佐藤健太郎(サイエンスライター)のレビュー一覧
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本書は2010年科学ジャーナリスト賞を受賞した著書であり、著者自身が、医薬品メーカーの研究職の経歴があるため、業界裏事情を本音で書いた巧著である。
全世界で78兆円の市場の医薬品業界。
1位がアメリカで42兆円、二位が日本で7兆円。
凄い金額が動いている業界である。
日本とアメリカの違いにビックリするのは、日本の薬価は公定価格として、国が決めて税金や健康保険から支払いする仕組みで、基本は公金から得ているので、安定しているかと思うが、そうではなくて、二年ごとに平均5~7%ほど下げられる。一方、アメリカは薬価は自由に決められる。いい薬ほど高くて貧乏人は払えなくて、亡くなってしまうという。
医薬品メーカーは安定している業界と一般のひとは考えがちだが、本書で初めて知ることは、なんて安定しないギャンブル性の高い業界かということ。
新薬を開発するには、10年以上の期間と100億円超え費用を研究に費やしても、何もできない時もある。
やっと特許をとっても、20年で特許が切れて、安価な薬品(ジェネリック)になり、収益が落ちてしまう。
その他、この本には、医薬品業界の合併再編、訴訟問題、副作用問題と薬の不安定性と業界の問題を思い知れされた内容になっている。
本書で薬に対する考え方が変わることで、健康への配慮が一層進むことを願うばかりである。 -
Posted by ブクログ
<目次>
第1章 国道の名所を行く
第2章 酷道趣味
第3章 国道の歴史
第4章 国道完走
第5章 レコード・ホルダーの国道たち
第6章 国道標識に魅せられて
第7章 都道府県道の謎
第8章 旧道を行く
第9章 深遠なるマニアの世界
<内容>
著者はサイエンスライターの第一人者らしい。が、この本はそことは似ても似つかぬ「コアなマニア」の本。そして、過去にあまり新書では出されていないテーマのためか分厚い!たぶん著者は国道に関することは(走りとしては)描き尽くしたのではないか?これ以上は、マニア同士でツィッターなどで語ってほしい。
とは言うものの、大変面白かった。「酷道」は知っていたし、動画も少しは見た。が、ある国道を始点から終点まで走る「一気完走」(第4章)や国道の様々なレコード(第5章)「非国民」(国道を通らずに目的地に行く。第9章))などは気がつかなかった(知らないのは当たり前なので…)。また国道(というか道)グッズの少なさを著者は嘆いているが、そのうち日の目を見るのではないか?銅像マニアがそう予想します(笑) -
Posted by ブクログ
化学物質が歴史に果たした役割について、生命、心、エネルギーの分野でまとめている。
炭化水素は油のような性質になるが、酸素や窒素が加わると分子内の電荷の偏りによって水になじみやすくなる。炭素と酸素や窒素との結合は離れやすいため、反応性が高い。
香辛料の多くは、フェニルアラニンが変換されてつくられており、ベンゼン環に3炭素程度の側鎖が付いた構造をしている。
江戸時代の薩摩藩は、奄美や琉球で生産された砂糖を大坂で販売し、その資金で蝦夷地の昆布を買い付けて大陸に売り込むことによって、巨額の利益を稼いだ。
ニコチンは、神経伝達物質のアセチルコリンと同様の作用を演じるため、神経の働きを活性化させるが、ニコチンを摂り続けているとアセチルコリンの生産力が落ちてしまう。
DNAの4つの核酸塩基のうちのアデニンとグアニン、エネルギーを運搬するATPやサイクリックAMPはプリン骨格を持つ。
ラムはサトウキビを搾りとった後の廃液(糖蜜)を発酵・蒸留したもの。カリブ海で奴隷を下した船に糖蜜を積んでニューイングランドへ運び、そこでラム酒を積んでアフリカへ戻るという三角貿易の一角を支えた。麦芽の発酵液を蒸留して樽に貯蔵し、木材の成分が溶けだしたものがウイスキー。トウモロコシを用いたものがバーボン。
宋代に発明された爆薬の原料のひとつである硫黄は、火山国日本からの輸入に頼っていた。もうひとつの原料である硝石は、尿糞が酸化された硝酸イオンから得ていた。イギリスがインドを植民地化したのは、ガンジス川で硝石鉱床が見つかったことが大きな理由だった。
リン鉱石は2060年頃に枯渇するおそれがある。
石油成分のうち、炭素がひとつだけのメタンは都市ガス、炭素数3〜4の成分はLPG、5〜10の成分はガソリン、11〜15の成分は灯油、15〜20の成分は経由、さらに大きなものは重油として利用される。シェールガスの主成分はメタンなので、発熱量当たりのCO2排出量は石油より少ない。
炭素繊維の重さは鉄の4分の1だが、重量当たりの強さは10倍以上。カーボンナノチューブはさらに強く、シリコンよりも低電力で高速な電導体にもなる。 -
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傑作である「スパイス、爆薬、医薬品」にひけを取らない良書。海外経験のない日本人研究者がこれほど読みやすい文章を書け、俯瞰的視点が持てるとは驚き。
・イギリスは阿片の自国流通は厳しく規制
・狩猟時代の1日の労働時間は3時間程度
・人体が甘味を感じる仕組みは謎。各種甘味料の構造式に共通点無し
・将棋の「桂」はシナモン「香」はナツメグ、クローブ
