まず、設定に引き込まれる。現実感がないというレビューもあるが、自分は素直にSFだと思って読めるので大丈夫。
村田沙耶香「殺人出産」と同じく、作者が「老害政治家の保身」や「人間関係の希薄化」をSF設定に仮託してdisってる感じがすごく好きです。
大戦後、アメリカの不老技術が導入された日本というパラ
...続きを読むレルワールド設定。不老になったおかげで見た目が若者、でも中味は老若3世代分の人間が混交している日本。その弊害が日本を衰退させている。
・親も子も不老になるため、親は子が成人したら、ファミリーリセットして親子関係は霧消する
・百年目に安楽死を義務付ける「百年法」を実施しないと国の衰退は明らかなのに老齢政治家は拒もうとする
・庶民は3ヶ月ごとに指定された仕事を転々とすれば最低限の生活ができるシステムが存在するが、老齢層が減らないため若年層はそのシステムにすら参加できず困窮している。
・ID管理された大衆が感じているのは無間地獄的な虚無感
設定はかなり好きなのに、閉塞した日本が舞台なこともあって、登場人物にも閉塞感があるため、キャラに魅力を感じ難いのが難点。ストーリーの場面転換に応じて3人のメインキャラが変わるがわる描かれますが、3人ともに対して素直に共感&応援できないため、もっとデカい事件が起こらないかなぁと焦ったさを少し感じました。
とはいえ、1日で上巻一気読みなので面白い小説です。
※その点「蜂蜜と遠雷」は場面転換しても4キャラとも魅力的なのがやはり良かった。
※2015年の小説であり、携帯情報端末や液晶ディスプレイの未来型は描かれているけれど、空撮ドローンは予測できてないのが興味深い。