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金、鉄、紙、絹、陶磁器、コラーゲン、ゴム、プラスチック、アルミニウム、シリコン……「材料科学」の視点から、文明に革新を起こしてきた12の新素材の物語を描く。「鉄器時代」から「メタマテリアル時代」へと進化を遂げた人類を待ち受ける未来とは――ベストセラー『炭素文明論』に続く大興奮のポピュラー・サイエンス。
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Posted by ブクログ
前に読んだ佐藤氏の著書が面白かったこともあり、手に取ってみました。 想定していた以上に面白い内容でした。 「素材」に着目したことが、この本の秀逸な点であり、佐藤氏の経歴や知識を存分に発揮できる内容につながったと思います。 金、陶磁器、コラーゲン、鉄、紙(セルロース)、炭酸カルシウム、絹(フィブロイ...続きを読むン)、ゴム(ポリイソプレン)、磁石、アルミニウム、プラスチック、シリコンの12種類の素材が取り上げられています。 「12種」がそもそも絶妙だと思いますし、素材ごとのドラマも面白いですし、関連する物質(素材)や人(発見者や開発者)に関する説明も勘所を押さえていて、内容的には文句のつけどころがない本だと思います。 昔読んで面白かった『「理科」で歴史を読みなおす』にも通ずるところが多く、どんどん次が読みたくなる本でした。 ただ、1点気になったところがあります。 それはタイトル。 個人的には、『世界史を変えた新素材』ではなく、『世界史を動かした新素材』とした方がしっくり内容でした。 おそらく、著者ではなく、編集側が考えたもので、あえての違和感を狙ったのだと思いますが、自分には「タイトルの付け方が雑」という印象が残り、唯一そこだけが残念でなりません。
簡単過ぎず、難し過ぎず。 前著『炭素文明論』は「世界史×科学」の分野があることを指し示してくれた。日常に潜むSTEMに嫌気がさした時、自分が『炭素文明論』を読んだという事実を思い出すと幾分か心が落ち着く。 本書も例外ではなく、大当たり! 世界史上に見られる新素材12種を順番に追い、解説にも簡単と難...続きを読む解の落差が見られない。(つまり全編通して分かりやすい) メモ代わりにしたいところだが、ここに全12種は収まりきらんのでいつもながら数点ピックアップ… 金:貨幣から今やスマホにまで搭載されており、その輝きは「太陽の色に似ている」とは…思わず溜息が漏れた。 相対的に白金(プラチナ)が歴史上持て囃されなかった理由も明らかになる。(20世紀になってようやくカルティエが、貴金属として白金をジュエリーに採用したんだとか) 鉄:世界史の授業でもお馴染みのキングオブ金属。(ヒッタイト…取り敢えず懐かしい笑) 地球上に沢山存在するゆえに民衆も簡単に手にすることが出来たという鉄。それを更に強化した鋼や錆びなくしたステンレスに変えた叡智に改めて感服する。それで人類が繁栄すると早くに分かっていたら、何百年も錬金術に勤しむ必要なんてなかったろうに。(浅い見解…) 炭酸カルシウム:「千両役者」とは、これいかに⁉︎ なるほど、チョークにセメント…、果ては真珠まで⁉︎ セメントと同じ素材を使ったらそりゃ丈夫な貝殻が出来るよね…中身の真珠もそれとは、本当に何にでも化ける。。鮮やかに飛び六方を踏む役者を見送った後みたいに、章が終わっても呆然としていた。 シリコン:別名「ケイ素」。炭素とは兄弟元素…周期表の並びもテキトーではなかったか笑(思えば常識) 炭素と違って生物とは結びつけない分、材料として役に立ってくれている。シリコンバレー誕生秘話も何だか熱量を感じて面白かった。 メタマテリアル(超越物質):初耳…上手く活用できれば「透明マント」の開発も夢ではないらしい。 当時の段階では作り出せない未来の材料・製品を夢見た過去の人達みたいに、自分達も「メタマテリアル」の先にある透明マントを羨望しているのかも。 佐藤氏による「世界史×科学」は、今日もこうして一読者の中に夢ある反応を生み出したのでした。(つづく。つづける!)
