佐藤健太郎(サイエンスライター)のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
普段から多々お世話になっている様々な薬。今の日本で生きていると、そのありがたみを感じにくかったりもしますが、この本を読むと薬のありがたみがよく分かります。
例えば麻酔。考えてみれば当たり前ですが、麻酔のない時代は、患者を押さえつけて外科手術やってたんですよね。それだけで麻酔薬開発に関わった、すべての先人に足を向けて眠れません…
きっと麻酔がなければ、僕は親知らずを抜くことはできなかったでしょうから。
そのほかにも、ビタミンCや消毒薬、アスピリンなど、今ではおなじみの薬の歴史や、開発秘話、科学的な考察が書かれています。
内容はいずれもあっさりしているので、読み応えは少し物足りないところもあります。
しかし化学式などもわかりやすく解説してくれているのは、文系にはありがたい限りです。
一番印象的だったのは、エイズ治療薬の話かな。日本人が開発したというのも初めて知ったのですが、そのエピソードも本当によくできているというか、素晴らしいというか。
映画・ドラマ関係者は、今すぐこの話を映像化できるように掛け合ってもいいんじゃないか、と思いました。 -
Posted by ブクログ
読み物として面白かった。
優れたモノやアイディアを持った人同士が出会うと、お互いにそれをやり取りしたり改良したりして、さらに優れたものに進化させることが起こる。人が一生ひとところに留まっていれば、素晴らしいアイディアもぶつかり合い、磨かれ合うこともない。人が動き回ることは、文明の進展に必須の要素であったはずだ。
マット・リドレー著『繁栄』には、その実例としてタスマニア島のケースが挙げられている。この島はかつてオーストラリア大陸と地続きであったが、海面の上昇によって1万点ほど前に本土から切り離された。すると、よそで開発された新技術は入ってこず、持っていた技術も継承者がいなくなるたびに消えていく。結局タスマニアからは、ブーメランや骨製の釣り竿、魚とりの罠や衣服を作る技術が、わずか数千年で失われてしまったという。外部との交流を絶たれて自給自足の状態に追い込まれると、進歩が止まるどころか衰退さえ起きてしまうのだ。筋力ではなく頭脳を武器として生きる人類には、過酷な旅のリスクを冒してでも、移動と交流、交易を行うことが決定的に重要なのだ。
グッドイヤーは、ゴムに酸化マグネシウムや石灰などあらゆる粉末を混ぜ込む実験を重ねたが、溶解を防ぐことはできなかった。出資者が手を引いたために貧困に苦しみ、実験のために健康さえ害しながらも、彼は決して諦めなかった。借金のために何度も投獄され、貧しさのために子供を失いながらも実験を続けたというから、その執着ぶりは異常というほかない。
グッドイヤーの凄まじい執念に対し、ついに運命の女神は微笑む。実験開始から5年目の1839年、ゴムに硫黄を加えて加熱することで、耐熱性を持たせられることを発見したのだ。グッドイヤーはさっそく特許を取得、1842年にゴム工場を立ち上げた。
筆者はこの話を読んだ時、なるほどこれが世界屈指のタイヤメーカーであるグッドイヤー社であり、チャールズは長年の労苦が報いられて大金持ちになったのか―と早合点してしまった。だが実のところ彼は、加硫法という画期的な発明は成し遂げたものの、事業家としてはまったく成功できなかった。現在のグッドイヤー社の設立は加硫法の発明から半世紀以上も後の1898年であり、社名はチャールズ・グッドイヤーにちなんで命名されたものの、直接の資本関係などはない。 -
Posted by ブクログ
本書は、日本の道路行政の問題について鋭く分析・検討し、何ごとか物申すような本ではない。各地の絶景やグルメを楽しむための、ドライブガイドのような本でもない。本書は、「道路」そのものを楽しむために書かれた、「国道マニア」の入門書だ。(裏表紙裏より)
何とも奇怪な、でも手を出してみるとちょっと面白そうな「国道趣味」の本です。国道◯号線って、欠番もあるんですね。1から順番に並んでいるのかと思ってました。
そういえば、数年前に鉄オタ友達と二人で「寝台特急で青森まで行って、津軽半島の先っぽにある階段国道を見に行こう」というおバカな企画を実行したなぁと思い出しました。旅行は点で、鉄道マニアは線で、道路マニアは面で日本を楽しむ…なるほど、面白い考え方だと思いました。 -
Posted by ブクログ
国道とは、ある地点からある地点までをつなぐ道を、国が整備したもの。
国道を通る多くの利用者には、起点と目的地がある。
しかし本書は、国道を利用する目的を、その国道そのものとする国道マニアによる、国道探索の入門書である。
非常に有名な、階段国道やループ橋、海の上を渡る国道から、盲腸のように少し突き出しただけの国道まで、様々な国道が紹介されている。
また、広いバイパスの横に、狭い国道がそのまま指定されている理由、細い山道が国道に指定されている理由など、多くの情報が網羅されているので、いちど見に行きたいと国道目的の旅へ読者をいざなう。
ただ、筆者が国道マニアになった理由として挙げる、鉄道は展と点を結ぶ線だが、道は面であり、どんなところにも行ける、好きなところに停まれるといった理由を述べているが、それはオートバイ乗りの立場から見たら、ちっちっちである。
片岡義男のバイク小説に共感して育った私から見れば、自動車の窓から見る景色はテレビジョンである。
そして、空調の効いた車内の旅は、温室の中に育つバラみたいなものだ。
実際にその場所にいるためには、バイク、自転車、徒歩といった、その場の空気と一体化する移動手段を取るべきだと、私は思う。 -
Posted by ブクログ
内容紹介
空気のように、非常に身近でありながら、ほとんどその存在を意識されることのない「国道」。その国道を真っ正面から扱った記念碑的作品。
実は、国道には不可思議なことが数多く存在する。
・国道246号は存在するのに、なぜ国道60号や国道99号はないのか?