・タバコ擁護論者は他では論理的だが、好きなものに対するバイアスが多大にかかっていて、ニコチンに操られているかのよう
・400リットルのウィスキーには樽由来成分が2kg近い
・チンパンジーに貨幣経済を教えると売春、強盗が発生する
・石油の由来について、無機起源説の説得力が増してきている -
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食べ物にしても、着るものにしても、住むところにしても、そして僕らの体も、あらゆるところに炭素化合物がある。炭素なくして文明は発生しなかったし成立もしない。本書は、炭素からなるいくつかの物質が、それぞれどのように人類史に関わってきたかを説く。この手の話は好きなのだ。人類最大の友・エタノールだとか、世界を制した合法ドラッグニコチンとか。僕は喫煙習慣がないが、これを読んだらタバコを吸ったほうがいいかもな、などと思った(本書は断じて喫煙を勧めてはいないが)。しかし、章ごとが物質で区切られていて、文明を築いていく俯瞰という風にはなっていないのが残念。とはいえ、物質毎の人類へのコミットぶりは愉快でもあり悲しくもあり。
終章では炭素のこれからを語っていて、これが恐らく著者の本領なのだろう。ここまで辿り着いたなら、誰だってこれまでもこれからも炭素がいかに重要かはわかる。21世紀は炭素争奪戦にならざるを得ないだろう。これからの道を切り拓くのは炭素をマネジメントする技術に他ならない、と。 -
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研究者としての経験も交えた創薬のお話。基本的なことから要領よくまとまっていて有益。4年ほど前の本で,来るべき2010年問題について詳しいけど,そういえばあの危機の顛末ってどうなったんだろ?
20世紀に比べて新薬開発が厳しくなってきてるのは確かなよう。昔から製薬会社では,ほとんどの研究者は一つも新薬を作り出すことなく終わるということだったが,作れる薬は既に作られていることや,既存薬を超える優位性が必要になってきたこと,副作用への警戒などからさらにハードルは上がっているらしい。三つの新薬を世に送り出した伝説の研究者による講演が,時代遅れもいいところの期待外れだったというエピソードが印象的だった。 -
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今や何するのもリスク、リスク、リスク。対策、対策、対策と。
世の中息苦しい。
そしてリスクは、誰かが口に出した途端、抗し難い強制力を持つ。しかし、それが定量化されてない以上しょうがない側面もある。
本著ではリスクはまず、「あるのかないのか」(定性)、「ある場合はどの程度のものか)(定量)を判断し、そして「ある場合」においても、その確率と影響度合いについての見極めが必要というお話を展開する。
もう確かに仰る通り。
(でもその定量化が難しいんだけどね)
そして我々がどのようにリスクを見誤る傾向があるかについて、本著で触れている。これは是非必読レベルなんでオススメしたい。きっと時間とか金とか、そういうものをまず見直したくなるだろうと思う。
はいはい、タバコ辞めればいいんでしよ。(泣) -
Posted by ブクログ
確証バイアスについて知りたかったので、ネットで検索したところ本書がヒットした。内容的には少しずれるような気がしたが面白そうだったので読んでみた。
人はなぜリスクを読み間違えるのかというテーマのところで、確証バイアスが出てくる。
確証バイアスとは、本書でも引用されているユリウス・カエサルの言葉「人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。多くの人は、見たいと欲する現実しか見ようとしないものだ」に集約されていると思う。
また、孔子の「学びて思わざれば則ち罔し、思いて学ばざれば則ち殆し」という論語の一節を引用している。
つまり、「正しい知識を身につけた上で、考えろ」ということだが、
この正しい知識というのは、バイアスのかかった偏った主観では得ることは難しい。
本書を読んで、私自身は「天然」「自然」が良いというバイアスを持って物事も見ていたことに気付いた。
しかし、著者は「化学」に対して偏っているようにも見受けられるところがある。
例えば、ソルビン酸のリスクの件(106ページ)では、回避できるリスクとそうでないものとを同等に比較して論じており、違和感を覚えた。
ただ、その先に挙げられているメリットを知れば、なるほどそうかと一概に著者の意見を否定できない。
これがまさに確証バイアスなるもので、否定的なイメージをもっているもの(ここではソルビン酸)に対しては、デメリットにばかり目が行き、メリットなどハナから無いものだと決め付けていた。
ただ他に、若干強引でないかという論理もあった(水中毒に関する件(128ページ))。
著者が主張する、「定性思考」「定量思考」やトレードオフの考え方はとても参考になった。
感情、感覚だけで判断するのは非常に危険でヒステリカルなことだと改めて感じた。
本書のタイトル通り、今の社会は「ゼロリスク」というバイアスのかかった状態なのかもしれない。
トレードオフの観点からも、物事をよく見てよりよい判断をしていかなければと思った。