この人とサイモンシンの本は絶対に読むくらいに好きな作者。 今回も歴史とその社会を形作る素材の進歩をエピソードを交えて講釈してくれるのが本当に楽しい。
新しい材料は変革をもたらして文明を発展させるという意味で、人類の歴史に果たしてきた役割は大きい。 ファインセラミックスは、純度100%近い材料を用いて、粒のサイズ、焼成温度をコントロールして作る焼き物。コンデンサや電池の電極、高温超電導材料が作り出されている。 コラーゲンは、アミノ酸の鎖が3本絡...続きを読むみ合った長い繊維で、ヒドロキシ基によって3本の鎖が結合されている。細胞間の隙間を埋めて貼り合わせる役割を持つほか、骨もコラーゲン繊維の間をリン酸カルシウムの結晶が埋めた構造をしている。コラーゲンは、人間のたんぱく質の3分の1を占める。コラーゲンを煮込むと鎖がほどけて水分を含んだゼラチンになる。木製の弓に動物の骨や腱をゼラチンを主成分とした膠を接着剤として貼り合わせた小型かつ軽量の複合弓は、モンゴル帝国の世界征服において主要な役割を演じた。 恒星内の核融合によって、ヘリウム、炭素、ネオン、酸素、ケイ素、鉄が作られる。鉄が原子核の中で最も安定している。ヒッタイトが開発したのは、海綿状の鉄を木炭の中で熱することで硬く強靭な鋼鉄を作る技術だった。鉄の耐食性を高めるために、スズでメッキしたブリキ、亜鉛でメッキしたトタン、ガラス質を焼き付けた琺瑯、クロムを加えたステンレスが生まれた。 105年、樹皮や麻を灰と共に煮ることにより、セルロースを取り出して作る現代と同様の紙の製法が中国で発明された。751年のタラス河畔の戦いで捕虜になった唐軍兵によってアッバース朝に伝わり、第2回十字軍の際に捕虜となったフランス兵が帰郷後に製紙業を興した。活版印刷は宋で発明され、ヨーロッパでは1450年頃からグーテンベルクが開始した。イスラム圏では印刷することが300年の間禁止されたため、印刷技術が普及しなかったことが、科学技術の面でヨーロッパに逆転を許した大きな要因と指摘されている(ニコラス・バスベインズ)。 石灰岩に粘土、珪石、酸化鉄などを混合して高温で焼いてできた生石灰(CaO)を粉砕したものがセメントで、それに砂や砂利を混ぜて強度を増したものがコンクリート。 ゴムは、イソプレン(C5H8)が長く一直線につながったもの。天然のゴムは夏には溶け、冬には固くなる代物だったが、アメリカのチャールズ・グットイヤーは、ゴムに硫黄を加えて加熱することで耐熱性を持たせることに成功した。球技の多くが19世紀後半に協会を結成したり、現在に続く大会が開始されたのは、良質のゴムが普及したことによる。ただし、グットイヤー社は半世紀後に設立されたもので、資本関係はない。スコットランドのジョン・ダンロップは、1889年に空気入りタイヤを生産する会社を設立した。 プラスチックは、合成樹脂などの高分子物質を主原料としたもの。セルロースと硝酸を化合したニトロセルロースに樟脳を混ぜて硬化したものがセルロイド。象牙で作られていたメガネフレーム、ピアノの鍵盤などに用いられたほか、映画フィルムに用いられたが、燃えやすいために現在ではほとんど使われなくなっている。ポリエチレンは1939年に生産工場が作られ、軽量で絶縁性に優れていることから、第二次世界大戦中のレーダー開発に大きな役割を果たした。現在も、全プラスチックの4分の1を占めている。ペットボトルは、1982年の食品衛生法改正によって飲料用に用いることができるようになった。海洋のマイクロプラスチックの総重量は、2050年頃には魚の総重量を超えるとの試算もされている。 シリコン(ケイ素)は、金属のように電子が自由に動かないが、他の元素をほんの少しだけ混ぜることにより、電子が移動するようになる。半導体とは、不純物の量や光の当て方によって電気の通し具合をコントロールできる物質のこと。電子の少ないホウ素を混ぜたものをp型半導体、電子の多いリンを混ぜたものをn型半導体と呼ぶ。これらの半導体を組み合わせることによって、電流を一方だけ通すダイオードや、情報を記録する半導体メモリなどをつくることができる。トランジスタは、異なる性質の半導体をサンドイッチにしたもので、長寿命かつ低コストで生産でき、いくらでも小さくできる。シリコーンゴム(silicone)は、炭素とケイ素を人工的に結合させたもので、柔軟で耐久性が高く、熱にも強い。 アメリカは、2011年に新材料の開発速度を2倍に上げる政策を打ちだして成功した。これを見て、中国も同様の計画を立てて急速に追い上げた。
