あらすじ
ある中高一貫の進学校で生徒が教師を射殺して自殺した。事件の再発防止と生徒の動揺を抑えるため招聘された心の専門家・比留間。彼は教師と生徒の個を失わせることで校内に平穏をもたらす。だがその比留間の奥には、かつて眠らされた邪心が存在し……。『嫌われ松子の一生』の著者が“心の救済”の意義とそこに隠された危険性を問う衝撃作!
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Posted by ブクログ
猫を殺し、腹を切り出すという異常行動をする11歳の男の子と母親が、カウンセラーの治療に訪れた。ロールシャッハ・テストにより少年の心の闇を見出したカウンセラーは、定岡療法と呼ばれる催眠療法により、その心の中にある狂気を凍結させ、心の奥底に沈めることに成功する。
その少年は、その後、問題なく大人になり、天才的なカウンセラーになるのだが…
個人的に好きな分野と言うこともあり、大変面白く、最後まで一気読みしました。現実にこんなカウンセラーがいたらなぁと思うと、ドキドキします。
フィクションの面白さがぎゅっと詰まっています。
Posted by ブクログ
精神病理をメインテーマとして扱い、そこにティーンエイジャーの危うさや大人の恋愛エピソードを絡め、さらに後半の勝負所では「ここからサイコホラーが始まるのか…?」、と一瞬怯えさせてもくれた。
1冊の中に込められたトピックスは多いが、どれも上手く消化されており、最初から最後まで非常に興味深く読むことができた。
ラストも含め、全体的には物哀しいストーリーなのだが、にも拘らずどこかスッキリした気分、前向きで澄んだ気持ちにさせてくれる作品だ。
帚木蓬生氏や久坂部羊氏、それに手塚治虫氏などといった医師資格を持つ作家がその専門知識を援用して生み出す作品は無論のこと、そうでなくとも医療の世界を舞台にし、読者の生命倫理観をダイレクトに揺さぶる物語は実に読み応えがある。
誰もがいわゆるTPOに合わせた自分を演じ、常に何らかの衣を心に着せているとも言える現代社会において、“本当の私”とは一体何なのか? 一体どこにあるのだろうか? そんな普遍的な命題についても考えさせられる。
Posted by ブクログ
これは面白い!
ドラマテックさで言うと、ちょっと物足りないと思うところがあるが、良く出来ている。
正常の反対は異常、または狂気かも知れないが、成長によっては、時として静寂となるということか。(特に意味なし)
Posted by ブクログ
誰もが惹かれて夢中になってしまうカウンセラーには恐ろしい秘密が、、、という導入。
これはすごーくよかった!
ウソくさいカウンセラーだなーなんて斜め視点で見てたらまさに根拠があって納得。
救いがなさそうに見えてきれいにまとめて終わっているのが
あぁ、よかった・・・って読んだ後思いました。
こういうのが気に入るってやはし自分は少女マンガ育ちなのだろうと思う。
Posted by ブクログ
三十三歳で片親で三歳児を抱える、射殺事件の起きた中高一貫校の養護教諭と、十一歳の時に猫殺しを繰り返し、その狂気を催眠療法で凍結したスクールカウンセラーの、学校での日々と恋と解放された狂気。精神に踏み込んだ描写や、師諸共不安定になり病んでいく描写に引き込まれた。病んでしまった人を拒まない目線が温かい。
Posted by ブクログ
心理学って不思議な分野で、いい意味でも悪い意味でも裏切られることが多そうだなあとこの物語からも感じる。
まさにそんな心理学に基づき人間に対峙するカウンセラーは「聖者」たり得るのか。
「本当の自分」って一体どれ?と、誰もが考えたことのあるような普遍的な命題について、問いかけるような作品だった。
別宮の幼稚さには嫌悪感を覚えたが、実は別宮が拘る道も自ら選んだものではないのかもしれないーーそれを思うとただただ哀れな人だなあと思った。
興味深いテーマとセンセーショナルさの割に、結局少し安っぽさを感じる恋愛で終わったので物足りなさも感じたが、面白かった。何より、非常に読みやすいことは間違いない。
Posted by ブクログ
面白かった。
初めて山田 宗樹さんの作品を読みました。
とても読みやすくて、ミステリー的な要素も少しありつつ。
大きなストーリーの流れはよかったです。
ただ、途中から恋愛を中心においた感情的な展開になっていったのがちょっと気になりました。
もう少しシリアスな展開にもっていっても良かったような。
