市川拓司のレビュー一覧
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ネタバレp.256
けれど、ぼくは望んでしまった。彼女のためになにかをしてあげたい。そう思ったとたん、ぼくは「欠けている」人間になった。なにかを求めると、ひとは完全ではいられなくなる。求めるとは、つまりはそういうことだから。
自分の中のなにかを壊し、その窪みに相手が差し出すものをそっと嵌め込んでみる。そうやってぼくらは新しい存在になっていく。ぼくでもなく、きみでもなく、ぼくらという新しいユニットの一部分に。
人と関わり、関係性の構築で僕が一番大事にしている対象理解と自己洞察は他者への愛と自分への愛の葛藤と共存で育まれるんだなーと思いました。
自分を壊し、窪みに他者を嵌め込むという表現には鳥肌を感じました。
また、時間をあけて再読するとあらたな発見があるんじゃないかなーと感じずにはいられません。 -
Posted by ブクログ
『いま、会いにゆきます』で有名な市川拓司の短編集。
「Your song」
「泥棒の娘」
「ねぇ、委員長」
の3編が収録されている。
内容紹介は「ねぇ、委員長」のものだが、実は3編共似たような構成、ストーリーである。
孤立した男の子あるいは女の子と、これまた周りとは少しずれている主人公の交流のお話。
同じような表現が出てきたりして、少しもったいない。
それぞれの良さを一つに集約できれば、もっといい作品になったかもしれないと思う。
似たような作品なので、一番最初に読んだ「Your song」の印象が一番良かった。
この作品は2人の世界に閉じこもるよりも、2人で世界に向かっていこうとする様を強く感じたからかもしれない。
主人公は祐希のためを思って自分を殺そうとし、祐希は自分の境遇を受け入れてそれに立ち向かおうとしている。
そんな2人はかっこよかった。
はじめに「感じる力」という表現が出てくるが、3つの作品のどれをとっても、この言葉がキーワードになるように思う。
主人公達はこの「感じる力」のある子どもたちだった。
敏感で繊細で、思春期特有の青臭さを持ちつつも、真理に近づいているような。
彼らの感じること、考えることは、とても納得しやすい言葉で入ってくる。
実は市川さんはなんとなく読むのを避けていた作家さんだった。
というのも、『いま、会いにゆきます』のような「泣ける!」とうたわれた作品に陳腐さを感じていたからだ。
実際の私自身は、こういう作品にはまってしまうタイプなのだが、案の定市川さんの描く「感じる力」には惹かれてしまった。
違う作品も読んでみようと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ以前観た映画『そのときは彼によろしく』の原作者が市川拓司さんでした。
そしてその当時、僕と交流のあったネット友だちたちが
「市川拓司っていいですよね」
と語り合っているのに接し、
そうなのか、いいのか、そのうち読んでよう、
と思いながら、やっとのことで読んだ一冊がこの作品になりました。
読み終えてですが、いやぁ、よかったです。
祖父の人生の物語を知る孫、というかたちの物語。
生きにくさを生き抜き、純粋かつほんものの愛を知り得た、
邪なところはないのだけれど、でも柔弱かつ素朴すぎるくらいの性格で、
さらにはいろいろな不安神経症的であったり恐怖症的であったりする性質のある祖父。
そして、身体の弱いヒロイン(祖母)・真利子の前向きな美しさ。
彼らを包みこんだ光と闇があります。
光は人間的な温かみであり、闇は人間の憎しみや賢しさに起因するものでありました。
この作品に書かれていることでまずハッとしたのは、
冒頭付近でも語られる、
この人間の憎しみが祖父の不安神経症や恐怖症を作り上げているところに繋がっている点です。
世の中、強迫観念を強くもってしまう人がほんとうに多いと僕は感じていて、
それは局面によっては僕もそうです。
そういった強迫観念の大もとには「不安」というものがあって、
それが恐怖を作り上げてもいますし、
DVなどの暴力とも絡んでいると僕は見ています。
