オリヴァーサックスのレビュー一覧
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どなたかの本棚で面白そうだったので、ずっと気になっていた脳神経学者オリヴァー・サックスの一冊目はこちらに。
利き腕を怪我した場合、反対の手や足でできることが増えることがある。脳の内部でプログラムや回路が変化して、異なる行動様式を習得したのだ。
このように欠陥や障害により潜在的な力を発揮して躰が再構築されることがある。
このように、人間の脳や身体の病から別の機能が発達する症例に接して、脳の機能だとかそこから構築される人間の個性とかを感じるドキュメンタリー。
『色盲の画家』
65歳のジョナサンは交通事故の頭部損傷で目の認識が変わった。視力は鋭くなり遠くの物が認識できる。しかし色が全くわからなく -
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オリヴァー・サックス(1933-2015)の強烈な自伝。出版は2015年。
原題は“On the Move: A Life”。のっけからバイクの話が登場し、6ページ目までぶっとばす。書名の通りon the move。もちろん、この慣用句はサックスのactivityの高さの謂い、その生き方を指している。
ロンドン生まれ。父母はともに医師、ユダヤ人。オックスフォードの医学部を卒業し、28歳でアメリカに渡る。医師として、研究者として几帳面な生活を送るも、一方、仕事がオフになると、バイクで放浪。同性愛者でもあり、一時期は薬物依存の生活も送った。『レナードの朝』のあの医師のイメージからは想像もできない。 -
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原著は1995年刊。いまやメディカル・エッセイの金字塔。インパクトのある『火星の人類学者』というタイトルもいい。16ページのカラー口絵も彩りを添える。
大脳性色盲、トゥーレット症候群、側頭葉癲癇、開眼手術、サヴァン症候群、高機能自閉症など、オリヴァー・サックスが出会った7つの驚くようなclinical casesを鮮やかに描き出す。
最終章ではあのテンプル・グランディンを訪問する。自身の自閉症を説明するのに「火星の人類学者」というメタファーを用いたのは彼女だった。訪問の終わり、空港まで送ってもらい、別れ際に、許しをもらって彼女とハグする。なんという温かな終わり方か。 -
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原著は2017年刊。オリヴァー・サックスは2015年に亡くなっているので、いわば「遺作」。亡くなる2週間前、サックスは、「ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス」誌に掲載したいくつものエッセイをこのような形でまとめることを編集者に託したのだという。
エッセイは10篇。サックスの敬愛する3人のビッグネイムが頻繁に顔を見せる。ただ、登場するのは、植物学者としてのダーウィン、精神分析を言い出す以前の神経学者としてのフロイト、意識の川(流れ)について考えたジェイムズである。
いつものサックスと少し違うのは、人間よりも、動植物にスポットライトをあてている点。なんとなく枯れたエッセイのようにも感じる。もち -
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きっかけは、Jordan Petersonのおすすめ書籍の中にあるのを見つけたこと。
何かを知るためには、境界領域にあるものを詳しく調べるのが効果的、というようなことを考えた。脳になんらかの障害のある人々のことを知ることは、人間を知ることにつながる。
自分とすごく異なると感じる人達もいるがー全色盲、健忘症、自分と変わらないのではないかと感じる人たちもいるートゥレット症候群のお医者さん、自閉症の動物学者の教授。
自分はサイコパスなのではないか、と思う瞬間はよくある。多分、病気と健全の間は想像するよりずっと近いし、はっきりと線が引かれているわけではないと言うことだと思う。
一章読むごとに、 -
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ネタバレ脳神経外科による脳炎後遺症患者の長期観察記録。ただし、無味乾燥な症状や数字のみの記録を避け、患者個々の性格や言動、発症までの暮らし、社会との関わり方までも記載し、文学的で哲学的。それは現代医療の患者を即物的に扱う姿勢への批判からきており、一見支離滅裂な行動をする患者側から見た世界、その行動原理、内在する深い人間性への洞察も記されている。物事の断片で正邪を決めつけ、糾弾してゆく世相にも、警鐘を鳴らす指摘だと思う。
どうしても『アルジャーノンに花束を』を想起する。夢の薬エルドーパによる「目覚め」と呼ばれる劇的な症状の改善、それは生まれ変わるかのような重い症状からの解放をもたらすが、強い副作用、制御 -
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ネタバレ私は脳科学系の読み物が好きで、ことに知覚で形作られる世界は個人的なもので、普遍的なものではないという見方に非常に興味を持っている。本書はまさしくその興味を揺さぶられる内容だった。