金、鉄、紙、炭酸カルシウム、ゴム、磁石、アルミニウム、プラスチック、シリコンなど、人類の進化の歴史を変えた素材たちについての読み物。 それぞれの素材の歴史や人類に与えた影響を難しすぎない範囲とレベルでエピソード紹介してくれるので楽しく読める。 炭酸カルシウムに一見違和感があったが、セメント・肥料・石...続きを読む灰など幅広い活躍ぶり。ゴムタイヤの商業戦争のトピックがおもしろい。
時代は一人の天才による発明や思想、戦争のような外圧などにより大きく変転する。イノベーションにより歴史が変わり、青銅器文明、鉄器文明など象徴的技術で時代を区切る。まさに、初期の世界史は、素材の歴史だったのだ。 雑学では無い、テーマ毎にきちんと整理された知識が学べる。初耳な事も多いし、確かにと合点する...続きを読む論拠も多い。一口に素材と言っても金属類だけでは無い。寒冷期を生き延びる為に毛皮が重要。毛皮はなめす必要があり、加工には唾液から、柿渋などのタンニンを用いるなど、ここでも技術の発展があった。死活問題として、毛皮を扱えた者だけが生存できたという超重要なターニングポイントでもあったのだ。 これだけではないが、もう一つ面白いなと思ったのは紙の話。これが東西の芸術作品の歴史にも影響したのだという。先に紙を使いこなした東洋では、書道や水墨画など紙を画材とする芸術が発展。ヨーロッパにおける紙の大量生産は木材からのパルプ製造法を発明を待つ必要があり、西洋の芸術は彫刻が重要な位置を占めた。 斯様に社会には技術との因果関係があり、それにより随分様相が異なってくる。現代で言えば、インターネットやスマホだろうか。スマホ以前とスマホ以降では、道でヒヤリとする頻度や電車の乗客の首の角度が違う。あらゆる情報が表に出されるせいで、検索に引っかからない店は無きものにされてしまう。これが続くとどういう世界を迎えていくのか。まさに時代の転換点にいるのかも知れないし、いつの時代もその過渡期だとも言えるかも知れない。
素材が拓く歴史があり、歴史を通じて接し方が変わる。 ◯金:近年、無用の価値だけでなく、有用な価値も発見。 ・細長く延ばすことができ、伝導性に優れているため半導体電極とチップをつなぐ配線に使用(スマートフォン1台に30mg使用) ・ナノ粒子は有害物質分解、プラスチック素材製造の触媒機能がある ◯陶...続きを読む磁器:ファインセラミックスは高強度・高耐熱により、スペースシャトルにも用いられる。 ◯コラーゲン:三重らせんの長い繊維として存在する得意なタンパク質。 ・再生医療に不可欠な材料 ◯鉄:安く大量に生産される材料。他の金属と合金にすることでさらに優れた性質を発揮すること、磁石になるうること。 ・錆びない鉄、ステンレス ◯紙(セルロース): ・ブドウ糖のセルロース、アミロースの配列の違い
私は化学がとにかく苦手なのだが、本書は根気強く楽しく、歴史に絡めて説明されているので、とてもスムーズに読み進められた。
文明を生み、人類を豊かにした様々な素材として、鉄やアルミなどの金属、コラーゲンやセルロース(紙)などの自然素材、陶磁器やゴムなど天然素材に人間が加工を加えたもの、そして、プラスチックやシリコーンなどの人口素材を取り上げ、その歴史や特性・用途について分かりやすく解説されている。サイエンスライターらしく...続きを読む話題も豊富で、読んでいて飽きないし面白い。
大学院の授業(材料)の課題図書。 材料は専門でないしあまり興味もなかったので読み始めるのに抵抗があったが、雑学的な話が多くとても読みやすかった。
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