まーでも良かったですね。
他の作品も読んでみようと思います。
Posted by ブクログ
非常に読みやすかった。
冒頭から、学校で射殺事件が起こるというものすごい始まりかただったが、メインはこの事件ではない。ここはもうちょっと膨らませられなかったのかなとやや疑問。
テーマは、行きすぎた心理療法。環境に適切に順応させようというカウンセリングは、つまり環境を是としありのままの心を否定しているわけであり、心を操作していると考えることができる。それって本当に正しいことなんだろうか?という問題提起や、意のままに心を操作された二人の末路が描かれる。面白さも怖さもある小説でした。
ところどころ、もう少し膨らませてほしいと感じた点が少しだけ残念。あと、主人公の女性の行動にはけっこう何度も嫌悪を感じた。
Posted by ブクログ
催眠療法に関して、個人的に深く興味を持っていた為、内容が いつも以上に興味そそられるものだった。
催眠療法を勉強してた高校時代の自分と子供たちを重ねつつ、今の自分と律の年ごろを重ね、彼女の包容力に感動したり…。
潜在意識の領域は本当不可思議。潜ってみたい。
著者の参考文献多い。読んでみたい。
Posted by ブクログ
人の心の中を舞台にした話。
催眠療法という、特殊な設定が独特のおどろおどろしさを、生んでいます。
いつ、話が動くんだ、最初からの伏線がいつ爆発するんだと読み進めながら結局良い話で終わる。
ラストで逆に暖かい気持ちになれました。
Posted by ブクログ
「嫌われ松子の一生」の原作者の人だーと思い手に取ってみる。
人物のイメージがしやすいので、映像作品になりやすいのかな。
事件に始まり、疑念、そして静かな終わりを迎える。
その過程にあるものは心という不確かなもの。
心って目に見えないから、たくさん迷って、たくさん傷ついて、強くなっていくんだと思う。
心を強くするのは人生の目的じゃないけど、生きるために必要なこと。
見えない心を見えるようにしたら、心は固定されて疑問や疑惑をもてなくなる。
ストレスにさらされても、理解できないからいきなり体にくる。
そしていつかは心が壊れる。
自分が何をしているか意識がない。
別の人格が発動する怖さ、立っている場所がわからなくなる怖さ。
人の心を操作するのは果たして医療なのか?
欝や心の病気がはやっているけど、正しい治療ってどれなんだろう。
罹るは易し、治すは難し。
Posted by ブクログ
「嫌われ松子の一生」の山田宗樹の作品。
私にとっても、これが2作目。だけど、「嫌われ〜」とは全然雰囲気が違っていた。
「天使のナイフ」とはまた違った内容だけど、少年の頃に受けた精神的治療と最後まで闘うカウンセラーの姿が印象的でした。
ハッピーエンドでは終わらないけど、決して後味の悪い作品でないのが救いでした。
Posted by ブクログ
進学校で生徒が教師を射殺して自殺する事件が起きる。事件の再発防止のためカウンセラーとして比留間亮が招かれる。比留間と養護教諭の梶山は互いに恋愛感情を抱く。比留間はカウンセラーとして実力を発揮するが、梶山と接するうちに、人の心を操作することに疑問を抱き、カウンセラーを辞める。しかし、そのことは比留間を後継者とする心づもりだった比留間の師である別宮の怒りを買う。比留間はかつて、別宮によって女性の腹を引き裂きたいという狂気を封印されていた。別宮は怒りに任せて比留間の狂気の封印を解放する。その結果、比留間の心は破壊される。
テーマは、人の心を物として扱うことへの警鐘のようだが、梶山と比留間の恋愛環境にはあまり共感が持てなかったため、心に響かなかった。特に梶山の強引な誘い方には嫌悪感を覚えた。
主題とはかけ離れるが、個人的には、比留間に裏切られたと感じた別宮が、かつて自らの手で封印した比留間の狂気を解放する場面が印象的だった。
Posted by ブクログ
他人の心を自由に操ることができるとすれば、それは自らの心も他者に操られているという疑心暗鬼を呼ぶ。愛がある比留間は救われ、信じるものを失った別宮は破滅した。
Posted by ブクログ
人の心理を操作することの恐ろしさがよく描かれていて、まぁ面白かった。
エピローグがよかった。
山田宗樹は心理描写があまりうまくないらしく、主人公に同調出来る部分をするっと受け流してしまい、物語に入り込むきっかけをたくさん逃したように思う。
読みやすさは変わりなく。