野口悠紀雄のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「超」整理法などで知られる著者による、経済に関する一冊。
タイトルである「リープフロッグ」という言葉は始めて聞きましたが、著者によれば蛙跳びの意味で、遅れていた国が、ある時、急激に発展し、先を行く国を飛び越えて、世界の先頭に躍り出ることを言うそうです。
現在の中国、アイルランド、明朝時代の中国、大航海時代のポルトガル・スペイン・イギリスの興隆の歴史を振り返り、日本におけるリープフロッグの可能性を探っていきます。
そのためには、「今の日本の遅れを取り戻すために政府は何をすべきか」という質問自体に、現在の日本人のメンタリティが現れていると批判し、政府主導ではない、民間の組織が行うことを求めています。また、初頭教育の公平性や職業の世襲制もないことは基本的な構造にいて逆転可能な社会と説きます。現状は、人々が獲得した豊かさに満足し、逆転しようとする意欲を喪失しており、小市民的な生活に安住してしまっている人が増えていることが問題としています。
結論が若干理念的なものになり、具体的な提案がなかったことが物足りない印象ですが、歴史を振り返りながら、今後の将来を考える重要性に気付くことができる内容です。
▼リープフロッグとは、蛙跳びのこと。蛙が跳躍して何かを飛び越えるように、それまで遅れていた国が、ある時、急激に発展し、先を行く国を飛び越えて、世界の先頭に躍り出る。そして世界を牽引する
歴史のダイナミズムを包括的に説明しようとするマクロ歴史理論の一つ。段階的な発展論と対照的な考え。「キャッチアップ論」と似たところがあるが、先進国に追いつくだけでなく、逆転するとしているところが重要。
▼歴史は、様々な主体間の相対的な関係が不変のままで連続的に変化していくのではなく、時として相対的な関係を逆転させつつ、不連続的に変化していくのです。
▼「リープフロッグ」の特徴は、「遅れていたことが有利に作用した」ということ。これは「後発的利益」と言われることの一種。
逆転が起きるのは、技術の導入には社会的制度が対応する必要があり、古い技術体系に適応してしまった社会は、新しい技術に対応できない場合が多いという理由による。先進国の立場からすると、キャッチアップされるだけであれば、大きな問題とはならない。しかし、リープフロッグされると、自分たちのほうが立ち遅れてしまうわけで、大問題。中国とアメリカの間で、AIなどについて、まさにその問題が生じようとしている。米中経済戦争の根底にあるのは、それに対するアメリカの強い危機感である
▼日本が最も栄えた1960年代において、人口は9000万人台でした。国の活性化とは、人口を増やすことではありません。達成すべき何らかの目標を持つことなのです。
▼分権が認められている社会では、一部分が失敗しても、全体が失敗することはりません。リスクに挑戦すれば失敗する商人が出てきますが、リスクが分散されているので、社会全体が崩壊してしまうことはありません。こうして、分権化されている社会では、能力と意欲のある人々が、その能力を発揮できる機会が与えられるのです。「株式会社」が、その具体的な形です。
人間の能力は、どんな社会でも似たようなものです。しかし、社会構造が違えば、社会全体の力は違ってきます。大航海の成功によって人間の経済活動の範囲が急激に広がった時、リスクに挑戦する仕組みを持つ社会と、持たない社会との差が顕在化したのです。
▼インド植民地化によって、多くのイギリス人に新しいフロンティアが提供されたという事実がある。そうした可能性があるとき、多くの人が可能性を求めてさまざまな活動をし、社会は活性化する。ある国が他の国をリープフロッグして世界の最先端に立つときは、経済の一部だけが活性化するのではなく、国全体が沸き立つような興奮状態に包まれるもののようだ。ある面での躍進が別の面での進歩を引き起こしていく
▼GPT(General-Purpose Technology:汎用技術):広範な用途に用いられる技術であり、経済全体に影響を与える可能性のある技術のこと。電気はその典型例。汎用技術は、現存する経済や社会の構造への影響を通じて、社会を劇的に変化させる可能性を秘めている
▼リープフロッグは、インターネットや電気のような新しい技術、しかも一般的に広く使われる技術(GPT)の登場によって生じる。ところで、新しい技術さえあれば必ずリープフロッグができるかというと、そうではない。新しい技術を収益化するビジネスモデルが必要
▼明治の急速なキャッチアップは成功したが、国家関与の問題がある
①中央集権化:中央集権政府の下での画一的な社会となり、急速な工業化の実現には有利に働いたが、新しいものを生み出すという面からすれば問題
②キャッチアップに満足し、おごりが生じた
③政府依存志向を強めた
▼この時に形成された日本企業の基本的な形態は、戦後の日本にそのまま受け継がれた。この仕組みは、高度経済成長期においては、うまく機能した。なぜなら、その当時の経済状況を考えると、労働者が一つの企業に定着し、仕事を通じて技能を高めていくという方式が、生産性向上に寄与したからだ。
これは、製造業が中心的な産業である経済の特徴。そして、「キャッチアップ型」の経済成長を実現している経済の特徴でもある。こうして、高度成長期に、「会社第一主義」が形成されていった
