たち自身なんだよなぁと。
いや、それか投票前の時点なのか。
でも自分自身に置き換えて考えなくちゃいけないんだよね。
私は子どもが2人いるけど、どっちも子どもはいらないって言ってる。
私も、自分が若くて今出産するかってなったら凄く悩むと思う。日本の未来に希望が持てないから。
私たちが子どもたちに残してあげられる事ってなんなんだろ。今しなきゃいけない事ってなんなんだろ。
前半だけの設定で考えるなら、私は処置してから100年じゃなくて、生まれてきてから100年ならいいんじゃないかなぁと思えた。それなら老いもなく、介護も必要なく、安楽死できて。実際不死になれたら、延々と生きたいと思うのかな。ただ仕事をして、最低限の生活を続けるだけでも。
家族もなくなって、なんのために生きるのかな。
-
Posted by ブクログ
正しい行いや考えがなんなのか、わからなくなる本
人権、政治、生命、未来
最後までさまざまな立場の人の意見を浴びることになり
読んでいる間いい意味で不安定になりました。
自分(30歳未満未婚)がこの場にいたら、決して立派な決断はできなかったでしょう。
数年後、数十年後に読めば、また私の意見も変わりそうです。
不老処置HAVIが一般的になった世の中で
人口爆発ほか各種停滞を防ぐために施行された生存制限法、通称「百年法」
もちろんただの法律一つで人の命が左右されていいのか、それを拒む拒否者、そしてその集団ができ始める。
変わらない政治家、にも関わらず不穏な動きが見られる部下たち、目立ち始めたガン患者、HAVIを拒否したり受けない選択をする人たち。
世界で何が起こっているのか、これから世界がどうなっていくのか。