それは支配欲や権力欲といった人間の欲望の根源にも
不安が横たわっているように見えるからですが、
そういった不安から生まれ出るものの大きな一つのものとして、憎しみはあるのではないか。
そして、その憎しみが他者に向けられて、そこにまた新たな不安が生まれ、
その不安が憎しみを再生産していく、という図式があるようにイメージできます。
もっと細かく言うと、不安→強迫観念→(昇華しない強迫観念の果てとしての)憎しみ、となります。
この物語で、不安や恐怖、強迫観念をもつ祖父の心理は、憎しみへと至りません。
そこが祖父の強さでした。
自分で負のサイクルを終わらせることができるタイプです。
そしてそれは強固な意志によるというよりも、
性格的に、精神性的にそうであって、
その根本には戦争体験で男性性を打ち砕かれたから、
という原因を見てとるのも間違いではないかもしれない。
仮にそうではあっても、
祖父は、憎しみを持たない精神性をもつ男性へと再生を果たしたと言えます。
祖父は、男性として欠落している、欠損した精神性をもっている、
と評価されてしまうような人物でしょうけれども、
そこには、自分ひとり丸ごとを賭して「悪」を断絶する勇気がある、と感じられもします。
なまっちょろくて、弱弱しくて、全くもってかっこよくないのですが、
根源的な部分での勇気を持っているのでした。
でもって、そんな祖父が愛というものととても近しかった。
素晴らしい女性と結ばれることができた。
ただ、その関係の儚さは、祖父が、自分にまとわりつくものだけでも断絶しようとしてきた
「悪」による作用だった気がしてなりません。
そんなに簡単に片付くようなものではないですし。
……という感想も、この物語の一面しか語っていません。
もっと豊饒なものが、この300ページくらいの作品には息づいています。
たとえば、江美子さんというキャラクターもとても素晴らしかったですね。
最後の方はうぅぅと泣けてしまうので、一人で部屋で読むことを推奨します。
好い読書体験でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレコロナ禍で知人に貸してもらった本シリーズ。
またまた、名前は知ってるけど読んでいなかった市川拓司さん、初読です。
息苦しさを感じながら、どうにか周りと折り合いをつけている主人公。
逆に、どうにも折り合いをつけられずに問題児扱いされても、自分をまげず、誰にもない特別な魅力を持つ同級生。
ふたりが出会い、互いに新しい世界を知り、淡く深く刻まれた恋を描く、中短編集。
主人公が中高生だからなのか、恋愛小説というより青春小説として、とても爽やかに楽しめた。
三編とも、自分の行きたいところへ行けるくらい大人になった主人公の、彼(もしくは彼女)への強い思いが描かれていて、これからのふたりの物語への予感が良かった。
が、またしても『初恋が時空を終えて』という惹句には、ちょっと大げさじゃ…と思ってしまった。
素直にさりげなく、中身に合った紹介にしておいて欲しい。
恋愛小説で有名になった作家の作品に、また恋愛を求める読者を呼び込みたいのはわかるけれど、私のような恋愛に弱い読者は、この作家さんを一生読まなかったかも。 -
Posted by ブクログ
悲しい物語というか物語が始まらないことが悲しい。
恋愛についてのお話です。
ネタバレっぽいことをするから、
読みたくない人は読まないでくださいね。
カメラ好きの大学生たちの恋愛なんですよ。
そして、
恋をすれば寿命があと6年になるという
不思議な病気を彼女が持っています。
彼氏はそんなことを知る由もなく
付き合うわけでもなく
なんとなく日が過ぎていく。
恋をするまで体は子ども。
でも恋をしたらだんだん体が大人になっていく。
そして、付き合うかという時に
彼女はいなくなる。
海外でカメラの仕事をしているのかと思いきや、、、、
あとは想像してください。
付き合うまでがいいっていう人は多いと思いますが、
その先も問題なくハッピーエンドになる作品はないものかといつも思ってしまう。
別れ=感動になってますよね。
それはそれで付き合うまでの過程が面白い作品でした。
読みやすいしおすすめです!