佐藤健太郎(サイエンスライター)のレビュー一覧
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世界史と有機化合物とを見事に繋ぎ合わせた傑作。過去に起こった様々な戦争が、実はたった一種類の有機化合物を巡っての争いであることも少なからず。このような観点で、化学の歴史も学べるなんて、まさに目から鱗。
もしこの現代になってアルコールが発見されたら、恐らくアルコールの摂取そのものが認可されないだろうというのは、確かにその通りと納得。
あとがきに書いてあるが、化学物質と聞くと世間一般には危険、汚染、悪者といったネガティブなイメージしか湧かないかもしれない。しかし、この世の人々の生活は全て化学物質・化学反応の進化の上に成り立ってるんだという著者の熱い思いには、同じ化学者として大いに賛同いたします -
Posted by ブクログ
やばい。これはすごく面白い。興味深い。
炭素由来と言って簡単に思いつくのは鉛筆やダイヤモンド、せいぜい石炭だろうか。
現代の科学においては、有機物といえば炭素化合物になるのだそうな。私の中では有機物は生命が元になっているもの、無機物はミネラルなどの鉱物系のイメージだったので驚いた。
つまり、石炭は言うに及ばず、ガス、石油も炭素化合物なのである。
いやいや、それだけじゃない。でんぷん質、砂糖……我々が生きていくために、炭素は必要不可欠なのである。
人間が狩猟民族から農耕民族に代わり、穀類の争いが始まり、産業革命がおきてからはエネルギーをめぐる戦争が起きている。
オイルショ -
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ネタバレビジネス新書なのに、泣けた。
例えば、「スタチン剤の生みの親、遠藤氏は自分の化合物が会社方針でつぶされかかったとき、社に無断で勝手に臨床試験を行うという恐ろしい「暴挙」に出ている。難病に苦しむ少女を救うためでもあり、安全性、有効性について確信があったからこそ試験に踏み切ったのであろうが、何か事故でもあれば間違いなく氏の首は飛んでいたところだろう。こうして自分の存在証明をかけてあらゆる障害と闘う人がいるからこそ、新薬は生まれるのだ」
研究者の最大のインセンティブは研究それ自体の喜びであり、患者を救いたいという強い思い、使命感だ。これは決してきれいごとではなく、研究に喜びを感じない人に対し -
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医薬品業界という産業は新薬を創りにくいものの、一つ一つの医薬が膨大な利益を生む観点から考えれば、非常に高収益でかつ不安定な業界特性だ。
膨大なR&Dを経て次々に登場する新薬から巨大な利益をあげ、世の景気に関わりなく右肩上がりの急成長を続けて来た医薬品業界が、本当にここに来て初めてつまずきを見せているのならば、この不可解な現象がなぜ起きたのか。医薬の進歩は本当に限界を迎えたのか。そしてこれから一体何が起こるのか、という論点を考えることは多分色んな面で今後役に立つと思う。
~“経営コンサルタント、証券会社のアナリストといった人々は、「クリティカルマス」「スケールメリット」などの言葉を -
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おもしろかったですね〜!分かりやすくて読みやすいです。うんちくがふんだんで好みでした。
人類はずっと昔から病と共存していて、今の私たちはそれらの蓄積の上に、生きていることがよく実感できます。
直近ではコロナウイルスの流行がありましたが、あれから数年、気づけば以前の生活にすっかり戻っています。
今更ですが、それは本当にすごいことに感じました。世界中で蔓延しているということは、そこに投資することにまず正当性があったのだと思いますが、きっと個人単位ではこのウイルスをどうにかしようと思って、尽力してくれてたのだと思います。
コロナウイルスのピークの状況が具体的解決策となく続いていたとしたら、それは恐ろ -
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新しい材料は変革をもたらして文明を発展させるという意味で、人類の歴史に果たしてきた役割は大きい。
ファインセラミックスは、純度100%近い材料を用いて、粒のサイズ、焼成温度をコントロールして作る焼き物。コンデンサや電池の電極、高温超電導材料が作り出されている。
コラーゲンは、アミノ酸の鎖が3本絡み合った長い繊維で、ヒドロキシ基によって3本の鎖が結合されている。細胞間の隙間を埋めて貼り合わせる役割を持つほか、骨もコラーゲン繊維の間をリン酸カルシウムの結晶が埋めた構造をしている。コラーゲンは、人間のたんぱく質の3分の1を占める。コラーゲンを煮込むと鎖がほどけて水分を含んだゼラチンになる。木製の -
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最近、メディアやネットを通じての炎上も度を越した「過剰反応」、企業ではオーバーコンプライアンスというように「ゼロリスク志向」を目にすることが増えた。やりすぎで、本末転倒になったり、逆に同じ貉として加担してしまっているケースだ。善悪二元論で分かりやすく、正義を演じる快楽にも浸りながら、つまりは思考停止状態とも言えるのではないか。そんな危険性について、ゼロリスクこそリスクであるという逆説的な論調で痛快に皮肉っていくのが本著。
問題を起こした企業こそ、リスクマネジメントやCSR、コンプライアンスが金科玉条となり、それを優先していく傾向にあるが、それは間違えではないのだが、日本経済が長らく不況に苦し -
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人類の歴史を作ってきた炭素化合物のはなし。炭素原子は電荷に偏りがなく4つの腕の結合を使って強固で長い結合を作れる。地球上に質量比0.08%しかないのに多彩な化合物を作り出した。
デンプン、砂糖、香辛料、グルタミン酸、ニコチン、カフェイン、尿酸、エタノール、ニトロ、石油...
人類の歴史は炭素の歴史だと感じる。
■人工甘味料
アセスルファム、アスパルテーム、スクラロース...甘味受容体と結合して脳に甘みを感じさせるゼロ低カロリー甘味料
■香辛料
カプサイシン(唐辛子)、ピペリン(胡椒)、ミリスチシン(ナツメグ)
■アルカロイド
植物が作る毒素。肉体は拒否するのに精神は欲してしまう。 -
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炭素の歴史といえば、「火の発見/活用」による(食材の軟化で)脳の発達にはじまって
穀物栽培≒炭水化物食により定住、人口増加…。
大航海時代になると新世界植物、食物だけでなくタバコや酩酊草、ゴム…火薬の威力により植民地支配…/近代化学の定量分析で分子構成の一部解明…/
1856年、リン酸肥料確保の必要からアメリカは「グアノ島法」を成立させ、グアノ=海鳥糞のある島に領有をアメリカ人誰でも宣言可とした→ウェーク島やミドウェー島領有。
1898年、英国科学アカデミー会長就任のクルックスは「文明は窒素肥料枯渇で衰退」と宣言→空中窒素固定法開発を促した。それは成功したが、高性能火薬や毒ガスも開発