▼いま求められているのは、デジタル化の問題だけでなく、日本型組織の基本に関わる問題。これが解決されるためには、つぎの2つが必要
①組織間の人材の流動性の実現。専門家が必要に応じて組織間を移動できるような労働市場のが形成されなければならない
②経営者が組織間を移動すること。アメリカでは経営者は専門的な職業であると考えられており、経営者が組織間を移動することは頻繁に行われている
▼一人一人が逆転の可能性を決してあきらめないこと。どんな場合でも逆転の可能性を信じること。偶然のチャンスに期待するのではなく、実力を蓄えることで逆転すること。それに向かって努力すること。勉強して、新しい技術を身につけること。常に自分の能力を高めようと努力すること。こうしたことがなされるなら、日本は、世界最先端のグループに復帰することができるでしょう。
<目次>
第1章 中国急成長の秘密はリープフロッグ
第2章 ヨーロッパ最貧国が世界のトップに
第3章 世界最先端にいた中国は、リープフロッグされた
第4章 リープフロッグが次々に起きた大航海時代
第5章 産業革命をリードしたイギリスが、リープフロッグされる
第6章 リープフロッグにはビジネスモデルが必要
第7章 日本は逆転勝ちできるか? -
Posted by ブクログ
■本のポイント
アイルランドのIT化
明の鎖国による停滞と保険と株式会社を発明してリスクを分散した大航海時代のヨーロッパ
地中海か締め出され喜望峰、インド航路を発見したポルトガルの発展
新大陸を発見したコロンブスのスペインは、資産を王室が浪費した。
イギリスはエリザベス女王のもとで発展。ドレークにより世界一周、財宝確保し大英帝国を築いた。
産業革命が起きたイギリス、その後石炭メインだったため、アメリカドイツの電気化に遅れた
現金、固定電話、内燃機関、大学教授が文革でいなくなった
ビルは更地のほうが立てやすい
少なかった中国
リープフロッグはキャッチアップとは違う
ルイス転換点、中所得国の罠を克服している
■示唆
リープフロッグ、技術+ビジネスモデルが必要
メインフレーム、労働組合など、レガシー(既得権益)が邪魔をしている
アメリカでできている理由はなにか?
日本、個人でリープフロッグするためにはどうすればいいか?
→逆転しようと努力することが大事、という結論 -
Posted by ブクログ
まず全体的な感想として、仮想通貨も技術的な思想や問題の発生原因等を根本的な説明などが非常に参考になった。またこれを80歳にもなる野口幸雄さんが書かれていることに驚きを隠せない。
自分自身も仮想通貨を一部保有しているが、投機的な価値上昇することと技術課題をはらんで展開されていくのかということをよく肝に銘じたいと感じた。
一点、素晴らしいなと思ったのは、仮想通貨をカリフォルニアのゴールドラッシュで説明し、カリフォルニアでは詳細は乗り遅れるなと叫んでみんなと同じ方向に走れば群衆に押しつぶされてしまったが、ゴールドラッシュで金持ちになった人は初期のマイナーだけだったか?実はそうではなかった。と説明し、リーバイ•ストラウスがブルージーンズを発明して大金持ちになったと解いている。これを、マイニングザマイナーズとして、現代のリーバイスを期待する、とのこと。
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Posted by ブクログ
自分の読書で圧倒的に足りないのが「古典」だ。
ということでガイドブック的に活用しようと本書を購入。
当初の目的に十分かなう一冊だったのだが、ちりばめてある一言一言が染みてくる本でもあった。
例えば…、
「歳をとれば肉体能力は低下しますが、知的な能力は高まります。問題は、高まった能力を使い切るだけの時間的余裕がなくなることなのです」
(能力が高まっているかは別にして…)まさに今の自分。積みあがった本を前に「これ死ぬまでに読みきれるのか?」。大量の楽譜の山を前に…、沼にはまったレンズを前に…、ずらりと並ぶ酒瓶…、趣味もリストラが必要かも。
オスカーワイルドは100年以上前に、「昔は、文学者が本を書いて、大衆が読んだものだ。いま、大衆が書いて、誰も読まない」と今の状況を予見していたとか。
今生きてたら、「いまビジネス書を読みたい人より、ビジネス書を書きたい人の方が多くて、誰も読まない」とか言うんだろうか。
SFも足りてないジャンルなのだが、熱い解説を読んで試してみたくなった。あ、また本が増えてしまうか 笑 -
Posted by ブクログ
野口教授の本は、章ごとの前書き、まとめ、書籍の索引などが充実していて読みやすい。
本内容では、章ごとの前書き、まとめは、「書く」側からもメリットがあるという記述があった。
アイディアが生まれるには、「問題設定」と「材料集め」と「答えを出す」こと
Twitter、Note.com、Google Document等のクラウド・ツールを使いこなして、
- 3層による文章(ファイル)の管理:メタキーワードとファイルリンクとコメントで3層化
- タネ(考えの断片)Twitterベース140文字
- 作物(基本ブロック=まとまった論考)1000から1500文字
=>タネから作物を作る。作物を100個作れば、書籍として構成できる。
構造を作るのが難しいのは、内容が多次元だから。この作業は、大変だが、面白い。