本書に描かれている人のうち数人が、自身が障害を持っているということを自覚した上で、障害を消したいとは考えない、とコメントしていたところが印象的だった。それほど彼らが抱えているものが彼らのアイデンティティとして切り離せず渾然一体となっていること、そしてそれほどに彼らが彼らの知覚している世界を守りたいと感じるのだとわかった。
健常者は、ハンディを抱える人に対して、「正常な知覚ができる状態にできれば感動的だろう」と考えるこ -
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個性と多様性の本。
冒頭にウィリアム・オスラーの「病気について語ること、それは『千夜一夜物語』のようなものだ。」という言葉が載っている通り、(本人や周囲の人には辛いこともあるだろうけど)出来の良い短編を読んでいる様な驚きや発見がある。
身体の一部であったり神経や脳の機能が喪失したり過剰だったりで、こんなにも多様な症状が出ることに人間の身体の不安定さと同時に安定性も感じる。
そして、本当の意味で「感覚」の違う人との相互理解は出来ないからこそ、理解しようとする姿勢と一方の「感覚」での評価の意味のなさがわかる。
p. 91 私が診ていたある患者は、後頭葉への血管の塞栓のために、脳の視覚 -
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オリバー・サックスのこれまでの著書の中で最も素晴らしかった。世の中には「杉山なお(著) / 精神病棟ゆるふわ観察日記」のような心療内科患者・生理学的障害を持つ患者を動物園のように「観察」する書籍もあれば、この著者のように限界まで「一人一人としての人間」を理解しようと試みる本気が伝わってくる著書もあるのですね。やはり一番印象的だったのは映画にも成った表題「火星の人類学者 テンプル・グランディン」さんのお話でしょう。日本人なら誰もが「村田沙耶香 / コンビニ人間」「同 / 地球星人」を連想したのではないでしょうか。後者は正に「私達は地球星人ではなかったのだ」という視点で書かれています。本書は一冊通
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「HALLUCINATIONS」不思議の国のアリス症候群は知識として持っていたけれど、脳の機能として(脳を誤情報が通過する際の間違えとして)要塞スペクトルというのが走ってしまうという事が脳に予めインストールされているというのは驚いた。私は予期発作の前兆として輪郭の極端なまでの強調が「嫌悪」と同調して起きる。この本には様々なHallucinationsの事例として独立した「幻覚」と感情を伴う「共感覚付き幻覚」(通常、人が見る夢は大半が感情と接続されている)が大量に事例が上がっており、私のこの輪郭強調と嫌悪の共感性は「そういうものなのだ」とやっと納得出来た。また、私は長年の睡眠障害(昨年、非24時
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26年も前なので、古さを感じる部分はある。
それを差し引いても、一般読者に”当事者の世界”を触れさせる良書なので星5つとした。
原著”An antholopulogist on Mars”が出版されたのは1995年、日本語版出版は1997年。
現時点(2021年)からみれば26年間、精神医学、脳神経科学は日進月歩の進歩を遂げてきた。現代の最新知見を持つ読者からみれば、
「四半世紀前はこんなものだったのか」
と、落胆や不満も持つ内容である。
とりわけ、当時よりははっきりしてきた発達障害への理解を踏まえると、
「抱きしめが大事とかいう理論はお前のせいかぁあああ!」
と、どなりたくなるような -
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何度繰り返し、この本を、読んだ事でしょう。
人間の、精神に、興味がありました。自分が、精神の病を名付けられてからは、作者 オリバー・サックスの、変わった人々に対する温かいまなざしに、すがるような思いで、読みました。
訳者 高見幸郎氏が、あとがきで、こう書いています。
たしかにこれは、筆者の言うとおり、「奇妙」な話を集めたものである。脳神経になにか異常があるとき、奇妙な不思議な症状があらわれ、一般の想像をこえた動作や状態がおこる。ここに語られた二十四篇の話はいずれもそうした例といっていい。しかしわれわれが、これらをただ好奇の目でながめ、興味本位に読むのだったら、それはたいへんな誤りで、筆者の -
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脳神経科医のオリヴァー・サックスが幼少期に夢中になったのは化学だった。医者の両親と電球を開発していたおじたち、植物に造詣の深いおばや年の離れた兄たちに見守られながら、化学の化学の実験に明け暮れ、先人たちの発見に心躍らせた少年時代を振り返る、ジュブナイル小説のような回想エッセイ。
サックスの家はユダヤ教徒で、子どもの教育に熱心だった母方の祖父とその子どもたちは化学に親しんで育った。用途の違うランプの特許をとった祖父を受け継ぎ、おじさんたちは〈タングスタライト〉という会社を経営していた。このうちの一人、デイヴおじさんがフィラメントに使われる金属・タングステンにぞっこんで、〈タングステンおじさん