・圏央道やアクアラインは高速道路なのになぜ国道指定されているのか?
・車が通れない商店街や階段がなぜ国道指定されるのか?
・道路すら走っていないフェリー航路が国道扱いされるのはなぜなのか?
など、いちいち挙げれば、数限りない。
国道をこよなく「国道マニア」として知られる佐藤健太郎氏が、こうした国道にまつわる、様々な謎を読み解くとともに、国道をこよなく愛する「国道マニア」たちのマニアックな生態を解説する。悪路を好んで走る「酷道マニア」。旧道を好んで走る「旧道マニア」。国道のありがたさを実感するために非国道のみを頑なに走行する「非国道走向マニア」、道路元標に異常な執着を示す「道路元標マニア」など、彼らのこだわりは相当なまでにマニアックである。抱腹絶倒の一冊 -
Posted by ブクログ
題名からは意外な流れで有機物(炭素化合物)が歴史に果たした役割を開設している。参考文献の最初に出てくるのが「銃・病原菌・鉄」で2番目が「スパイス・爆薬・医薬品」で似たような雰囲気ではある。他にも参考文献には読んだ本がいろいろ入ってたが帯の「今年度No1のサイエンス本の呼び声!」と言うのはちょっと言い過ぎだろう。化学式はちょっと出てくるがあまり専門的ではない。
序章のアヘン戦争にはじまり、デンプン、砂糖、芳香族化合物(香辛料)、グルタミン酸という食品のグループ、次にニコチン、カフェイン、尿酸(これだけちょっと毛色が違う)、エタノールと言うドラッグ、嗜好品、そしてニトロ、アンモニア(炭素ではないが肥料とニトロの原料)、石油というエネルギー関係そして最後にフラーレンやカーボンナノチューブ、そして人工光合成と炭素の未来の物質までつづく。「スパイス・爆薬・医薬品」が少しづつ関連する物質を紹介していたのに比べると並びは普通。
せっかくなのでなぜか混ざっていた尿酸について。
プリン体はもはや悪者扱いだが実はDNAをつくる構成成分のうち2つはプリン体骨格を持つ。青酸(HCN)とアンモニアという比較的単純な物質を混ぜて加熱すると高確率でできるアデニンに糖とリン酸が結合したのがDNAの構成単位でありアデノシン3リン酸(ATP)は糖の代謝経路にも使われる。このプリン体が酸化して出来たのが尿酸で水に溶けにくく、体内で結晶化すると痛風の原因になる。なんと最古の痛風患者は人ではなくティラノサウルスだそうだ。
歴史上の痛風患者にはアレキサンダー大王、フビライ・ハーン、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ニュートン、ダーウィン・・・と錚々たる天才が並ぶ。20世紀に入り知能指数が高い人を調べてみると痛風患者が通常の2〜3倍もいることがわかり、「天才物質」という説が出てきたそうだ。う〜む、因果関係が逆で収入が高くていいもの食ってるだけじゃないのか?と思うのだが。ビールを飲みながらの小ネタとしてはなかなか使えそうではある。 -
Posted by ブクログ
僕はリスクを結構気にしちゃうほうなのですが、リスクに丁寧に対応する社会的コストを考えてみろ、という前書きに、む、そうかもしれないなと納得する。リスクとのつきあいかたを考える本。
中身はバイアスのかかり方や、いくつかのリスクの具体的数値、そしてプラセボ効果のことなど。ちょっとありがちな感じで、前書きほど興奮はできませんでした。マスメディアのリスクの伝え方に苦言が呈されていますが、裏を返すと、そういう演出の仕方の勉強になるかもね。
兎も角、リスクがない、なんてことは証明するのが難しいのだと。
本書ではありませんが、僕の好きな言葉に、運が悪ければ瓦が落ちて人が死ぬ、というのがあります。作り手がいうと怒られると思うけど。 -
Posted by ブクログ
家人は震災以降やたらとリスクに敏感である.いささか辟易気味の私は味方を得ようとこの本を読む.それほど新しい視点があるわけではないが,化学,製薬分野の出身ということで,四章の発がん物質の章はなるほどと思わせるところがある.全体は一般向けにやさしく書いてあるので,こういう本を家人には読んでほしいと思う.無理だろうな.
最初の方に,ハーバードのリスク解析センターというところが発表しているリスク認知因子10ヶ条というのが興味深いので引用しておく.
(1) 恐怖心が強いほどリスクを強く感じる
(2) 自分でコントロールできないリスクほど強く感じる
(3) 自然のものより人工のものにリスクを強く感じる
(4) 自分で選択したものにはリスクを感じにくい
(5) 子供がかかわるとリスクを強く感じる
(6) 未知のリスクは強く感じる
(7) 報道によって意識と関心が高められるとリスクを強く感じる
(8) 自分に起こりえるリスクは強く感じる
(9) ベネフィットのあるリスクは弱く感じる
(10) リスクの起因者に信頼がないとリスクを強く感じる
納得のリスト.
この本にも書いてあるようにリスクを煽る方が容易でメディアにのりやすいとすれば,個々の事例で正しい判断をしていくのはとても難しいことになる.メディアや科学に関するリテラシーの必要性を強く感じた.